社内稟議書の保存期間とは
保存期間については明確な法的規定がありません。しかし、稟議書の性質や重要性を考慮すると、適切な保管期間を設定することが望ましいでしょう。
関連文書には保存義務がある場合も
稟議書そのものには法律で定められた保存期間はありませんが、稟議書に添付される文書には法定の保存期間が設けられているものがあります。例えば、以下のような文書が該当します(いずれも7年またはそれ以上の保存が必要)。
- 契約書
- 見積書
- 請求書
- 領収書
- 注文書
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稟議書の一般的な保存期間
稟議書を永久保存または長期保存の対象とする企業もあります。これは以下の理由によります。
- 意思決定の記録
稟議書は企業の意思決定プロセスを記録した文書であり、将来の参照や監査のために保存する価値があります。 - 法的保護
将来的な紛争や訴訟の際に、稟議書が証拠となる可能性があります。 - 経営の透明性
長期的な稟議書の保存は、企業の意思決定の透明性を高め、ガバナンスの向上につながります。
保存期間の設定方法
全ての稟議書の永久保存や長期保存が困難な場合は、以下の点を考慮して、稟議書の保存期間を設定することが推奨されます。
- 関連する法定文書の保存期間
添付される契約書や見積書などの法定保存期間を基準にする。 - 稟議内容の重要性
経営に大きな影響を与える決定に関する稟議書は、より長期の保存を検討する。 - 社内規定の整備
稟議書の種類や重要度に応じた保存期間を社内規定として明文化する。 - 定期的な見直し
法改正や事業環境の変化に応じて、保存期間を適宜見直す。
稟議書の適切な保存期間を設定し、管理することで、企業は法的リスクを軽減し、経営の透明性を高めることができます。次節では、稟議書に関連する文書の保存期間について詳しく見ていきましょう。
永久保存が推奨される文書
法定の保存期間とは別に、以下のような文書は永久保存が推奨されます。
- 株式に関する書類
- 登記・訴訟に関する書類
- 官公庁への提出文書
など
これらの文書は企業の意思決定や財務状況を示す大事な記録であるため、永久もしくは長期的な保存が望ましいとされています。
稟議書に関連する文書の保存期間を適切に管理することで、法的リスクを回避し、必要な際に迅速に参照することができます。また、これらの文書を稟議書と紐づけて保管することで、意思決定プロセスの透明性を確保し、将来的な監査や検証にも対応しやすくなります。
次節では、稟議書とその関連文書の適切な保管方法について詳しく見ていきましょう。
稟議書の適切な保管方法
稟議書の適切な保管は、企業のガバナンスやコンプライアンスにおいて非常に重要です。ここでは、稟議書の保管方法について、紙媒体での保管、電子化による保管、関連文書との紐づけ保管の重要性について詳しく解説します。
紙媒体での保管
稟議書を紙媒体で保管する場合、以下のポイントに留意する必要があります。
- 適切な保管場所の確保
紙媒体の稟議書は湿気や直射日光を避け、温度と湿度が安定した場所に保管します。専用の書類棚やキャビネットを使用し、整理整頓を行います。 - 分類とラベリング
稟議書を種類や年度ごとに分類し、ラベルを付けて管理することで、必要な文書を迅速に見つけることができます。これにより、検索時間を短縮し、業務効率が向上します。 - 定期的な見直し
保管した稟議書は定期的に見直し、不要なものは適切に廃棄することが求められます。保存期間を過ぎた文書は、企業のルールに従って速やかに廃棄しましょう。
関連文書との紐づけ保管の重要性
稟議書はしばしば契約書や見積書、請求書などの関連文書と一緒に保管されることが多いです。これらの文書を紐づけて管理することには、以下のような利点があります。
- 意思決定の透明性
稟議書と関連文書を一元管理することで、意思決定のプロセスが明確になり、企業の透明性が向上します。 - 監査対応の容易さ
