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株式譲渡契約書に記載すべき事項・締結時の注意点|ひな形も紹介

株式譲渡契約書に記載すべき事項・締結時の注意点|ひな形も紹介
この記事を読んでわかること
    • 株式譲渡契約とは何か
    • 株式譲渡契約書に記載するべきこと
    • 株式譲渡契約書のひな形・記載例
    • 契約内容を定める際の注意点

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株式譲渡契約書は、事業承継やM&Aの取引において締結される契約書です。合併や事業譲渡などに比べて、株式譲渡は手続きがシンプルであることから、事業承継やM&Aにおいて活用される頻度が高くなっています。

企業のオーナー経営者や、他社株式を保有している企業の法務担当者は、株式譲渡契約書の締結に関与する機会が発生します。この記事では、今回は株式譲渡契約書について、記載すべき事項や締結時の注意点、収入印紙の貼付方法などを解説します。

※この記事は、2023年3月14日時点の法令等に基づいて作成されています。

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株式譲渡契約書とは

株式譲渡契約書は、譲渡人が譲受人に対して株式を譲渡し、譲受人がこれを譲り受ける契約です。

会社株式を保有する者(=株主)は、その会社の株主総会における議決権を有します。過半数の株式を保有すれば、株主総会における意思決定を支配できます。特に、会社の経営を行う取締役を自由に選任して、経営をコントロールできるのが大きなポイントです。

株式譲渡契約(SPA)とは、株主が譲受人に株を渡すことで経営権を譲渡し、譲渡人となる株主は金銭などの対価を得るための契約です。譲渡人が株券を発行している、あるいは持っている場合は受け渡しが必要ですが、株券不発行会社は株券の受け渡しは不要です。

株式譲渡契約は、民法上の売買契約(民法555条)にあたります。合併や会社分割のような、会社法に規定されている手続きがないため、中小企業のM&Aに広く使われる手法です。

株式譲渡契約の目的

株式譲渡契約書が締結されるケースでは、その大半が非公開会社における支配権の移動を目的としています。

つまり、譲渡人から譲受人へ対象会社の支配権を移動する取引、具体的には事業承継やM&Aを行う際に株式譲渡契約書を締結するケースが多いです。

次のようなパターンが考えられます。

  • 家族に株式を分け与える→ 後継者に対する事業承継として、子・孫といった家族に株式譲渡を行います。
  • 従業員に株式を分け与える→ 従業員の働くモチベーションアップや、経営を担う力を育成するために、株式譲渡を行います(従業員持株)。
  • 外部の協力者に株式を分け与える→ 共同で経営を担う外部の協力者に株式を分け与えることで、形式的にも経営を担ってもらいます。
  • 会社の事業を第三者に売却する→ 経営者が事業を売却して経営から退くため、株式を第三者に売却します。

この記事では、会社の事業を第三者に売却する(M&A)ケースを想定して解説します。

株式譲渡でM&Aするメリット

株式譲渡によるM&Aのメリットは、大きく分けて二つあります。

  • 従業員の雇用や取引関係を存続できる→ 株式譲渡では、株主が変更になるだけで、従業員や取引関係を存続することができます。従業員はこれまでの働き方を大きく変えることなく、仕事をし続けることができます。
  • 手続きが比較的簡易→ 株式譲渡は、事業を承継するためのほかの手続きより簡易です。例えば、「会社分割」や「合併」は、会社法で手続きが定められており、その手続きが完了しなければ事業承継ができません。一方で株式譲渡は取引内容が決まれば短時間で手続きを完了できます。

株式譲渡契約書に定めるべき主な事項

株式譲渡契約書には、主に以下の事項を定めます。

  • 株式譲渡の内容
  • クロージング(譲渡実行)に関する事項
  • 譲渡実行前提条件
  • 表明および保証
  • 競業避止義務
  • 遵守事項
  • 契約の解除
  • 損害賠償
  • 秘密保持
  • 契約の解除
  • その他の一般条項

