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【2025年最新】生成AIと著作権:リスク管理と安全利用のポイント

【2025年最新】生成AIと著作権:リスク管理と安全利用のポイント
この記事を読んでわかること
    • 生成AIの概要
    • 生成AIと著作権の関係
    • 生成AIによる著作権侵害を避けるためのポイント

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インターネットとAIの技術の発展により、日常生活でもChatGPTやGeminiなどの生成AIを気軽に使えるようになってきています。生成AIは、膨大な著作物を学習することで、高品質な生成物のアウトプットを実現しており、この点において著作権法上の対応は不可欠です。一方で、生成AIにおける技術の進展は目覚ましく、法整備が追いついていない面もあります。

この記事では、生成AIの基礎知識と、生成AIの利用に関連する著作権の問題について、最新情報を交えて解説します。

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生成AIとは

生成AIとは、インターネットなどから得られた膨大なデータを学習し、新たなコンテンツを生成するAI技術の総称です。人工知能の発展、インターネットから膨大なデータを取得できるようになったことなどを背景に、2020年代から一般人でも気軽に扱えるようになるほど、身近な存在となったテクノロジーです。ChatGPTやGeminiをはじめとした、多種多様な生成AIを利用したサービスが開発されており、画像や文章、音声などさまざまなものが生成されています。

従来のAIとの違い

従来のAIは、与えられた学習データをもとに決められたタスクを実行(自動化)することが主な機能です。ですから、生成物はあくまでも既存コンテンツの枠組みから、外れることはありませんでした。一方で生成AIは、学習した情報から指示された内容にマッチしたオリジナルコンテンツを生成物として生成します。

生成AIの種類

2020年代に入って生成AIが注目されるようになり、2025年時点で数多くの生成AIが開発されています。それらを4つの種類に分類して解説します。

テキスト生成AI

テキスト生成AIとは、大量のデータを学習し、与えられた指示(プロンプト:自然言語による指示文 など)や推論に基づいて新たにテキストコンテンツを生成する生成AIを指します。Google ChromeやMicrosoft Edgeなど、ブラウザにも搭載されている機能であり、自分の疑問に沿った回答を出力してくれます。

代表的なテキスト生成AIは以下のとおりです。

  • GPTシリーズ
  • Gemini など

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画像生成AI

画像生成AIとは、欲しい画像イメージをプロンプトなどで指示することで、オリジナルの画像を生成するAIを指します。人物画から抽象画まで、幅広いジャンルの画像の生成に対応している反面、生成した画像が既存の著作物との類似性・依拠性が高いと判断された場合、AIで生成したものが著作権侵害になる恐れもあります。

代表的な画像生成AIは以下のとおりです。

  • Stable Diffusion
  • DALL·E 3
  • Midjourney
  • Craiyon など

動画生成AI

動画生成AIは、欲しい動画イメージをテキストや画像を使用して指示することで、オリジナルの動画コンテンツを作成してくれる生成AIを指します。高度な技術を要するため、2025年時点ではテキスト生成AIや画像生成AIほどの精度を実現することは難しいですが、今後技術が発展していくとともに進化が期待されている分野でもあります。

代表的な動画生成AIは以下のとおりです。

  • Sora
  • Runway Gen-2 など

音声生成AI

音声生成AIは、人間の音声データを学習させることで、新しい音声を作成できる生成AIを指します。特定の人物の音声データを多く取り込むことで、ただ指定された文章を読み込むだけでなく、感情を付け加えた音声にも対応可能です。

代表的な音声生成AIは以下のとおりです。

  • VALL-E X など

生成AIと著作権

生成AIはオリジナルコンテンツを効率的に作成できる便利なツールです。しかし、生成物を作成するために、他の作品やコンテンツを学習する必要があるため、生成物の利用方法によっては、著作権侵害を引き起こすリスクがあります。例え生成AIの出力が、意図せず著作権を侵害していた場合でも、法的措置がとられるリスクは否定できません。そのため、生成AIを使用する場合は、著作権に関する法的リスクを認識し、慎重に利用することが重要です。

ここでは、著作権の概要と生成AIが作成した生成物と著作権の関係について解説します。著作権侵害を犯した場合のペナルティについても解説しているので、著作権に関するリスクを把握したい人は参考にしてみてください。

著作権とは? 概要と侵害時のペナルティ

著作権は著作物(思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの(著作権法2条1項1号))を保護し、その利用を制限・管理するための権利のことを指します。著作物の作者が、自分の作品を無断で使用されないようにすることを目的に作られた権利であり、以下のような創作物が著作権の対象になります。

  • 文学作品:小説、詩、論文、脚本など
  • 音楽作品:楽曲、歌詞、編曲など
  • 美術作品:絵画、彫刻、イラストなど
  • 建築:建築物、設計図など
  • 写真:芸術性のある写真など
  • 映画:映画、アニメ など
  • コンピュータプログラム:ソフトウェア、アプリなどのソースコードやプログラムの表現

著作権を侵害した場合にとりうる法的措置

著作物を許諾なく利用された場合著作権者は以下のような法的措置を利用者に対してとることができます。

法的措置の例について以下に説明します。

  • 損害賠償請求
  • 差止請求
  • 名誉回復等の措置請求

差止請求

該当する作品の利用の差し止めを請求する措置です。また、侵害しようとしている者に対して予防を請求することもできます(著作権法112条)。 

損害賠償請求

著作権侵害によって発生した損害を賠償請求できます。損害額の計算式は事案によって異なりますが、著作権法においては以下の3つの算定方法が定められています。

  1. 侵害者が譲渡した複製物の数量×著作権者が本来得られたはずの単位数量当たりの利益の額(著作権法114条1項)
  2. 侵害者が侵害行為によって受けた利益の額(著作権法114条2項)
  3. 著作権者が権利を行使することによって得られるはずだった金銭の額(著作権法114条3項)

