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株主総会議事録作成マニュアル:押印方法・ひな形の入手先まで

株主総会議事録作成マニュアル:押印方法・ひな形の入手先まで
この記事を読んでわかること
    • 株主総会議事録の作成方法
    • 議事録の押印方法
    • 議事録ひな形の入手先

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株主総会を招集する際には、議事録の作成されます。議事録に会議の概要や経過、決定事項などをまとめることで、株主に情報を提示します。株式会社における株主総会の議事録作成は会社法で義務付けられています。

しかし、これまでの株主総会の議事録を作成したことがない方は「どのように進めればいいのか分からない」という悩みもあるかと思います。当記事では、株主総会の議事録を作成する方法や押印方法、ひな形の入手先まで解説します。

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株主総会とは

株主総会とは、株主が株式会社の組織、運営、管理など様々な事項に関する意思決定を行う会議体で、株式会社においては最高意思決定機関です。なお、株式会社には、株主総会以外にも取締役会や監査役会、指名委員会などの機関が存在します。取締役会を設置されている会社において、株主総会は限られた事項の決議のみを行います。

株主総会の概要として、以下のような点について詳しく説明します。

  • 株主総会の役割と重要性 
  • 定時株主総会と臨時株主総会の違い
  • 株主総会決議の法的効力

株主総会の役割と重要性

株主総会は株式会社の最高意思決定機関であり、株主が会社経営に参加する重要な機会です。ただし、取締役会が設置されている企業の場合、所有と経営の分離によって取締役会に経営が委ねられるので、株主総会で決定する事項は会社法や定款で定める事項に限定されます。

株主総会では、会計報告と計算書類等の承認、取締役の選任・解任、役員報酬の決定など、会社経営に関わる重要な事項が決議されます。また、株主は株主総会を通じて企業の経営状況を把握し、経営陣に対して意見や質問を提示することができます。これが、経営陣に対するチェック機能として働きます。

株主総会を適切に運営することは、企業の健全なガバナンス体制を構築するために欠かせません。企業法務担当者としては、株主総会の準備・運営・議事録の作成・保管までもれなく対応することが求められます。

企業は株主からの資金調達を受けて経営しているため、経営方針や業績について意見できる株主総会は企業と株主双方にとって重要な機関です。

定時株主総会と臨時株主総会の違い

株主総会には、定時株主総会と臨時株主総会の2種類が存在します。

定時株主総会とは、会社法に基づき年に一度、事業年度の終了後一定期間内に必ず招集しなければならない株主総会です(会社法296条1項)。定時株主総会は事業年度の終了後に招集されることから、事業報告や今後の方針について説明されることが多いです。

臨時株主総会とは、株主の意思決定が必要な場合に臨時 で招集することができる株主総会のことです。会社法296条2項に定められており、例えば緊急で役員を補充しなければならない時や資本金を増額する時などに招集されます。

株主総会決議の法的効力

株主総会の決議は会社法などの法令で定められており、企業は決議内容に従う必要があります。

会社法295条1項において株主は、株式会社に関する一切の事項について決議をすることができるとされています。しかし、前述でも説明した通り、企業が取締役会を設置している場合、株主総会で決定する事項は会社法や定款で定める重大な事項に限定されます。

株主総会決議は会社法に基づく会社の意思決定であり、会社はその決議内容に従って業務を遂行することが求められます。

株主総会議事録の作成

株主総会議事録には、以下のような必ず記載すべき事項があります(会社法施行規則第72条3項)。

  • 開催された日時及び場所
  • 議事の経過の要領及びその結果
  • 株主総会において述べられた意見または発言の内容の概要
  • 出席した取締役、執行役、会計参与、監査役または会計監査人の氏名または名称
  • 議長が存するときは、議長の氏名
  • 議事録を作成した取締役の氏名

議事録の冒頭に記載される項目を説明します。なお、記載方法に厳密な規定はありません。

まず会社名を記載し、招集された年月日及び時間、招集場所を記載します。次に株式・株主の状況を記載しますが、具体的には招集当時の株式の保有状況や出席した株主の割合などを記載します。

株主総会は一定数の株主が出席している必要があるので、有効な招集・決議があったことを証明するためにも情報の明記が必要です。続いて、出席した取締役などの氏名を記載します。取締役の氏名の記載も法律として義務付けられています。

次に株主総会の決議事項を記載し、株主総会の経過や結果の要点を示します。一通りの議事進行・決議事項を記載後、閉会した時間を記載します。

最後に議事録の作成年月日を記載し、出席役員の記名押印を行えば完了となります。株主総会の関係者の押印は法的に必須ではありませんが、議事録の信憑性を高めるために議長と議事録作成者が押印するのが一般的です。

