「法務のプロに求められる判断」に比重を置くために―資生堂がLegalForceを導入した理由
株式会社資生堂 リーガル・ガバナンス部
リーガル1グループ マネージャー 渡邉友美子 様 リーガル1グループ 田村亮介 様 リーガル2グループ 相場麻衣子 様
- かねてから業務効率化が課題。上長からのリーガルテック検討指示を機に導入
- 契約書の作成・審査に「自動レビュー」と「条文検索」を活用
- 法務初心者に対する教育・OJTにも活用
法務のプロでなければできない“判断”に比重を置きたい
資生堂様のリーガル・ガバナンス部について教えてください。
渡邉様 我々のミッションは、資生堂グループの各事業・機能のビジネスパートナーとして、質の高いリーガルサービスを提供するとともに、適正な業務執行を担保することで、会社の健全かつ持続的な成長に貢献することです。また、事業活動におけるリーガルリスクを適切にコントロールするとともに、ソリューションを提案し、経営・事業の意思決定をサポートします。
部の機能としては主に「担当部門の契約作成支援と法律案件相談対応」「株主総会や取締役会対応などコーポレート法務」「商品・PR/広告・商標/意匠に関する相談対応」等に大別され、部全体の人数は30名程度です。
LegalForceを導入された理由は何でしょうか?
株式会社資生堂 リーガル・ガバナンス部 リーガル1グループ マネージャー 渡邉友美子 様
渡邉様 どの企業の法務部門も同じでしょうが、我々の組織でも業務効率化が求められています。実際、法務には “アナログ”な作業が多く、日常業務の中で「ここは効率化できるのでは」という部分は存外に多いです。
たとえば、我々は日頃の業務で紙の法令集や書籍を参照しますが、法令改正等にあわせて買い替えなければならないうえ、書籍の文例を契約書雛形に活用する場合に、データを「コピペ」することもできず、文字を手作業で入力するしかありません。信頼性が高い文献であっても、一定の作業コストが発生する点に課題がありました。
また、一般に、法務部門ではこうした”地道にこつこつ”が美徳とされる面がいまだ根強くあるように個人的に感じます。特に人材育成においては、新人は何年もかけて数多くの契約書審査業務をこなし、形式的・網羅的にチェックすべき論点を記憶することで初めて法務としての素地ができあがる、という考え方があるように思われます。しかし、様々な業務がデジタル化している今、法務の素地を作り上げるプロセスもデジタルを活用することで効率化や一定の標準を確保することができないかと考えていました。
なぜなら、我々のホンネは、事務作業の効率化だけでなく、新人教育をする側もされる側も効率化を図り、法務のプロでなければできないような“判断”に比重を置きたいということだからです。
こうした業務実態と担当者の本音との間で葛藤していた折、新しいテクノロジーに関心が強いリーガル・ガバナンス部の部長から「リーガルテックの活用」という命題を課せられ、ワーキンググループで検証したツールの1つがLegalForceでした。
他社サービスにはない“自動レビュー”機能は「衝撃的」だった
導入の決め手は何だったのでしょうか?
渡邉様 2〜3社の競合サービスと比較・検討するなかで特に決め手となったのはLegalForceのコア機能である「自動レビュー」でした。他社サービスにはない機能でしたし、かなり衝撃的に感じたことを覚えています。
LegalForceをどのようにお使いになられていますか?
渡邉様 2018年10月頃から始めたβ版の試験運用を経て、2019年4月から正式導入に至っています。これまでに主に利用してきたのは契約作成支援・契約書審査における「自動レビュー」と「条文検索」です。アカウントを持つ担当者が各人の業務のなかに取り入れており、自動レビューで不利な条文・欠落条項などのアラートを確認。担当者とAIによる“ダブルチェック”で修正の抜け漏れを防ぎ、リスク検知を行っています。
一般的な業務委託契約など、ふだんからやり慣れている契約書審査なら、自動レビューを使わなくてもあまり時間はかかりませんが、不慣れな新規契約などで自動レビューを使うと、その実力を発揮してくれます。時間短縮の効果もかなり大きいのではないでしょうか。
他にワードアドインも活用していますし、当社で実績のない類型の取引のための契約、すなわち過去例がない契約を作成するときには「LegalForceライブラリ」にある雛形をもとに契約を起案しています。
日常業務に取り入れている他の2人にもお伺いします。LegalForceで特に気に入っているのはどんな点でしょうか?
