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法務はダイナミックでおもしろい

法務はダイナミックでおもしろい

ボールペン「ジェットストリーム」や水性サインペン「ポスカ」といった筆記具販売を手掛ける三菱鉛筆株式会社(uni)。1887年創業の老舗は、ありたい姿(長期ビジョン)として『世界⼀の表現⾰新カンパニー』と銘打ち、近年はこれまでより多くのプロジェクトを展開する。国内外での成長を目指すuniに伴走する法務担当者は、もともと営業出身。営業時代は法務の役割をよく把握しておらず、印象が薄かったが、いまは自らの法務を「ダイナミック」と自負する。その訳や、理想の法務部門について聞いた。

藤本 圭 氏 プロフィール
大学卒業後、2014年、三菱鉛筆株式会社に入社。国内営業部を経て、2020年に法務部門へ。契約審査、法律相談、新規事業の立ち上げサポート及び株主総会業務を担うほか、同社の急速なグローバル化に対応した体制の構築や、法務メンバーの自律的成長につながる仕組みづくり、法務のプレゼンス向上に向けた活動に取り組んでいる。企画好きで、社員間のコミュニケーション増進を図った企画なども手掛ける(社内フィットネススペースの創設や体力測定イベント等)。

もっと会社を知りたくて法務へ

法務部門は室長、グループ長、私を含む数人で、国内外の契約書レビューや法務相談、株主総会、M&Aといったあらゆる役割を担っています。こういった私自身の担当実務のほか、メンバー間における業務分担の調整、他メンバーの業務フォローといった役割も担っています。

私は新卒で当社に入り、国内営業担当として商品のプロモーション企画や販売促進、PR施策など営業部門における複数のプロジェクトに携わり、充実した日々を過ごしていました。しかし、6年経ったときに自身を振り返ると「会社においてまだ知らないことが多いな」と気づきました。

業務において、他部門との協働が必要な場面もあるなかで、他部門を経験してきた上司との知見の差を痛感することもありました。営業の知識はある程度身につきましたが、バックオフィスのことはよくわからない。海外事業についても、研究開発部門や生産部門がどんな仕事をしているかも詳しくは知らない。今後のキャリアのことを考えると、あせりが出てきました。

「もっと会社全体のことを知らなくては」と思い、手を挙げて法務部門に異動しました。法務を目指したのは、企業としての新たなチャレンジに携われますし、あらゆる情報が集まるため、さまざまな部門や業務に関わることができるはずだという考えからです。

加えて、様々な部門と関わるチャンスのある部門は他にもありますが、そのなかでも法務は専門性が高く「参入障壁」が高い。さらに業務のイメージがつきにくいこともあって、他部門から積極的に手を挙げる人も少ない、すなわち異動希望が通る可能性が高いとも考えました。私は大学時代に法律を専攻していましたし、社会人としてのスキルを身につけるうえで、法務は魅力的に映りました。

「ゆるそう」と思っていた法務、実際やってみると…

そんな中、法務部門に異動してきたのは2020年4月。コロナ禍の真っ只中でした。配属初日に出社停止の状態で、私は営業の仕事の引継ぎなどをするために出社したのですが、他の法務担当者は誰もいないという状態でした。

最初の仕事として言われたのは、「LegalForce見ながらこの契約書レビューしてみて」。LegalForceを使ってレビューの解説を一つひとつ読みながら論点を勉強し、もちろん書籍も読みながら、レビューを進めていきました。案件を多くこなすことが大事だと思っていたので、先輩のサポートをもらいながら、なるべく多くの契約書を担当させてもらい、経験を少しずつ積んでいきました。

異動前の法務の印象は、正直なところ、営業と比べれば「ゆるそう」と思っていましたが、実際にやってみるとまったく違っていました。契約審査のような事業部側から見えているものだけでなく、経営陣に対して直接提言したり、限られた人にしか言えない業務も多くあります。仕事は想像以上にたくさんありました。

法務として目立つことを意識

法務に来てまず課題に感じたことは、「法務に事前相談したほうがいい」という発想に至らずに実務が進んでいることがあるということでした。契約審査は法務に相談してもらえますが、それ以外のことでももっと気軽に相談できる空気感が必要と感じました。

そのための第一歩として、まずは「自分に指名で相談が来る状態」を目指し、いろいろな部門の社員とすこしでも多くコミュニケーションを取ることを心がけました。メールでのやり取りだけだと、私という人間を認識してもらいづらいですし、相手の要望や案件の背景を深く聞き出せないので、口頭や電話でのコミュニケーションを優先しました。

