ナレッジマネジメントツールとは
「ナレッジマネジメント」とは、組織に必要な情報が蓄積され、体系的に整理されているほか、ナレッジとして活用されている状態を指します。
たとえばある社員の法務ナレッジがツールなどに蓄積され、それを他の社員が活用できる状態のことを言います。これにより、業務知識を持つ人が増加し、タスク管理が容易になり、企業の生産性を向上させることにつながります。
「ナレッジマネジメントツール」とは、ナレッジマネジメントを容易に行えるよう支援するシステムです。ナレッジマネジメントツールは、法務のほか人事・労務、営業部門と幅広い部署で活用が期待されています。
ナレッジマネジメントツールの重要性
ナレッジマネジメントツールは、現代のビジネス環境において不可欠な役割を果たします。企業内に散在する膨大な情報やノウハウを集約し、必要な時に誰でもアクセスできる状態にすることで、業務の効率化やリスク管理の向上が実現します。
以下で具体的な効果を説明します。
人材育成
ナレッジマネジメントツールは、社員一人ひとりのスキル向上に大きく寄与します。
ナレッジマネジメントツールを活用すると、業務の手順や専門知識、過去の成功例や失敗例など、社内にある知識を体系的に蓄積できます。これにより、社員が学ぶべき情報が整理され、効率的な学習環境が整います。
必要な情報に社員がいつでもアクセスできるため、上司や先輩の手を借りなくても、自主的にスキルアップできる仕組みが生まれます。これは、自主学習の文化醸成や社員のモチベーション向上にもつながります。
また、従来のOJTや集合研修ではカバーしきれない細かい知識や事例も、ツールを使えば記録・共有可能です。結果として、教育の網羅性が向上し、新人からベテランまで幅広い層に役立ちます。
属人化防止
ナレッジマネジメントツールは、業務に必要な情報やノウハウを一元管理します。特定の社員だけが持つ知識・スキルをツールに集約し、他の社員も活用できるようにすることで、属人化を防ぎます。
特定の担当者が不在のときや退職する場合でも、ツールに蓄積されたナレッジをもとに、他の社員が業務を引き継げます。これにより、業務の停滞や品質低下のリスクが大幅に軽減されます。属人化を排除することで、チーム内の情報格差が解消され、誰もが同じ水準の知識を持てるようになります。その結果、業務効率のばらつきが減り、生産性の安定化にもつながります。
顧客・案件の依頼元への対応がスムーズになる
ナレッジマネジメントツールを活用すると、顧客や案件の依頼元対応に関する情報(問い合わせ履歴、過去の事例、解決策など)を即座に確認できます。各担当者がいちいち情報を探す必要がなくなるため、クライアントへの対応スピードが格段に向上します。
さらにツールにまとめられたナレッジは、誰でも参照できるため、対応する担当者ごとの「対応のバラつき」を抑制できます。結果として、どの担当者が対応しても一定水準のサービスを提供でき、顧客の満足度が向上します。
法務にナレッジマネジメントツールが有用な理由
法務部門は、契約書や社内規程、法律文書など膨大な情報を扱う部門です。
ナレッジマネジメントツールを活用することで、これらの情報を一元的に蓄積・管理し、必要なときに迅速に検索・参照できる体制を整えられます。
特に、法務知識は専門性が高く属人化しやすい傾向にありますが、ツールを使えば過去の事例や契約書ひな形、業務マニュアルを部門全体で共有し、担当者に依存しない体制を構築できます。これにより、万が一担当者が不在でも業務が円滑に進み、リスク管理の強化につながります。
また、法務業務は法改正への対応や取引先との交渉などスピードが求められる場面が多く、ツールで情報を体系化することで、的確な意思決定を支援できます。さらに、社内外からの問い合わせへの対応力向上にも寄与し、結果として企業全体の信頼性強化にもつながるのです。
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ナレッジマネジメントツール導入時の注意点
ナレッジマネジメントツールは、必ずしも無料ではなく、実際に業務効率化に役立つ高機能なツールの多くは有料です。無料版は機能が限定されているため、業務に最適化された運用には不十分なことが多いのが現状です。そのため、ツール導入時にはある程度のコスト負担が発生することを念頭に置く必要があります。