株式会社資生堂 リーガル・ガバナンス部 リーガル1グループ 田村亮介 様
田村様 法務の習熟度に応じた活用ができる点です。私は資生堂の法務に携わって9年目ですが、ふだん見慣れている契約でも自動レビューにかけてみると、見たことない条項や注意喚起が出てくることがあります。それを機会に文献を読むことで最近のトレンドも知れますし、後の学習行動にもつながっています。
反対に、習熟度が低い“法務初心者”に対する教育・OJTにもかなり便利です。これまでは“トレーナー”と“トレーニー”の両方が、作成した契約書のすべての条文を読んで抜け漏れがないかチェックしていましたが、LegalForceの自動レビュー機能を使えば、あらかじめアラートを見つけられます。トレーナーは基本的にアラートの取捨選択に専念できます。
指導・確認の時間を削減できるようになったうえ、自動レビューの結果は共通の基準に基づくため、トレーナーの属人的な「クセ」によるトレーニーの知識のバラつきも防げます。これによって部内で品質の標準化も見込まれています。
株式会社資生堂 リーガル・ガバナンス部 リーガル2グループ 相場麻衣子 様
相場様 私は以前資生堂化粧品の営業担当をしており、リーガル・ガバナンス部に配属されたのは2年前。法務としては初心者です。LegalForceで気に入っている機能は、条文検索機能です。
着任当初は契約書の独特な言い回しに沿って契約書の修正作業を行うことが難しく、1つの条文を作成するのに長時間を要することもありました。
LegalForceの条文検索機能を利用すれば、目的の契約条文を短時間で見つけることができるので、こうした条文の書き方に「悩む」時間を圧縮できます。また、自動レビューにかける前に自分で気づいたポイントと、自動レビューでアラートが出たポイントを比較することで自身の学習にもつながっているので、法務初心者にとっても使いやすいサービスだと感じています。
「この契約書で本当に大丈夫?」——そんな不安を解消できる
部内で運用していくなかで、どのような点に気を払っていますか?
渡邉様 導入の際、LegalForceの方との議論の中で印象に残っているのは、「テクノロジーの導入自体を目的とすると『失敗する』」という言葉でした。それは現在の運用のなかでも実感しています。テックを利活用するには、「誰のどの課題を解決するために導入するのか」をしっかりと見極めねばなりません。導入後も継続的に利用していくべきか否かの判断基準をしっかりと持ち、各人の利用状況を確認しながら、経過監視・検証しなければならないと思います。
どのような企業にLegalForceをお勧めしたいですか?
株式会社資生堂 リーガル・ガバナンス部 リーガル1グループ マネージャー 渡邉友美子
渡邉様 当社ビジネス部門からリーガル・ガバナンス部にレビュー依頼が来るケースでは、商品・サービスのコストや仕様を踏まえた“ビジネス判断”が必要なケースがあり、その都度、ビジネス部門とのやりとりに時間を要する場合が多いです。
弊社のリーガル・ガバナンス部に限らず、日常業務のなかに契約書業務が付帯するようなビジネス部門もLegalForceを導入することで全社的な効率化を図れると思います。
田村様 新しい契約書を起案するときには大量の文献・資料をあたり、複数の過去対応例に照らし合わせながら検討すると思いますが、そういうときは得てして「これで本当に大丈夫なのかな?」と、各人が不安を抱える状態になりがちです。LegalForceならばそうした不安も解消されることでしょう。
硬直しがちな企業法務を変えるツールとして、多くの法務部門に活用していただきたいです。
(取材日:2019年 10月8日)※掲載内容は取材当時のものです。