なぜ契約書の「管理」が重要なのか
企業活動のあらゆる取引において「契約」が取り交わされ、その内容を証するために締結される 「契約書」ですが、なぜ締結後の契約書を管理する必要があるのか、 管理の重要性について十分に理解していますでしょうか。
ここでは、契約書の「管理」がなぜ重要なのか、企業のリスクマネジメントや業務効率化の観点から解説していきます。
リスクマネジメント
契約書を管理する上での最大の目的は、リスクマネジメントです。
取引相手との「ルールブック」である契約書には、多くのルール(契約条件)が定められており、それに基づき取引が行われます。
取引相手がルール違反をした場合など紛争(トラブル)が起こった時に、契約書に記載の「このルールに違反している」旨を取引相手に示して、 契約書のルールに基づいて損害賠償の請求や、契約の解除といった措置をとって、自社を守ることができます。
しかし、契約書管理が不十分ですぐに契約書を確認できないような状況では、取引相手とトラブルが発生した際に正確にルール違反の指摘を行うことができず、 また、そもそもルール違反に気が付くことができずに、必要な措置をとれず、自社の利益を損ねてしまうリスクが生じます。
また、契約書が紛失した場合や、保管のセキュリティーが不十分だった場合などでは、取引内容や契約条件といった重要な情報が外部に漏洩してしまうリスクも生じてしまいます。
業務効率化
契約書を適切に管理しておくことで、全社的な業務効率化につながることが期待できます。
企業活動においては、以下のように、過去の契約書を確認したい場面が出てきます。
- A社との過去の契約内容を確認したい
- 他の部門でB社とどのような契約を締結しているか確認したい
- C社との契約内容を変更するため、どのような契約内容であったか確認したい
- 退職者のDさんが担当していた契約内容を確認したい
契約書を適切に管理していれば、これらのケースでも、取引相手に迷惑をかけることなく(隙を見せることなく)、 また、契約書を探す時間・手間もとらず、スピード感を持って対応することができ、大幅な業務の効率化となります。
また、契約書を適切に管理していることで、全社横断的な情報共有が可能となり、正確に契約内容を把握した上で適切な営業活動などができるため、 売上や利益に直結する可能性も大いにあります。
契約書の管理方法
契約書管理の重要性を説明してきましたが、そもそも、どのような状態であれば「適切に管理できている」と言えるのでしょうか。
言い換えれば、どの程度の管理を行うことで、リスクマネジメントや業務効率化の効果を得ることができるのでしょうか。
ここでは、具体的にどのように契約書を管理すべきか、管理の方法を解説していきます。
契約書情報の一覧化・共有
契約書管理でまず大切なことは、必要な契約条項や契約書に関する情報を 「確認したいときにすぐ確認できる状態」にしておくことです。
つまり、検索性が高い状態にしておくことで、契約リスクを把握したり、重要な営業機会の獲得につなげることが可能になります。
検索性を高くするために必要なのが、契約情報を見やすく一覧化し、かつ、それを必要な部門・担当者に共有しておくことです。
そうすることで、「確認したいときにすぐ確認できる状態」を構築し、全社的な認識の共有を行うことができます。
有効期間の管理・定期的な棚卸
契約書には原則として有効期間が定められています。
有効期間の終了日や、自動更新の有無について的確に把握していなければ、取引の継続ができなくなる、また、 取引終了予定の契約が自動更新によって継続してしまう、などのリスクが生じます。
契約書の有効期間を随時漏れなく確認できるようにしておくことで、必要に応じた措置 がとれるようになるため、有効期間の管理は非常に重要です。
また、有効期間の管理と同時に、今現在有効な契約とすでに終了している契約、残存条項により効力が残っている契約条項などを定期的に棚卸ししておくことで、 その後の契約書管理を効率化することもできます。
閲覧の制限
契約情報を共有することも重要ですが、「誰でも見られる状態」にしておくと、情報漏えいリスクがあるため、注意が必要です 。
