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広告のリーガルチェック(広告審査)とは?目的・関連法令・違反事例と手順を解説

広告のリーガルチェック(広告審査)とは?目的・関連法令・違反事例と手順を解説

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「広告って、出稿前にどこまで法律を意識すればいいの?」
「景品表示法や薬機法って、何からチェックすればいいの?」

そんな疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、広告のリーガルチェックについて、その目的や押さえておくべき関連法令、違反事例から具体的なチェック手順までわかりやすく解説します。

法令違反を未然に防ぐためのポイントや、社内外での効率的な審査体制の作り方もご紹介しますので、広告の適法性確保に取り組む方はぜひ最後までご覧ください。


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広告のリーガルチェック(広告審査)とは

広告のリーガルチェック(広告審査)とは、企業が出す予定の広告や販促物が、関連法令や業界ガイドラインに違反していないかを事前に確認する作業です。広告は、商品やサービスの魅力を伝える重要な手段である一方、誇大表現・虚偽表示・権利侵害などの法的リスクを伴う行為でもあります。そのため、多くの企業では、法務部門や弁護士による事前チェックを必須プロセスとして組み込んでいます。

リーガルチェックの対象となる広告・販促物は、以下のとおりです。

  • マスメディア広告:テレビCM、ラジオ広告、新聞広告、雑誌広告
  • デジタル広告:ウェブサイト広告、SNS広告、リスティング広告、動画広告
  • 販促資料:チラシ、パンフレット、カタログ
  • ダイレクト・マーケティング:メールマガジン、DM(ダイレクトメール)
  • イベント・キャンペーン告知:特典や景品を伴うプロモーション案内状

広告のリーガルチェックは、商品やサービスを安全に宣伝するための保険です。社内の法務担当や弁護士、企業法務に詳しい専門家が関わることで、広告表現の適法性を確保できます。

なぜ広告のリーガルチェックは必要なのか?

広告は、企業の魅力や商品・サービスの価値を伝える重要な手段である一方、景品表示法・薬機法・消費者契約法などの法律によって厳しく規制されています。本章では、3つの観点から、広告のリーガルチェックの必要性を解説します。

法令違反による罰則や課徴金を防げる

広告のリーガルチェックをおこなう最大の目的は、景品表示法や薬機法などの「法令違反」を未然に防ぎ、企業の信用と事業を守ることです。広告出稿後に違反が発覚すると、措置命令や課徴金(売上の3〜4.5%)が科されるほか、刑事罰の対象になる場合もあります

また、報道やSNSによる拡散で企業イメージが低下し、消費者からの返金請求や訴訟に発展するリスクも高まるでしょう。法令違反を防ぐためには、「広告表現」の法令適合性の専門的なチェックが不可欠です。リーガルチェックをおこなえば、法的リスクを回避し、企業の信用と事業を長期的に守れるでしょう。

企業イメージ低下や炎上リスクを回避できる

広告のリーガルチェックは、法令違反や不適切な広告表現によって生じる企業イメージ低下や炎上リスクを未然に防ぐために不可欠です。景品表示法や薬機法などの規制に違反すると、行政処分や課徴金だけでなく、消費者からの信頼喪失につながります

特に、誇大広告や虚偽表示などの広告表現は、SNSやメディアで瞬時に拡散され、企業のブランド価値を大きく損なう可能性があります。これは短期的な売上減少だけでなく、長期的な事業継続にも影響を及ぼすでしょう。

企業価値を守るためには、広告出稿前に法的な適合性と広告表現の適切性を徹底的にチェックし、炎上や信用失墜のリスクを最小限に抑えることが重要です。リーガルチェックは、企業の信頼とブランドを長期的に維持するための有効な手段です。

消費者トラブルや訴訟を未然に防げる

広告のリーガルチェックは、消費者トラブルや訴訟リスクを出稿前に断つ最短ルートです。誤解を招く広告表現や不当な表示を早期に発見・修正し、企業の対応コストとブランド毀損を防ぎます。虚偽・誇大な表示や重要事実の不告知は、クレーム、返金請求、損害賠償、訴訟に直結します。

