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【弁護士監修】全部事項証明書とは? 取得方法や登記事項証明書との違いを解説

【弁護士監修】全部事項証明書とは? 取得方法や登記事項証明書との違いを解説
この記事を読んでわかること
    • 全部事項証明書とは何か
    • 全部事項証明書が必要となる場面
    • 全部事項証明書の取得方法


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弁護士 寺林 智栄

2007年弁護士登録。現在札幌弁護士会所属。NTS総合弁護士法人札幌事務所所長弁護士。一般民事、企業法務、離婚、債務整理、労働問題、債権回収などの経験が豊富。




全部事項証明書という書類があります。今回は、全部事項証明書の内容を紹介するとともに、取得方法などもご案内します。

<関連記事>登記簿謄本(登記事項証明書)とは?法務局での取得方法は?

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全部事項証明書とは?

全部事項証明書は法務局が発行し、不動産の所在や登記の権利関係を証明する書類です過去の履歴(所有権の移転、抵当権の設定・抹消など)も全て記載され、内容に嘘偽りがない、真正なものであることを明かします。

書類のサイズはA4で、法務局専用の薄い緑色の用紙を使用。最後の部分には法務局登記官の押印が入っていて、内容が確かなものであることを証明しています。

全部事項証明書と登記事項証明書との違い

似た言葉に登記事項証明書がありますが、全部事項証明書は登記事項証明書のうちの一つです。登記事項証明書には、他に以下の三つの書類が含まれます。

  • 現在事項証明書
    現在の権利関係など、現時点で有効な登記事項のみを記載した証明書
  • 一部事項証明書
    不動産の所有権のみ、会社の役員情報のみなど、特定の事項に絞って確認したい場合に利用される証明書
  • 閉鎖事項証明書
    登記簿が閉鎖された場合に閉鎖時の情報を確認するための証明書

全部事項証明書と現在事項証明書の違いについてですが、前者には登記の履歴全て、過去から現在までの記録が記載されているのに対して、後者は現在の記録のみが記載されています。

全部事項証明書と謄本の違い

全部事項証明書と謄本の違いを説明します。

書類の内容自体はどちらも変わりません。違うのは、全部事項証明書がコンピュータが管理しているデータを出力したものであるのに対して、謄本が紙管理されたものをコピーしたものであることです。

全部事項証明書はどんな場面で必要になる?

全部事項証明書が必要になる場面は以下のような時です。

  • 不動産に関する税金の手続きをするとき
  • 不動産取引をするとき
  • 銀行で手続きをするとき
  • 不動産に関する訴訟の当事者となったとき

不動産に関する税金の手続きでは、特に特例の適用を受けたいときに築年数や専有面積などの要件確認のために全部事項証明書が必要になります。具体的には、住宅ローン控除のための確定申告や、不動産取得税の軽減を受ける場面などです。

不動産の売買をするときは、権利関係を明確にしなければいけませんから、全部事項証明書がなければ取引が成立しません

銀行での手続きでは、融資を受ける際の与信審査や、担保として不動産を登記する抵当権設定登記を行う場合などで必要になります。

賃貸物件の明渡請求や未払賃料請求など、不動産に関する訴訟でも同様に必要な場面があります。 

そのほか、全部事項証明書が必要になる場面でも、原本を準備しないといけない時とコピーで構わない時があるほか、提出が不要でも、不動産の特定をするときに使うこともあるでしょう。

全部事項証明書の取得方法 

全部事項証明書の取得方法を解説します。取得方法は3種類あり、それぞれの方法を解説します。

取得する際に必要なもの

全部事項証明書を請求する際に必要な書類などはなく、身分証明書や住民票、戸籍などの本人確認書類を提出する必要もありませんただし、請求する際に踏まなければいけない手続きがあるので、所得方法別に紹介します。

法務局の窓口で取得する方法

全部事項証明書は法務局の窓口で請求・取得できます。窓口で請求する際は、登記事項証明書交付請求書に必要事項を記入し、地番を確認し、印紙を購入しなければいけません。

地番は不動産の所在地を管理する番号です。地番が確認できないと、全部事項証明書は交付されません。不動産の権利証、登記識別情報、固定資産税の納付書などで確認する方法のほか、法務局に問い合わせて教えてもらうことも可能です。

全部事項証明書の発行手数料は印紙で支払うので、購入します。申請は、どこの法務局で申請しても構いません。最寄りの窓口で、全国の全部事項証明書を取得できます。

オンラインで取得する方法

法務局が遠い、訪問する時間が取れないなどの事情があるのなら、法務省が提供する登記・供託オンライン申請システムを利用することでオンラインでの全部事項証明書の申請・取得ができます。方法は2つです。「かんたん証明書請求」を利用するか、「申請用総合ソフト」を利用するかのいずれかです。

前者は対応する手続きが登記事項証明書等の交付請求に限定される一方でWebブラウザから利用でき、後者は専用アプリをパソコンにインストールする必要がある一方で登記・供託オンライン申請システムで取り扱う手続の全てを行うことができます。

オンラインで全部事項証明書の請求をする場合は、オンライン専用システムへの会員登録をし、地番を確認し、手数料納付方法を選びます。納付方法はインターネットバンキング、あるいはATM払いです。手数料の額は窓口請求よりも安くなっています。
オンラインで全部事項証明書を請求した時は、法務局の窓口か郵送で受け取ってください。

また、不動産や法人の登記情報を閲覧したいだけであれば、同じく法務省が提供する登記情報提供サービスを利用するのが簡単です。利用者登録を行えば、画面上で登記情報を確認し、さらにPDFで保存することも可能です。ただし、あくまで閲覧用ですので、保存したPDFに法的な証明力はないことには注意が必要です。 