監査や確認が必要な際に、関連文書がすぐに参照できるため、迅速な対応が可能になります。これにより、監査の負担を軽減できます。 - 業務の効率化
関連文書を紐づけて保管することで、情報の整合性が保たれ、業務の流れがスムーズになります。これにより、社内のコミュニケーションも円滑になります。
稟議書の適切な保管方法を実践することで、企業は法的リスクを軽減し、業務の効率化を図ることができます。次節では、稟議書の保存期間を過ぎた後の取り扱いについて詳しく見ていきましょう。
稟議書の保存期間を過ぎた後の取り扱い
稟議書の保存期間が経過した後の適切な取り扱いは、企業のコンプライアンスと情報セキュリティの観点でポイントになります。ここでは、破棄のタイミングと適切な破棄方法について詳しく解説します。
破棄のタイミング
稟議書の破棄時期を決定する際は、以下の点に注意が必要です。
- 法定保存期間の確認
稟議書自体に法定の保存期間はありませんが、添付される契約書や請求書などには法定保存期間があります。これらの期間を確認し、最も長い期間を基準にすることが推奨されます。 - 社内規定の遵守
多くの企業では稟議書を永久保存または長期保存の対象としています。社内規定で定められた保存期間を確認し、それに従って破棄のタイミングを決定しましょう。 - 重要度の考慮
経営に大きな影響を与える決定に関する稟議書は、法定期間や社内規定を超えて保存することも検討すべきです。
適切な破棄方法
稟議書を破棄する際は、情報漏洩のリスクを最小限に抑えるため、以下の方法を考慮してください。
- シュレッダー処理
紙媒体の稟議書は、より細かく裁断できるマイクロクロスカットタイプの高セキュリティなシュレッダーを使用することが推奨されます。これにより、情報の再構成を困難にします。 - 溶解処理
大量の稟議書を一度に処分する場合は、専門業者による溶解処理も効果的です。紙を完全に溶かすため、情報の復元が不可能になります。 - 電子データの完全消去
電子化された稟議書を破棄する場合は、単なる削除では不十分です。データ消去ソフトウェアを使用するか、物理的にハードドライブを破壊するなど、確実な方法で情報を消去しましょう。 - 委託業者の選定
破棄作業を外部に委託する場合は、情報セキュリティ対策が十分な信頼できる業者を選定しましょう。
破棄の記録
稟議書を破棄した際は、以下の情報を記録として残すことをお勧めします。
- 破棄した文書の種類と内容の概要
- 破棄日時
- 破棄方法
- 破棄を実施した担当者名
これらの記録を保管することで、適切に破棄が行われたことを証明でき、監査時にも役立ちます。法令や社内規定を遵守しつつ、情報セキュリティにも配慮した破棄プロセスを確立することが求められます。
稟議書の電子化のメリット
稟議書の電子化は、企業の業務効率化とコンプライアンス強化に大きく貢献します。ここでは、稟議書を電子化することで得られる主なメリットについて詳しく解説します。
スペース削減
- 物理的保管場所の縮小
紙の稟議書を電子化することで、書類保管用のキャビネットや倉庫スペースを大幅に削減できます。これにより、オフィススペースの有効活用が可能になります。 - コスト削減
保管スペースの縮小は、賃料や維持管理費の削減にもつながります。特に大都市のオフィスでは、この効果が顕著に表れます。
検索性の向上
- 迅速な文書検索
電子化された稟議書は、キーワード検索や日付検索が可能になります。これにより、必要な情報を素早く見つけ出すことができ、業務効率が大幅に向上します。 - 横断的な情報活用
複数の稟議書を横断的に検索・分析することで、経営判断に役立つ情報を抽出しやすくなります。
セキュリティの強化
- アクセス権限の管理
電子化された稟議書は、閲覧や編集の権限を細かく設定できます。これにより、機密情報の漏洩リスクを低減できます。 - 改ざん防止
電子署名や変更履歴の記録により、稟議書の改ざんを防止し、文書の信頼性を高めることができます。 - バックアップの容易さ