景品表示法・薬機法・消費者契約法などの規制に抵触する広告表現は、法的違反だけでなく、消費者の信頼喪失も招きます。だからこそ、法務部門や弁護士による事前チェックが必要です。出稿前に法律・ガイドラインへ適合するよう修正すれば、苦情・返金・訴訟といった事例を未然に回避できます。

リーガルチェックを標準プロセスに組み込み、企業と消費者双方を守りましょう。

広告規制の主な法律と違反事例

広告には、商品の魅力を伝える役割と同時に、消費者を誤解させないための法的なルールが存在します。

本章では、広告作成やチェックを行う際に知っておくべき主要な法律と具体的なリスクと注意点を解説します。

  • 景品表示法
  • 薬機法
  • 健康増進法
  • 消費者契約法
  • 知的財産法(商標法・不正競争防止法など)
  • 金融商品取引法

 景品表示法

景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)は、広告や表示によって消費者が商品やサービスの品質・内容・価格などを誤って認識することを防ぐための法律です。特に、実際よりも著しく優良または有利に見せる広告表現を禁止しています。

消費者は広告や表示から商品・サービスを判断するため、誤解を招く広告があれば、適切な選択ができず、経済的損失やトラブルにつながります。そのため、景品表示法では優良誤認表示と有利誤認表示という2つの主要な表示規制を設け、企業の広告表現を制限しています。

以下は、景品表示法で禁止される代表的な広告表現の種類です。

  • 優良誤認表示(景品表示法5条1号
    実際よりも品質や性能が優れていると誤認させる広告
  • 「たった1か月で−5kg!」と効果を保証する(根拠なし)
  • 他社商品よりも性能が圧倒的に高いと断定する(事実と異なる)

  • 有利誤認表示(景品表示法5条2号
    実際よりも価格や条件が有利だと誤認させる広告
  • 「通常価格から50%OFF」と表示するが、実際には割引実績がない
  • 他社よりも価格や条件が有利と断言するが、裏付けがない

景品表示法は、広告チェックの中でも最も違反リスクが高い法律のひとつです。広告作成時は、効果や価格の表示が事実に基づいているかを必ず確認し、根拠資料を保存して再発防止に役立てましょう。

 薬機法

薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)は、医薬品等の品質・効果・安全性を確保するための広告規制法です。

医薬品等の広告で誤った情報を伝えると、消費者の健康被害や誤用のリスクが高まります。薬機法では虚偽広告・誇大広告を明確に禁止し、特に未承認製品の効能効果表示や医師などによる保証表現を規制しています。

薬機法が禁止する広告表現と違反事例は、以下のとおりです。

  • 虚偽・誇大広告(薬機法66条1項
    事実に反する、または根拠のない効能効果の表示
  • 「ガンが治るサプリメント」
  • 「当社比3倍の効能を持つ医薬品(根拠なし)」
  • 「必ず効果を発揮する○○病治療薬」

  • 医師等による保証表現(薬機法66条2項
    医療従事者が効能を保証しているように見せる広告

  • 「○○医師も服用中」
  • 「医師が推奨する化粧品」

  • 特定疾病用の医薬品・再生医療等製品の広告制限(薬機法67条
    がんや白血病など、政令で定める特殊疾病の治療に用いる医薬品や再生医療等製品は、医師等の指導下でなければ危害を生じるおそれが大きいため、一般消費者向けの広告は制限される
  • 「ガンが消えた」
  • 「白血病に効く」

  • 承認前の医薬品や医療機器・再生医療等製品の広告禁止(薬機法68条
    厚生労働大臣の承認または認証を受けていない製品について、名称・効能・性能等を広告することの禁止
  • 「バストアップに効果がある新薬(未承認)」
  • 「血糖値が下がる成分配合(承認前)」

