契約書管理システムとは?
契約書管理システムとは、締結後の契約書を電子的に整理して保管、活用していくためのツールです。紙ベースでの管理で発生しがちな契約書管理に伴う負担の削減や検索性の向上、情報漏洩リスクの低減、内部統制の強化、法務運用の効率化など、企業に多くのメリットをもたらします。
【契約書管理システムの一般的な機能】
- 契約書の電子化と保管: 紙の契約書をスキャンして電子データとして保存する他、電子的に締結された契約書も整理して保管します。
- 検索機能: 必要な契約書をキーワード、日付、取引先などの条件により検索する機能を提供します。
- バージョン管理: 契約書の改訂履歴を記録し、常に最新版を把握できるようにします。
- 期限管理・自動通知: 契約の更新期限や自動更新の有無を管理し、事前にアラートを送信することで、更新漏れや意図しない期間満了による契約終了を防ぎます。
- アクセス権限管理: 契約書の種類や重要度に応じて、閲覧・編集権限を細かく設定し、情報漏洩リスクを低減します。
- 監査証跡: 誰が、いつ、どのような操作を行ったかの履歴を記録し、内部統制の強化に貢献します。
※上記の機能は一般的なものであり、製品やシステムによって搭載されている機能は異なります。導入を検討する際は、各システムの詳細な機能を確認してください。
これらの機能を通じて、契約書管理システムは、法務部門だけでなく、営業、経理、総務など、あらゆる部署の業務効率化とリスク管理に貢献する基盤となります。
【タイプ別】契約書管理システムを紹介
多種多様な契約書管理システムの中から、自社の課題やニーズに合ったものを選ぶためには、その特徴を理解することが重要です。ここでは、各システムの主要な機能や得意分野に基づき、5つのタイプに分類してご紹介します。
契約書管理を中心機能としているタイプ
このタイプは、締結後の契約書を効率的に管理することに重点を置いている、純粋な契約書管理システムです。紙で締結した契約書や、別の電子契約サービスで締結した電子契約書など、多様な形式の契約書を一元的に保管し、検索性や閲覧性を高めることに強みを持っています。
OPTiM Contract
OPTiM Contractは、リーズナブルな価格で自動入力とAI解析が利用できる、コストパフォーマンスに優れた契約書管理システムです。契約書本文を読み取っての全文検索やAIによる契約書検索など、検索機能が豊富なシステムとなっています。また、部署ごとのアクセス権限管理や閲覧・操作権限の管理など、細かな管理のための設定が標準搭載されています。
ConPass
ConPass(契約管理DX ConPass)は、AIによる契約書情報の抽出や全文検索など、契約書管理システムの標準的な機能が網羅的に搭載されています。原契約と変更契約など、契約書同士や関連資料を紐づけて登録・管理する機能などで、契約書管理をサポートします。ユーザーIDを無制限に発行できるため、社内の全部署・全担当者が利用でき、取引先や契約類型ごとに最適なワークフローを柔軟に設定できる点が特徴です。
Contract One
Contract Oneは、契約書の保管・管理に特化したサービスです。標準的な機能のほかに、企業別契約ツリーによって取引先ごとに過去の契約をまとめて確認できます。また、各契約のステータス(契約中/契約終了/自動更新の有無など)を自動で判定し、表示することが可能です。契約状況を確認しやすい機能が揃っており、管理負担の軽減を行いたい企業に適しています。
契約ライフサイクル管理(CLM)システムの一部機能として契約書管理が行えるタイプ
契約ライフサイクル管理(CLM)システムとは、契約書の作成から締結、保管、更新、分析に至るまで、契約のライフサイクル全体の包括的な管理をサポートするシステムです。このタイプは、その機能の一部として契約書管理が組み込まれています。
LegalOn Cloud
LegalOn Cloudは、企業の法務全体をサポートするプラットフォームです。特に契約書管理(コントラクトマネジメント)の機能では、契約書のアップロードで、契約状況や契約期間、自動更新有無などの契約情報を自動的に抽出して、登録することができます。また契約前後の経緯など、契約締結に関する情報を紐づけて管理することで、契約関連の業務の属人化を防止します。AIを搭載した法務プラットフォームとして、契約締結から契約書管理まで、契約業務フロー全体を幅広く支援します。さらに、必要に応じて、一部の機能だけを利用することも可能です。
