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価値発揮を妨げるのは「恐れ」。事業を語れる法務になろう

価値発揮を妨げるのは「恐れ」。事業を語れる法務になろう

「子どもを取り巻く環境をテクノロジーの力でよりよいものに」をミッションに掲げ、保育・教育施設向けICTサービス「CoDMON」を展開する株式会社コドモンに、一人目の法務担当者として入社した。法務として事業貢献が求められるなか、価値発揮を妨げるのは「恐れ」だと、自身の経験を踏まえて語る。成長企業での心構えや求められる取り組みとは何かを聞いた。


多田 昂正 氏 プロフィール

法科大学院修了後、法律・税務中心のインターネットサービス企業でWebディレクター、営業、法務などを経て、コドモンに初の法務として2021年6月に入社し、法務機能を立ち上げ。契約法務を中心に、ビジネスと法務両輪でのスキーム整理や、契約交渉、取締役会・総会・登記といった機関法務など、社内の全領域に幅広く関わる。2022年8月には一人法務からチーム化し、2023年2月には当時の総務チームとあわせてマネージャーとして両チームの強化に努める。現在では法務・環境推進(総務系)・人事のゼネラルマネージャーを担う。

Webディレクターから法務に転身

大学では宗教社会学を学んでいましたが、両親が裁判所などの通訳をしていた関係で弁護士と知り合い、「法律は道具に過ぎない。それを使って人助けや事業をする」と言われたことに魅かれ、法律家を目指すようになりました。

法科大学院の修了後、弁護士事務所のサイトの受託制作に取り組む法律系ポータルサイトの運営会社に、アルバイトで入社しました。法令に関する記事が書けるので、自分の勉強にも役に立つはずだと考えました。

その後正社員になり、Webディレクターや、営業、スマホアプリのプロダクトマネジャー、法務など幅広く取り組みました。

ただ、法律をもっと活用して事業に貢献したいという思いがあり、法務専門で担当できる企業に転職しようと考えました。

転職活動中に、コドモンの「子どもを取り巻く環境をテクノロジーの力でより良いものに」というミッションを目にし、自分のこの先やりたいこととマッチしていると感じました。専門性を活かして子どもの環境改善に取り組めると考え、一人目の法務として2021年6月に入社しました。

私が入社する以前、コドモンは事業が大きくなるなかで、顧問弁護士に頼りつつ法務の専門家ではない取締役が法務を担当していましたが、さまざまな案件が出てきたため専門の担当者を募集した、というフェーズでした。

現在は私はコーポレート統括部のゼネラルマネジャーとして、昨年12月に入社した法務のマネジャーと2人で一緒に法務の舵取りを行っています。

コドモンは、既存の事業のアップデートだけではなく、どんどん新しいことに取り組もうとしている企業です。法務として関わっていけることを有意義に思います。

大切なのは事業を前に進めること

法務として一つ軸として持っているのは、事業を前進させることを意識することです。「コドモンのミッションありきで、それに法務が寄与する」というスタンスでいる必要があると感じています。

そのためには、ただ契約書にあるリスクを指摘しているだけでは足りません。

事業を前に進めるときに、「こういう判断を求められるときには、こういうことを判断材料にしてください」という提示は必須ですし、「法務としてはこう思っていて、個人的に事業判断をする立場ならこうします」というところまで提示することもあります。

企業は事業を通じて社会貢献をしようとしているので、ミッションを実現するために動かなければならないと思っています。それは法務に限らず言えることかもしれません。

特に法務は、どうしても事業やお客さまから少し離れたところにいるため、この視点が抜けがちです。「一体なぜ法務がこの組織にいて、自分の価値はなんだろう」と考えたとき、「いかに会社として社会に価値を提供し、自分がそこに寄与できるか」が根底にあるのではないでしょうか。私が元々、事業部側にいたこともこの考え方の土台になっているかもしれません。

そのためには、「法務はこういうところで活躍できます」とアピールする必要がありますし、そのほうがさまざまなプロジェクトにも呼んでもらえるようになります。幅広いプロジェクトに関わり、会社のミッション・ビジョン実現に向けて事業を前進させることが法務として重要です。