株式譲渡の内容

株式譲渡契約書におけるもっとも基本的な事項として、株式譲渡の内容を定める必要があります。具体的には、以下の事項を定めます。

  • 株式の銘柄
  • 株式の種類
  • 株式の数
  • 株式の譲渡価格
  • 譲渡実行日

事前に合意していたとしても、認識の違いを防ぐために必ず明記する必要があります。

クロージング(譲渡実行)に関する事項

株式譲渡を実行し、譲渡人から譲受人に株式を移転することを「クロージング」といいます。クロージングに関する事項としては、以下の内容を定める必要があります。

  • 譲渡対価の支払方法
  • 株式の移転
  • 実行後の対抗要件具備(株主名簿の名義書換)※など※株券不発行会社の場合

株式譲渡は、譲受人が対象会社の株主名簿に記載されるまで完了しません。また、株券不発行会社の場合、名義書換は譲渡人と譲受人が共同で行う必要があるため、契約書に盛り込むことが重要です。

なお、譲渡対象となる株式に譲渡制限がついている場合には、譲渡の際に対象会社の承認が必要です。そのため譲渡人に、確実に手続きを実行してもらう必要があります。

譲渡実行前提条件

株式の移転および譲渡対価の支払いにつき、当事者の義務を発生させるために満たすべき前提条件を定めます。株式譲渡では、株主を変更させるための手続きがされないと、効果を発揮できないおそれもあります。そのため、確実に効果を発揮できるよう、前提条件として明記することが考えられます。

相手方が一つでも前提条件を満たしていない場合、当事者は株式譲渡に係る履行義務を負いません。ただし、任意の判断によって相手方による前提条件の充足を免除することは可能です。

表明および保証

売主・買主自身や対象会社について、一定の事項が真実かつ正確であることの表明保証を定めます。

株式譲渡の譲渡人が正式な株式所有者ではなかった場合や、譲渡人が誰かの権利を害する意思を持っていた、など譲受人にとって不測のリスクを避ける役割があります。そのため株式譲渡契約書では、売主側の表明保証を厚めに定めるのが通常です。

遵守事項

株式譲渡の実行前後において、譲渡人・譲受人が遵守すべき事項を定めます。具体的には、譲渡人による競合避止義務や譲受人の雇用維持義務などを定めます。

株式譲渡で経営権を持った譲受人にとっては、自身の事業活動を阻害させない役割があります。譲渡人にとっては、従業員や資産を無制限に流出させないことを担保することができます。

(遵守事項の例)

<実行前>・売主の競業避止義務・売主の重要財産の流出防止義務

<実行後>・買主の雇用維持義務など

契約の解除

契約締結後、クロージング前に株式譲渡契約書を解除できる事由を列挙します。前述のように、株式譲渡では譲受人が経営権を行使して事業が行われる状況でなければ十分な効力を発揮できません。そのため、あらかじめ定めた前提条件が満たされなければ、契約を解除できる旨を定めます。

(契約の解除条件の例)

・契約違反・譲渡実行前提条件の不充足・重大な表明保証違反または遵守事項違反など

損害賠償

株式譲渡において、契約違反や遵守事項への違反等により、売主または買主が何らかの損害を受けた場合、相手方に損害賠償請求をできる条項を定めます。表明保証違反や、契約の解除の原因を作った違反などが考えられます。

どのような場合に損害賠償の請求ができるのかを明記し、必要に応じて上限額を定めたり、損害賠償の請求ができる期間を設けたりといったアレンジも必要になります。

秘密保持

株式譲渡においては、売主・買主間で外部に公にしない秘密事項のやりとりが多くされます。秘密保持についてもあらかじめ株式譲渡契約書に盛り込んでおくといいでしょう。

この項目においては、

  • 秘密情報の定義
  • 第三者に対する秘密情報の開示及び漏洩等を禁止すること
  • 契約終了時の秘密情報の破棄
  • 秘密情報の漏洩が発生した場合の対応

などを記載します。

合意管轄

株式譲渡契約書に関して、万が一、株式譲渡の結果、売主・買主間でトラブルが発生し、裁判で争う事態になった場合、訴訟を提起する管轄裁判所を決定しておき、株式譲渡契約書に明記しておくといいでしょう。この条項を「合意管轄」といいます。