また、いろんな案件に手を挙げて取り組みましたし、散歩と称して社内をウロウロして、話すきっかけを探しにいくなどしました。

ほかにもあえて目立つ試みもしました。ヒゲをはやしたり、サングラスをかけたり、周囲よりあえてラフで目立つファッションをしてみたり。方向性があっていたかは分かりませんが、できることに取り組んで、法務部門の社内での立ち位置をあげることに力を入れました。

そのほか、社内ポータルサイト内にある法務室の掲示板をリニューアルして「おしえて!法務室」というキャッチ―な名称にしたり、各事業所やグループ企業での勉強会の開催を増やしたり、出張相談窓口を設けました。

そうしているうちに徐々に相談のハードルが下がってきて、以前では相談が来なかったタイミングでも相談が来るようになりました。こういった活動を通して、グループ会社からも「法務で何かあったら本社の法務に相談できる」と思ってもらえるまでになりました。

これらの活動の結果は数字にも表れています。当社法務部門の2023年における相談件数は、2019年と比較すると2倍に増加しました。一方、現在の課題としては、会社の「中期経営計画2022-2024」にも定めているグローバル化に向けた取り組みです。今後さらに、海外も含めたグループ全体のガバナンスやコンプライアンス強化を目指して、法務部門のグローバルな交流も急速に進めていきたいと考えています。

法務はめちゃくちゃおもしろい

営業から法務になって一番の印象は、一言でいうと「めちゃくちゃ面白い」です。会社の大きな意思決定にも関わり、経営層ともコミュニケーションを取りながら法務の立場から提言することができる。上司の理解もあって、当社法務部門ではイチ担当者でもそのような機会を任せてもらえるチャンスがあり、すごくダイナミックで面白い仕事だと感じています。

また、各部門の担当者の方が法務に相談をしてくれる、ということは、自分の会社を良くしようとしてるということだと思います。実現させようとしている思いを、良い方向にもっていくのも法務の面白さです。

大きな夢があるから真剣に相談もくれる。そういう担当者に対して、いかにすっきり、納得してビジネスを進めてもらうかも役割の一つだと思います。

プロジェクトなどを通じて、「うちの会社楽しいよね。未来あるよね」と言い合える仲間が増えるのもうれしいです。

「やりたい人がやる」法務が強くなる

法務は業務柄、受け身な対応になることも多い部門です。ただ、それを単に「やらされている仕事」と捉えてしまってはもったいないと思っています。同じ時間働くなら、主体的に「やりたい」と思って働いたほうが楽しいと思います。

私はどんな案件であっても、相談相手や関係者、加えて自分にとってもプラスになる点を見出して、業務に対して前向きなマインドを持つように意識しています。

また、自分に限らず、チームメンバーにも同じように楽しく働いてもらいたいと考えており、メンバーが自分から「やりたい」と思ったことを実現できるような環境づくりも意識しています。

たとえば、メンバー間で案件を分担する際にも、その担当者にその業務をお願いする理由や狙いを、伝えるようにしています。その効果なのか、最近では案件の役割分担を決める際にも、各メンバーが挙手して対応することのほうが多くなってきました。

個々人の自主性を尊重し、前向きな気持ちをサポートすることが、法務部門を強くする手段だと思うので、これからもこういった活動を継続していきたいと思います。

また、当社の「ありたい姿2036(長期ビジョン)」に基づいて、法務部門のメンバー全員で議論して、「法務部のありたい姿」を策定しています。その一環として、法務担当者として備えておきたいスキルを可視化したスキルマップを昨秋に作成し、メンバーの評価制度に導入しています。

その結果、メンバー個々人が「いまの自分に足りないものは何か」を意識することができるようになり、その部分を改善しようと主体的に努力するようになりました。このスキルマップの導入前後でメンバーのモチベーションに変化があったと思いますし、

前よりもさらに全員が主体的かつ前向きで、お互いを支えあえる素晴らしいチームになったと感じています。 

やっぱり「やりたい人がやる」組織の方が「強い法務」になるはずです。

この記事を書いた人

NobishiroHômu編集部

エディター

NobishiroHômu編集部

法務の可能性を広げるメディア「NobishiroHômu」を編集しています。若手からベテランまで、幅広い読者の関心にこたえる記事を配信します。

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