業務委託契約書とは
業務委託契約書とは、企業が社外の個人や法人に対して特定の仕事を依頼する際に交わす契約書のことです。この契約で、依頼する側(委託者)と仕事を受ける側(受託者)の間で、業務の内容や報酬、期間、責任範囲などを明確に定めます。
近年、働き方の多様化により、正社員として雇用するのではなく、専門的なスキルを持つフリーランスや外部の会社に業務を委託するケースが増えており、その際に必要不可欠な契約書として重要度が高まっています。
例えば、以下のような業務委託契約書が代表的な例として挙げられます。
- 製造業務委託契約書
- 建築設計監理業務委託契約書
- Webサイト制作業務委託契約書
- コンサルティング業務委託契約書
- 営業代行業務委託契約書
- 広告出稿業務委託契約書
- 運送業務委託契約書
- システム開発業務委託契約書
- コンテンツ制作業務委託契約書(記事・動画・SNS投稿など)
- カスタマーサポート業務委託契約書
- 研修・セミナー講師業務委託契約書
- 通訳・翻訳業務委託契約書
- 市場調査業務委託契約書
- 清掃業務委託契約書
- 人材紹介・採用支援業務委託契約書
業務委託契約書を締結する目的
業務委託契約書を締結する最大の目的は、トラブルを未然に防ぐことです。
契約書により業務の範囲や成果物の基準、納期、報酬の支払い条件などを事前に明確にしておくことで、後から「話が違う」といった問題が発生することを避けられます。また、万が一トラブルが起きた場合でも、契約書に基づいて解決の道筋を立てることができます。さらに、お互いの責任範囲を明確にすることで、委託者と受託者の双方が安心して業務に取り組める環境を作ることも重要な目的の一つです。
業務委託契約と雇用契約の違い
業務委託契約と雇用契約の最も大きな違いは、指揮命令関係の有無です。
雇用契約では会社が従業員に対して具体的な働き方を指示できますが、業務委託契約では仕事の進め方は基本的に受託者に委ねられます。また、雇用契約では労働法による保護を受けられ、社会保険への加入や有給休暇の取得が可能ですが、業務委託契約ではこれらの保護は適用されません。
報酬の面でも、雇用契約は毎月決まった給与が支払われるのに対し、業務委託契約は成果物の納品や業務完了に応じて報酬が支払われる点が異なります。
まとめると業務委託契約と雇用契約の違いは以下の通りです。
- 指揮命令関係の有無(最も大きな違い)
- 雇用契約:会社が従業員に対して具体的な働き方を指示できる(指揮命令関係がある)
- 業務委託契約:仕事の進め方は基本的に受託者に任される(指揮命令関係がない)
- 法的保護の違い
- 雇用契約:労働法による保護を受けられる (社会保険への加入や有給休暇の取得が可能)
- 業務委託契約:これらの保護は適用されない
- 報酬の支払い方式
- 雇用契約:毎月決まった給与が支払われる
- 業務委託契約:成果物の納品や業務の完了に応じて報酬が支払われる
業務委託契約の種類
業務委託契約は、その法的な性質によって主に「請負契約」と「委任契約(準委任契約)」の大きく2種類に分類されます。それぞれの契約形態には、発注者と受託者の間で負う責任や報酬の発生条件に違いがあるため、業務内容に応じて適切な契約形態を選択することが重要です。
請負契約
請負契約とは、受託者が特定の成果物を完成させることを目的とする契約形態です。Webサイトの制作、システム開発、記事の執筆、あるいは建築物の建設などを外部に依頼する場合に、この契約が適用されます。
請負契約の最大の特徴は、成果物の完成と引渡しをもって報酬が発生する点にあります。受託者は契約で定められた品質と仕様の成果物を、期日までに完成させる義務を負います。もし完成した成果物に契約内容に適合しない点(契約不適合)があった場合、発注者は受託者に対し、修補の請求や代金減額の請求、損害賠償の請求、または契約の解除を行うことができます。
したがって、業務委託契約書において成果物の具体的な内容、品質基準、納品方法、検査基準、そして契約不適合時の対応を詳細に規定することが重要です。これにより、発注者の求める成果が確実に得られるようリスクヘッジを図ることができます。
委任契約
委任契約は、受託者が特定の法律行為を行うことを目的とする契約形態です。委任契約では成果物の完成ではなく、受託者が法律行為を遂行すること自体が契約の目的となります。