Docusign CLM
Docusign CLMは、世界中で多くの企業に利用されている実績豊富なCLMシステムです。契約書の作成から部門間連携・管理にわたるまで、契約の過程全体をサポートする機能を備えています。SalesforceやSAP Aribaなどの他社サービスと連携することで、他サービスから機能を利用したり、契約情報の自動更新を行ったりすることができます。また、英語、日本語、フランス語、ドイツ語、オランダ語、スペイン語、ポルトガル語に対応するなど、言語対応の範囲が広い点も特徴です。
ContractS CLM
ContractS CLMは、契約業務のプロセスを企業に合わせて柔軟に最適化し、業務効率とリードタイムの短縮を実現する契約書管理システムです。期間や取引先、フリーワード、全文検索など、様々な方法で検索を行うことができます。既存の契約管理台帳や、過去の契約書の取り込みを容易に行えるため、現在の契約書管理を引き継いで効率化することができます。また、契約関連のあらゆる情報が蓄積され、適切な権限付与による一元管理を行うことで、コンプライアンスリスクを回避し、機会損失を防止します。
Money Forward クラウド契約
Money Forward クラウド契約は、契約書の作成から管理までワンストップで行えるCLMシステムです。クラウドサインやGMOサインといった、他社の電子契約サービスで締結した電子契約データを、締結完了時に自動取り込みできる機能があります。これにより契約管理サービスへの手動インポートや登録漏れを無くすことが可能です。自動取り込み機能を利用するには、「midプラン」の契約が必要になります。
電子契約締結サービスの機能として契約書管理が行えるタイプ
このタイプは、契約書を電子的に締結する「電子署名・電子契約」の機能を主軸としており、それに付随する形で契約書の保管や基本的な管理機能を提供しているシステムです。紙の契約書に押印・郵送する従来のプロセスを廃止し、オンラインで契約を完結させることで、コスト削減やリードタイム短縮、コンプライアンス強化を図りたい企業に適しています。
電子印鑑GMOサイン
電子印鑑GMOサインは、GMOインターネットグループが提供する電子契約サービスです。当事者型・立会人型、2つの署名タイプがあり、契約の性質や本人確認が求められる度合いに応じて使い分けることができます。契約の重要度に応じて電子署名を使い分けることでスムーズに契約締結でき、締結後の契約書はシステム上でシームレスに管理できます。
WAN-Sign
WAN-Signは、無料機能や範囲が広い電子契約サービスで、費用を抑えて電子契約を導入したい企業に適しています。利用件数に制限はあるものの、0円から利用できるプランも用意されており、特に取引先が少数の企業や、スモールスタートで電子契約を始めたい企業におすすめです。また、AI契約書管理機能のオプションがあり、PDFファイルを読み取ったAIが自動的に文書情報を抽出し登録することが可能になっています。
クラウドサイン
クラウドサインは、弁護士監修のもと開発された電子契約サービスで、法務面での安心感とセキュリティの高さが特徴です。AIによる契約書管理機能があり、書類情報(締結先の企業名、契約 開始日・終了日、取引金額、自動更新の有無など)が自動的に登録されます。また、ビジネスプランであれば、法務などの管理部門が別アカウント(社内の他事業部や管理する子会社)の締結書類などを閲覧可能に設定することができます。
SMBCクラウドサイン
SMBCクラウドサインは、SMBCグループとクラウドサインによる合弁会社が提供する電子契約サービスです。AI契約書管理機能として、契約書情報の自動抽出・登録の機能を提供しており、標準プランの場合は無料でこの機能を利用できます。AI契約書管理機能で読取可能な書類内の項目としては以下が挙げられています。
- 契約締結日
- 契約終了日
- 自動更新有無
- 取引金額
- 契約開始日
- 契約相手名称
- 解約通知期限
また、有料プランの場合、個社独自のひな形登録が可能になり、抽出精度が向上します。
案件管理に強みを持つタイプ
