法定保管期間とは?
法定保管期間とは、法律によって定められた、企業が特定の書類を保存しなければならない期間のことです。保管期間は各種法令に基づいており、企業はこれを遵守する義務があります。以下にて、代表的な書類の法定保管期間について具体的に説明します。
各種書類の保管期間一覧(例)
会計帳簿
- 仕訳帳
企業の全ての取引を取引順に借方及び貸方に仕訳する帳簿です。各取引の詳細(取引内容、金額、日付など)が記載されています。 - 総勘定元帳
全ての取引を勘定科目の種類別に分類して整理計算する帳簿です。
仕訳帳と総勘定元帳はいずれも、確定申告、会計監査や税務調査の際に重要な役割を果たします。法人税法上の法定保管期間は、原則として7年間です。ただし例外として、青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた事業年度においては、10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)となります。
(参照:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁 (nta.go.jp))
また、株式会社の場合、10年間が、会社法上の法定保管期間です。
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計算書類
- 計算書類
算書類には、貸借対照表、損益計算書などが含まれます。
計算書類は企業の財務状況を総合的に示すものであり、株主や取引先、金融機関などに対して信頼性を示すために重要です。法人税法上の法定保管期間は、原則として7年間です。例外については、同上です。
また、株式会社の場合、会社法上、10年間が法定保管期間です。
請求書等
- 請求書等
取引先に対して商品の販売やサービスの提供に対する代金を請求するための書類です。逆に、取引先から自社に対して発行される請求書もあります。
請求書には取引内容や金額、支払期限などが明記されており、法人税法上の法定保管期間は原則として7年間です。例外については、同上です。また、株式会社は、会社法上、重要な請求書等について、10年間の保存義務があると考えられます。
なお、適格請求書の法定保管期間は、7年間です。
労働関連書類
- 労働者名簿
労働者の氏名、生年月日、従事する業務の種類、雇入年月日等を記載した帳簿です。保管期間は労働者の死亡・退職等から3年間です。 - 賃金台帳
労働時間数、労働日数、時間外労働時間数、基本給や手当等の種類と額、控除項目と額等を記載した帳簿です。保管期間は、労働者の最後の賃金について記入した日から3年間です。 - 労働契約書
企業と従業員の間で結ばれる契約内容を記載した書類です。労働条件や勤務時間、給与などが明記されており、労働紛争の際に重要な証拠となります。改正法の施行により、法定保管期間は3年間から5年間に改められました。ただし、経過措置として、当分の間は3年間とされています。 - 出勤簿
出勤簿は、従業員の出勤・退勤時間を記録した書類です。労働時間の管理や給与計算の基礎資料となります。法定保管期間については、同上です。
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契約書類
- 契約書
取引に関し、当事者間の意思の合致を記載した書類です。
契約書そのものの保管期間は法定されていません。もっとも、実務上、消滅時効が完成するまでの期間(5年、10年、20年のいずれか。民法167条参照)は保管するケースが多いです。消滅時効が完成すれば相手方から請求を受けても消滅時効完成を理由に請求を排斥できるので、それまでは不測のトラブルに備えて証拠として契約書を保管しておく、ということです。
消滅時効は原則が5年、例外が10年です。20年の消滅時効は債権や所有権以外の財産権または生命身体の侵害による損害賠償請求権に適用されるものなので、契約書の保管期間を検討する際には考慮しなくてよいでしょう。そのため、トラブルに備えるという意味で、契約書は10年間の保管が望ましいです。
なお、法人税法上の法定保管期間は原則として、7年間です。例外については、同上です。
また、株式会社は、重要な契約書類について、会社法上、10年間の保存義務があると考えられます。
企業が書類を適切に保管するメリット
企業運営において、書類の適切な保管は非常に重要で、書類は企業の活動記録や証拠としての役割を果たすとともに、経営判断の根拠となる重要な情報源です。これらの書類を適切に保管することのメリットや法令遵守の必要性を解説します。
書類保管の3つのメリット
①業務効率化
必要な書類を迅速に取り出せるため、業務がスムーズに進行します。
②トラブル防止
紛争やトラブルが発生した際に、書類を証拠として活用できます。