一般的に、自社(買主側)の本社所在地を管轄する裁判所にすることが多いですが、公平性を重視する場合は「被告側の」すなわち訴えられた側の管轄とする文言にすることもあります。

その他の一般条項

上記のほか、反社会的勢力の排除準拠法などの一般条項を定めます。

  1. 反社会的勢力の排除:反社会的勢力に該当しないことの表明保証、暴力行為などをしないことの誓約などを定めた上で、相手方が違反した場合には直ちに契約を解除し、損害賠償を請求できる旨などを定めます。
  2. 準拠法:売主または買主がグローバル企業の場合、準拠法を定めておきます。自社が日本の場合は日本法を準拠法とすることが望ましいと考えられますが、相手方が納得しない場合は、他の国や地域の準拠法を用いることもあります。

株式譲渡契約書のひな形を紹介

株式譲渡契約書のひな形を紹介します。具体的な内容は取引により異なるため、本記事で紹介した条文の記載例を参考に、必要な事項を定めてください。

株式譲渡契約書

○○(以下「甲」という。)と△△(以下「乙」という。)は、以下のとおり株式譲渡契約書を締結する。 

第1条(株式の譲渡)1. 甲は乙に対し、○年○月○日(以下「譲渡実行日」という)において、X株式会社(以下「発行会社」という)の普通株式1万株(以下「本件株式」という)を譲渡し、乙はこれを譲り受ける(以下「本件株式譲渡」という)。2. 乙は、第○条に定める譲渡実行前提条件を充足した場合において、甲に対し、前項に定める株式譲渡の対価として金○○円を支払う。

第2条(クロージング)
1. 乙は甲に対し、第○条第○項に定める譲渡対価(以下「本件譲渡対価」という)を、譲渡実行日において甲が別途指定する銀行口座に振り込む方法によって支払う。なお、振込手数料は乙の負担とする。
2. 前項に基づき、乙が甲に対し本件譲渡対価の全額を支払った時点で、本件株式の所有権は甲から乙に移転するものとする。
3. 甲および乙は、前項に基づき本件所有権が甲から乙に移転した後直ちに、発行会社に対し、本件株式譲渡に係る株主名簿の書換えを共同で請求するものとする。

第3条(譲渡実行前提条件)
1. 本件株式譲渡における乙の義務の履行(注:譲渡対価の支払い)は、譲渡実行日までに次に掲げる条件が全て成就していることを停止条件とする。
(1)発行会社の取締役会において、本件株式譲渡を承認する決議がなされており、かかる決議が記載された議事録の写しを乙が受領していること。
(2)○○が発行会社の取締役を辞任する旨の辞任届の写しを乙が受領していること。
(3)前各号の他、本件株式譲渡および○○の取締役辞任に必要となる手続き、ならびにその他の乙が合理的に協力を求める手続(発行会社の取締役会及び株主総会の決議等を含むがこれらに限らない)がなされており、乙がそれを合理的な方法で確認していること。
(4)第○条に基づき甲が表明および保証した事実が、重要な点においてすべて真実かつ正確であること。

2. 本件株式譲渡における甲の義務の履行(注:株式の移転)は、譲渡実行日までに次に掲げる条件が全て成就していることを停止条件とする。
(1)第○条に基づき乙が表明および保証した事実が、重要な点においてすべて真実かつ正確であること。