薬機法違反は、景品表示法以上に罰則や社会的影響が大きく、広告表現の中でも特に注意が必要です。医薬品的効能をうたう広告表現は、対象が医薬品等に該当するかを必ず確認し、承認範囲内で作成しましょう。

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健康増進法

健康増進法は、国民の健康の保持・増進を目的として、食品の健康効果に関する広告表示を規制する法律です。消費者は、食品や健康商品に関する広告表示から効果や安全性を判断するため、事実と異なる広告表現があれば、消費者の誤認や健康被害につながる可能性があります。

健康増進法65条1項では、事実に相違する表示や、人を誤認させる表示を禁止しています。

健康増進法が禁止する広告表現と典型的な違反事例は、以下のとおりです。

  • 健康効果の誇大表示
  • 科学的根拠なく「食べるだけで糖質や脂質の吸収を抑える」
  • 信頼できるデータなしに「免疫力が向上し、病気から身体を守る」

  • 誤解を招く健康効果の断定
  • 根拠が不十分なまま「必ず血圧が下がる」
  • 実際の効果を大きく誇張した「短期間で体質改善が可能」

健康増進法は、食品や健康関連商品の広告表現において事実に基づいた適切な表示を求めています。企業は広告作成の段階でリーガルチェックを行い、違反による行政処分や企業イメージ低下を防ぐことが重要です。

消費者契約法

消費者契約法は、消費者と事業者の契約における不当な勧誘や誤解を招く広告表現を規制する法律です。消費者は、事業者と比べて情報や交渉力で不利な立場にあることから、事業者が広告や営業活動で虚偽の表示や重要な事実を隠す行為をおこなうと、消費者が誤って契約してしまう恐れがあります。

消費者契約法違反となる可能性がある広告・勧誘表現は以下のとおりです。

  • 断定的判断の提供
    将来の価格変動が不確実な金融商品を「必ず値上がりする」と広告する


  • 不利益事実の不告知
    不動産広告で、隣地に高層マンションが建設予定である事実を隠し、「日当たり・眺望良好」と表示する


  • 重要事実の不実告知
    実際には存在しない特典や効果をあるかのように表示する

消費者契約法に違反する広告は、契約の取り消しや企業イメージの低下につながります。広告作成時は、重要事実を正確に開示し、消費者が誤認しない説明体制を整えましょう。

知的財産法(商標法・不正競争防止法など)

知的財産法のうち、商標法や不正競争防止法は広告表現にも適用される重要な法律です。他社の商品名やロゴ、類似したデザインを無断で使用すると、商標権侵害や不正競争行為として差止請求や損害賠償請求の対象になります。

商標法は、登録商標を保護し、無断使用や類似表示を禁止しています。

不正競争防止法は、他社の周知・著名な「商品等表示」を使って混同を招く広告や、商品の原産地・品質・内容などを偽る表示を規制しています。

以下は、知的財産法違反となる恐れがある広告表現の例です。

  • 商標権侵害の可能性
    他社の登録商標と酷似した商品名やロゴを広告に使用し、消費者に混同させる


  • 周知表示混同惹起行為(不正競争防止法)
    他社で広く知られているブランド名やデザインを、自社広告で類似使用する


  • 原産地等誤認惹起表示(不正競争防止法)
    外国産原料を使用しているにもかかわらず、広告で「国産品」と表示する

知的財産法違反は、訴訟や損害賠償だけでなく、企業ブランドの信用低下にも直結します。広告に使う名称やデザインは、事前に権利関係を調査し、類似・混同の恐れがある場合は代替案に切り替えましょう。

<関連記事>法務がおさえたい知的財産権の基本|知財の種類・実務に役立つ資格など

金融商品取引法

金融商品取引法は、資本市場の公正と投資家保護を目的に、金融商品取引業者の広告を厳しく規制する法律です。この法律では、金融商品取引業者(例:証券会社)が広告を出す際、商号・登録番号・損失リスク・手数料などの法定事項の表示を義務付けています。(第37条)また、事実と異なる表示や、利益を誇張する広告、損失補填を約束する行為を禁止しています。(第38条