事業を語れない法務では…

私は、法務担当者としては結構リスクを取りにいくほうです。

ベンチャー企業としてはある程度意欲的に成長を求めなければならないため、リスクテイクの必要性は上がりますし、法務担当者として事業貢献を目指す上ではリスクを把握したうえで前進させることが求められます。

「小さなリスクのために大きな事業を止めない」というのは大事なので、そのポイントをつかんでいることも法務担当者として大切な要素だと考えています。

責任の所在があいまいになることもあり、「法務担当者が事業部門の議論に入り込みすぎて判断を肩代わりしてしまうのはよくない」という方がいますが、私は積極的に議論にも参加するタイプです。それによって事業部門の判断の迷いは減り、議論をスムーズに進めることができると考えていますし、事業部門側にも歓迎してもらっています。

ただ、「事業部門の判断を肩代わりするべきではない」というのは私も同意見です。議論に加わったとしても結局、現場で活動していないので、法務担当者が判断してしまうと結論が適正ではなくなってしまう、ということは常に意識しています。

その中で事業部門が考えていることを理解して、法務の知識をつなぎ合わせて価値を発揮することが大切です。

ただ実は、面接を受けるまでは法務の重要性や役割についてそこまで考えていませんでした。「事業を語れる法務でありたい」というのは、コドモンに入社して以来の私のテーマです。

一人目の法務候補者として代表の小池と面接した際、エージェントを通じて「利用規約の内容を質問しますので、読み込んできてください」とお題を事前に出されました。

私は内容を頑張って読みましたが、プロダクトにふれたこともないので、表面的な理解しかできない。「この項目、実はリスクが残ってるんじゃないかな」という感じのことを思うくらいです。

いざ面接になると、プロダクトの背景にあるスキームの話をされ、当然ですが分からない。「価値提供のメインであるプロダクトのことを理解していないと手も足もでない」と痛感しました。

入社してからも失敗はありました。対応の方針決定にあたって顧問弁護士に相談しようと私が電話したのですが、前提のスキームや関係者についての理解が甘く、そばにいた社長と顧問との間で、「こう言ってます」と伝える伝書鳩のようになってしまって…。

当時は精一杯だったのですが、顧問弁護士のタイムチャージも私の給料も社長の時間も奪っていて、法務として私がいる意味がない。

事業部門に踏み込んで、事業を語れる法務になろうと思った転機になった出来事でした。

こうしたこともあり、入社して1年半くらいは事業部の担当者と「色々お話聞かせてください」と1on1してもらいました。事業部がどのような思いで動いていて、何をしようとして何が課題になっているのかをつぶさに聞くことができ、事業の解像度が上がりました。

また、私を採用した当時の取締役が「法務のことは何でも多田さんに聞いて」と紹介してくれたので、それに答えているうちに、事業を理解するだけなく、新規事業を進める際にも声をかけてくれるようになりました。


正しくリスクを恐れること

法務として力を発揮するために必要なことは「正しくリスクを恐れること」だと思います。

これは、法務という職種の特殊性だと思いますが、「恐れ」は価値発揮を最も妨げるものです。

法務は他の職種に比べて、特にさまざまなリスクを見なければならない職種で、恐れを強く意識してしまうと、適正な判断を損なう可能性が高まります。

これは私自身も一時期感じていたことで、「このリスクを取ると、自分が責任を負わされるんじゃないか」「その助言のせいで企業が良くない方向に転がったら…」という気持ちはやはり心のどこかには生じます。ここまでいかないにしろ、何かしらの恐怖心を持っていると正しい判断を鈍らせてしまうことが多いです。

正しく恐れるためには、社長と同じレベルで事業を理解し、現場メンバーと同じレベルで顧客を理解することが重要です。これは今の私の目標でもあり、この先法務としてステップアップするために重要なファクターになると考えています。

濱田祥太郎

この記事を書いた人

濱田祥太郎

NobishiroHômu編集者

中央大学法学部卒、全国紙の新聞記者に4年半従事。奈良県、佐賀県で事件や事故、行政やスポーツと幅広く取材。東京本社では宇宙探査や宇宙ビジネスを担当。その後出版社やITベンチャー、Webメディアの編集者を経て2022年LegalOn Technologies入社し、NobishiroHômuの編集を担当。

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