代表的な利用シーン
- 弁護士に訴訟代理を依頼する
- 税理士に税務申告を依頼する
委任契約において受託者は「善良なる管理者の注意(善管注意義務)」をもって業務を処理する義務を負います。これは、専門家として通常要求される程度の注意を払って業務を遂行する義務を意味します。仮に委任された法律行為の結果が発注者の期待通りでなかったとしても、受託者が善管注意義務を怠っていなければ、報酬が発生します。業務の範囲と受託者の義務、そして報酬の発生条件を明確にし、発注者の期待するところと受託者の責任範囲に乖離がないように契約書で規定することが求められます。
準委任契約
準委任契約は、委任契約と同様に特定の業務を遂行することを目的としますが、その業務が法律行為ではない場合に適用される契約形態です。発注者がコンサルティング業務、システムの運用・保守、清掃業務、受付業務、コールセンター業務などを外部に依頼するケースが代表的です。
代表的な利用シーン
- コンサルティング業務を外部に依頼する
- システムの運用・保守を外部に依頼する
- 清掃業務を外部に依頼する
- 受付業務を外部に依頼する
- コールセンター業務を外部に依頼する
準委任契約も請負契約とは異なり、特定の成果物の完成を保証するものではありません。受託者は、委託された業務を誠実に遂行することによって報酬を得ます。受託者には委任契約と同様に善管注意義務が課せられます。企業がフリーランスのエンジニアにシステムの常駐開発を依頼する際や、外部のコンサルタントにアドバイスを求める場合など、多くの業務委託契約がこの準委任契約に分類されます。業務の具体的な内容と範囲、受託者の具体的な作業内容、そして報酬の発生条件を契約書に詳細に記載し、受託者がどこまでの業務を担うのかを明確にすることが肝要です。
業務委託契約の報酬形態
業務委託契約における報酬形態は、委託する業務の内容や期間、契約の種類によって様々です。企業が外部に業務を委託する際、適切な支払い方法を選択し、契約書に明確に規定することは、予期せぬトラブルを避ける上で非常に重要になります。
毎月定額
業務が継続的であり、毎月一定の業務量を想定できる場合に採用されます。システムの定期的な保守・運用業務や、継続的なWebサイトのコンテンツ更新業務などが該当します。
発注者としては、毎月の予算が立てやすく、コスト管理が容易になるというメリットがあります。受託者側も安定した収入を見込めるため、長期的な関係構築に繋がる可能性が高まります。契約書には「毎月〇円(税別)、毎月末日締め翌月〇日払い」のように、金額と支払い期日を明確に記載します。
時給計算
受託者が実際に業務に費やした時間に応じて報酬を支払う方法です。コンサルティング業務や、プロジェクトの進捗に応じて作業時間が変動する開発業務など、具体的な成果物の完成よりも作業時間自体に価値がある場合に用いられます。
発注者としては、作業時間に応じて費用を支払うため、無駄なコストが発生しにくいという利点があります。しかし、受託者から提出される作業報告の正確性を確認する必要が生じます。契約書には、時間単価や請求方法、報告様式などを詳細に定めなくてはなりません。
単発業務
特定の期間や内容に限定された、一度きりの業務に対して報酬を支払う方法です。特定のイベントの企画・運営、一度限りのデザイン制作、単発の調査レポート作成などがこれに当たります。業務完了後に一括で報酬が支払われるのが一般的です。
発注者としては、特定のプロジェクトや課題解決のために一時的に外部の専門スキルを活用したい場合に有効です。契約書には、業務完了の定義と報酬の支払い時期を明確に記載します。
成果報酬
請負契約において多く用いられる支払い方法で、完成した成果物に対して報酬が支払われます。Webサイトの完成、システムが稼働した場合、特定の商品が一定数売れた場合などが挙げられます。
発注者としては、成果物が確実に得られるため、投資対効果を明確にしやすいというメリットがあります。一方で、成果物の定義や品質基準を明確に定めておかないと、報酬支払いを巡る紛争の原因となる可能性があります。契約書には、成果物の具体的な内容や品質基準、検査基準、報酬が発生する条件と金額、支払い時期を詳細に規定しなくてはなりません。
成功報酬
特定の目標達成や、プロジェクトの成功に対して報酬が支払われる方法です。これは成果報酬と似ていますが、より広範な「成功」を指すことが多いです。
