契約書ひな形とは
契約書ひな形とは、契約書作成において基本となるテンプレートを指します。
一般的な契約条項や必要事項があらかじめ記載されており、個々の取引内容に応じて随時修正・追加を行うことで、効率的に契約書を作成可能です。定型的な取引、発生頻度の高い契約において、とくにその効果を発揮します。
契約書ひな形を作成するメリット
契約書ひな形を作成する主なメリットは、次の3点です。
- 業務効率を大幅に向上できる
- 契約書の品質を担保できる
- 交渉で有利な立場を確保しやすい
業務効率を大幅に向上できる
契約書ひな形を活用すれば、一から契約書を作成する手間がなくなり、業務効率が大幅に向上します。
ひな形を活用して契約書作成プロセスを効率化できれば、ドラフトの作成・送付にかかる時間を短縮でき、契約交渉をスピーディに進められる点も大きなメリットです。
契約書の品質を担保できる<
契約書ひな形を用意しておくことで、担当者の人的要因に関わらず、契約書の品質を一定程度担保可能になります。
法務担当者が複数人いる場合、これまでの経験によって品質に差が出ることもあります。業務が属人的になってしまうと、異動や退職時の影響は少なくありません。一方でひな形が整備されていれば、契約時のチェックリストとしても働き、対応の抜け漏れも防止できます。
交渉で有利な立場を確保しやすい
自社における契約書ひな形は通常、過去の契約交渉で得られた多くの知見、成功事例や失敗事例などをふまえて作成されます。そのため、自社にとって最適な取引条件が形となったものと言っても過言ではありません。
契約書のベースが自社に最適化されていることから、契約交渉でも有利な立場を確保しやすくなるでしょう。
契約書ひな形を入手する方法
契約書ひな形を入手するためには、次にあげる4つの方法が用いられます。
- オンラインでの入手
- 書籍からの入手
- 法律事務所や専門家からの入手
- リーガルテックサービスからの入手
オンラインでの入手
インターネット上には、無料で利用できる契約書ひな形が多数公開されています。法務省や経済産業省などの公的機関が提供しているほか、法律系の専門サイトがテンプレートを提供していることも少なくありません。
無料でダウンロードできるものも多く、気軽にひな形を手に入れたい場合にはおすすめの方法ですが、公的機関が公開しているものを除き、必ずしも内容が適切であるとは限らない点に注意が必要です。オンラインで入手する場合、情報が古い、自社には合わない内容が記載されているといったリスクもふまえて利用してください。
書籍からの入手
契約書作成に関連する実務書であれば、契約書ひな形が多数収録されている場合があります。専門家の監修・執筆のため信頼性に長けており、解説を読むことができるのもメリットです。
一方、出版時期によっては情報が古いこともあり、最新の法令に合わせて修正が必要なこともあります。
法律事務所や専門家からの入手
法律事務所や弁護士などの専門家に作成を依頼すれば、信頼性が担保されており品質に申し分ありません。自社の事業や取引形態などに合わせた、柔軟なカスタマイズも可能です。
単にひな形を作成してくれるだけでなく、専門的なアドバイスも得られる点が心強いでしょう。
一方、依頼費用が高額になることも考えられるため、コストを抑えたい場合にはおすすめできません。
リーガルテックサービスからの入手
オンライン上で気軽に入手したい一方で、品質が高く信頼できるひな形を探している場合は、リーガルテックサービスの活用がおすすめです。
リーガルテックサービスの中にはで契約書ひな形が多数用意されているものがあり、それらをダウンロード、カスタマイズすることで、簡単に自社の契約書ひな形を用意できます。専門家への依頼と比較しコストパフォーマンスに優れ、最新性、信頼性も高いことが特徴です。
例えば、AI法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」の「LegalOnテンプレート」サービスでは、数千点以上もの契約書を含む企業文書のひな形を利用可能です。各利用シーンに合わせたテンプレートは、最新の法令・ガイドラインを反映しているため、法改正に対しても即座にキャッチアップできるでしょう。
自社に合ったひな形の作り方
外部から入手したひな形は自社の事情にあった修正や条文の追加など、カスタマイズすることが望ましいです。自社に合った契約書ひな形を作成するには、次の5点を押さえることが重要です。
- 必要な契約類型の洗い出し
- ベースとなるひな形の入手
- 自社の基準に則したカスタマイズ
- 適法性の確認・顧問弁護士のリーガルチェック
- 運用ルールの整備と運用
必要な契約類型の洗い出し
契約書ひな形を作成するためには、自社の事業で必要とされる契約類型を把握しなければなりません。雇用契約、売買契約、業務委託契約、機密保持契約(NDA)など、事業を展開する上で欠かせない契約について洗い出す必要があります。
ベースとなるひな形の入手
先に解説した通り、契約書ひな形はさまざまな方法で入手可能です。そのため、公的機関や書籍、リーガルテックサービスなど複数のソースを比較し、自社に合ったベースとなるひな形を入手してください。
業界独自の規制、慣習なども考慮したひな形を入手できれば、カスタマイズにかかる負担も抑えられます。
自社の基準に則したカスタマイズ