電子データは定期的なバックアップが容易であり、災害時のデータ損失リスクを軽減できます。
業務プロセスの効率化
- 承認プロセスの迅速化
電子稟議システムを導入することで、承認者への通知や承認状況の確認が自動化され、稟議プロセス全体が迅速化します。 - リモートワーク対応
電子化された稟議書は、場所を問わずアクセスできるため、リモートワーク環境下でも円滑な稟議プロセスを実現できます。 - ペーパーレス化の促進
稟議書の電子化は、企業全体のペーパーレス化を推進する契機となり、環境負荷の低減にも貢献します。
コンプライアンス強化
- 監査対応の容易さ
電子化された稟議書は、監査時の資料提出や説明が容易になり、コンプライアンス対応の負担を軽減できます。 - 保存期間管理の自動化
システムによる保存期間の自動管理が可能となり、法令遵守と適切な文書管理を両立できます。
稟議書の電子化は、単なる紙の削減にとどまらず、企業の業務プロセス全体を効率化し、ガバナンスを強化する重要な施策となります。導入に際しては、セキュリティ面での配慮や従業員への適切な教育が必要ですが、長期的には大きな経営メリットをもたらすでしょう。
稟議書管理における注意点
ここでは、稟議書管理における主な注意点について解説します。
機密情報の取り扱い
- アクセス制限の設定
稟議書には機密性の高い情報が含まれることが多いため、閲覧権限を適切に設定する必要があります。特に電子化された稟議書では、システム上で厳格なアクセス制御を行うことが大事です。 - 暗号化の利用
電子稟議システムを使用する場合、データの暗号化を行うことで、情報漏洩のリスクを低減できます。 - 印刷制限
必要以上に紙に印刷されることを防ぐため、印刷権限を制限することも検討しましょう。
アクセス権限の設定
- 役職に応じた権限設定
稟議書へのアクセス権限は、従業員の役職や所属部署に応じて適切に設定する必要があります。これにより、必要な人だけが情報にアクセスできる環境を整えることができます。 - 定期的な見直し
人事異動や組織変更に伴い、アクセス権限を定期的に見直すことが重要です。不要なアクセス権限を放置すると、情報漏洩のリスクが高まります。 - 監査ログの保管
誰がいつ稟議書にアクセスしたかを記録する監査ログを保管することで、不正アクセスの早期発見や、問題発生時の原因究明に役立ちます。
データバックアップと復旧計画
- 定期的なバックアップ
稟議書データは定期的にバックアップを取り、災害やシステム障害に備える必要があります。クラウドストレージの利用も有効な選択肢です。 - 復旧手順の策定
データ損失や障害が発生した際の復旧手順を事前に策定し、関係者に周知しておきましょう。
コンプライアンスへの配慮
- 法令遵守
稟議書の保存期間や管理方法について、関連法令を遵守することが不可欠です。特に個人情報や財務情報を含む稟議書は、厳格な管理が求められます。 - 監査対応
内部監査や外部監査に備え、稟議書の管理状況を常に把握し、必要に応じて速やかに提出できる体制を整えておくことがポイントです。 - 社内規定の整備
稟議書の管理に関する社内規定を整備し、全社員に周知徹底することで、一貫性のある管理を実現できます。
電子化やシステム導入を検討する際も、これらの注意点を踏まえた上で、自社に最適な管理方法を選択することが求められます。
効率的な稟議書管理システムの導入
稟議書の管理を効率化し、業務プロセスを改善するためには、適切なシステムの導入が不可欠です。ここでは、ワークフローシステムの活用と文書管理システムとの連携について解説します。
ワークフローシステムの活用
- 承認プロセスの自動化
ワークフローシステムを導入することで、稟議書の承認プロセスを自動化できます。これにより、承認者への通知や進捗状況の確認が容易になり、承認にかかる時間を大幅に短縮できます。 - 進捗の可視化