第4条(表明および保証)
1. 甲は乙に対し、本契約締結日および譲渡実行日時点において(ただし、時点が明示されている場合には当該時点において)、次に掲げる事項を表明し、保証する。
(1)甲は日本に居住する個人であり、後見開始、補佐開始および補助開始の審判はいずれも開始されておらず、本契約を締結し、履行するために必要な権利能力および行為能力を有している。
(2)甲は、本件株式に係る発行会社の正当な株主であり、本件株式を適切に売却処分する権利を有している。
(3)甲は、乙以外の第三者に対して本件株式を譲渡、担保提供その他本契約に基づく乙の権利を害し、または害するおそれのある処分を行っておらず、かつ、第三者のために将来そのような処分を行う義務を負っていない。
(4)譲渡実行日時点において、本件株式譲渡に必要な一切の手続が履践されている。
(5)甲による本契約の締結および本契約上の義務の履行は、甲を当事者とする契約に違反せず、いかなる法令等にも違反せず、必要な一切の許認可等が取得されており、かつ甲を拘束する判決、命令、裁定その他の処分に違反しない。
(6)甲は、本契約の締結および本契約上の義務の履行により、甲の債権者を害する意図その他の不当または不法な意図を有していない。
(7)甲は、破産手続開始、民事再生手続開始その他類似の倒産手続開始の申立をしておらず、かつ、第三者によるかかる手続の申立もされていない。また、甲は、支払不能または支払停止の状態になく、本契約上の義務を履行することによりこれらの状態に陥ることもない。
2. 乙は甲に対し、本契約締結日および譲渡実行日時点において(ただし、時点が明示されている場合には当該時点において)、次に掲げる事項を表明し、保証する。
(1)乙は日本に居住する個人であり、後見開始、補佐開始および補助開始の審判はいずれも開始されておらず、本契約を締結し、履行するために必要な権利能力および行為能力を有している。

第5条(遵守事項)
1. 甲は、次に掲げる事項を遵守するものとする。ただし、乙の書面による承諾を得た場合には、この限りでない。
(1)譲渡実行日から○年間、発行会社と同一、同種または実質的に競合する事業を、直接または間接に行わないこと。
(2)本契約締結日から譲渡実行日までの間、発行会社の重要な財産を流出させる行為、その他の発行会社の財務に重大な悪影響を生じさせる行為をしないこと。
2. 乙は、次に掲げる事項を遵守するものとする。ただし、甲の書面による承諾を得た場合には、この限りでない。
(1)発行会社の従業員全員を継続雇用すること。ただし、法令等に基づき解雇または雇い止めが認められる場合は、この限りでない。

第6条(契約の解除)
1. 甲および乙は、相手方が本契約に違反した場合(第○条に定める遵守事項の違反を含むが、これに限らない)、相当期間を定めて催告をした後、本契約を解除することができる。
2. 甲および乙は、譲渡実行日において、第○条に定める譲渡実行前提条件のうち、相手方に係るものが一つでも充足されなかった場合には、直ちに本契約を解除することができる。
3. 甲および乙は、第○条に定める表明および保証のうち、相手方に係るものが重要な点において虚偽もしくは不正確であることが判明した場合、直ちに本契約を解除することができる。

第7条(秘密保持義務)
1. 甲及び乙は、本契約締結日から○年間、(1)本契約の検討又は交渉に関連して相手方から開示を受けた情報、(2)本契約の締結の事実並びに本契約の存在及び内容、並びに(3)本契約に係る交渉の経緯及び内容に関する事実(以下「秘密情報」と総称する。)を、相手方の事前の書面による承諾なくして第三者に対して開示してはならず、また、本契約の目的以外の目的で使用してはならない。ただし、上記(1)の秘密情報のうち、以下の各号のいずれかに該当する情報は、秘密情報に該当しない。
① 開示を受けた時点において、既に公知の情報
② 開示を受けた時点において、情報受領者が既に正当に保有していた情報
③ 開示を受けた後に、情報受領者の責に帰すべき事由によらずに公知となった情報④ 開示を受けた後に、情報受領者が正当な権限を有する第三者から秘密保持義務を負うことなく正当に入手した情報⑤ 情報受領者が秘密情報を利用することなく独自に開発した情報
2. 甲及び乙は、前項の規定にかかわらず、以下の各号のいずれかに該当する場合には、秘密情報を第三者に開示することができる。
① 自己(甲においては対象会社を含む。)の役員及び従業員並びに弁護士、公認会計士、税理士、司法書士及びフィナンシャル・アドバイザーその他のアドバイザーに対し、本契約に基づく取引のために合理的に必要とされる範囲内で秘密情報を開示する場合。ただし、開示を受ける者が少なくとも本条に定める秘密保持義務と同様の秘密保持義務を法令又は契約に基づき負担する場合に限るものとし、かかる義務の違反については、その違反した者に対して秘密情報を開示した当事者が自ら責任を負う。
② 法令等の規定に基づき、裁判所、政府、規制当局、所轄官庁その他これらに準じる公的機関・団体(事業承継・引継ぎ支援センターを含む。)等により秘密情報の開示を要求又は要請される場合に、合理的に必要な範囲内で当該秘密情報を開示する場合。なお、かかる場合、相手方に対し、かかる開示の内容を事前に(それが法令等上困難である場合は、開示後可能な限り速やかに)通知しなければならない。