金融商品取引法違反となる恐れがある広告表現は、以下のとおりです。

  • 虚偽表示
    元本保証のない金融商品を「元本保証」と宣伝する


  • 重要事項の不記載または過小表示
    高リスクな金融商品の損失リスクを広告に明記しない


  • 誤認を招く利益強調
    将来の価格上昇や高配当を断定的に保証する広告

金融商品取引法の広告規制に違反すると、行政処分や企業イメージの失墜につながります。金融商品の広告では、法定表示とリスク説明を明確に記載し、利益を断定する表現は避けましょう。

広告関連法令ごとの罰則とペナルティ

広告関連法令に違反すると、単なる行政指導だけでなく、課徴金や刑事罰などの厳しい処分が科される場合があります。特に広告は一般消費者に広く配信されるため、違反が発覚すれば迅速に拡散され、企業の信用失墜や経済的損失につながります。

ここでは、広告と関係が深い主要な法令ごとに、違反時の罰則やペナルティの内容について詳しく解説します。

景品表示法の罰則・ペナルティ

景品表示法に違反すると、事業者は行政指導から課徴金、罰金まで、段階的かつ厳しい処分を受ける可能性があります。特に2024年10月の改正で、課徴金制度の強化と直罰規定の導入により、違反リスクはさらに高まりました。違反した場合、事業者に対して改善命令や経済的制裁が科され、場合によっては刑事罰の対象にもなります。

景品表示法違反に対する代表的なペナルティは、以下のとおりです。

  • 区分1:行政指導
  • 内容:
  • 軽微な違反や改善可能な行為に対して、消費者庁・都道府県が改善を促す
  • 将来違反につながる可能性がある場合の警告も含む行政指導
  • 2024年10月改正の影響:制度変更なし

  • 区分2:行政処分(措置命令など)
  • 内容:
  • 違反行為の中止、誤認排除(新聞公示等)
  • 再発防止策の実施を命令
  • 2024年10月改正の影響:制度変更なし

  • 区分3:課徴金納付命令
  • 内容:
  • 違反商品の売上額の3%を課徴金として納付
  • 過去10年以内に命令歴がある場合は4.5%に増加
  • 2024年10月改正の影響:増額措置が追加

  • 区分4:直罰規定
  • 内容
  • 優良・有利誤認表示に対し100万円以下の罰金を科す
  • 課徴金との併科も可能
  • 2024年10月改正の影響:新設(2024年10月施行)

参考:消費者庁|【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要

景品表示法違反は、軽微なケースでも行政指導、重大な場合は課徴金や罰金まで科される可能性があります。改正後は再犯時の課徴金率引き上げや直罰規定により、ペナルティの重さが増しているため、広告出稿前の徹底したリーガルチェックが不可欠です。

薬機法の罰則・ペナルティ

薬機法に違反すると、事業者だけでなく個人も対象となる厳しい処分が科される可能性があります。

薬機法違反で科される主な処分は、以下のとおりです。

  • 区分1:行政指導
  • 内容:
  • 違反広告の修正や取り下げ命令
  • 報告書の提出指示
  • 主な適用条件違反状態の是正が可能な場合

  • 区分2:行政処分(措置命令など)
  • 内容:
  • 行為の中止命令
  • 再発防止措置
  • 公示命令
  • 主な適用条件:誇大広告禁止・承認前広告禁止に違反

  • 区分3:課徴金納付命令
  • 内容:
  • 課徴金=対象期間の取引総額の4.5%(225万円未満は対象外)
  • 主な適用条件:誇大広告禁止に違反

薬機法違反は、金銭的損失に加えて企業の社会的信用にも深刻なダメージを与えます。効能・効果の表示は承認内容と根拠を必ず確認しましょう。

健康増進法の罰則・ペナルティ

健康増進法に違反した広告表示は、消費者庁や地方自治体からの指導・勧告、命令、さらに刑事罰まで科される可能性があります。特に虚偽や誇大な健康効果表示は、迅速かつ厳格に対応されます。