議事録の作成資格保有者

株主総会議事録の作成は、取締役が担当します。

議事録作成を円滑に進めるためには、資格を有する担当者を配置することが望ましいです。例えば、株主総会では業績について株主と話し合うことがあるため、計算実務能力検定を保有している担当者がいれば、業績数値の正確な提示が可能になります。また、議事録内容の正確性向上には、法律知識や議事録作成の実務経験を有する担当者を配置することが望ましいでしょう。

保管義務と閲覧権

株主総会議事録は、株主総会の日から本社に10年間、支社に5年間保存しておくことが義務付けられます(会社法318条2項)。株主総会議事録が電磁的記録で作成されており、支店の請求に応じることが可能なら保管は不要です。

株主総会議事録の作成や保管を怠った場合、罰則として取締役、監査役などに100万円以下の過料が科されることもあります。

株主・債権者などの株主総会議事録の閲覧・謄写の請求は、正当な目的がある場合には会社の営業時間内であればいつでも認められています。会社の営業を妨害する目的で閲覧請求があった場合、企業側は拒否することが可能です。ただし、正当の目的がないことの立証責任は会社にあるので、慎重な判断が求められます。

議事録の押印方法

議事録の押印方法について解説します。押印の必要性や電子データ化などを説明するので、株式総会の議事録作成時にはチェックしておいてください。

議事録への押印義務の有無と押印が推奨される理由

株主総会議事録の作成では、出席役員の押印義務はありません。しかし、定款に議事録作成で出席した取締役などが記名押印する旨が定められている場合、議事録には押印が必要です。ほかにも、取締役会がない企業が代表取締役選定の決議を行う際には、押印が必要になります。

なお、法的に押印は必須の記載事項ではありませんが、議事録の信憑性を高めるためには対応が推奨されます。

議事録の電子データ保存について

株主総会の議事録は、電子データによる記録・保存が認められています。

ハードディスクやUSBメモリーなどの電子媒体で保存できるため、管理が簡便です。クラウドサービスを利用した保存も電子データ保存に含まれることから、企業に合わせた保存方法を選択可能です。

株主総会議事録を電子的に保存する場合、会社法上の保存義務を満たす必要があり、また文書の見読性や完全性(改ざん防止措置)など、e-文書法の要件に準じた措置を講じることが求められます。

具体的には、以下のような項目が要件となっています。

  • 見読性:明瞭な状態であること
  • 完全性:改ざん・消去がないことの確認ができること
  • 検索性:すぐにデータを引き出せること
  • 機密性:第三者への情報漏洩防止

上記項目をチェックした上で、株主総会の議事録を電子データとして保存するかどうか検討してください。

議事録ひな形の入手先

株主総会の議事録を一から作成するには手間と時間がかかるため、企業ではひな形のテンプレートを使うことが多いです。主な入手先には法務局や会社設立時に作成された議事録などがあります。

それぞれの入手先について詳しく説明します。

法務局が提供するひな形

法務局では、株主総会用の議事録記載例が確認できます(参考:「添付書面の記載例」法務局)。

株主総会議事録の例や株主の氏名、住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト)の例などがあります。企業は内容をコピーして使用できるため、ひな形をもとに株主総会の議事録を作成することが可能です。

会社設立時の議事録ひな形

会社設立時に作成した議事録をひな形として作成する方法もあります。

株式会社設立時は定款の設定や役員の報酬など決定すべきことが多いため、株主からの承認を得るために株主総会が招集されます。会社設立時に作成した議事録が保存されていれば、ひな形として使用することで新たな株主総会で利用可能です。

他にも、インターネット上には株主総会向けの議事録テンプレートを無料提供していることが多いので、自社のひな形を用意できない時はダウンロードを検討してください。

バーチャル株主総会(オンライン・ハイブッド)における議事録作成のポイント

バーチャル株主総会(オンライン・ハイブッド)とは、インターネット環境を利用して株主をオンラインで招集する株主総会です。場所や時間の制限がないため、株主が参加しやすい点がメリットです。一方、使用するシステムの性能や通信環境によっては、一度に参加可能な株主の数に制限が生じる場合があります。大規模な総会の場合は、システムや通信環境の性能を事前に確認することが望ましいでしょう。

また、株主がオンライン会議システム等を用いて株主総会に出席した場合、オンラインかオフラインかという出席方法を株主総会議事録に記載することが推奨されます。ただし、株主がインターネットから審議等を確認・傍聴するだけであれば株主総会議事録の記載は不要です。

こちらの要件を理解した上で、バーチャル株主総会を開催して議事録作成を行うか検討してください。

まとめ

今回は、株主総会の議事録を作成する方法や押印方法、ひな形の入手先まで解説しました。

株主総会の議事録は会社法によって作成が義務付けられているため、株式会社は正しい書き方を理解しておく必要があります。

株主総会用の議事録ひな形があれば、作成をスムーズに進めることが可能です。

ぜひ当記事で紹介した作成方法やひな形の入手先を参考にしながら、株主総会の議事録を作成してください。


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NobishiroHômu編集部
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NobishiroHômu編集部

 

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