事業再編の渦中で浮き彫りになった課題
株式会社ANAPホールディングス
取締役 宮橋一郎 様 経営管理本部 経理部長 泉谷英治 様
- 導入背景:事業再生プロセスの中で契約書の所在不明や属人化が深刻化し、電子化と情報共有が急務だった。
- 導入理由:国内トップシェアの信頼性と、契約管理・電子契約を一気通貫で行える利便性を評価。
- 導入効果:契約管理の手間を1/20以下に削減し、更新漏れを防止。グループ内電子契約も推進。
事業再編の渦中で浮き彫りになった課題
取締役 宮橋一郎 様
御社の事業内容について教えてください。
宮橋様 株式会社ANAPホールディングスは、レディースアパレルを展開する株式会社ANAPを、持株会社体制への移行に伴って商号変更した企業です。現在はアパレル事業を軸に、エステ事業、リフレクソロジー事業、投資事業等をはじめとするビットコイン関連事業を子会社として展開し、グループ全体で新たな成長体制の構築を進めています。
事業再編で組織が大きく変わったと思いますが、法務部門の体制について教えてください。
宮橋様 再編以前のANAPでは専任の法務担当者を置かず、必要に応じて外部の法律事務所にリーガルチェックを依頼していました。その後、事業再生ADR(第三者の関与で事業再生計画を策定する制度)を申請、プロセスを進める中で大きな組織再編を行い、私が管理部門全体を管掌し、経理部長の泉谷が法務業務を兼務する形で再スタートを切りましたが、一時的に管理部門全体が十分に機能しない状態に陥りました。現在では事業再生プロセスは完了し、新たな法務責任者もメンバーに加わって、再建に向けた新体制の強化を進めています。
泉谷様 私は以前、別企業でCFOとして財務全般を統括しており、ANAPには経理責任者として4月に入社しました。事業再編の過程で前任の法務担当者が退職し、私が法務業務を引き継ぎました。法務実務の経験はありませんでしたが、LegalOnを活用しながら契約審査業務を進めてきました。
どのような契約類型を扱うことが多いのでしょうか。
宮橋様 監査法人や法律事務所との顧問契約、業務委託契約が多く、アパレル事業に伴うショッピングモールとの定期賃貸借契約も発生します。店舗契約は定型が中心ですが、商号変更や銀行口座の名義変更に関する覚書なども多く扱っています。4月の着任当初は締結済み契約書の所在や内容の把握に追われていましたが、人材採用も進めながら少しずつ体制を整えているところです。現在、日常業務に関する契約は各事業会社で行っていますが、将来的にはホールディングスで一元管理する予定です。
コントラクトマネジメントで契約管理の手間が1/20以下に
管理本部 経理部長 泉谷英治 様
LegalOnを導入された背景や、導入前の課題感を教えてください。
宮橋様 アパレル業界はデジタル化が進んでいない業界です。当社も例に漏れず、事業再生プロセスが始まった昨年10月当時、IT活用はあまり進んでいない状態で、契約書管理も属人化しがちでした。担当者が退職すると契約書の所在すら分からない状況だったため、早急に電子化と情報共有の仕組みづくりが必要でした。
こうした課題を踏まえ、2025年2月にLegalOnを導入しました。LegalOnはすでに国内トップシェアで高い評価を得ていたこともあり、導入を決めた前任者からは迷わず採用を決めたと聞いています。以前は顧問弁護士に契約書レビューを依頼する比率が多く顧問料がかさんでいたため、コスト削減も導入目的の一つでした。
「レビュー」「コントラクトマネジメント」「サイン」「LegalOnテンプレート」の各モジュールをご利用いただいていますが、特に使用頻度の高い機能とその効果を教えてください。
宮橋様 もっとも活用しているのは、締結後の契約書を一元管理できる「コントラクトマネジメント」です。導入前は別のドキュメント管理ツールを利用していましたが、検索性が低く、目的の契約書を探すのに時間がかかっていました。また、Excelで台帳を作成・更新する作業も大きな負担でした。今では契約書をアップロードするだけで情報が自動で整理され、締結後の契約書管理がスムーズに行えています。契約タイトルや取引先、契約類型、締結日など、さまざまな条件で検索でき、手作業による台帳管理も不要になりました。以前は1件あたり20分ほどかかっていた登録作業が、今では数十秒で完了するようになり、業務効率が飛躍的に向上しました。
泉谷様 契約の更新や終了期日を自動で通知してくれる点も非常に便利です。以前はExcelで管理していたため、更新を失念したり、不要な契約が自動更新されて費用が発生したりすることもありました。コントラクトマネジメントモジュールを導入したことで、契約期間や更新状況が一覧で把握できるようになり、抜け漏れのリスクが大幅に減少しました。契約管理の可視化が進んだことは大きな成果です。
グループ会社間の取引は「サイン」で電子契約に

「サイン」もご利用いただいていますが、電子契約の導入は進んでいるのでしょうか。
泉谷様 「サイン」はグループ内の管理体制整備の一環として導入しました。親子会社間で頻繁に発生する金銭消費貸借契約などで活用しており、おかげでグループ内取引の電子化が進んでいます。また、IT系サービスプロバイダや人事関連エージェントとの契約も電子契約に切り替えました。
宮橋様 アパレル業界ではまだ電子契約の導入は限定的で、ショッピングモールへの出店契約や不動産関連の契約は依然として紙ベースが中心です。申込書や覚書も紙で取り交わすケースが多く、今後の改善余地は大きいと感じています。
泉谷様 電子契約を導入したことで、紙の保管やPDF化といった二重作業が不要になりました。倉庫や保管スペースのコスト削減にもつながり、必要な契約書をすぐに検索・取得できるようになった点は大きなメリットです。
契約管理体制を整備して次のステージへ

今後の展望を教えてください。
宮橋様 今後の最優先課題は、ホールディングス全体での契約管理体制を完全に整備することです。まずは各所に点在する過去の契約書をLegalOnのコントラクトマネジメントに集約し、可視化を進めます。あわせて新規契約についてはLegalOn上でレビューを行い、電子サインの活用も進めていく方針です。また、エステやリフレクソロジー、投資事業など新規分野では多様な契約形態が想定され、海外展開に伴う英文契約も増える見込みです。法務専任者が限られる中、LegalOnを活用して契約業務の透明化と情報共有、リスク低減を同時に進めていきたいと考えています。
LegalOnはどのような企業にすすめられるとお考えですか。
宮橋様 LegalOnは操作が直感的で、マニュアルを細かく準備しなくてもすぐに使い始められます。専任の法務担当者がいないなど、契約審査体制に不安が残る企業にこそ、まずは導入してみることをおすすめしたいですね。最初から完璧を目指す必要はありません。実際に使いながら自社に合った運用へ近づけていけば問題ないでしょう。法務業務に課題を感じている企業ほど、早く取り組むことで改善のスピードも上がると思います。
泉谷様 経理の立場としてもリーガルテックの導入、契約業務の電子化は大きなメリットがあると感じています。紙の管理には保管場所の確保や検索の手間がかかりますが、電子化すればそれらの負担がなくなり、効率が格段に向上します。電帳法対応も進む今こそ、紙文化から脱却する好機です。最初は慣れが必要ですが、一度使えば電子契約の便利さを実感できるはずです。今後も法務領域を中心に、グループ全体で電子化をさらに推し進めていきたいと考えています。
(取材日:2025年9月)※掲載内容は取材当時のものです。