  • 区分1:行政指導
  • 内容:
  • 関係機関が違反広告を改善するよう求める措置
  • 軽微な違反や改善可能な場合に実施
  • 法的根拠:第66条1項

  • 区分2:勧告
  • 内容:
  • 虚偽・誇大表示などが国民の健康や情報提供に重大な影響を与えるおそれがある場合、改善を求め公表する
  • 法的根拠:第66条1項

  • 区分3:命令
  • 内容:
  • 勧告に従わなかった場合に発令。改善措置を義務付ける
  • 法的根拠:第66条2項

  • 区分4:刑事罰
  • 内容
  • 命令違反に対し、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金
  • 法的根拠:第71条

健康増進法違反は、単なる是正指導にとどまらず、勧告・命令・刑事罰と段階的に処分が強化されます。広告制作の段階で根拠のない健康効果表示を排除し、事実に基づく表現にすることが、法的リスクと社会的信用失墜の回避につながるでしょう。

消費者契約法の罰則・ペナルティ

消費者契約法は刑事罰を直接規定していませんが、違反があった場合には契約の取り消しや不当条項の無効化など、民事的なペナルティが科されます。

消費者契約法違反で科される主な処分は、以下のとおりです。

  • 区分1:取り消し権
  • 内容:
  • 不当勧誘(虚偽説明・不利益事実の不告知など)による契約は消費者が取り消し可能
  • 法的根拠:第4条

  • 区分2:不当条項の無効化
  • 内容:
  • 損害賠償責任の免除、取消権の放棄、高額な違約金などは無効
  • 法的根拠:第8〜10条

  • 区分3:損害賠償請求
  • 内容:
  • 違反による損害は民法に基づき請求可能
  • 法的根拠:民法

広告や勧誘での虚偽表示・重要事実の不告知は契約取り消しの対象です。契約前に重要事項を正確に開示し、誤認を招く表現を避けましょう。

知的財産法(商標法・不正競争防止法など)の罰則・ペナルティ

知的財産法は、企業やブランドの信用、そして消費者の正しい選択を守るため、商標の無断使用や不正競争行為に対して厳しい罰則・ペナルティを規定しています。広告の場合でも、商標やブランド名、商品形態の使用について第三者の権利を侵害すれば、刑事罰のほか民事上の差止請求・損害賠償請求の対象になります。

知的財産法違反で科される主な処分は、以下のとおりです。

  • 商標法
  • 違反行為:商標権侵害(偽ブランド販売や広告)
  • 刑事罰(個人):10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、またはその併科(商標法78条
  • 刑事罰(法人):3億円以下の罰金(両罰規定:商標法82条

  • 不当競争防止法
  • 違反行為:営業秘密侵害(不正取得・開示等)
  • 刑事罰(個人):10年以下の懲役または2,000万円以下の罰金、またはその併科(不競法21条
  • 刑事罰(法人):5億円以下の罰金(両罰規定:不競法22条

  • 違反行為:その他の行為(混同惹起・著名表示冒用など)
  • 刑事罰(個人):5年以下の懲役または500万円以下の罰金、またはその併科(不競法21条
  • 刑事罰(法人):3億円以下の罰金(両罰規定:不競法22条

特に広告は公に広く配信されるため、侵害が発覚しやすく、リスクも高まります。出稿前のリーガルチェックで必ず権利関係を確認しましょう。

金融商品取引法の罰則・ペナルティ

金融商品取引法は、金融業者による広告や勧誘行為にも厳格なルールを定めており、違反時には刑事罰、行政処分、課徴金などの多層的なペナルティが科されます

広告で金融商品取引法違反で科される主な処分は、以下のとおりです。

  • 区分1:行政処分
  • 違反行為:虚偽広告、リスク不開示など
  • 罰則内容:業務改善命令、業務停止命令

  • 区分2:課徴金納付命令
  • 違反行為:不正勧誘または虚偽広告など
  • 罰則内容:高額な課徴金を納付(事案ごとに算定)

