2万件の契約書を一元管理 名古屋発のグローバル企業が挑んだ法務の進化
アイホン株式会社
管理本部 総務部 部長 柏木大輔 様 管理本部 総務部 法務課 課長 立花真一 様 管理本部 総務部 法務課 副主事 境健哲 様
- 導入背景:限られた人員で月100件以上の契約審査を行う中、紙運用や検索性の低さが課題となっていた。
- 導入理由:OCR精度の高さと法務特化のサポート体制、柔軟に機能を組み合わせられるプラットフォーム性を評価。
- 導入効果:コントラクトマネジメントモジュールの活用により約2万件の契約書をデジタル化・一元管理し、検索性と業務効率が大幅に向上。
4人の法務課で月約100件の案件に対応
管理本部 総務部 部長 柏木大輔 様
御社の事業内容について教えてください。
柏木様 当社は、マンション等の集合住宅向けのインターホンシステムや戸建住宅用テレビドアホン、病院・福祉施設向けナースコールシステムなどを製造・販売する名古屋市に本社を置くメーカーです。売上比率は2024年実績で国内が7割、海外が3割で、近年はスマートフォンとの連携機能やIPネットワークに対応する製品の開発に加え、伝票番号でマンションのオートロックを解錠できる次世代型宅配システム「Pabbit」など新分野にも注力しています。
法務部門の組織体制や業務内容について教えてください。
立花様 法務はかつて総務課が兼務していましたが、4年前に法務課が新設され、現在は4名体制で全社の法務業務を担当しています。具体的には、契約書のレビューや締結後の管理、社内規程の整備・運用、全社的なコンプライアンス推進などを行っています。メンバーは営業や開発、総務など他部署からの異動者で、私を含め実務担当者が着任時には法務の知見に長けた者はいませんでした。
境様 法務課では月に約100件の契約書レビューを行っており、そのうち7割ほどが営業部門からの依頼ですが、事業拡大に伴い、新製品開発や新規仕入先との取引に伴う契約など営業部門以外の契約も増えています。海外の販売・生産子会社からの契約相談にも対応しており、国内外問わず幅広い案件を扱っています。
精度と柔軟性を重視してLegalOnを導入
管理本部 総務部 法務課 副主事 境健哲 様
LegalOn導入以前から弊社のAI契約書レビューサービスをご利用いただいていましたが、当時はどのような課題がありましたか。
境様 法務課ができる前は総務課が法務業務を兼任しており、契約書レビューも人力で行っていたので作業の負担が重く、リスクの見落としも懸念されていました。限られた人数で効率的かつ正確に対応する必要があったため、色々と検討を重ねた結果、当時としてはかなり先進的だったAI契約書レビューシステム「LegalForce(注:当社従来製品。後継にあたるのがLegalOnのレビューモジュール)」を導入することを提案し、社内での承認を得ることができました。結果として法務経験がないメンバーでも一定水準のレビューが可能となりました。
柏木様 当時は法務の専門家ではない私たちが重要な契約書をチェックする必要があり、正直プレッシャーを感じていました。弁護士監修のLegalForceは非常に心強く、顧問弁護士に頻繁に相談できない状況でも安心して活用できました。
契約書レビューの受付や締結後の原本管理で課題はありましたか。
境様 当時は契約審査依頼が紙の稟議書と契約書で回ってくるなど、非常にアナログな運用でした。そこでノーコードの業務アプリ構築サービスを使ってアプリケーションを自作し、契約審査受付のフローを標準化しました。現在はすべての契約審査依頼をアプリ経由で受け付ける形に統一しています。
審査受付の電子化・効率化が進む一方で、締結済み契約書の取り扱いは依然として課題でした。締結後の契約書は文書管理システムを導入して保管していましたが、そのシステムは検索性が低く、必要な契約書を探すのに苦労するケースや、アップロード漏れやファイル名の不統一などもあり、最終的に見つからないケースも少なくありませんでした。審査までは電子データで行えるようになったとしても、締結時は紙での押印なので最終的に原本は残ります。この保管場所がバラバラで、総務部内にあったり各部門で保管していたりとさまざまでした。
こうした課題を解決するためにLegalOnを導入されたのですね。
境様 そうですね。導入の決め手は、検索性とサポート体制です。LegalOnはOCRの精度が非常に高く、カスタマーサポートも充実していました。弁護士監修で法務に特化している点も信頼できました。
立花様 LegalOnは、標準機能に「案件管理」「契約審査」「契約書管理」など特定業務に特化したモジュールを追加して使用するプラットフォーム型ツールだった点も魅力でした。契約書作成から管理までを一気通貫で支援するフルパッケージ型のツールも検討しましたが、既存の受付フローを活かしたかったため、必要な機能を組み合わせて運用できるLegalOnを選びました。