このタイプは、契約書の締結や管理だけでなく、契約に至るまでの交渉過程や社内外でのやり取り、関連文書の一元的管理に強みを持つシステムです。特に、契約書の作成から締結までに多くの関係者が関与し、進捗状況の把握や情報共有が課題となっている企業に適しています。ワークフローの可視化や、過去の経緯を追跡できる機能が充実している傾向があります。
Hubble
Hubbleは、契約書作成段階でのバージョン管理と社内でのやり取りの効率化に強みを持つサービスです。契約書のドラフト作成からレビュー、承認プロセスにおける自動バージョン管理により、作成過程を明確にし、共同作業をスムーズに進めることができます。AIが契約書情報を読み取り、管理台帳を高精度で自動作成する契約書管理機能が特徴です。主要な契約項目のほか、担当者が設定した任意項目も自動的に契約書から読み取って、管理台帳に反映することができます。
RICOH Contract Workflow Service
RICOH Contract Workflow Serviceは、リコーにおける法務関連のノウハウを活用しており、案件管理全般に強みがあるシステムです。契約書の作成、レビュー、承認、締結、保管、更新といった一連のプロセスをワークフローとして管理し、業務の効率化と可視化を促進します。組織別運用機能があり、取引先ごとに異なる管理方法やメール設定を適用することで、契約書管理において柔軟な対応を可能にします。
契約書以外も含めた文書管理に強みを持つタイプ
このタイプは、契約書だけでなく、社内のあらゆる文書を統合的に管理する文書管理システムとしての機能を持ち、その中で契約書管理も可能としているシステムです。企業内の情報資産全体の一元管理を目指す企業や、部署ごとに散在している文書を体系的に整理し、情報共有と検索性を高めたい場合に適しています。
PATPOST
PATPOSTは、指定項目抽出AI機能により、あらゆる文書から必要な項目だけを抜き出して、CSV等のリスト化を行うことができるシステムです。書類の種別を問わず電子帳簿保存法の要件を満たした保存・管理が可能なため、契約書や関連資料などが多い企業に適しています。現在の書類管理状況が煩雑な場合や、契約書以外の書類もまとめて管理したい場合に有力な選択肢となります。
MyQuick
MyQuickは、ユーザー数無制限で、オプションでAI搭載も可能な柔軟性の高い文書管理システムです。他者の電子契約サービスと連携することで、契約情報やタイムスタンプを自動的に取り込んで、契約書を登録できます。自動取り込みにより、手動登録の手間を削減しつつ、登録漏れを防ぎます。また、期限管理について30日前、90日前など細かく設定することが可能で、自動更新に関する情報に基づいてメール通知の有無を操作することが可能です。
楽々Document Plus
楽々Document Plusは、高いセキュリティレベルを備える文書管理システムです。幅広い形式やフォーマットの文書に対応し、検索や表示が容易なビューワ機能を持つことも特徴です。文書のフォルダ階層管理や版管理(最新版、旧版、改訂履歴)、旧版ファイルとの新旧比較など、契約管理担当者の負担を軽減する機能が豊富です。電子契約サービスとの連携なども行えるため、契約管理の負担が課題となっている企業には、特におすすめのシステムとなっています。
リコー ドキュメントライフサイクルサービスSelect
リコー ドキュメントライフサイクルサービスSelectは、リコーが提供するドキュメント管理のノウハウを活かしたサービスです。契約書だけでなく、社内のあらゆる文書のライフサイクル管理に対応します。特に契約書管理の機能では、検索性の向上や期限管理、社内共有などの課題になりがちな分野をサポートする機能が充実しています。
CLOUD CABINET
CLOUD CABINETは、文書管理の一環として契約書管理機能を提供するクラウドサービスです。紙の文書をスキャンして電子化し、クラウド上で一元管理することで、文書の検索性向上や業務効率化を促進します。紙と電子の契約書が混在していて、管理を一元化したい企業におすすめです。
契約書管理システムを選ぶための5つのポイント
ここまで代表的な契約書管理システムを紹介してきました。しかし、実際に自社に取り入れるサービスを選ぶとなると、一定の基準が必要になるでしょう。そこでここからは、契約書管理システムを選ぶための5つのポイントを解説します。
電子帳簿保存法に対応しているかどうか