③信頼性向上
取引先や監査機関からの信頼を得ることができます。
法令遵守の必要性
書類の保管は、単なる業務効率の問題だけでなく、法令遵守の観点からも重要です。それぞれの法令に基づいて特定の書類の保管期間が定められています。例えば、会社法、税法、労働基準法などがそれに該当します。
法律遵守しないと起こる3つのリスク
①制裁
法定保管期間を守らないと、罰金などの刑事処分や是正勧告などの行政指導・改善命令などの行政処分を受ける可能性があります。
②法的トラブル
必要な書類がないために、法的な紛争で不利な立場に立たされることがあります。
③信頼失墜
法令違反が発覚すると、企業の信用が失墜し、取引先や顧客からの信頼を失うことになります。
書類の保管方法
紙媒体の書類の保管方法
①温度と湿度の管理
書類が劣化しないように、特に湿度が高い場所は避け、乾燥した環境を維持する場所を選ぶことが大切です。
②安全性
火災や盗難から守るために、耐火金庫やロック可能なキャビネットを使用します。
③アクセスのしやすさ
業務エリアから必要な書類を迅速に取り出せる場所に保管します。
④高品質なファイルやフォルダ
耐久性のある素材で作られたファイルやフォルダを使用します。
⑤ラベル付け
書類が何であるかを明確にするために、ラベル付けを行い、簡単に識別できるようにします。
⑥カテゴリー分け
書類を種類や保管期間ごとにカテゴリー分けして整理します。
⑦定期的な見直し
定期的に書類の見直しを行い、不要な書類を廃棄します。
⑧インデックスの作成
書類の内容や場所を一覧できるインデックスを作成し、管理しやすくします。
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電子媒体の書類の保管方法
①アクセス制限
書類にアクセスできる人を限定し、パスワードやアクセス権限を設定し、セキュリティを強化します。
②暗号化
重要な書類は暗号化して保管し、外部からの不正アクセスを防ぎます。
③セキュリティソフトの導入
ウイルス対策ソフトやファイアウォールを使用して、システム全体のセキュリティを向上させます。
④書類の定期的なバックアップ
重要書類は毎日、週に1回、月に1回など、書類の重要度や更新頻度に応じて定期的にバックアップを取ります。
⑤複数のバックアップ
1つの媒体が故障してもデータを復元できるように、外付けハードディスク、USBメモリ、クラウドストレージなどに保存します。
⑥クラウドサービスの利用
クラウドサービスは自動バックアップ機能を提供していることが多く、利便性が高いため、地理的に分散された安全な場所にデータを保管できます。
デジタル保存のメリット
スペースの節約
紙媒体と比べて保管スペースが不要です。
検索性の向上
デジタル化された書類は、キーワード検索で迅速に見つけることができます。
バックアップの容易さ
定期的にバックアップを取ることで、災害時やデータ損失時にも対応できます。
書類の定期的な見直しと整理
書類の定期的な見直しと整理は、効率的な書類管理のために欠かせません。以下の方法を実践し、保管スペースの有効活用と必要書類を迅速に取り出して業務の効率化を図りましょう。
見直し・整理方法
- 年に1回や半年に1回など、定期的に書類の見直しと整理を行うスケジュールを設定します。
- 保管期限が過ぎた書類や、業務上不要になった書類を選別し、適切に処分します。
- 必要な書類を迅速に見つけるために、書類をカテゴリー別に分け、ラベルなどを作成して整理します。
- デジタル化された書類は検索性が向上し、アクセスしやすくなるため、可能な限り書類をデジタル化して、紙媒体の保管スペースを節約します。
書類の廃棄方法
保管期限が過ぎた書類を適切に廃棄して、情報漏洩防止と保管スペースの確保をしましょう。
- 機密性の高い書類は、シュレッダーで裁断して廃棄します。
- 大量の書類を廃棄する場合は、機密文書の廃棄サービスを提供する専門業者を利用することを検討します。安心できる専門業者を選び、廃棄証明書を発行してもらいます。
- 電子媒体の書類の場合、保管期限が過ぎたデータは、専用のデータ消去ソフトを使用することが推奨されます。
適切な書類保管期間を遵守する重要性
適切な書類保管は企業運営において不可欠です。法令遵守と効率的な運営を両立させるためには、定期的な書類の見直しと整理、適切な保管期間の把握、デジタル化の推進、そしてセキュリティ対策の強化が必要です。
これらのポイントを実践することで、企業は法的トラブルを回避し、業務効率を向上させ、顧客や取引先からの信頼を高めることができます。
適切な書類保管を行い、保管期間を守って企業の信頼性を高め、持続可能なビジネスの成功に導いてください。
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