契約書情報の閲覧についてアクセス権限の設定を行うなど、契約書ごとに「必要な人」が、「確認したいときにすぐ確認できる状態」にしておきましょう。
契約管理体制の構築
契約書の管理をする際、最も重要で、かつ手間がかかるのが、管理ルールや管理体制の構築です。
管理ルールや管理体制を構築し、そのルール、体制にしたがって締結済み契約書、新規の契約書を管理していくことで社内の契約書管理が適正化されていきます。
ここでは、契約書の管理ルールや管理体制を構築する流れ、および実施すべき事項を解説します。
1.契約書管理部門の選定
まずは、契約書管理を主導して、管理ルールや管理体制を構築する責任部門(責任者)を選定します。
この責任部門については、企業規模やフェーズなどで、適任となる部門が違います。
契約書審査も担当している法務部門が契約関連業務として行うこともあれば、押印作業を担当する総務部門が行うこともあります。
契約書管理部門を選定したら、ルール・体制づくりを進めていきます。
2.契約書管理台帳の作成
契約書管理のルール・体制づくりのためには、「契約書管理台帳」を作成する必要があります。 契約書管理台帳は、契約書の内容、有効期間、原本保管場所などを管理するための帳簿です。
この契約書管理台帳の作成は、以下の方法で行われることが一般的です。
- Excelなどの表計算ソフトに入力
- 契約書管理システムに入力、電子データを登録
どのような方法で作成するかは、契約書管理の規模(契約書の量)などに応じて適宜選択しましょう。
台帳には、契約書管理において必要な項目を記載しますが、一般的には以下の項目などを記載します。
- 契約書タイトル(契約書の類型)
- 当事者名
- 契約の有効期間
- 自動更新の有無
- 契約書原本の保管場所
台帳に記載する項目が決まったら、それらを、いつ、誰が入力するのかについて、ルール・体制を構築します。
3.締結済み契約書の台帳登録と原本のファイリング
「契約書管理台帳」の作成に関するルール・体制が構築できたら、締結済みの契約書を台帳へ登録していきます。
台帳への登録は、すべての締結済み契約書を対象にするのが理想ですが 、契約書の数が多い場合は時間がかかり、登録担当者に大きな負担がかかります。 登録作業が適切に行われないと、登録情報に不足が生じたり、登録漏れが発生して、契約書管理が不十分になってしまいます。 登録作業まで見据えた、契約書管理台帳のルール・体制の構築が重要です。
また、台帳に登録した契約書について原本がある場合は、その原本の保管(ファイリング)も必要です。
台帳との突合がしやすいよう、原本も検索性の高いファイリングを行いましょう。
具体的には、契約相手ごとにボックスファイルを作成し、その中に各契約書が入ったクリアファイルを入れていく、などのファイリング方法が考えられます。
以上が、具体的な契約書の管理ルールや管理体制を構築する流れとなります。
特に、「③締結済み契約書の台帳登録」における台帳登録作業は多くの時間・労力がかかりますが、 事前に締結済みの契約書を電子化し、ペーパーレスで管理しておくことで、その負荷を大幅に軽減することが可能です。
契約書の電子化・ペーパーレス管理については、以下の記事で解説しています。
<関連記事>
契約書のペーパーレス管理とは?エクセルとクラウドストレージを用いた簡単な作例
この記事のまとめ
企業活動において欠かせない「契約書」ですが、リスクマネジメントや業務効率化のためには、 契約書の作成やレビューだけではなく、契約書の「管理」も非常に重要です。
契約書が管理できている状態とは、「必要な人」が、「確認したいときにすぐ確認できる状態」であり、 それを実現するためには、適切な契約書の管理ルールや管理体制を社内で構築することが重要です。
「LegalForceキャビネ」は、契約書管理をスマートにする、AI契約書管理システムです。締結済みの契約書を放り込むだけで、OCRで全文テキストデータ化し、AIが管理台帳を自動生成するので、過去の契約書がすぐに見つかります。契約書の管理工数と探す時間を限りなくゼロにしながら、スマートな契約書管理を実現します。
おすすめ資料を無料配布中!
「契約書管理担当者のための契約書管理の手引き」をダウンロードする