名誉回復等の措置請求

著作権の侵害により、多くの人に作品が著作権侵害者の著作物であると誤解されて伝わってしまった場合等、著作権者は侵害者に対して名誉回復するための措置請求ができます。名誉回復等の措置の請求内容は個別の事情に応じて異なりますが、「新聞やホームページなど、名誉毀損が発生した媒体で謝罪広告を掲載する」請求が多いです。

生成AIが作った作品に対する著作権は認められていない

著作権法は「人間の思想または感情を創作的に表現したもの」を著作物の対象にしているため、原則として生成AIによる作品には著作権が認められていません。

ただし、生成AIの生成物を元に独自の工夫や表現を加える、プロンプトに独自の意図や工夫を盛り込むなど、利用者の創作性が十分に認められる場合には、著作権が発生する可能性があります。生成AIに関する著作権については2025年現在、法整備が追いついていない面があり、判例の蓄積もないため、生成AIの生成物の取り扱いについては、著作権に関する最新情報をキャッチアップし、適切に対応していくことが必要です。

生成AIの活用と法的トラブル

生成AIの活用方法や生成物によっては、著作権侵害に発展する可能性があります。

生成AIに関する著作権トラブルを避けるためには、侵害に該当する可能性があるケースを把握しておくことが大切です。生成AIを活用する際に、以下のような著作権侵害の事例を避けることで、生成AIを安心してビジネスに活用できます。

著作権侵害の要件

生成AIが制作した生成物が、既存の著作物に対して以下の要件を全て満たしている場合、著作権侵害に該当する可能性があります。

  • 既存の著作物に対して類似性がある
  • 既存の著作物に対して依拠性(学習データ(著作物)におけるAIの依拠またはプロンプトにおけるユーザーの依拠)がある
  • 著作物利用の権限を受けていない

指示内容や参考にする学習データの偏り方によっては、既存の作品を少し改良した生成物を提示してくるケースも少なくありません。

利用規約に違反している

生成AIツールによっては、利用規約で商業利用や著作物の編集が禁止されている場合があります。利用規約に違反した場合、ツールの提供会社から損害賠償等の利用規約違反を問われる可能性があります。さらに、利用規約に違反したまま著作権侵害を訴えられると、作者とツールの開発会社、双方から損害賠償を求められる事態に発展する恐れもあります。生成AIツールを使用する際には、利用規約をよく確認してから活用してください。

生成AIで著作権侵害を防ぐためのポイント3選

生成AIで著作権侵害しないためには、生成物をそのまま活用するのではなく、他の作品と同一性が出ないように、独自の要素を再編集することを意識する必要があります。ここでは、生成AIで著作権侵害しないために運用する際のポイントを3つ解説します。

利用者に生成AIの適切な活用方法をレクチャーする

従業員が生成AIを活用して業務を実施する場合に法的トラブルに発展しないよう、生成AIの利用における注意点を研修などを通じて社員教育することをおすすめします。生成AIにおける著作権侵害に関するルールは、文化庁から資料が公開されているため、活用することをお勧めします。

参考:令和5年度 著作権セミナー AIと著作権

社内ルールやガイドラインを作成する

社内で多くの従業員が生成AIを使用する場合、会社全体で生成AIに関する法的リスクに備えるためにも、社内ルールやガイドラインを作成することをおすすめします。ルールがガイドラインを作成する際は、以下の項目を記載する必要があります。

  • 作成した目的
  • 生成AIの概要
  • 利用方法
  • 生成時の注意事項
  • 生成AIの法的事項

生成AI利用に関するガイドライン等の作成時には、著作権だけでなく、商標権や意匠権などに関する法的事項についても記載することが一般的です。

テンプレートを配布!ChatGPTの利用に関する社内ルールと注意点

生成物をそのまま使用しない

生成AIによる生成物をそのまま使用してしまうと、著作権侵害となるリスクがあるだけでなく、生成物に関する著作権が認められない恐れがあります。そのため、生成AIで作成した生成物は、あくまでも自分でコンテンツを制作するための素材や参考として、活用することをおすすめします。

侵害リスクのある類似要素を排除するよう指示する

生成物がどうしても既存の作品と似てしまう場合は、似ている要素を排除するように生成AIに指示することをおすすめします。類似する要素を排除することで、他の情報ソースを参照し、オリジナル性の高い生成物を作りやすくなります。

生成AIを使用する範囲を限定する

読者のペルソナの作成や指定された数値情報のグラフ化など、生成AIを使う範囲を限定すると、著作権侵害リスクを軽減できます。膨大なデータを分析してもらい、分析結果を自分で制作するオリジナルコンテンツに活かすような運用を心がけると、効率的な運用が実現可能です。

生成AIをうまく活用するには著作権への配慮が必要不可欠

この記事では、生成AIの基礎知識と、生成AIが引き起こす著作権の問題について解説しました。生成AIの活用は業務の効率化を助けてくれる反面、著作権侵害を引き起こす危険性を秘めています。安全に生成AIを活用するためには、著作権に常に気を配り、社員教育などを通じて全社的な適切な利用を促進していくことが重要です。

こうしたリスクへの配慮を前提に、AIを取り入れた法務業務の高度化を図るには、実用性と安全性を両立したツールの導入が欠かせません。

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NobishiroHômu編集部
執筆

NobishiroHômu編集部

 

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