大前提として、電子帳簿保存法に対応しているかどうかを確認することが非常に重要です。電子契約やスキャナ保存をした契約書は、電子データでの保存が原則的に義務付けられているためです。具体的な保存要件としては、タイムスタンプの付与、改ざん防止の仕組み、見読性の確保(人間が内容を読めるかどうか)、検索性の確保(システムで「契約日」「契約金額」「契約先名」などを指定して検索できるかどうか)などが求められます。
これらの要件を満たす機能がシステムに備わっているかを確認することで、コンプライアンス対応と業務効率化を両立することが可能になります。
必要とする機能の有無
電子契約を導入したいのであれば電子署名機能、紙の契約書が多いならスキャン取り込み機能、更新漏れを防ぎたいなら期限管理・通知機能が必要です。
また、近年は、CLMシステムのような契約書管理機能を含め契約業務全体を広くカバーするプラットフォームとしてのリーガルテックサービスが増加しています。契約業務全般を一つのツールで完結できることは便利ですが、場合によっては機能が過剰で使いこなせない可能性もあります。その場合は、自社が必要とする機能だけを選択的に利用できる製品を優先して候補に取り入れましょう。製品選びに迷う場合は、多機能なCLMシステムを選ぶのも一つの方法ですが、まずは自社に必須の機能を洗い出し、それを満たす製品から比較検討することが、最適なシステム選定につながります。
セキュリティ
契約書には、企業の機密情報や個人情報が含まれるため、強固なセキュリティ対策が施されているかは最も重要な選定ポイントの一つです。セキュリティ体制を評価する客観的な指標として、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証や、主にクラウドサービスのセキュリティ保証を評価するSOC2レポートなどが参考になります。これらの第三者評価の取得状況に加え、個人情報保護に関するプライバシーマークの取得有無、データの暗号化方式、アクセスログの管理体制なども総合的に確認することが重要です。このように、クラウドサービスの場合は、特に提供元のセキュリティ体制にも注意が必要です。
料金
契約書管理システムの料金体系は、初期費用、月額利用料、ユーザー数、機能、ストレージ容量などによって大きく異なります。自社の予算と必要な機能を考慮し、費用対効果の高いシステムを選びましょう。無料トライアル期間が設定されている場合は、活用することで実際の運用にかかる費用をシミュレーションすることも可能です。また、将来的な拡張性も考慮し、事業規模の拡大に応じて柔軟に対応できる料金プランかどうかも確認してください。
求める強み
先述したように、各契約書管理システムにはそれぞれ異なる強みがあります。契約書以外の文書も管理できる、契約関連の管理を網羅的に行えるなど、自社が最も求める強みに合致したシステムを選ぶことで、導入効果を最大化できます。また、本記事でタイプ分けした項目に限らず、特定の機能や業界に強いシステムなども存在します。自社が最も重視する要件を明確にし、その強みを持つシステムを選びましょう。
まとめ:要件に合わせて契約書管理システムを比較しよう
契約書管理システムの導入は、企業の業務効率化とリスクマネジメントにおいて非常に有効な手段です。多種多様なシステムが存在する中で、自社にとって最適なものを選ぶためには「自社の課題は何か」「どのような機能を優先するか」「予算はどのくらいか」といった点を明確にすることが不可欠になります。
本記事では、18種類の契約書管理システムをタイプごとに分類して解説し、選定の基準となる5つのポイントについて紹介しました。本記事でご紹介した製品と5つのポイントを参考に、ぜひ自社に最適な契約書管理システムを見つけてください。
こうした契約書管理システムの選定・導入は、法務DXを実現し、高品質で効率的な法務サービスを提供するうえでも重要な第一歩です。一方で、ただ闇雲にリーガルテックを導入するだけではコストに見合う成果は得られません。LegalOn Cloudは、AIテクノロジーを駆使し、法務業務を広範囲かつ総合的に支援する次世代のリーガルテックプラットフォームです。あらゆる法務業務をAIがカバーできるほか、サービスを選んで導入できるため、初めてリーガルテックの導入を検討する方にもおすすめです。
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