M&Aの仲介業務で契約が成立した場合や営業代行で目標売上を達成した場合などが挙げられます。発注者としては、成功した場合のみ報酬が発生するため、リスクを低減できるという利点があります。一方で、成功の定義や報酬の算定方法が曖昧だと、受託者との間で認識の齟齬が生じるリスクがあります。契約書において「成功」の具体的な基準や報酬の算定方法、支払い条件などを詳細かつ明確に定めることが不可欠です。
業務委託契約書のテンプレート
業務委託契約書を一から作成するのは、専門的な知識も必要となり、非常に手間がかかります。ここでは、基本的な内容を押さえた業務委託契約書のテンプレートをご紹介します。実際の契約内容にあわせてカスタマイズしつつ、活用してみてください。
業務委託契約書に一般的に記載すべき事項
業務委託契約書を作成・レビューする際、企業の利益を最大限に保護し、法的リスクを最小限に抑えるためには、網羅すべき重要な項目がいくつか存在します。以下に挙げる各事項は、トラブルを未然に防ぎ、発注者と受託者との間で健全な関係を維持するために不可欠な要素となります。
委託する業務の内容
発注者が受託者に対して、何をどこまで委託するのかを具体的に明記します。抽象的な表現は避け「〇〇システムの開発(機能一覧別紙参照)」や「広報コンテンツの企画・制作(月〇本の記事執筆)」のように、具体的なタスクや成果物の仕様、業務の範囲、品質基準などを詳細に記述することが不可欠です。これにより、受託者の業務範囲を明確にし、後々の「業務範囲外」といった主張や品質に関する認識のズレを防ぐことができます。
- 記載例:
受託者は、発注者の依頼に基づき、別紙業務仕様書に定める〇〇システムの設計・開発業務(以下「本業務」という)を誠実に遂行するものとする。
契約期間
業務委託契約がいつから始まり、いつまで続くのかを明確に定めます。「〇年〇月〇日から〇年〇月〇日まで」といった具体的な日付を記載するのが一般的です。もし継続的な業務で契約更新の可能性がある場合は、更新の条件(自動更新か、双方の合意による更新かなど)や手続きについても明記しておく必要があります。また、期間の定めがない場合は、後述する契約の解除に関する条件がより重要になります。
- 記載例:
本契約の有効期間は、2025年8月1日から2026年1月31日までとする。契約期間満了の30日前までに双方から書面による異議がない場合、本契約は同一条件でさらに6か月間自動更新されるものとする。
委託料
委託業務に対する報酬の金額や計算方法、支払い条件、支払い期日、支払い方法(銀行振込など)、消費税の取り扱い(内税か外税か)などを記載する項目です。先述した報酬形態を踏まえ、発注者と受託者が合意した支払い方法を具体的に記述します。「月額〇円(税別)、毎月末日締め翌月〇日払い」のように、可能な限り曖昧さを排除して記載することが重要です。
- 記載例:
発注者は、受託者に対し、本業務の対価として、月額金○○○○円(消費税別途)を支払うものとし、当該金額は毎月末日締め翌月25日に指定口座に振込送金により支払うものとする。
再委託
受託者が委託された業務の一部または全部を、さらに別の第三者に委託(再委託)することを許可するかどうかを定めます。原則として再委託を禁止するケースが多いですが、もし許可する場合は、事前に書面による承諾が必要であることや再委託先の選定基準、そして再委託先が起こした問題に対する受託者の責任(連帯責任など)を明確に規定することが不可欠です。情報セキュリティや品質管理の観点からも重要な項目となります。
- 記載例:
受託者は、発注者の事前の書面による承諾を得ることなく、本業務の全部または一部を第三者に再委託してはならない。なお、発注者が再委託を承諾した場合であっても、受託者は再委託先の行為について一切の責任を負うものとする。
知的財産権の帰属
業務を通じて生み出された制作物(デザイン、プログラム、記事、アイデアなど)に関する著作権、特許権、商標権その他の知的財産権が、発注者と受託者のどちらに帰属するのかを明確に定めます。
このうち、著作権は著作者(実際に創作を行った者)に、特許を受ける権利は発明者(実際に発明を行った者)に、それぞれ原始的に帰属します。業務委託契約においては、通常受託者が著作者や発明者となります。そのため、例えば著作権を発注者に帰属させるためには、契約において著作権(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含む)を発注者に譲渡する旨を明確に定める必要があります。