第8条(合意管轄)合意管轄本契約に関する全ての紛争(裁判所の調停手続きを含む)は、◯◯地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。

第9条(反社会的勢力の排除)
1. 本契約の当事者は、自社、自社の株主・役員その他自社を実質的に所有し、若しくは支配するものが、現在、暴力団、暴力団員、暴力団 員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ又は特殊知能暴力集団等、 その他これらに準ずる者(以下これらを「暴力団員等」という。)に該当しないこと、及び次の各号のいずれにも該当しないことを表明し、 かつ将来にわたっても該当しないことを確約する。
⑴暴力団員等が経営を支配していると認められる関係を有すること
⑵暴力団員等が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること
⑶自己、自社若しくは第三者の不正の利益を図る目的又は第三者に損害を加える目的をもってする等、不当に暴力団員等を利用していると認 められる関係を有すること
⑷暴力団員等に対して資金等を提供し、又は便宜を供与する等の関与をしていると認められる関係を有すること
⑸役員又は経営に実質的に関与している者が暴力団員等と社会的に非難されるべき関係を有すること
2. 本契約の当事者は、暴力団員等と取引関係を有してはならず、事後的に、暴力団員等との取引関係が判明した場合には、これを相当期間 内に解消できるよう必要な措置を講じる。
3. 本契約の当事者は、相手方が本条の表明又は確約に違反した場合、何らの通知又は催告をすることなく直ちに本契約の全部又は一部につ いて、履行を停止し、又は解除することができる。この場合において、表明又は確約に違反した当事者は、相手方の履行停止又は解除によって被った損害の賠償を請求することはできない。 4. 本契約の当事者は、相手方が本条の表明又は確約に違反した場合、これによって被った一切の損害の賠償を請求することができる。

第10条(準拠法)本契約は、日本法に準拠し、これに従って解釈される。

…… 以上 本契約締結を証するため、正本2通を作成し、甲乙それぞれ記名押印のうえ各1通を所持する。

○年○月○日

甲       [住所]          [氏名or名称]          [(法人の場合)代表者]   印
乙       [住所]          [氏名or名称]          [(法人の場合)代表者]   印

株式譲渡契約書を締結する際の注意点

株式譲渡契約書を締結する際には、特に以下の各点にご注意ください。

  • 会社法上の手続きが必要な場合
  • 前提条件・表明保証・遵守事項は特に要チェック
  • 例外的な株式譲渡の際は慎重に
  • 非上場企業の場合は譲渡制限に注意
  • 株券の発行有無を確認する
  • 株式譲渡契約書の保管期限
  • 株式譲渡契約書に収入印紙は原則不要
  • 個人間取引の場合でも契約書を作成する
  • 印鑑は実印が推奨
  • 自社に不利益な条項を見落とさない

会社法上の手続きが必要な場合

株式譲渡を行う際、非公開会社の場合は、以下の機関による譲渡承認が必要です。

  • 定款に定めがある場合→定款に定められた機関
  • 定款に定めがなく、かつ取締役会設置会社の場合→取締役会
  • 定款に定めがなく、かつ取締役会設置会社でない場合→株主総会