金融商品広告は「必ず儲かる」「リスクなし」などの表現が禁止されており、法定表示(登録番号、商号等)や損失リスクの明示が義務付けられています。違反時には刑事罰のほか行政処分・課徴金が科され、法人にも影響するため、チェック体制の強化が求められます。

広告のリーガルチェックの流れ

広告のリーガルチェックを行う際は、広告審査の受付・広告内容のチェックと調整・広告の出稿といった流れで進められるのが一般的です。ここからは、それぞれのステップで行う業務内容について解説します。

広告審査の受付

広告のリーガルチェックは、まず広告案の受付から始まります。企業の法務部門などのリーガルチェックを担当する部署が中心となり、審査が必要とされる広告案を受け付けます。

案件を受け付ける際には、以下の情報を併せて収集することで、関連法令やガイドラインなどの調査が容易になり、対応がスムーズになります。

  • 広告掲出予定日
  • 掲出媒体
  • 対象商品・サービス
  • 訴求ポイント
  • 想定されるターゲット層
  • その他の関連情報

審査対象となる広告案が多い場合は、案件管理システムや申請フォームを導入して受付窓口を一本化、審査状況を可視化するなど、効率的な審査体制を整備することが望ましいです。

広告内容のチェックと調整

広告案を受け付けた後は、法務部門の担当者や顧問弁護士などによって内容が審査されます。広告の対象となる商品・サービスや掲出する媒体に応じ、景品表示法・消費者契約法・薬機法・健康増進法・不正競争防止法などの法令やガイドラインを参照して、違反に該当する内容の有無を確認します。

ここで重要なのが、単に法令に違反する・しないだけでなく、消費者に誤解を与えかねない表現はないか、炎上リスクはないのかまで総合的に確認することです。もしも問題点があった場合には修正を依頼します。

再提出された広告案を再びチェックし、法令違反や炎上するリスクが排除された際には、広告の出稿へと進みます。

広告の出稿

リーガルチェックや修正を経た広告案は、担当者が出稿手続きを行います。リーガルチェックで修正指示が出された箇所について、正確に改善されているか最終確認を実施し、問題がないと判断されたら出稿します。

なお、広告を出稿できた段階でリーガルチェックの関連業務が完了するわけではありません。出稿後であっても、社会情勢の変化や法改正、新たな判例の出現などによって、法令違反や炎上リスクが発生する場合もあるためです。出稿後、問題が生じた際も迅速に対応できるよう、監視体制の確立および事実確認、関係省庁への報告、広告の差止め・修正、プレスリリースなどの対応フローの整備を行い、法務部門の体制を整えておくことが重要です。

広告のリーガルチェックにおける注意点

広告のリーガルチェックを行う際には、次の4つのポイントについて注意しておく必要があります。

関連法令を網羅的に確認すること

広告のリーガルチェックを行うにあたって、関連法令の確認もれには厳重に注意する必要があります。広告には、景品表示法や消費者契約法、薬機法、金融商品取引法などさまざまな関連法令がありますが、出稿する広告の内容や対象となる製品によっては、該当する業法に関しても確認する必要があります。

どの法令が関連するのかすべて洗い出した上で、確認もれが生じないように網羅的にチェックし、法令違反のリスクをできる限り押さえることが推奨されます。

複数法令が同時に適用される代表的なパターンは、以下のとおりです。

  • 医薬品の広告:薬機法+景品表示法
  • 金融商品の広告:金融商品取引法+景品表示法
  • 食品の広告:健康増進法+景品表示法
  • ブランド名やロゴを使用する広告:知的財産法+不正競争防止法

