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造作譲渡契約とは?居抜き物件に必要な契約書の書き方と注意点を解説

造作譲渡契約とは?居抜き物件に必要な契約書の書き方と注意点を解説
この記事を読んでわかること
    • 造作譲渡契約の概要やスケルトン物件との違い
    • 造作譲渡契約書の役割と記載事項
    • 造作譲渡契約のメリット
    • 契約書に記載する項目や注意点

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造作譲渡契約は居抜き物件を契約する際、店舗の内装や設備、什器などの造作物を次の借主へ譲渡する際に結ぶ契約です。賃貸契約とは別に締結され、新旧の借主それぞれにメリットがあります。

退去や開業コストを大幅に抑えられる一方、契約の不備が原因で、トラブルに発展することも少なくありません。

今回は造作譲渡契約の基本から、契約書の役割や記載項目、注意点まで詳しく解説します。

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造作譲渡契約とは?

造作譲渡契約は店舗物件の賃貸借契約とは別に締結される、独立した契約です。一般的に新旧のテナント間で交わされる契約ですが、前のテナントが造作物を貸主に譲渡している場合には、貸主と新テナントとの間で締結されます。

なお基本的に、賃貸借契約の終了時には原状回復が必要です。造作譲渡契約を結ぶ前には、通常は貸主の許可が必要となります。その造作がリースである場合など第三者の所有物である場合は、所有者の承諾を得る、事前に所有者から購入するなどして造作の所有権を取得しておく必要もあります。

造作譲渡契約を結ぶと、新借主は初期投資を抑えて短期間で開業でき、前借主は造作物を現金化できるうえに原状回復費用の負担を軽減して退去できます。前借主が使用していた内装や設備を新借主に引き継ぐことで、双方にメリットをもたらす契約です。

スケルトン物件との違い

賃貸テナントには大きく分けて「スケルトン物件」と「居抜き物件」の2種類があります。

スケルトン物件は内装がない状態で貸し出される物件で、借主は一から内装工事を行う必要があります。また退去時には原状回復義務があり、すべての内装や設備を撤去して元の状態に戻さなければなりません。

一方居抜き物件は、前借主が使用していた内装や設備がそのまま残された物件です。これらの造作物を活用することで、開業までの期間とコストを大幅に削減できます。

造作物を引き継ぐために必要になるのが、造作譲渡契約です。

造作譲渡契約の目的

造作譲渡契約は法的な権利関係を明確にし、トラブルを防止するための契約です。ビジネス上の譲渡のため、金額や所有権の所在などを取り決めます。

造作譲渡契約を交わさないと、どの造作物が譲渡対象なのか、価格や支払い方法はどうなるのか、故障した場合の責任は誰が負うのかといった重要な事項が明文化されません。こうした取り決めがないと、あとで深刻なトラブルに発展する危険もあります。

また前述のように、造作譲渡を行うには原則として物件オーナーの承諾が必要です。造作譲渡契約書において原状回復義務の承継関係を明確にすると同時に、別途書面で物件オーナーの許諾を得るか、造作譲渡契約書に物件オーナーの承諾を示す記名押印を得るなどして、その承諾を明確にしておくかいずれかの対応が必要です。

造作譲渡契約のメリット

造作譲渡契約は、譲渡する側と譲受する側のそれぞれに大きなメリットがあります。

譲渡する側(退去者)にとっては、原状回復工事が不要になることで、大きなコスト削減となります。また造作物を売却することで現金を得られること、原状回復工事に要する時間も削減できるので退去完了までの時間を短縮できることもメリットのひとつです。特に、賃貸借契約において借地借家法33条に基づく造作買取請求権を排除する特約がある場合、本来であれば貸主である物件オーナーに対して造作買取請求権を行使できませんが、造作譲渡契約によって実質的には譲渡する側は譲受する側に対して造作買取請求権を行使できると同義ですので、この点でもメリットがあります。

