診断書ごとの具体的な保存期間
健康診断は大きく一般健康診断と特殊健康診断に分類されます。一般健康診断は一般的な業務に従事する労働者が対象で、雇入時の健康診断、定期健康診断などがあります。特殊健康診断は特定の業務に従事する労働者を対象にしたもので、例えば有機溶剤を日常的に取り扱う業務に従事する労働者や放射線の管理区域に立ち入る労働者を対象にしたものなどがあります。これらの健康診断の診断結果(個人票)の保存期間は以下のように定められています(一部抜粋)。
- 一般健康診断個人票
定期健康診断:5年間(労働安全衛生規則第51条)
雇入時健康診断:5年間(労働安全衛生規則第51条) - 特殊健康診断個人票(例)
有機溶剤健康診断:5年間(有機溶剤中毒予防規則29条)
鉛健康診断:5年間(鉛中毒予防規則54条)
電離放射線健康診断:30年間(電離放射線障害防止規則57条)
石綿健康診断:40年間(石綿障害予防規則40条)じん肺健康診断:7年間(じん肺法17条2項)
参考:厚生労働省東京労働局「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」
その他の診断書
その他の診断書(例:病欠や休職に関する診断書)については、法律で明確な保存期間は定められていません。ただし、以下の考え方が一般的です。
- 労働基準法第109条に準じて5年間保存
「その他労働関係に関する重要な書類」の1つとして、5年間保存することが推奨されています。 - 製造物責任法に関連する診断書
該当することはまれですが、製品を引き渡してから10年間保存することが望ましいとされています。これは、製造物責任法の除斥期間(10年)に対応しています。
上記はあくまで一般的な考え方であり、企業の業種や状況によっては、より長い期間の保存が必要となる場合があります。具体的な保存期間については、専門家(弁護士、社会保険労務士など)に相談することをおすすめします。
診断書とは?
診断書とは、医師が患者の健康状態や病歴を記録し、診断結果を公式に証明する文書です。この書類には、病名、症状、治療方針、予後などが詳細に記載されており、会社の休職手続きや保険の申請などで重要な役割を果たします。
診断書の内容は用途によって異なり、例えば休職の場合は「就労の可否」や「治療期間」、保険金請求では「手術の有無」や「入院期間」が記載されることがあります。
なぜ保管が必要なの?
従業員の診断書の保管は、企業にとって以下の理由から非常に重要です。
- 法的義務の遵守
労働安全衛生法などの法律により、診断書の保管期間が定められています。これを遵守しない場合、罰則が科される可能性があります。 - 従業員の健康管理
診断書は従業員の健康状態を把握し、適切な労働環境を提供するための大事な情報源です。特に、定期健康診断の結果は、従業員の健康リスクを早期に発見し、対策を講じるために役立ちます。 - 労働災害や健康問題の証拠
労働災害が発生した際や、従業員が健康問題を訴えた際に、診断書は重要な証拠となります。これにより、適切な対応が可能となり、後々のトラブルを防ぐことができます。 - 企業の信頼性向上
診断書を適切に保管し、従業員の健康管理に努めることは、企業の信頼性を高める要因となります。従業員が安心して働ける環境を提供することは、企業の評価にもつながります。
診断書の適切な保管は、法的義務の遵守だけでなく、従業員の健康管理や企業の信頼性向上にも寄与する業務です。企業はこれを怠ることなく、しっかりとした管理体制を整えることが求められます。
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効率的な書類保存管理の方法
日々増え続ける書類を適切に管理するには、以下の3つのステップが有効です:
- 自社独自の保存基準を作る
- その基準に従って書類を分類する
- 分類した書類を適切な方法で保存する
まず、会社全体で統一した基準を作り、全従業員に周知することが大切です。保存期間がはっきりしない書類は、「長期」「短期」などに大まかに分け、後で再分類するとよいでしょう。
書類の保存方法には主に3つあります
- 社内の書庫や倉庫を使う
メリット:すぐに取り出せる
注意点:紛失や無断持ち出しを防ぐ仕組みが必要 - 社外の倉庫を借りる
メリット:社内のスペースを節約できる
注意点:書類を取り出す際に時間がかかる - 書類をデータ化・電子化する
メリット:保管スペースとコストを削減でき、検索も簡単
書類を電子化すれば、業務効率を大幅に向上させることができます。自社に最適な方法を選び、効率的な書類管理を目指しましょう。
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診断書を取り扱う際の注意点
個人情報の取り扱い
診断書には極めて機密性の高い個人情報が含まれているため、慎重な取り扱いが不可欠です。以下の点に特に注意が必要です。
- 個人情報保護法を遵守し、適切な管理体制を構築する
- 個人情報の重要性と取り扱い方法について定期的に教育を行う
- 診断書へのアクセス権限を必要最小限の人員に限定する
- 診断書の閲覧や複写に関する記録を残し、追跡可能な体制を整える
紛失・盗難対策
診断書の紛失や盗難を防ぐため、以下の対策を講じることが大事です。
- 施錠可能な専用キャビネットや保管庫で保管する
- 電子データの場合は、暗号化やパスワード保護を徹底する
- 診断書の持ち出しや複写に関する厳格なルールを設ける
- 定期的な棚卸しを実施し、保管状況を確認する
- セキュリティの高いクラウドストレージの利用も検討する
廃棄時のルール
保存期間を過ぎた診断書を廃棄する際は、以下のルールを遵守してください。
- シュレッダーによる裁断や溶解処理など、確実な方法で廃棄する
- 電子データの場合は、復元不可能な方法で完全に削除する
- 廃棄作業は複数人で行い、相互チェックを徹底する
- 廃棄の日時、方法、担当者を記録し、適切に保管する
その他の注意点
- 電子化による保管を検討し、業務効率化とコスト削減を図る
- 社外倉庫の利用も選択肢の一つとして考慮する
- 自社独自の保存基準を定め、基準に沿って書類を分類・整理する
これらの注意点を徹底することで、診断書の安全な管理と個人情報の保護が可能となります。
診断書の管理体制を見直しましょう!
会社において診断書の適切な保管は、法令遵守と個人情報保護の観点から極めて重要です。保管期間は診断書の種類によって異なり、関連法令に基づいて定められています。保管方法としては、書面と電子データの両方があり、それぞれの特性に応じた管理が必要です。
個人情報の取り扱いには、個人情報保護法に基づき、不正アクセス、漏洩、滅失、毀損の防止に努める必要があります。また、保管期間を過ぎた診断書の廃棄は、適切な手順を踏んで安全に管理しましょう。
これらの注意点を守り、適切な管理体制を構築することで、診断書の安全な保管と効率的な運用が可能となります。従業員教育を通じて、継続的な改善を図り、自社の診断書管理体制を見直してみてはいかがでしょうか。
従業員の診断書をはじめとする社内文書を適切に管理することは、当該部門の職責にとどまらず、コーポレートガバナンスという経営視点においても非常に重要です。また、単に保管すればよいのではなく、必要に応じてすぐに利活用できるようにしておくことも求められます。文書管理を含めた法務実務を効果的にDXするためには、プラットフォーム型のリーガルテックを導入することがおすすめです。LegalOn Cloudは、AIテクノロジーを駆使し、法務業務を広範囲かつ総合的に支援する次世代のリーガルテックプラットフォーム。契約書管理を含めたあらゆる法務業務をAIがカバーできるほか、自社にとって必要なサービスを選んで導入することも可能なため、初めてリーガルテックの導入を検討する方にも最適です。
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