従来の紙ベースの稟議では、現在誰が稟議書を保持しているかを把握するのが困難でした。ワークフローシステムを使用すれば、稟議書の現在の状況をリアルタイムで確認でき、進捗の遅れにも迅速に対応できます。 - テンプレートの活用
頻繁に使用する稟議書のテンプレートをシステム上に用意することで、稟議書作成の効率化と標準化を図ることができます。これにより、記入漏れや記入ミスを減らし、品質の向上にもつながります。
文書管理システムとの連携
- 一元管理の実現
稟議書を文書管理システムと連携させることで、関連する契約書や見積書などの添付文書も含めて一元管理が可能になります。これにより、必要な情報を素早く検索・参照できるようになります。 - 保存期間の自動管理
文書管理システムを活用することで、稟議書の保存期間を自動的に管理できます。法定保存期間や社内規定に基づいて、適切なタイミングで廃棄や長期保存の判断を行うことができます。 - セキュリティの強化
文書管理システムでは、アクセス権限の細かな設定が可能です。これにより、機密性の高い稟議書へのアクセスを適切に制限し、情報漏洩のリスクを低減できます。
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導入時の注意点
- 業務フローの見直し
システム導入に際しては、現在の稟議プロセスを見直し、必要に応じて業務フローの改善を行います。単にシステムを導入するだけでなく、業務全体の効率化を図ることが求められます。 - ユーザートレーニング
新しいシステムの導入には、社員へのトレーニングが不可欠です。特に、デジタル化に不慣れな社員に対しては、丁寧な説明と支援が必要です。 - 段階的な導入
一度にすべての部署や稟議プロセスをシステム化するのではなく、段階的に導入することで、リスクを軽減し、スムーズな移行を実現できます。
効率的な稟議書管理システムの導入は、単に稟議プロセスを電子化するだけでなく、企業全体の業務効率化とガバナンス強化につながる施策です。導入に際しては、自社の業務フローや組織文化に合わせたカスタマイズを行い、最適なシステムを選択することが成功の鍵となります。
稟議書管理の重要性と効率化のポイント
稟議書の管理は、企業の意思決定プロセスにおいて大事な役割を果たします。本記事では、稟議書の保存期間、適切な保管方法、電子化のメリット、そして効率的な管理システムの導入について詳しく解説しました。
まず、稟議書の保存期間は法的な規定がないものの、関連する文書の保存期間を考慮する必要があります。適切な保管方法としては、紙媒体での保管や電子化があり、それぞれのメリットがあります。特に電子化は、スペースの削減や検索性の向上、セキュリティの強化に寄与します。
また、稟議書の保存期間を過ぎた後の取り扱いや、適切な破棄方法も大事です。情報漏洩を防ぐために、シュレッダー処理や電子データの完全消去が推奨されます。さらに、稟議書管理においては、機密情報の取り扱いやアクセス権限の設定、データバックアップの実施が求められます。
最後に、ワークフローシステムや文書管理システムの導入は、稟議書管理の効率化に大きく貢献します。これにより、承認プロセスの自動化や進捗の可視化が実現し、業務全体のスピードと透明性が向上します。企業はこれらのポイントを踏まえ、稟議書管理の最適化を図ることが求められます。
社内文書を適切に管理することは、当該部門の職責にとどまらず、コーポレートガバナンスという経営視点においても非常に重要です。また、単に保管すればよいのではなく、必要に応じてすぐに利活用できるようにしておくことも求められます。文書管理を含めた法務実務を効果的にDXするためには、プラットフォーム型のリーガルテックを導入することがおすすめです。LegalOn Cloudは、AIテクノロジーを駆使し、法務業務を広範囲かつ総合的に支援する次世代のリーガルテックプラットフォーム。契約書管理を含めたあらゆる法務業務をAIがカバーできるほか、自社にとって必要なサービスを選んで導入することも可能なため、初めてリーガルテックの導入を検討する方にも最適です。