法務依頼受付フォームを整備すべき理由
法務依頼の受付フォームを整備することで、依頼の抜け漏れや対応の遅延を防ぎ、法務部の業務を効率化できます。ここではまず、従来の依頼方法における課題と、フォーム導入によって得られる効果を整理します。
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メールやチャット依頼が抱える課題
法務部のある多くの企業では、事業部からの契約レビューや法務相談の依頼が寄せられます。受付用のフォームを整備していない場合、メールやチャットを利用することが多いでしょう。
しかしこの運用では、情報の過不足や依頼の属人化といった問題が発生しがちです。契約書の添付漏れや、法務処理に必要な情報が明記されていないケースが少なくありません。その結果、法務担当者は依頼内容を確認するために追加のヒアリングが必要になり、その分対応が遅れます。
また、依頼のやり取りが個人のメールボックスやチャット上で完結するため、進捗状況を法務部全体で共有できません。担当者が不在の場合、他のメンバーがフォローできず、対応が滞るリスクもあります。
こうした問題は、依頼件数が増えるほど顕在化しやすく、法務部門だけでなく事業部側の生産性を大きく低下させる原因となります。
受付フォーム導入で得られる3つの効果
依頼受付フォームを導入することで、法務業務の効率化に直結する次の3つの効果が得られます。
1. 依頼情報の標準化による対応スピードの向上
フォームにあらかじめ必要項目を設定しておくことで、抜け漏れのない情報収集が可能です。依頼を受けた時点で案件の全体像を把握できるため、初動がスムーズになります。
2. 進捗管理・ナレッジ共有の容易化
フォーム経由で受付けた案件は一元的に管理でき、進捗状況の確認や引き継ぎも容易です。対応内容を履歴として残せば、似た案件への再対応にも役立ちます。
3. 対応履歴の蓄積による法務体制の可視化
案件データを蓄積することで、依頼件数や対応スピードの可視化が可能になります。業務負荷を数値で把握できるため、リソース配分の見直しや業務改善の根拠にもつながります。
法務依頼受付フォームを設計する際の基本構成
効果的なフォームを作成するには、まず目的を整理し、必要項目を明確にすることが重要です。ここでは、設計の進め方と主要な入力項目、運用をスムーズにする工夫を紹介します。
目的を明確にしてフォーム構成を決める
依頼受付フォームの設計では、最初に「どのような依頼を受けたいのか」を明確にします。
例えば契約レビュー、法務相談、押印申請など、依頼の種類ごとに必要な情報は異なります。それぞれの依頼種別を整理したうえで、入力項目を決定しましょう。
また、受付後の対応フローもあらかじめ設計しておくことが大切です。誰が依頼を確認し、どの段階で承認を行うかを定義しておくと、案件の滞留を防ぎやすくなります。
フォームに設定すべき主要項目例
以下は、法務依頼フォームに設定すべき主要な項目の例を「項目名」「設定例」「説明」で整理した表です。
 
これらの項目を標準化しておくことで、依頼内容の把握が迅速になり、後に続く工程で不要なやり取りを減らすことが可能です。
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入力負担を減らす工夫
フォーム設計では、依頼者の入力負担を最小限に抑える工夫も必要です。選択式(プルダウン・チェックボックスなど)を活用すれば、記入ミスを防ぎつつ、回答データの整理が容易になります。
また、「必須項目」と「任意項目」を明確に分けることも重要です。すべてを必須にしてしまうと入力にかかる労力が増し柔軟性も下がるため、結果として後のやり取りを増やす結果に繋がりかねません。最低限の必須項目で依頼内容を把握できるようバランスを取りましょう。
社内ツールで構築する法務依頼受付フォーム
特別なシステムを導入しなくても、社内で利用しているツールを組み合わせることで依頼フォームを構築できます。ここでは、主要な3つの方法を紹介します。
Googleフォーム+スプレッドシートで一元管理
Google Workspaceを利用している企業であれば、Googleフォームが最も手軽な方法です。フォーム作成は直感的で、回答データは自動的にスプレッドシートへ記録することが可能です。
スプレッドシート上で進捗ステータスを管理したり、条件付き書式を使って対応状況を可視化したりすることで、簡易的な案件管理システムとして機能します。また、共有設定を工夫すれば、法務チーム全員でリアルタイムに情報を確認できます。
Microsoft Forms+SharePointでの共有・履歴管理
Microsoft 365を導入している企業では、Microsoft Formsを活用するのも効果的です。フォームの回答結果はExcelやSharePointに自動保存でき、社内ポータルと連携すれば依頼履歴を整理して閲覧できます。
