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AIファースト時代の法務部門マネジメント 契約書レビューから人材育成までの最新実践ガイド

AIファースト時代の法務部門マネジメント 契約書レビューから人材育成までの最新実践ガイド
この記事を読んでわかること
    • AIによる役割分担の明確化
    • 法務マネージャーの新たな責務
    • 法務部門の質的向上へのシフト

ここ数年、法務部門でも「AIを試しに使ってみた」という声が増えています。契約書レビューへの生成AIの活用など、日常業務の一部が変わり始めました。こうした動きは一過性の流行ではなく、今後の法務の働き方を根底から変える可能性を秘めています。今や「AIを使うかどうか」ではなく、「AIを前提にどのように法務部門をマネジメントするか」を考えるAIファースト時代に突入しています。

この変化の中で、法務部門にはリスク管理の要としての役割を保ちつつ、経営の意思決定を支える戦略的パートナーとしての役割の強化がますます求められています。本記事では、法務マネージャーを対象に、AIに任せる領域と人が担う領域を整理し、契約書レビューの運用、ナレッジ共有、人材育成・評価まで、今日から実務に活かせるポイントを提示します。

AIによる法務業務の変化 

本題に入るにあたり、まずはAIによって法務業務がどのように変化しているのかを確認する必要があります。AIの活用が進んでいる領域と、依然として人間の役割が不可欠な領域を明らかにすることで、今後のマネジメントに求められる視点をより的確に捉えることができます。

AIが得意とするのは「定型的でルールベースの業務」です。

  • 契約書レビューにおける定型条項の確認やリスク抽出
  • 条項照会や過去契約との比較
  • 法令や判例の検索
  • 英文契約の翻訳

といった領域で、すでに実務レベルで活用が進んでいます。これにより作業時間の削減や効率化が可能になっています。

一方で、AIに任せられない、AIが不得意な領域があります。例えば、

  • 企業戦略に関わる複雑な法的助言
  • 経営陣や事業部門との利害調整
  • 社会的評価やレピュテーションを踏まえた判断
  • 不確実性の高い状況でのリスクテイク

といった領域は、依然として人間の経験や洞察力が欠かせません。AIが定型業務を担うことで、法務部員全員が戦略法務に取り組める体制が現実のものとなりつつあり、これをどう実現していくかがマネジメントの大きな課題となります

AIファースト時代に変わるマネジメントの全体像

このような変化を踏まえ、マネージャーはどのように役割を変化させるべきでしょうか。具体的に人材マネジメントと実務マネジメントの両面から整理します。

(1)人材マネジメントの5領域

  • 採用AIファースト時代には、従来のスキル要件に加えて、交渉力や倫理判断、レピュテーション感度といった数値化しにくい資質を見極めることが重要です。面接の場では、キャリア形成の機会や部門の成長ビジョンを提示し、「この法務部で働きたい」と思わせる役割を担わなければなりません。特にAIを前提とした環境で育った若い世代は、AIが仕組み化された組織におけるキャリア機会や成長ビジョンに共感しやすい傾向があります。

  • 人材育成かつての法務部の教育方法は、実務を積み重ねることで感覚を磨く“1000本ノック”型のOJTが主流でした。しかしAIの進化により、教育方法も変わりつつあります。例えばAI が自動生成した複数の契約書案を用い「どこがリスクか」「なぜそう判断したのか」を短時間で比較検討する演習が可能になっています。判例検索や専門知識へのアクセスも容易になったため、単なる知識の詰め込みよりも判断プロセスを論理的に言語化できる力を養うことが重視されています。

  • 評価AIの導入により業務量や処理時間といった客観的データが可視化され、これまで曖昧だった評価基準を裏付ける客観的な指標が得られるようになりました。これにより、精度の高い人事評価体制を構築できる可能性が広がっています。もっとも、AIが提供するデータは数量的な観点に偏りがちです。評価の公平性や説得力を高めるためには、交渉力やリスク感度といった質的要素、さらに経営への価値貢献や他部門との戦略的連携も、評価に組み込む必要があります。