また、ナレッジマネジメントツールの有効性を理解しない社員がいると、積極的な活用やスキルのインプットが進まず、ツールの真価が発揮されません。こうしたリスクを避けるためには、ツールの導入時に、まずその機能や重要性を社員にしっかり説明することが不可欠です。ノウハウを共有し、業務に活かせることがわかれば、社員のスキルアップにもつながり、社内評価の向上も期待できます。
ナレッジマネジメントツールを選ぶ際のポイント
ナレッジマネジメントツールは単なる情報の保管庫ではなく、「蓄積」「検索」「共有・改善」 をサポートしてくれることが重要です。以下でツール選定のポイントを紹介します。
情報の蓄積・管理機能
書類やマニュアル、FAQ、議事録など、あらゆるナレッジを一元的に蓄積できます。ファイル形式を問わず保存できるツールも多く、情報の散在を防ぎます。
検索機能
キーワード検索やタグ検索で、必要な情報を素早く見つけ出せます。高度な検索フィルタや全文検索機能を持つツールなら、膨大な情報でも効率的に探し出せます。
アクセス権限管理
社内の誰がどの情報にアクセスできるか、権限レベルを設定できます。機密情報や部門専用ナレッジの保護に役立ちます。
外部ツール連携
チャットツールやCRM、プロジェクト管理ツールなど、他システムと連携できる機能も重要です。ワークフロー全体の最適化が可能になります。
ナレッジマネジメントツール5選
CorporateOn
契約書や社内規程の管理に特化したナレッジマネジメントツール。管理部門と事業部門のギャップを埋めようと開発されており、高度な検索機能やアクセス権限管理により、属人化を防止しながら情報を安全に共有できます。
料金プラン:要問い合せ
出典:https://www.legalon-cloud.com/corporateon
Confluence
チームコラボレーション向けのWiki型ツールです。柔軟なページ作成とコメント機能で情報共有を円滑にし、Jiraなどのアトラシアン製品と連携できるのが特長です。
料金プラン:
Free: 無料(10ユーザーまで)
Standard: 月額7.75ドル/ユーザー
Premium: 月額15.25ドル/ユーザー
Enterprise: 要問い合わせ
出典:https://www.atlassian.com/ja/software/confluence
Notion
ドキュメント、データベース、タスク管理が一体化した情報整理ツール。自由度の高い編集機能で、ナレッジ共有を多様な形で実現できます。
料金プラン:
Free: 無料(個人利用向け)
Plus: 月額10ドル/ユーザー
Business: 月額18ドル/ユーザー
Enterprise: 要問い合わせ
Kibela
日本製のナレッジ共有ツールで、Wiki感覚で使えるシンプルなUIが特徴です。Slackなどとの連携も可能で、部門横断のナレッジ共有に向いています。
料金プラン:
コミュニティプラン: 無料(5ユーザーまで)
ライトプラン: 月額550円/ユーザー(税込)
スタンダードプラン: 月額880円/ユーザー(税込)
エンタープライズプラン: 月額1,650円/ユーザー(税込)
esa.io
「情報を育てる」コンセプトで、ドキュメントを段階的に更新できるナレッジ管理ツールです。柔軟な公開設定とシンプルな操作性が特長です。
料金プラン:
無料トライアル: チーム作成月から2ヶ月後の月末まで無料
通常プラン: 月額500円/ユーザー(税込)
法務に特化したナレッジマネジメントツール
法務部門では、契約書、法令・規程、判例・ガイドラインなど、複雑で専門性の高い知識が扱われます。そのため、ナレッジマネジメントツールの中でも、AIの情報を読み取る精度が高く、検索性に優れたツールを選ぶことが重要です。
LegalOn Cloudは、法務部門で扱う契約書を一元的に管理できる仕組みを備えています。契約書ファイルだけでなく、関連する補足資料や解説、社内規程などの法務ナレッジを一か所に集約できます。属人化しやすい情報が整理され、組織全体で活用しやすくなります。
キーワード検索やフィルタリング機能が充実しており、過去の契約書や条項例をスピーディに見つけることが可能です。さらに、誰がどの情報にアクセスできるかを細かく制御できるため、社内のコンプライアンスを確保しつつ、円滑なナレッジ共有が実現します。