単独の法令だけで判断せず、複数の法令を横断的に確認することで、違反リスクを最小化できます。

ガイドライン・解説資料も活用する

広告のリーガルチェックでは、法律の条文だけでなく、所管官庁が公表するガイドラインや解説資料も必ず参照することが重要です。法令の条文だけでは広告表示の適否が判断しづらい場合が多く、実務での適用範囲や判断基準が不明確な場合もあります。

具体的なガイドラインの活用例は、以下のとおりです。

  • 景品表示法:景品表示法関係ガイドライン(消費者庁)
  • 薬機法:医薬品等の広告規制について(厚生労働省)
  • 健康増進法:健康増進法(誇大表示の禁止)(消費者庁)
  • 金融商品取引法:法令・指針等(金融庁)

ガイドラインやQ&A、パブリックコメントの回答などには、広告表現に関する具体例や禁止基準が整理されているため、法律違反やトラブルの予防につながります。

複数人によるチェックで客観性を確保する

広告のリーガルチェックは、複数人でおこなうことで判断の客観性を高め、法律違反や炎上のリスクを減らせます。一人だけで広告内容を審査すると、景品表示法や薬機法などの規制判断が主観に偏りやすいためです。複数人で広告表現を確認すれば、異なる視点が加わり、より正確に問題を把握できます。

具体例は、以下のとおりです。

  • 法務部門・マーケティング部門・顧問弁護士が合同で広告チェックを実施
  • 対象商品やサービスごとに適用法令(例:景品表示法、薬機法、消費者契約法など)を確認
  • 消費者に誤解を与えるおそれのある表現を共有し、修正方針を協議
  • 最終承認前に再チェックして違反リスクを除去

複数人での広告チェックは、法令適合性を確保するとともに、企業ブランドと消費者との信頼関係を守る重要なプロセスといえるでしょう。

保守的な視点でグレーゾーンを回避する

広告のリーガルチェックでは、少しでも違反や炎上の可能性がある広告表現は、保守的な視点で排除・改善することが重要です。グレーゾーンの広告表現は、景品表示法や薬機法などの法律違反と断定できなくても、消費者の誤解や企業イメージ低下を招くリスクがあるためです。

広告は商品やサービスの魅力を伝える手段ですが、表現方法によっては法的トラブルやブランド毀損につながりかねません。グレーゾーンとして注意すべき広告表現の例は、以下のとおりです。

  • 法令違反とまではいえないが、効果や効能の表示が過剰な広告表現
  • 消費者が価格や条件を有利と誤解する可能性のある広告表示
  • 他社の権利に抵触する可能性がある名称やデザインの使用
  • 代替可能な広告表現がある場合の高リスクワードや表現の差し替え

広告チェックでは、法務部門や弁護士がわずかなリスクでも見逃さず指摘し、社内で検討の場に載せる姿勢が求められます。保守的な対応こそが、企業の信用と消費者との信頼関係を守る最善策です。

広告リーガルチェックで法令遵守と信頼を確保しよう

広告リーガルチェックは、景品表示法や薬機法、健康増進法などへの違反や、消費者トラブル、炎上による企業ブランドの失墜を未然に防ぐために欠かせないプロセスです。しかし、複数の法令や業界ガイドラインを横断的に確認するには、法的知識だけでなく、時間と労力も必要です。

特に広告出稿数が多い企業やスピードが求められるプロジェクトでは、人的リソースだけで精度を保つのは容易ではありません。課題の解決には、AIやリーガルテックを活用した効率化が有効です。

広告表現を自動でチェック・指摘するサービスを導入すれば、作業時間を短縮しつつ、違反やリスクの見落としを防げます。多数の広告案件を抱える場合や、スピード感を持ちながらもチェック精度を高く保ちたいときは、ツールの活用を検討するとよいでしょう。

LegalOnは、AIテクノロジーを駆使し、法務業務を広範囲かつ総合的に支援する次世代のリーガルテックプラットフォームです。契約書のレビュー業務をAIが支援するほか、必要な業務を支援するサービスを選んで導入できるため、初めてリーガルテックの導入を検討する方にもおすすめです。

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