一方譲受する側(入居者)は、初期投資を大幅に削減できることが最大の魅力です。内装工事費や設備購入費を抑えることで、コストと工事期間が大きく短縮されます。同業種の店舗であれば、既存の設備をそのまま活用し、効率的に営業できるのも利点です。

さらに使用可能な設備を有効活用するので、廃棄物を減らし、環境負荷の軽減にもつながります。

造作物の対象範囲

なにを造作物とするかは契約によって異なりますが、一般的には以下のものが該当します。

  • 厨房設備
  • 空調設備
  • 排気設備
  • 通信機器
  • 天井や壁などの内装
  • テーブルやイスなどの什器 など

ただしリース品扱いには注意が必要です。そのまま使用する場合には、契約を引き継ぐか、リース会社から買い取る必要があります。

リース品の扱いについては、後ほど詳しく見ていきましょう。

造作譲渡契約書の記載事項

造作譲渡契約を締結するには、造作譲渡契約契約書の作成が必要です。造作譲渡契約書には、主に以下の事項が記載されます。

  • 物件所有者・貸主の承諾獲得
  • 譲渡する造作物のリスト
  • 造作譲渡料
  • 支払い期日と方法
  • 引き渡し期日
  • 支払い遅延時の対処方法
  • 契約解除条件
  • 退去時の原状回復の有無や範囲
  • 契約不適合責任(売主の債務不履行責任)

譲渡物件の詳細は、最も重要な項目です。譲渡する造作物を詳細にリスト化し、品名や数量、状態、価格を明記します。項目が多岐にわたる場合は別紙として譲渡項目書を作成し、契約書本文で参照してください。

また造作譲渡料や支払い条件では、総譲渡価格や支払い方法、期日などを明確に定めます。支払い遅延時の対処方法やキャンセルの条件も記載されます。

引き渡し条件として、引き渡し日、引き渡し場所、引き渡し方法を記載します。

そのほか契約不適合責任の範囲や期間、危険負担の所在など、必要に応じて項目を決めます。

造作譲渡契約書の役割

造作譲渡契約における契約書の役割について、もう少し詳しく見ていきましょう。造作譲渡契約書には主に、以下の4つの役割があります。

  1. 譲渡契約を結んだことの証明
  2. 原状回復義務を定める
  3. 会計処理上の必要書類として
  4. 契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)を明確化する

それぞれ詳しくまとめました。

1. 譲渡契約を結んだことの証明

造作譲渡契約書は、第一に譲渡契約の証明書です。対象物の譲渡価格や譲渡項目を明確にし、所有権の所在などを取り決めます。

造作譲渡契約書では造作物それぞれの状態や数量、価格を明記します。不要な造作物が譲渡された場合にも、造作譲渡契約書があれば、処分費用などのトラブル防止に役立ちます。

また期日までに引き渡しが実行されなかった場合などに備え、キャンセル料や契約解除条件を定めておくものです。

2. 原状回復義務を定める

造作譲渡契約書には、原状回復義務に関する責任の所在も記載されます。前述のとおり、賃貸テナントには原状回復義務があります。退去時には物件を、引き渡し時と同じ状態に戻さなければなりません。

しかし造作譲渡契約を結ぶと、基本的には原状回復義務は物件の新しい借主である次のテナントへ引き継がれます。

新しいテナントは将来的に原状回復義務を負う一方、調理機材やテーブル・椅子といった設備を流用できるというメリットがあります。

3. 会計処理上の必要書類として

会計処理上の書類としても、造作譲渡契約書は重要な役割を果たします。譲渡される側の借主にとって、譲渡された設備が固定資産に該当する場合、減価償却の基準とするためには造作譲渡契約書が必要になります。

また前借主も、固定資産評価額を上回る価格で売却した場合は、所得として計上する必要があります。どちらの立場においても、造作譲渡契約書は重要な会計資料となるのです。

4. 契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)を明確化する

物件を売買する際、対象の物件に欠陥が見つかった場合には、売り手が責任を問われます。

2020年4月の民法改正により、「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」は「契約不適合責任」と変更されました。(民法第562条~566条、商法第526条)契約不適合責任とは譲渡された造作物が、契約内容に適合しない場合に、買主が売主に対して修補請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除などを求める権利のことです。