契約実務においては、知的財産権は交渉により発注者側に譲渡、または受託者に帰属させた上で使用許諾を得る形を取ることが一般的です。いずれにせよ、明確な合意がないと、後々で発注者の事業展開に支障をきたしたり、大きな紛争に発展したりする可能性があるため、特に重要な項目として詳細に規定すべきです。
- 記載例:
本業務により受託者が作成・納品する成果物に関する著作権(著作権法第27条および第28条に定める権利を含む)は、発注者に帰属するものとする。受託者は、成果物に関する著作権を発注者に譲渡することに同意する。
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契約の変更
契約内容を変更する必要が生じた場合の手続きや条件を定めます。一般的には、書面による双方の合意が必要である旨を記載します。口頭での変更は後々のトラブルの元となる可能性があるため、書面での合意を原則とすることをおすすめします。
- 記載例:
本契約の内容を変更する場合は、発注者および受託者が協議のうえ、書面による合意によって行うものとする。
<関連記事>契約の変更には何が必要? 民法のルールや覚書の書き方を徹底解説!
契約の解除
どのような場合に契約を解除できるのか、条件や解除方法、解除に伴う清算(未払い報酬の精算など)などについて定めます。相手方の契約違反のほかにも破産手続きの開始、業務遂行能力の著しい低下、秘密保持義務違反などが解除事由として挙げられます。
また、期間の定めがない契約の場合には、双方からの申し出による解除の条件(例:〇ヶ月前に書面で通知)を明確に定めておくと、トラブルを回避しやすくなります。自社の不利益にならないよう、解除事由の範囲を慎重に検討することが求められます。
- 記載例:
発注者および受託者は、相手方が本契約に違反した場合、相当の期間を定めて催告したうえで書面により通知することにより、本契約を解除することができる。また、以下のいずれかに該当した場合、何らの催告を要せずに直ちに本契約を解除できる。 - 相手方が破産、民事再生等の法的手続を申し立てたとき
- 業務遂行能力が著しく低下したと認められるとき
- 秘密保持義務に違反したとき
秘密保持
業務遂行中に知り得た相手方の機密情報(顧客情報、技術情報、経営情報、新規事業計画など)を外部に漏らさない義務について定めます。秘密情報の範囲、秘密保持義務の期間(契約終了後も含む)などを具体的に記載します。情報漏洩は企業にとって甚大な損害をもたらす可能性があるため、この条項は明確に規定しなくてはなりません。
記載例:
受託者は、本契約に関連して知り得た発注者の業務上の情報、顧客情報その他一切の非公開情報を、発注者の書面による事前承諾なく第三者に漏洩してはならない。本条の義務は、本契約終了後2年間存続する。
禁止事項
受託者が業務遂行上行ってはならない行為を明確に規定します。発注者の信用を著しく損なう行為や競業行為(類似業務を競合他社から受託すること)などを禁じる場合があります。これにより発注者の事業利益を保護し、受託者による不適切な行為を抑止することができます。
記載例:
受託者は、発注者の書面による事前承諾なしに、本業務と同一または類似する業務を競合他社から受託してはならない。また、発注者の名誉・信用を損なう行為を行ってはならない。
反社会的勢力の排除
発注者および受託者の双方が、反社会的勢力ではないこと、および反社会的勢力との関係がないことを表明し、保証する条項です。これに違反した場合には、何らの催告を要せず無条件で契約を解除できる旨を定めます。企業が社会的責任を果たす上でも、コンプライアンスの観点でも、極めて重要な項目です。
記載例:
各当事者は、自らが暴力団等の反社会的勢力でないこと、および反社会的勢力と一切関係がないことを表明し、保証する。万一、これに違反した場合には、相手方は何らの催告を要することなく本契約を解除できる。
<関連記事>反社チェックはいつ・誰に必要?無料でできるGoogle検索の方法まで解説
損害賠償
契約違反があった場合や、業務遂行中に相手方または第三者に損害を与えた場合の損害賠償の範囲、金額、請求方法などを具体的に定めます。