  • メンタルケアとエンゲージメント
    AIの高度化によって、「AIに仕事を奪われるのではないか」というAI不安(
    AI Anxiety)に加え、生産性指標の可視化に伴う監視感、AI出力を検証し説明する負担、スキルが陳腐化する速度への焦りなど、AI特有の心理的ストレスが生じやすくなっています。これらは、評価の仕方や成果の出し方が型にはまり、指標に合わせる事自体が目的化してしまう恐れがあります。挑戦や学習の意欲を下げる要因となり得ます。これに対しては、評価を件数や速度に偏らせず、品質・リスク低減・改善提案といった貢献を適切に反映させることが有効です。AIの検証・レビューに要する時間を正式な業務として見積もり、目標設定に織り込むことも重要です。あわせて、AI利用ルールとログの扱いを明確化し、過度なモニタリングと受け取られない運用を徹底します。さらに、相談や学習の拠点となる役割を設け、定期的な振り返りと失敗共有を通じて心理的安全性を高めます。3〜6か月のリスキリング計画と業務内学習時間の確保により、将来像を描ける環境を整え、エンゲージメントの維持・向上につなげます。部下の意欲やメンタル低下を招く恐れがあります。部下の個性や志向に合わせた動機づけを行い、部下が自らの判断力や洞察力を磨ける場を整え、信頼関係を築くことが求められます。

  • 組織風土づくりAI時代において重要なのは、変化に適応し続けられる組織文化です。変化を恐れず、新しい知識やツールを学び合う文化を醸成できるかどうかが、部門の成長を左右します。ナレッジ共有や成功事例の発信を自然に行える雰囲気を整えることも、マネージャーの重要な役割です。

(2)実務マネジメントの5領域

  • リーガルストラテジー設計力AIは過去の判例や契約事例を分析し、高精度の叩き台を示すことができますが、どのような法務戦略を描くかはAIにはできません。法務マネージャーには、事業構造や市場の規制環境を読み解き、経営戦略と整合する最適なリーガル・ストラテジーを構築する力が求められます。

  • 業務進捗管理AIが定常業務の進捗を可視化するようになり、従来型のマイクロマネジメントは不要になる場面も出てきます。しかし、部下が仕事を完遂できるよう導き、質の高いアウトプットを引き出すためには、適切なハードル設定やリソース確保、関係部署との調整といったマネージャーの役割が引き続き重要です。

  • 係構築と合意形成力AIが記録や要約を担っても、経営層や他部門、外部専門家との信頼関係の構築や本音のやり取りはできません。信頼関係を土台に、リスクを分かりやすく共有し、合意形成を進める役割もますます重要になります。

  • 例外処理・法対応突発的なトラブルや訴訟対応ではAIが情報収集を支援しますが、リスクを取るか否かの戦略的判断は人間の領域です。AIに任せられないこの局面でこそ、マネージャーの価値は一層高まります。

  • 業務改善法務部門の生産性と付加価値を高めるには、ナレッジを継続的に共有し学び合う環境と、それを支える仕組みが欠かせません。契約類型や対応方針をプレイブック化したり、Q&A集やFAQを整備したりすることで、知識が属人化せず部門全体で活用できます。さらにAIと連携させれば、必要な知識を誰でも即座に参照できる体制を整えることが可能です。こうした仕組みを実務に根付かせるには、リーガルテックの導入を含め、実務に即した運用設計や関係部署との調整をマネージャーが主導することが重要です。

おわりに

AIファースト時代の法務部門マネジメントとは、単に効率化を追い求めることではありません。人材育成や組織文化の醸成、そして実務の再設計を通じて、法務部門の役割を質的に高めていく営みです。

確かに、多くの定型的な作業はAIに任せられるようになってきました。しかし、人間だからこそ果たせる役割も残されています。例えば、経営や事業の文脈を踏まえた判断、他部門や経営層との信頼関係をもとにした合意形成、そして予測できない事態への対応といった領域です。法務マネージャーには、AIの力を活用しつつ、これらの領域をリードしていく姿勢が求められます。

これからの法務部門に問われるのは、効率化で生まれた時間や資源をどう活かすかです。AIを前提とした新しい働き方を取り入れながら、経営に信頼され、組織に選ばれる法務部門を築いていくことが、未来に向けた大きな価値となるでしょう。

NobishiroHômu編集部

この記事を書いた人

NobishiroHômu編集部

世界水準の法務AI「LegalOn」を提供する株式会社LegalOn Technologiesの、「NobishiroHômu-法務の可能性を広げるメディア-」を編集しています。

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