AIの助けを借り、散在していた2万件超の締結済み契約書を集約
管理本部 総務部 法務課 課長 立花真一 様
導入にあたり、苦労した点や工夫したことはありますか。
立花様 導入以前にある部署で、過去の契約書に定められた技術利用に関する制約を十分に確認できておらず、その内容を踏まえない形で新たな契約を締結してしまった、ということがありました。再発防止のため、LegalOn導入後に契約書をキーワード検索し、関連契約を洗い出して各部門に注意喚起を行いました。このような契約上のリスクを考慮するとやはり契約書は一元管理がベストであろうと、LegalOn導入を機会に全て集約してデジタル化しました。
各部門に散在していた約2万件の契約書原本を、法務課総出で収集したのです。短期間で集中的に作業を行い、すべてLegalOnにアップロードしてデジタル化を完了。過去の契約書も含め、一括で検索・閲覧可能な体制を整えました。
柏木様 LegalOnの導入は従来の契約書管理を大きく変える取り組みだったため、経営層にも丁寧に説明し、理解を得ました。各部門に対しても、締結済み契約書の収集と電子化は全て法務課で対応するとすることで、管理方法の変更について了承してもらいました。
現在のLegalOnの活用状況について教えてください。
境様 現在はコントラクトマネジメントモジュール(契約書管理)を中心に活用しています。各部門で締結した契約書は当該部門の管理部が集約し、最終的に法務課で一元管理する体制です。従来は一部の管理者しか閲覧できませんでしたが、全社にアカウントを展開し、関係部門・部署が安全に契約書を閲覧できるようになりました。これにより、各部門でも「契約書を確認する」という文化が根づきつつあります。
立花様 マターマネジメントモジュールは、主に顧問弁護士とのやり取りに使用しています。LegalOnアシスタントも導入し、AIの支援で限られた人員でも迅速に対応できる環境づくりを進めています。
境様 レビューモジュールでは新旧の契約書や社内規程の差分を確認する比較機能を重宝しています。変更点を視覚的に把握でき、目視確認の手間を大幅に効率化できました。全文比較やバージョン比較も可能で、作業スピードが格段に向上しています。LegalForce時代よりレビュー精度も高まり、今後の進化にも期待しています。
業務負荷軽減と生産性向上の両立を実現

リーガルテックの導入で、業務効率や働き方に変化はありましたか。
境様 LegalOnの導入で契約管理体制の整備が大きく進みました。かつては紙やExcelで行っていた契約管理も、クラウド化によって着実に整備が進み、管理レベルが大きく向上しています。その流れの中で、さらなる高度化を目指して導入されたのがLegalOnです。現在では契約書の検索時間が大幅に短縮され、業務効率も目に見えて向上しています。
柏木様 LegalOn導入により、今期の法務課の残業は昨期よりも大きく減らすことができています。契約審査や社内規程の相談対応など、多岐にわたる業務を効率的に進められるようになり、生産性も向上しました。他部署と比べても効率を徹底的に追求する組織へと成長したと感じています。
立花様 当課には法学部出身者など、法務の専門的なバックグラウンドを持つメンバーはいませんが、それがむしろ良い方向に働いていると感じています。自分の力を過信せず、「これは危ないかも」と思ったらすぐに弁護士やツールに頼る姿勢が自然と根づいているからです。そんな中、LegalOnのように信頼できるツールを活用することで、判断や対応に集中できる環境を整えました。効率化や生産性の向上を常に意識し、より良い運用を追求する文化が育っています。
LegalOnをどのような企業に向いていると思われますか。また、導入を検討されている事業者に向けてメッセージがあればお願いします。
境様 契約書の件数が多く、目的の契約書を探すのに時間がかかっている企業や、登録作業を手入力で行っている企業には特に合っていると思います。LegalOnは契約書の検索性と登録作業を大幅に効率化できるツールであり、業務負荷の軽減と生産性向上の両立を実現します。
立花様 導入までには他社ツールとの比較検討や社内調整など一定の労力を要しますが、運用が軌道に乗れば業務効率は格段に向上します。導入初期の手間は「投資期間」と割り切ることが大切だと思います。また、LegalOnはユーザー会で他社担当者と課題を共有でき、活用ノウハウを学べる点も大きな魅力です。
(取材日:2025年10月)※掲載内容は取材当時のものです。