契約書に損害賠償に関する特段の定めがない場合でも、相手方の債務不履行や不法行為により損害を被れば、民法の規定に基づき損害賠償を請求できます。しかし、具体的な損失額の算定に時間がかかったり、実損よりも低い賠償額しか認められなかったりする可能性があります。契約書で損害賠償の範囲(直接損害・間接損害の別など)や上限額、賠償額の予定などを決めておくことで、それらのリスクを回避することが可能です。
記載例:
受託者は、本契約に違反し、または本業務遂行に際して発注者または第三者に損害を与えた場合、その損害の一切を賠償する責任を負うものとする。なお、損害賠償額は、年間契約金額を上限とする。
管轄裁判所
契約に関して紛争が生じた場合に、どの裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とするかを合意して定めます。通常は、発注者側の所在地を管轄する裁判所とすることが多いです。
記載例:
本契約に関する一切の紛争については、発注者の本店所在地を管轄する東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
職種別業務委託契約書に記載すべき内容
業務委託契約書では、職種に応じて特有の注意点や条件を明記することが重要です。よく業務委託契約の対象となる職種を例に記載すべき内容について解説します。
ITエンジニア
ITエンジニアとの業務委託契約では、一般的な業務内容や報酬に加えて、技術仕様書の詳細度や開発環境の準備責任を明確にする必要があります。特に重要なのは、完成したシステムの動作保証範囲とバグ修正の責任分担でしょう。
また、企業の機密情報や顧客データにアクセスする可能性があるため、情報セキュリティに関する条項を厳格に定めることが不可欠です。開発したプログラムの著作権や知的財産権の帰属についても事前に取り決めておき、将来的な権利関係のトラブルを防ぐことが重要です。
ライター
ライターとの業務委託契約では、記事や文章の著作権が発注者に帰属することを明記する必要があります。また、執筆する記事の文字数や構成、修正回数の上限を具体的に定めることで、後々の追加作業に関するトラブルを防げます。
SEO対策が必要な場合は、キーワードの使用方法や文章の構成要件も契約書に含めることが重要です。他の記事からのコピーや盗用を禁止する条項、参考資料の提供方法、校正や編集作業の責任範囲についても明確に定めておくことで、品質の高い成果物を期待できます。
webデザイナー
webデザイナーとの業務委託契約では、制作するデザインの著作権帰属と、デザイン修正の回数制限を明確に定める必要があります。また、使用する画像や素材の著作権処理の責任範囲、レスポンシブデザインへの対応要件、対応ブラウザの範囲についても具体的に記載することが重要です。
納品時のデザインデータの形式や解像度、将来的な修正作業の取り扱いについても事前に合意しておくことで、スムーズなプロジェクト進行が期待できます。デザインの使用範囲や二次利用の可否についても明記しておくことが必要です。
webディレクター
webディレクターとの業務委託契約では、プロジェクト全体の管理範囲と責任の所在を明確に定める必要があります。特に、外部の制作会社やフリーランスとの調整業務、進捗管理の方法、品質管理の基準について具体的に記載することが重要です。
また、定期的な進捗報告の頻度や報告形式、予算管理の権限範囲、チームメンバーとのコミュニケーション方法についても契約書で定めておくことが必要です。プロジェクトの変更や追加要求が発生した場合の対応手順と費用負担についても事前に合意しておくことで、円滑なプロジェクト運営が可能になります。
業務委託契約書作成時の注意点
業務委託契約書を作成する際は、委託者と受託者それぞれの立場で異なる注意点があります。
委託者側が注意すべきポイント
委託者である企業側は、業務委託契約が偽装請負にならないよう十分な注意が必要です。受託者に対して細かい作業指示を出したり、勤務時間や勤務場所を厳格に管理したりすると、実質的には雇用関係とみなされる可能性があります。
また、契約書には業務内容や成果物の基準を明確に記載し、受託者の責任範囲を適切に設定することが重要です。機密保持や競業避止についても適切な条項を盛り込み、企業の利益を保護する必要があります。