郵送で取得する方法

郵送による全部事項証明書の請求・取得もできます。郵送する場合は、まず法務局のホームページから登記事項証明書交付請求書をダウンロードしましょう。次に必要事項を記入して、印紙を貼付し、返信用封筒を含めて送ります。すると、返信用封筒に入った全部事項証明書が送られてくるでしょう。

法務局が近くにない、オンラインが利用できないなどの場合は、郵送は便利な手段ですが、いつ返信されるかが分かりません。1~2週間待つこともあるでしょう。

申請書の書き方 

全部事項証明書の申請書を登記事項証明書交付請求書と言います。申請書の記入例は以下のとおりです(「土地・建物の登記事項証明書を請求する場合」の例)。申請書は、法務局の窓口で受け取れるほか、法務局のWebサイトからオンラインでダウンロードして印刷し、手書きで記入することも可能です。

▼土地・建物の登記事項証明書を請求する場合の登記事項証明書交付請求書(記入例)

法務局、登記事項証明書 登記簿謄本・抄本 交付請求書の記入例

画像引用元:法務局|登記事項証明書 登記簿謄本・抄本 交付請求書

申請手数料

全部事項証明書の申請手数料は以下のようになっています。窓口や郵送での請求の場合、手数料は申請書に収入印紙を貼付することで納めます。

全部事項証明書の見方

表題部と権利部

全部事項証明書の表題部は不動産の特定情報が記載されている部分です。土地や建物に関する詳細な情報が記されています。権利部は不動産の権利内容を記載した部分です。甲区と乙区があり、甲区には所有権に関する事項、乙区には抵当権など所有権以外の権利内容が記されています。

土地の全部事項証明書の見方

法務局、全部事項証明書(土地) 見本

画像引用元:法務局|全部事項証明書(土地) 見本

土地の全部事項証明書に記載されているのは次のような内容です。

表題部

  • 調製
    この登記記録が調製(作成)された日付の記載欄。主に電子データ化された登記簿へと転記された年月日が記載される
  • 所在
    対象の不動産の所在場所
  • 地番
    土地を特定する番号
  • 地目
    土地の用途
  • 地積
    公簿上の土地の面積
  • 登記の日付/原因
    土地の形状を変えたときの原因と登記日

権利部(甲区)

所有権に関する事項が記載されています。

  • 順位番号
    甲区欄内で登記がなされた順番に合わせて付与される番号
  • 登記の目的
    登記がされた目的
  • 登記年月日・受付番号
    登記の受付がされた年月日と法務局が発行した受付番号
  • 権利者その他の事項
    登記がされた理由と所有者の氏名や住所

権利部(乙区)

所有権以外の権利に関する事項が記載されています。記載項目は甲区と同様です。

  • 順位番号
  • 登記の目的
  • 受付年月日・受付番号
  • 権利者その他の事項

複数の不動産が同じ債権の担保として提供されている場合、乙区の後にさらにそれら不動産の情報がまとめて記載される、「共同担保目録」の記載が続く場合があります。

建物の全部事項証明書の見方

法務局、全部事項証明書(建物) 見本

画像引用元:法務局|全部事項証明書(建物) 見本

建物の全部事項証明書には次のような内容が記されています。権利部(甲区・乙区)、共同担保目録の記載内容は全部事項証明書(土地)と基本的に同様です。

表題部

  • 建物の不動産番号
    識別番号のこと
  • 建物の所在
    所在場所
  • 家屋番号
    建物を特定する番号
  • 建物の種類
    用途のこと
  • 建物の構造
    木造や鉄筋コンクリートなど
  • 各階の床面積
    平面図・図面に基づく床面積
  • 登記の日付/原因
    登記を受け付けた日と原因
  • 表題部の所有者
    表題部の登記を申請した時点での所有者

建物(区分所有)の全部事項証明書の見方 

法務局、全部事項証明書(建物(区分)) 見本1枚目

法務局、全部事項証明書(建物(区分)) 見本2枚目

画像引用元:法務局|全部事項証明書(建物(区分)) 見本

建物(区分所有)の全部事項証明書には建物の全部事項証明書と共通の事項以外に、次のような事項が記されています。なお、権利部(甲区・乙区)の記載内容は全部事項証明書(土地)と基本的に同様です。

表題部の上

  • 専有部分の家屋番号
    一棟の建物の専有部分の一覧

表題部 (一棟の建物の表示)

  • 建物の名称
    ●●マンションなど建物の名称

表題部(敷地権の目的である土地の表示)

  • 専有部分と一体化している土地の情報を記載

表題部(専有部分の建物の表示)

  • 建物の名称
    マンションの部屋番号など
  • 種類
    建物の種類
  • 構造
    建物の構造。区分建物の場合、縦断区分建物を除き専有部分の構造に屋根は含まれない
  • 床面積
    専有部分の床面積

表題部(敷地権の表示)

  • 敷地権の種類
    所有権、賃借権、地上権など、専有部分と一体化した土地の権利の種類
  • 敷地権の割合
    土地の持分
  • 原因及びその日付(登記の日付)
    専有部分と一体化した日付

まとめ

今回は、全部事項証明書の概要や取得方法などを解説しました。不動産取引では、不動産の権利関係などを確認する際に全部事項証明書が必要になります。必要になったら、記事で説明した3つの方法のいずれかを利用して、申請・取得してください。手続きで迷わないように事前に調べた上で、申請しましょう。 

契約書管理は、アップロードするだけ

このように全部事項証明書は、不動産関連をはじめ、企業においても重要な法的文書となります。こうした文書の適切な管理は、健全な経営のためにも欠かせませんが、人の手だけで万全に行うことは困難でしょう。

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NobishiroHômu編集部

この記事を書いた人

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