契約関連業務にかかる時間を約4割削減 「ナレッジ化」による長期的価値を考慮した先行投資
株式会社カオナビ
コーポレート本部 法務グループ マネージャー 岡森愛樹 様
- 導入背景:業務量増加と人員制約の中で、ツール分散による情報検索の非効率さを解消する必要があった。
- 導入理由:必要機能のみ選択できる柔軟性と、同一プラットフォームで段階的に拡張可能な点を評価。
- 導入効果:契約関連業務を約4割削減し、進捗の可視化・ナレッジ共有を促進。全社展開も視野に。
月130件のレビュー依頼・法務相談に3名で対応
コーポレート本部 法務グループ マネージャー 岡森愛樹 様
御社の事業内容について教えてください。
株式会社カオナビは、社員の顔やスキル、経験、評価などの情報をクラウド上で一元管理するタレントマネジメントSaaS「カオナビ」を提供しています。2025年6月にTOB(株式公開買付)を経て株式を非公開化し、成長に向けた新たな一歩を踏み出しました。これに伴い、法務部門の業務も一層活発化しています。
法務部門の体制や業務内容について教えてください。
法務部門は私を含め3名体制で、私がマネージャーを務めています。私は別職種から法務に転じて8年になります。メンバーのひとりは弁護士資格を有する企業法務のプロフェッショナル、もうひとりは他部門から異動してきたジュニアメンバーです。少人数のため担当を固定せず、内容に応じて柔軟にアサインしています。
業務は契約書の作成・審査・管理を中心に、取締役会対応や社内規程・商標管理など、会社法務の典型的な領域を幅広く担当しています。知的財産の手続きは基本的に外部の弁理士に委託していますが、商標取得のための調査や更新管理などは社内で対応しています。
どのような契約類型が多いのでしょうか。
当社では直販に加え、販売代理店やパートナー企業による販路拡大を進めているため、代理店契約や紹介契約が多くを占めます。ほかに人材紹介契約や業務委託契約もあります。件数として最も多い契約類型はNDA(秘密保持契約)です。契約書は自社と他社のひな形が半々ほどで、レビュー数は月80件前後。法務相談などを含めると、月100〜130件を3名で対応しています。
情報の検索性の悪さから業務が肥大化。案件管理ツールの導入へ

LegalOnのマターマネジメント(案件管理)モジュールを導入した背景を教えてください。
会社規模の拡大に伴い法務業務は増加の一途をたどっていましたが、優秀な人材の採用は容易ではありませんでした。そこで、まずは業務を圧縮し、効率化によって負荷を軽減する方法を検討しました。当初は契約書審査ツールを探していましたが、商談の中で案件管理もツール化できることを知り、当社の場合、契約書審査の効率化よりも案件管理の効率化の方が効果的なのではと考えるようになりました。結局、コストとのバランスも考慮し、最終的にLegalOnのマターマネジメントを導入することにしました。
マターマネジメントモジュールの導入以前は、案件受付や進捗管理はどのようにされていましたか。
案件受付はWebフォームで統一していましたが、受け付けた情報は表計算ソフトに蓄積され、事業部とのやり取りはメール、部内確認はチャットツールと、複数のツールやアプリケーションを行き来する運用でした。そのため、必要な情報を探す手間が大きく、業務管理の効率が低下していました。
私はマネージャーとしてメールで依頼内容を確認し、案件に応じてチャットでメンバーに指示を出していましたが、ツールの使い分けによるストレスは少なくありませんでした。ただ、Webフォーム経由のレビュー依頼は必須項目が揃っていたため、審査自体に大きな支障はありませんでした。
情報の検索性が悪かったことで生じた弊害などはありますか。
過去の履歴を確認する際、メールとチャットの両方を検索しなければならず、大きな手間がかかっていました。特に在籍の浅いジュニアメンバーは権限上、過去のやり取りにアクセスできず、上長が代わりに探して転送することも多々ありました。例えば押印業務を任せた際も、審査履歴を確認して最終版と照合する必要がありましたが、一部の履歴が参照できず、私が最終版をダウンロードして資料を手渡すことがほぼ全案件で発生する、というようなこともありました。
過去履歴を共有フォルダにまとめて参照できるよう工夫もしましたが、事業部とのやり取りがすべて反映されるわけではなく、情報の抜け漏れが生じていました。
ツールが増えると便利な反面、管理が煩雑になることもありますね。
承認フローが複数のツールに分散していたため、承認者が“承認疲れ”を起こすケースもありました。管理者にはさまざまなツールから承認依頼が届く状態で、対応にかかる手間が増えていました。今後全社的にさらにツール活用が進むことを見据え、情報と承認を一元的に管理できる体制を整える必要があると考えました。
必要な機能だけを選んでスモールスタートできる柔軟性が魅力