さらに、Power Automateを組み合わせることで、依頼が届いた際に自動で通知を送ったり、タスク管理ツールに案件を登録したりすることも可能です。ツール連携により、対応漏れを防ぎながら効率的に案件を処理できます。
Slack連携による依頼受付の即時対応
日常的にSlackを使っている組織では、Slackワークフロービルダーを利用して依頼受付フォームを作る方法もあります。依頼が送信されると、自動的に指定チャンネルへ通知が届くため、担当者が即座に対応できます。
また、案件の種類に応じて通知先を分岐させたり、担当者を自動で割り当てたりといった設定も可能です。社内でSlackを中心にコミュニケーションを行っている企業では、メールよりもスピーディな依頼対応が実現します。
ナレッジ蓄積と進捗管理を同時に実現する仕組み
受付フォームを導入する目的は、依頼の集約だけではありません。進捗の可視化や、過去の案件を再利用できるナレッジ基盤の整備にも繋がります。
依頼受付と進捗管理を分断しない工夫
依頼受付と進捗管理を別々の仕組みで行うと、データの転記や更新漏れが生じやすくなります。フォームの入力後に自動的に「未対応」のステータスが付与され、担当者が進行に合わせて「確認中」「完了」といったステータスに変更することで、一元的に依頼の状況を管理することが可能になります。案件を一覧化することで、担当者間の引き継ぎも容易になり、個人依存の業務を減らすことが可能です。
対応履歴をナレッジとして再利用
受付フォームと連動したデータベースに案件履歴を蓄積しておくと、過去の対応事例を検索・参照できます。よくある質問や依頼内容をテンプレート化しておけば、同様の案件を効率的に処理できるでしょう。
このように、依頼の受付から進捗管理、対応履歴のナレッジ化まで、フォームを基盤として設計することで、法務業務全体の効率を高められます。
専用システム導入の検討
社内ツールでのフォーム構築は手軽ですが、運用の拡大に伴い限界も出てきます。ここでは、依頼受付フォームの専用システム導入のメリットと注意点を整理します。
フォーム自作との違いと導入のメリット
依頼フォーム専用のシステムを導入すると、フォーム入力後の処理や通知が完全に自動化され、業務負荷をより軽減できます。部署ごとのアクセス権管理や、公開範囲の柔軟な設定が可能なツールも存在しており、自作したツールだけでは設定の難しい項目もあらかじめ組み込まれている点が魅力です。対応履歴についても、自動保存されるため後から案件経緯を追跡しやすく、監査対応にも役立ちます。
システム導入時に注意すべきポイント
導入時には、現場の運用フローに合わせた設計が重要です。既存の業務プロセスとかけ離れたシステムを導入しても、定着しない恐れがあります。
また、ツール利用コストや社内教育の負担も考慮すべき要素です。部署間で共有する際には、公開範囲やアクセス制限の設定を慎重に行い、連携の基盤を整えたうえで導入を進めましょう。
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LegalOnの案件受付フォーム機能で、より柔軟な管理を実現
法務部門の業務を効率化しながら、情報セキュリティと柔軟な運用を両立させるには、専用ツールの活用が有効です。法務AIプラットフォームである「LegalOn」が提供するマターマネジメントモジュールは、法務部向けの依頼受付フォーム機能を備えています。
本モジュールでは、依頼内容に応じて任意項目を自由に設定でき、部署単位でフォームの公開・非公開を切り替えられます。例えば、契約レビュー専用フォームを法務部と営業部内だけに限定公開し、相談受付フォームは全社に展開するなど、運用目的に応じた柔軟な設定が可能です。
さらに、フォーム送信から進捗確認、ナレッジ化までを一元管理できるため、案件の可視化と抜け漏れ防止を同時に実現します。従来のメールやチャットツールでは難しかった「依頼の優先順位付け」や「履歴の自動保存」も、システム上で簡単に行えます。
ナレッジの蓄積や報告資料の作成も効率化でき、法務部の生産性を総合的に高めることが可能です。日々の依頼受付業務を改善したい企業の法務部にとって、本機能は実用的な選択肢となるでしょう。
まとめ:依頼受付フォームはAIを活用する時代に
法務依頼受付フォームを整備することは、単なる業務効率化だけでなく、法務部の信頼性を高める取り組みに繋がります。まずは社内ツールで小規模に始め、運用課題が明確になった段階で専用システムへの移行を検討するのが現実的です。
AIエージェントによる支援機能を備え、柔軟な項目設定と進捗管理を一体化できるLegalOnのマターマネジメントモジュールを始め、属人的な対応を脱却し持続的な法務体制の強化ができる専用システムの導入も検討してみてください。

 
 