また、株式譲渡の事実を発行会社に対抗するためには、実行後に株主名簿の書換えを申請する必要があります。

譲渡承認については表明保証、株主名簿の書換え申請についてはクロージングに関する事項などにおいて、それぞれ明記しておきましょう。

前提条件・表明保証・遵守事項は特に要チェック

譲渡実行前提条件・表明および保証・遵守事項の3つは、株式譲渡の条件に関して非常に重要な条項です。そのため、株式譲渡契約書をレビューする段階では、特にこの3つを慎重にチェックしましょう。

また、譲渡実行前提条件・表明および保証についてはクロージングの段階で、遵守事項についてはクロージング前後において、実際の状況を確認することも大切です。

例外的な株式譲渡の際は慎重に

株式譲渡契約といっても、事業の譲り受けやM&Aなど、例外的な株式譲渡の際は注意が必要です。その場合、経営権が移転するため、会社法の定めによって移転後の経営のために詳細な規定が必要になることがあります。

また、譲渡する株式に譲渡制限がついている場合は、対象会社の承認が必要です。日本の中小企業の場合、多くがこの譲渡制限を設けています。こういった例外的な株式譲渡においては、特に専門家のアドバイスを仰ぎ、慎重な締結を進めましょう。

非上場企業の場合は譲渡制限に注意

株式譲渡契約をするのが非上場企業であった場合でも、基本的に株式譲渡契約書の内容に違いはありません。

ただし、非上場企業は証券取引所で株式を公開しておらず、多くは譲渡が制限された「譲渡制限株式」となっています。

株式の譲渡には株主総会の承認が必要とされ、株主名義書換請求も必要であるなど、注意すべき点もあります。非上場企業の株式譲渡の場合は、譲渡制限が設けられていないか、事前に確認しましょう。

株券の発行有無を確認する

2018年5月1日の「新会社法」施行までは、株券発行会社が主でしたが、施行後は株券を発行しないことが原則になっています。株券を発行する会社は、定款で発行することを定めています。

株券発行会社の株式譲渡では、株券の交付が必要です。株券を発行していないことを前提として株式譲渡契約を結んでしまうと、有効に株式を取得できない可能性があるため注意が必要です。

株券発行会社か否かは、会社の登記簿で確認できます。

株式譲渡契約書の保管期限

法人が株式譲渡契約書を作成したのであれば、契約書の保管期間は法人税法により定められるので、基本的に7年間となります。もし、欠損金が発生すれば、保管期間は10年間となります。

個人間の株式譲渡契約であれば、法律上は保管期限の定めはありません。ただし、その契約書を確定申告に使用した場合は、5年間の保管が義務付けられています。

株式譲渡契約書に収入印紙は原則不要

株式譲渡契約書は、印紙税における「課税文書」の対象ではないので、原則として収入印紙を貼付する必要はありません。1989(平成元)年3月31日までは収入印紙の貼付が必要でしたが、現在は不要となっています。

ただし、株式譲渡代金の前払いなど、すでに代金の授受があり、かつ、株式譲渡契約書にその旨が記載されている場合は、株式譲渡契約書が「受取書」としての性質も持つことになります。その場合は収入印紙を貼付する必要があり、下記の金額の収入印紙が必要です。

  • 5万円未満:非課税
  • 5万円以上、100万円以下:200円
  • 100万円超、200万円以下:400円
  • 200万円超、300万円以下:600円
  • 300万円超、500万円以下:1,000円
  • 500万円超、1,000万円以下:2,000円
  • 1,000万円超、2,000万円以下:4,000円
  • 2,000万円超、3,000万円以下:6,000円
  • 3,000万円超、5,000万円以下:1万円
  • 5,000万円超、1億円以下:2万円
  • 1億円超、2億円以下:4万円
  • 2億円超、3億円以下:6万円
  • 3億円超、5億円以下:10万円
  • 5億円超、10億円以下:15万円
  • 10億円超:20万円