改正前は売主が気づいていない「瑕疵」があった場合に責任を負うとされていましたが、改正後は「契約内容に適さない」欠陥はすべて責任が問われる可能性があるのです。

造作譲渡においては通常、現状での引き渡しとなります。譲受者は事前に十分な現状確認を行い、問題を承知した上で契約する必要があります。つまり物件に欠陥があった場合でも、造作譲渡契約書に契約不適合責任を負わない旨が明記され、合意の上で造作譲渡契約を交わした場合には、譲渡者はその責任を問われないのです。

ただし譲渡者が故意に隠した欠陥が見つかった場合は、責任を負わなくてはいけません。

譲渡する造作物のなかに故障しているものはあるか、その修繕費用はどうするかなども、造作譲渡契約書に詳しく記載してください。

造作譲渡契約の注意点

店舗の賃貸借契約では一般的に原状回復が義務付けられているので、物件オーナーからの承諾を得ずに造作譲渡を行うことはできません。承諾なしに行われた造作譲渡は契約違反となる可能性があります。

トラブルを避けるためにも、物件オーナーからの承諾は口頭ではなく、必ず書面で取得してください。

また前述のように、造作物の中にリース品が含まれている場合には、特に注意が必要です。造作譲渡契約におけるリース品の扱いは、主に以下の3つにわけられます。

  • リース品を撤去するリース契約を中途解約する際は旧テナントに残債の一括支払い義務があります。リース会社が設備を引き取る契約の場合は、旧テナント側が撤去費用を負担する必要はありません。次の入居者がリース品を使用しない設備については、この方法が最も適しています。
  • リース会社に料金を精算し、買い取る旧テナントがリース会社から所有権を取得した上で、他の造作物と併せて買主(新テナント)へ譲渡する方法です。旧テナントは、リース品の買い取り相当額を売却価格に上乗せすることで、買取費用を回収します。ただしリース品の買取は、造作譲渡契約より前に済ませなければなりません。造作譲渡を受ける新テナントとしては、売却益を得てからリース品を買い取るという順番にしたいところですが、それではリース会社は承諾しない可能性が高いです。
  • リース契約を引き継ぐ新借主がリース契約を引き継ぐ場合、新借主が、残りのリース料を支払います。またリース会社の審査や名義変更手続きが必要です。ただし買取り希望者にとってリース品の支払いは借金と同じなので、あまり推奨されません。

造作物にリース品がある場合、トラブルのないよう処理することが重要となります。

まとめ

造作譲渡契約は、居抜き物件を活用して店舗開業を行う方法のひとつです。譲渡する側は原状回復費用を削減して造作物を現金化でき、譲受する側は初期投資を大幅に抑えての早期開業を実現できます。

契約時は物件オーナーの承諾取得や契約不適合責任の取り扱いなどの確認が必要です。手続きに不備があると、深刻なトラブルに発展する可能性があります。きちんとした契約書を用意し、必要に応じて、専門家のアドバイスを受けてください。

適切な契約を結ぶことでトラブルを防ぎ、実りの多い造作譲渡契約が実現できるのです。


ここまでのように、造作譲渡においてはさまざまな契約リスクが潜在的に存在します。リスクを抜け漏れなくあぶり出し、適切な契約を締結するためにはAIによるリーガルチェックの支援が非常に効果的です。LegalOn Cloudは、AIテクノロジーを駆使し、法務業務を広範囲かつ総合的に支援する次世代のリーガルテックプラットフォームです。あらゆる法務業務をAIがカバーできるほか、サービスを選んで導入できるため、初めてリーガルテックの導入を検討する方にもおすすめです。

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NobishiroHômu編集部
執筆

NobishiroHômu編集部

 

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