ベースとなるひな形は、自社の事業内容等に合わせてカスタマイズしなければなりません。支払いや納期といった取引条件、責任の範囲や損害賠償についてなど、自社の事情や業界の商慣習などを踏まえて自社仕様に変更してください。
適法性の確認・顧問弁護士のリーガルチェック
自社の基準に合わせたカスタマイズを行ったら、変更内容に法的矛盾やトラブルリスクがないかリーガルチェックを行います。
最新の法令やガイドラインに沿っているか、自社にとって不利になる条項はないかといった点を、顧問弁護士にリーガルチェックしてもらうことで、トラブルが発生するリスクを最大限カットできます。
運用ルールの整備
契約書ひな形は、作成して終わりではなく、運用ルールを整備してから社内で共有することが大切です。
契約書の作成にはじまり、審査や締結、契約書の保管、更新に至るまでのプロセスで、どのようなルールで運用するか定めてください。
契約書ひな形に記載すべき事項
契約書ひな形を作成する際、記載すべき事項について2つの類型を例に紹介します。
取引基本契約の例
取引基本契約の契約書では、契約の目的や取引条件などに加え、両者の権利義務関係を明示しなければなりません。具体的には、次の項目を中心に記載してください。
- 契約当事者
- 契約の目的
- 取引条件(納期、納入場所、検収方法など)
- 代金の支払い(支払時期、支払方法)
- 所有権の移転時期
- 品質保証
- 契約期間
- 解除事由
- 損害賠償
- 秘密保持
- 反社会的勢力の排除条項
コンサルティング契約の例
コンサルティング契約で使用するひな形では、提供するサービス内容と範囲を具体的に定義することが欠かせません。次にあげるような事項を記載し、トラブルが発生するリスクを抑えます。
- 業務内容
- 成果物の定義
- 報酬(金額、支払時期、支払方法)
- 機密情報の取り扱い
- 知的財産権の帰属
- 責任の範囲と制限
- 契約期間
- 解約条件
契約書ひな形を作成する時の注意点
契約書ひな形を作成する際は、次の2点に注意が必要です。
- 社内での周知徹底と運用体制の構築
- 定期的なメンテナンスを欠かさない
社内での周知徹底と運用体制の構築
契約書ひな形を社内で正しく利用するために、社内での周知や管理体制の構築は欠かせません。権限設定をはじめ、バージョン管理、運用状況のモニタリングなどについて体制を整備してください。
法務部門以外で使用する場合は、特に利用に際しての具体的な説明や研修が必要です。それぞれの部門に合った運用方法や注意点を共有し、円滑に活用できるよう後押しします。
定期的なメンテナンスが必要
契約書ひな形は、一度作って終わりではありません。自社の事業状況や法改正などによって、内容を更新し続ける必要があります。
最新の法令を遵守できているか、業界標準と矛盾はないか、社内規定に則った内容かといった点を、定期的に見直してください。
運用する中で見つかった改善点についても、定期的な更新・修正時に盛り込んでおくことをおすすめします。
使いやすい契約書ひな形のヒント
契約書ひな形を使いやすくするためには、次の3点を押さえておく必要があります。
- 変更が必要な箇所を最小限にする
- 非法務部門でも見つけられる検索性を確保する
- 使用ガイドラインの作成と周知
変更が必要な箇所を最小限にする
実際に使用する際、変更する箇所が少ないひな形の方が、より効率的に契約書を作成できます。また、作成時のミスも少なくなるでしょう。
変更が必要な箇所は色分けしておく、太字にしておくなど、どこの変更が必要なのかわかりやすくしておくことも重要です。よくある代替文言例も用意しておけば、迷わず契約書を作成できます。
非法務部門でも見つけられる検索性を確保する
契約書の作成時、すぐにひな形を見つけられるような検索性も重要です。法務部門以外の人間であってもわかりやすいように、取引類型や金額などの視点でタグ付け・カテゴリー分けしておくと探しやすくなります。
より検索性を高めたい場合、全文検索機能を利用できる契約管理システムがおすすめです。例えば、AIを活用した契約管理システム「LegalForceキャビネ」やLegalOn Cloudの「コントラクトマネジメント」であれば、契約書本文中の表内の文字まで検索でき、探している契約書をすぐに取り出せます。
使用ガイドラインの作成と周知
契約書ひな形を誰でも活用できるように、わかりやすいガイドラインとその周知が欠かせません。ガイドラインでは、次にあげるような内容を解説しておくと安心です。
- ひな形を選択する際の基準
- カスタマイズが必要な範囲
- 契約時に必要な承認フロー
FAQ形式で解説するほか、実際の作成例なども記載すると、よりわかりやすくなるでしょう。
法務DXには統合型リーガルテックの活用を
高品質で効率的な法務サービスの提供には、法務DXは必須です。一方で、ただ闇雲にリーガルテックを導入するだけではコストに見合う成果は得られません。LegalOn Cloudは、AIテクノロジーを駆使し、法務業務を広範囲かつ総合的に支援する次世代のリーガルテックプラットフォームです。あらゆる法務業務をAIがカバーできるほか、サービスを選んで導入できるため、初めてリーガルテックの導入を検討する方にもおすすめです。
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