委託者が注意すべき主なポイント
- 偽装請負にならないよう指揮命令関係を避ける
- 業務内容と成果物の基準を明確に定める
- 機密保持条項を適切に設定する
- 競業避止条項の妥当性を検討する
- 知的財産権の帰属を明確にする
以下の記事では偽装請負について詳しく解説しています。理解を深めたい方はぜひ併せて確認してみてください。
<関連記事>偽装請負とは? 判断基準や違反した場合の罰則、回避方法を解説
受託者側が注意すべきポイント
受託者側は、契約書の内容が自分にとって不利にならないよう慎重に確認する必要があります。特に、業務範囲が曖昧だと後から追加作業を求められる可能性があるため、具体的な作業内容と範囲を明確にしておくことが重要です。
また、報酬の支払い時期や条件、修正作業の回数制限、著作権の取り扱いについても事前に確認し、必要に応じて修正を求めることが大切です。契約解除の条件や損害賠償の範囲についても理解しておく必要があるでしょう。
受託者が注意すべき主なポイント
- 業務範囲を具体的に明確化する
- 報酬の支払い条件を詳細に確認する
- 修正作業の回数制限を設定する
- 著作権や知的財産権の帰属を確認する
- 契約解除条件を理解しておく
英文で業務委託契約書を作成する場合の注意点
海外の企業や個人と業務委託契約を結ぶ場合、英文契約書では日本の契約書とは異なる法的概念や慣習に注意が必要です。特に、準拠法や管轄裁判所の選択は後々のトラブル解決に大きく影響するため、慎重に検討する必要があります。
また、英語圏では契約書の表現がより具体的で詳細になる傾向があるため、曖昧な表現を避け、明確で具体的な条項を記載することが重要です。為替変動リスクや税務上の取り扱いについても事前に確認しておくことが必要です。
英文契約書作成時の主なポイント
- 準拠法と管轄裁判所を慎重に選択する
- 曖昧な表現を避け具体的な条項を記載する
- 為替変動リスクの対応を検討する
- 税務上の取り扱いを事前確認する
- 文化的違いを考慮した条項設定をする
個人・フリーランスに業務委託する場合の注意点
個人事業主やフリーランスに業務委託する場合、契約に関する知識や経験が不足している可能性があるため、契約内容をより丁寧に説明する必要があります。
また、個人は法人よりも経済的基盤が不安定な場合が多いため、報酬の支払い条件や契約解除の条件をより慎重に設定することが重要です。個人情報保護の観点から、契約書に記載する個人情報の取り扱いについても適切に規定する必要があります。
さらに、フリーランスが発注者に対して資本金額や従業員数の要件を満たす場合には、下請法(下請代金支払遅延等防止法)の適用対象となる可能性があります。 下請法が適用される場合、発注者には以下のような義務が課されます。
- 書面による契約条件の明示(発注書・注文書など)
- 60日以内の代金支払い義務
- 受領拒否や返品、報酬の減額などの禁止
- 不当なやり直し要求の禁止
これらに違反すると、公正取引委員会からの指導・勧告や企業名の公表といった行政処分の対象となるため、十分に注意する必要があります。
個人・フリーランスとの契約時の主なポイント
- 契約内容をより丁寧に説明する
- 報酬支払い条件を慎重に設定する
- 個人情報保護に配慮した条項を設ける
- 経済的基盤を考慮した契約条件にする
- トラブル時の解決方法を明確にする
- 下請法が適用される可能性を確認し、必要な対応を行う
<かんれん>
業務委託契約書の取り交わしがない場合のリスク
業務委託契約書を作成せずに口約束だけで仕事を始めると、様々なトラブルや法的リスクが発生する可能性があります。
委託者側のリスク
委託者側の主なリスクは以下の通りです。
- 成果物の品質や納期を法的に保証できない
- 機密情報の保護義務を課せない
- 知的財産権の帰属で争いになる
- 第三者への損害責任が不明確
- 受託者への法的な請求が困難
委託者である企業側は、契約書がないことで成果物の品質基準や納期について法的な拘束力を持たせることができず、期待した成果物が納品されなくても強制力のある対応が取れません。
加えて、機密保持義務を課せないため、企業の重要な情報が外部に漏洩したり競合他社に悪用されたりするリスクがあります。また、受託者が作成した成果物の著作権や知的財産権について明確な取り決めがないと、後から権利を主張されて使用できなくなる可能性があります。