(参考:国税庁サイト https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7141.htm

なお、印紙税は、作成者が納税義務者になるとされているため(印紙税法第3条第1項)、基本的に作成者が負担します。一方、書類の多くは、双方が保管するため1通ずつ作成する場合がほとんどで、双方で2通分の印紙税を折半するのが一般的です。

個人間取引の場合でも契約書を作成する

個人間における株式譲渡の場合はどうでしょうか。基本的に、個人間の株式譲渡でも、株式譲渡契約書の内容に違いはありません。企業ではなく個人間であってもトラブルの可能性はありますので、契約書は必ず作成する必要があります。

印鑑は実印が推奨

株式譲渡契約を締結する際は、譲渡人、譲受人双方の押印が必要です。

押印する印鑑は、実印でも認印でも、法的効力を発生させる観点では違いがありません。一方で、株式譲渡契約は経営権を移動させるという会社にとって重大な取引であるため、実印を用いることが推奨されます。

契約にあたって印鑑証明書が必要な場合にも、実印を用いることで契約書に押印したのが当事者であることを証明できます。

自社に不利益な条項を見落とさない

株式譲渡契約書のドラフトを相手方が作成した場合は、自社に不利益な条項が含まれている可能性が高いので、いっそう慎重なレビューが求められます。

相手方の義務を極端に軽減する条項や、自社の義務が標準よりも加重される条項などを発見したら、相手方に対して必ず修正を求めましょう。

株式譲渡契約書の締結プロセス

株式譲渡契約書の締結にあたり、どのようなプロセスをたどるのかを整理しました。全体の流れを把握する参考にしてください。

基本合意

譲渡人と譲受人が、株式譲渡の基本的な条件(対象株式、譲渡価格、譲渡日など)について大枠で合意します。この段階で、基本合意書(意向表明書)が作成されることがあります。

譲渡承認手続き(譲渡制限株式の場合)

譲渡対象の株式に譲渡制限がある場合、会社(取締役会または株主総会)の承認が必要です。譲渡人が、会社に対して譲渡承認請求を行います。この際、「承認請求書」が作成されるのが一般的です。請求書を受け取った会社は、譲渡承認または不承認の決定を行い、譲渡人に通知します。

また、承認手続きは株式の譲渡後でも可能です。その場合は、適切に承認プロセスが行われることを担保するべく、契約書に定めておくことが考えられます。

デューデリジェンス(Due Diligence)

譲受人は、譲渡対象会社に対して、財務、法務、税務などに関する調査(デューデリジェンス)を行います。株式譲渡では、譲受人が会社の状況を正しく評価できなければ、譲受後に思わぬ損失を被るおそれがあります。

デューデリジェンスを行うことで、譲受人は譲渡対象会社の状況を把握し、購入価格の妥当性や契約条件を適切に検討することができます。

株式譲渡契約書の作成・締結

譲渡人と譲受人は、デューデリジェンスの結果を踏まえ、株式譲渡契約書を作成します。これまで解説してきた項目について検討し、双方が契約内容に合意したら、契約書に署名・捺印し、契約を締結します。契約書に、すでに代金を受け取ったことを記載した場合は、課税文書の対象となるため収入印紙を貼付することが必要です。

株式の引渡し・代金の支払い

契約書に定められた譲渡日に、譲渡人は譲受人に株式を引渡します。譲受人は、譲渡人に譲渡代金を支払います。一方で、株式譲渡契約では前提条件が定められている場合も多く、契約締結から決済までに期間が空くケースもあります。

株主名簿の書き換え

多くの中小企業は株券不発行会社のため、株主名簿の書き換えによって、株式譲渡の効力を発生させることができます。譲渡人と譲受人が、会社に対して名義書換請求手続きを行い、会社側が手続きを経て株主名簿記載事項証明書を譲受人に対して交付することで、株式譲渡の一連の手続きが完了します。

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NobishiroHômu編集部
執筆

NobishiroHômu編集部

 

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