
AIの活用で作業工数を86%削減 「経営に貢献する法務」への前進
NECビジネスインテリジェンス株式会社
コーポレート企画統括部 コーポレートガバナンス・内部統制グループ 工藤毅 様 コーポレート企画統括部 コーポレートガバナンス・内部統制グループ 西田浩司 様

- 契約書レビュー担当者のリソース不足と、非効率な契約書管理体制に課題を抱えていた。
- LegalOnを導入し、レビュー作業の品質を担保しながら、作業工数を86%削減することに成功した。
- 定型業務の効率化で生まれたリソースを活用し、「経営に貢献する法務」の実現を目指している。
法務領域全般の実務を幅広く担当
御社の事業内容について教えてください。
工藤様 NECビジネスインテリジェンス株式会社(以下、NBI)は、NECグループ各社の総務・人事・経理などのバックオフィス業務を代行・支援する専門企業です。業務プロセスの標準化やシステム導入を通じて業務の効率性と高度な運用を実現し、グループ全体の生産性向上と多様な人材が活躍できる職場づくりに貢献しています。
法務業務を担当する部署の体制や業務内容、おふたりのキャリアについて教えてください。
工藤様 法務業務は、私たちが所属するコーポレートガバナンス・内部統制グループが担当しています。グループ長を含めてメンバーは私と西田の3名体制で、実務は私と西田が担っています。株主総会や取締役会に関する機関法務、新規事業の立ち上げやM&Aに関する戦略法務、契約書の作成・レビューなどを行う取引法務など、法務領域全般の実務を幅広く担当しています。
コーポレート企画統括部 コーポレートガバナンス・内部統制グループ 工藤毅 様
私はNECで流通・サービス業向けシステム販売からキャリアをスタートし、その後約10年にわたり法務部で取引法務に携わりました。2018年にNBIに加わり、実務を担う一方で、社員向けの法務研修講師などを務めています。
西田様 私は今年の4月に内部統制グループに加わりました。それ以前はNBIの事業部門で法務業務を担当していました。当社では、各事業部門が作成した契約書を内部統制グループがレビューし、リスクの抽出や修正を経て、依頼元が最終的に相手方と契約を締結するという業務フローとなっています。以前はレビューを依頼する側でしたが、現在はされる側になり、主に取引法務における契約書のリーガルチェックなどを行っています。
コーポレート企画統括部 コーポレートガバナンス・内部統制グループ 西田浩司 様
契約書管理・レビューの課題をAIで解決
当社のツールを導入された背景について教えてください。
工藤様 締結済みの契約書管理については、2023年4月に「LegalForceキャビネ」(当時)を導入しました。NBIには約20の事業部門があり、当時はそれぞれが契約を締結して個別に原本を管理していましたが、管理方法や保管手段がバラバラで一元管理ができていない状態でした。そのため必要な契約書がすぐに見つからない、契約期間の管理が不十分になるといった課題があり、契約書管理の効率化を目的に導入しました。
翌2024年4月には、AI契約審査の「LegalForce」(当時)をご導入いただきましたね。
工藤様 当時は年間で約350件の契約書レビュー依頼があり、それを私ひとりで対応していました。レビューと並行して多岐にわたる法務業務や法律相談にも応じる必要があり、人的リソースが圧倒的に不足していました。
また、ひとりでレビューを行うため、ダブルチェックやクロスチェックができず、リスクを見落とせないというプレッシャーも常に感じていました。レビューの品質を担保し、作業工数を削減するには、AIの活用が不可欠だと考え、LegalForceの導入を決めました。
他社のツールもありますが、当社のどのような点をご評価いただいたのですか。
工藤様 取引法務の仕事は法律相談、契約書の作成・レビュー、リスク管理など、業務範囲が非常に広く、それぞれが分断されることなくシームレスにつながっている必要があります。ツールの使いやすさやレビュー精度はもちろん重要ですが、御社は契約書レビューと締結済み契約書の管理を同時に提供している点に強みがあり、サービスの“網羅性”が導入の決め手になりました。