数あるツールの中で、LegalOnを選んだ理由を教えてください。
最終的に3社と商談を行いましたが、限られた予算の中でしたから、フルパッケージ型ツールの導入は難しい状況でした。その点、LegalOnは必要な機能モジュールを選んでスモールスタートでき、将来的な業務拡大や課題の変化にも柔軟に対応できる点が魅力でした。
他社の案件管理に特化したサービスも検討しましたが、特化したツールだとその他の業務を効率化しようとするたびに別ツールの導入やセキュリティ審査が必要で、コストや運用負担の増加が懸念されました。法務業務の高度化が進む中、同一プラットフォーム上で段階的に機能を追加できる柔軟性を持つLegalOnは、最も現実的で持続可能な選択肢だと考えました。
実際に使ってみた感想はいかがでしょうか。
案件管理がマターマネジメントに一本化されたことで、複数のツールを行き来せずに契約関連業務を一元管理できるようになりました。案件のステータスも一覧で可視化され、進捗把握が格段にしやすくなりました。また、メールやチャットツールと連携できるため、1つの案件に関連するメッセージをLegalOn内で集約して確認できる点も便利です。
標準機能の「比較」で全文・条文・バージョンごとの差分を簡単に確認できるため、見落とし防止につながり、特にジュニアメンバーから好評です。「カスタムタブ」機能が新たに追加されたことで、担当者や進行状況などの条件を自由に組み合わせて表示・保存できるようになり、一覧性と検索性の両面で大きな効果を感じています。
工数削減はもちろん業務の可視化・進捗管理の効率化に
導入後の成果・効果について教えてください。
導入から間もない段階ですが、試算では法務部門の契約関連業務にかかる時間を月間で約4割削減できる見込みです。これまで分散していた情報や進捗管理をマターマネジメント上で一元化できたことで、確認・共有に要する工数を大幅に削減できました。現在は法務グループ内での運用にとどまっていますが、今後は全社的にアカウントを展開し、案件受付をLegalOnで完結できるようにする予定です。
リーガルテックの導入にあたり、社内稟議を通すコツはありますか。
御社の担当の方から提供いただいた、導入効果を定量化するテンプレートが非常に役立ちました。契約書レビューや案件管理にかかる作業時間や件数を入力すると、導入前後でどれだけ工数や人件費を削減できるかを試算でき、上長や経営層に数値で示せるため、導入の必要性やメリットを説明しやすくなったと思います。
ただ当社の場合、単純な効率化だけでは意思決定の後押しとしてはもう一歩でした。そこで、将来の人員交代や属人化の解消、情報探索の効率化、オンボーディングの迅速化といった「ナレッジ化」による長期的価値を強調。単なるコスト削減にとどまらない効果を訴求し、先行投資として承認を得ました。
LegalOnは強いチームづくりを目指す企業におすすめしたい

LegalOnはどのような企業に向いていると思われますか。
案件受付だけなら既存のフォームやチャットツールでも代用可能ですが、LegalOnの価値は情報や知見を組織で蓄積・活用できることにあります。「情報が埋もれて探せない」「ナレッジ化が進まない」といった課題を抱える企業には特に適しているでしょう。
知識やノウハウは個人で抱えても限界があります。チームで共有し活用することで、課題解決のスピードが上がり、メンバーの成長にもつながります。過去の案件や法務ノウハウが蓄積されるプラットフォームとしてのLegalOnは、法務担当者にとって非常に心強い存在です。組織全体の成長を促し、強いチームづくりを目指す企業にこそおすすめしたいツールです。
将来の展望や、今後の目標・計画について教えてください。
当社コーポレート部門は「会社を支えるプロフェッショナルになる」を目標に掲げ、各分野で会社の成長を支えてきました。法務としても専門性を発揮し、事業の発展に貢献していくことが使命ですが、これまで契約書のファイル管理や進捗の手動更新、社内調整など、法務の本質ではない定型業務に多くの時間を費やしてきたという課題があります。
今後はツール活用によりこうした作業を削減し、その分の時間を法的リスクの分析や契約条件の検討、制度改正への対応など、より専門性の高い業務に充てたいと考えています。必ずしも人がやらなくてもよいことはツールに任せ、人にしかできない判断や戦略的思考に集中することで、より質の高い法務体制を築いていきたいです。
また、AIによるナレッジ活用にも大きな期待を寄せています。法務部門の多くが課題を抱えるナレッジの整理と活用をAIが支援することで、現場への情報発信や知見共有が進み、組織全体の生産性向上と相互理解の深化につながるはずです。これからはAIおよびリーガルテックの力を活用しながら、会社の成長をより強く支える法務へ進化していきたいと考えています。
(取材日:2025年10月)※掲載内容は取材当時のものです。