責任範囲も不明確なため、成果物の欠陥により第三者に損害を与えた場合の責任分担が争いになる恐れもあります。
受託者側のリスク
受託者側の主なリスクは以下の通りです。
- 報酬の支払いが保証されない
- 無償での追加作業を求められる
- 著作権や知的財産権を失う
- 一方的な契約解除を受ける
- 損害賠償を請求される可能性
受託者側は、契約書がないことで報酬の支払いが保証されないリスクに直面します。口約束だけでは報酬額や支払い時期が曖昧になり、作業完了後に支払いを拒否されたり減額を要求されたりする可能性があります。
また、業務内容が明確でないため、無償での追加作業や修正作業を求められる恐れもあります。著作権や知的財産権の帰属が不明確なまま作業を進めると、後から権利を主張できなくなったり、逆に権利侵害で訴えられたりするリスクもあります。
法的・証拠能力に関するリスク
法的・証拠能力に関するリスクは以下の通りです。
- トラブル時に合意内容を証明できない
- 裁判での証拠能力が不十分になる
- 偽装請負として行政指導を受ける
- 税務調査で証拠書類として認められない
- 契約の有効性自体が争われる可能性
契約書がない場合、トラブルが発生しても双方の合意内容を証明することが困難になります。また、業務委託なのか雇用契約なのかの区別が曖昧になり、労働基準監督署から偽装請負として指導を受ける可能性もあります。
税務上の処理についても適切な証拠書類がないため、税務調査で問題となったり、必要経費として認められなかったりするリスクもあります。
業務委託契約書で収入印紙が必要になるケースと金額
業務委託契約にあたり、契約の条項に加えて、担当者が注意しなくてはならないのが印紙税です。印紙税は国税庁によって定められた「課税文書」に対して生じる納税義務で、決まった金額の収入印紙を対象の文書に貼り付けなくてはなりません。
業務委託契約書においては、以下に示す条件に該当する場合、収入印紙が必要となります。
- 請負契約の場合(第2号文書)→ 契約金額に応じた金額(※)
- 継続的取引の基本となる契約(第7号文書)→ 一律4,000円
※契約書に記載された契約金額ごとの印紙税額
- 1万円未満のもの:非課税
- 1万円以上100万円以下のもの:200円
- 100万円を超え200万円以下のもの:400円
- 200万円を超え300万円以下のもの:1,000円
- 300万円を超え500万円以下のもの:2,000円
- 500万円を超え1,000万円以下のもの:1万円
- 1,000万円を超え5,000万円以下のもの:2万円
- 5,000万円を超え1億円以下のもの:6万円
- 1億円を超え5億円以下のもの:10万円
- 5億円を超え10億円以下のもの:20万円
- 10億円を超え50億円以下のもの:40万円
- 50億円を超えるもの:60万円
- 契約金額の記載のないもの:200円
印紙税の納税義務は、課税文書の作成者にあることが定められています(印紙税法3条1項)。契約書は当事者双方がそれぞれ1通ずつ作成・保有することが一般的なため、各自が作成した文書について、それぞれ納税義務を負うことになります。
なお、電子契約により契約締結する場合には印紙税法上の「課税文書の作成」にあたらないため、印紙税は課税されません。
<関連記事>収入印紙とは?契約書/領収書の種類別金額・購入場所・貼り方を徹底解説!
まとめ:業務委託契約書を正しく取り交わそう
業務委託契約書は、企業が外部の専門スキルやリソースを活用し、事業を効率的に推進していくための前提となる文書です。この契約書を正しく作成し適切に取り交わすことで、事業を法的リスクから保護し、円滑な取引関係を維持する基盤を作ることができます。
この記事では、業務委託契約書の概要や種類、報酬形態、記載すべき事項などについて解説してきました。
ビジネスチャンスを逃すことなく、かつ安全に事業を展開していくためには、適切な業務委託契約書の存在が不可欠です。本記事でご紹介した各項目を参考に、自社の状況に合わせた適切な契約書を作成することで、よりトラブルの可能性が少ない業務委託を実現できます。この記事が、業務委託契約書を作成・レビューする担当者の方の参考となれば幸いです。
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