西田様 現在はプラットフォームを「LegalOn」に切り替え、案件管理のマターマネジメント機能、レビュー機能、締結後の契約書を一元管理するコントラクトマネジメント機能を契約しました。本格稼働に向けて、データ整備・移行作業を進めているところです。
リーガルチェックにかかる工数を86%削減
法務業務にAIを活用した率直な感想を教えてください。
西田様 契約書レビューに関しては、AIが契約書の確認事項や抜け漏れを自動で検出し、チェック項目を表示してくれるので、専門知識が乏しくても迅速にリスクを判定できる点が気に入っています。従来は書籍やWebで関連条項を調べたり、過去の類似契約書を確認したりしなければなりませんでしたが、それらの手間と時間を大幅に削減できるようになりました。
また、レビュー時にチェック項目と併せて提示される条文例やサンプル文、関連する法的情報などは、事業部門へのフィードバックの際に参考にさせていただいています。
契約書の一元管理に関する課題はいかがでしょうか。
西田様 検索性が向上したことで、大幅な業務改善につながりました。これまでは社内クラウドとExcelの台帳で管理していましたが、表記にルールがなくファイル名がバラバラだったため、必要な契約書を探すだけでも一苦労でした。今はキーワードを入力すれば、関連書類などを含めてすぐに探し出せるので、契約関連の書類をデータベース化できたことは大きな導入効果だと思います。
具体的な成果・効果があれば教えてください。
工藤様 契約書レビューにAIを活用したことで、2024年度は契約書作成およびリーガルチェックにかかる工数を86%削減できました。案件の受付や台帳管理に要する時間は従来と大きく変わりませんが、以前は30分ほどかかっていた方針決定が約3分で済むようになりました。
レビュー作業はAIが修正案を提示し、リスクの重要度が明示されるため、作業時間を7分の1以下に短縮できました。修正後の確認やチェック作業も簡便化され、全体として大幅な工数削減につながっています。
定型業務の効率化でリソースを有効活用
LegalOnをどのような企業、法務部にすすめたいですか。
工藤様 法務担当者が1人または少人数で対応している、いわゆる“ひとり法務”の企業様には特におすすめです。近年、法務部門には契約審査や法律相談に加え、リスク管理や戦略支援まで多様な役割が求められていますが、人手不足に悩む企業は少なくありません。AIの活用で定型業務を効率化することは、限られたリソースの有効活用につながります。特に取引法務に課題を抱える企業様には、導入をぜひ検討をおすすめします。
西田様 多様な契約類型を扱っていたり、複雑な契約案件が多く、内容の確認に時間がかかっていたりする企業様にも適していると感じます。LegalOnは、契約書レビューに要する時間を大幅に短縮できるだけでなく、リスクの可視化や修正案の提示により、チェックの質とスピードの両立を可能にします。法務業務の負担を軽減しながら、より本質的な業務に集中できる体制づくりに貢献してくれると思います。
将来の展望や今後の目標・計画などがあれば教えてください。
工藤様 2025年度は、AIエージェントが法務業務での実用化のフェーズに入った年だと考えています。そこで、「LegalOnアシスタント」の実務での活用方法について現在検証を行っています。具体的には、新しい契約書をイチから作成してみたり、契約書に特定の条項を追加してみたり、ということを行っています。下期には、弊社の契約書全体を横断してレビューさせ、全体的なリスクの分布を把握しようと試みています。
将来的には、経営層に対してこうしたリスク分析をレポートすることで、経営に貢献する法務を目指したいと考えています。
西田様 AIの活用によって法務業務は大きく効率化することができています。これからは法務に関する事業部からのさまざま依頼への対応に終始するのではなく、法務から積極的に提案することで「頼りにされる法務」を目指したいです。