契約書のドラフトとは?
ドラフト(draft)とは英語で「草案、原案、下書き」を意味する言葉です。契約書のドラフトは、契約締結前に当事者同士が契約内容を確認する目的で作成されます。契約の当事者のどちらか一方が契約書のドラフトを作成して、相手方に送付します。契約書のドラフトはWordなど修正しやすい形式で作成されるのが一般的です。ドラフトを受け取った側はその内容を確認し、必要に応じて文面の修正などの交渉を進めていきます。
ドラフトとひな形の違い
契約書作成において「ドラフト」と「ひな形」という用語がよく使われますが、これらは異なるものです。
「ひな形」は、ある類型の契約に対する標準的なテンプレートを意味します。例えば、雇用契約や業務委託契約など、契約の種類ごとに用意されます。なお、過去に近い内容の契約を締結したことがあれば、過去の契約書をひな形として用いる場合もあります。
一方、「ドラフト」は前述通り、草案や原案にあたります。基本的に契約書を一から新しく作成することはほとんどありません。ひな形を基にして新しい契約内容に合わせて改変するかたちでドラフトを作成します。標準的なテンプレート(ひな形)を出発点として使い、それを特定の状況に合わせて修正し、初期の契約案(ドラフト)を作成するのです。
まとめると、ひな形は一般的なフォーマットを提供し、ドラフトは特定の契約の作業中のバージョンを指します。
契約書のドラフトを作るメリット
契約書のドラフトを作成するメリットについて詳しく見ていきましょう。
- (自社でドラフトを作る場合)有利な契約書にできる
- 完成度を高めることができる
(自社でドラフトを作る場合)有利な契約書にできる
自社で契約書のドラフトを作成する場合、自社に有利な契約書ドラフトを作成できることがメリットです。作成にあたっては、まず担当部署に取引概要や取引条件等のヒアリングを行います。そして、過去に締結した類似取引の契約書から利用可能な項目(いわゆる一般条項を含みます)を抽出し、ヒアリング結果を漏れなく盛り込みドラフトを作成します。
契約書の完成度を高めることができる
契約書のドラフトを媒介として、当事者双方が契約に盛り込むべき内容を文面上で検討することで、契約書の完成度が高まります。また、条項ごとに交渉・修正を重ねることで論点が明確になり、誤解や曖昧な点を排除しつつ合意を形成していくことが可能になります。
相手方が作成した契約書のドラフトへの対応フロー
相手方が作成した契約書のドラフトを受け取った後は、どのように対応すればよいのでしょうか。基本のフローを以下の3ステップに分けて解説します。
- 確認・審査
- 修正・交渉
- 締結
内容の確認・審査
まずは契約書の内容をよく確認し、自社側にとって不利な条文など懸念点がないかを確認します。また、法令上必須とされる条項の抜け漏れがないかを確認し、必要に応じて追加します。
取引内容について、例えば金額・取引対象となる製品・取引期間などの記述は、担当部署に確認してもらい、それ以外の項目については法務部がレビューします。法務部でも判断が難しい場合には、顧問弁護士にチェックを依頼することもあります。
ドラフトの修正・交渉
確認・審査の結果、契約書の内容に問題点が見つかった場合、相手方と交渉しながら修正していきます。Word形式のドラフトの場合、コメント機能を使って、修正事項に関するコメントを相手方に送信します。Wordの「変更履歴の保存」の機能を使えば、修正したい部分に直接入力して修正提案を示すことも可能です。
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契約書の締結
契約書の内容に問題がないことを確認し、修正が終わったら社内での確認(稟議など)を経て、押印・締結します。
印鑑や押印を管理する担当部署が決まっているなら、稟議書などの必要な書類をそろえて、契約書と共に担当部署に提出し、押印処理をしてもらいます。
電子契約なら、署名権限のある人にメールなどで依頼し、電子署名により契約を締結するという流れになります。
契約書のドラフトを修正できない場合の対処法
送られてきたドラフトがPDFなどの修正できない形式だった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
通常、契約書のドラフトは修正できるWordなどのデータ形式でやり取りしますが、取引先によっては修正できないPDF形式で送られてくることがあります。
PDFの契約書ドラフトに修正すべき点が見つかった場合、
- 相手方に連絡して、Wordなど修正できる形式で送ってもらうよう交渉する
- PDFのコメント機能で修正提案などを入力し、相手方に修正をお願いする
- Wordを作成し、修正箇所や修正理由を記載して送付する
といった対応方法が考えられますが、修正のフローが分からない場合は、まずは相手方に確認することをおすすめします。
契約書のドラフトを効率的にチェック・修正する方法
前述の通り、ドラフトを受け取ったら、まずは内容をチェックして必要に応じて修正・交渉するのが基本です。Wordの機能を使って効率的にチェック・修正する方法を、以下にて解説します。
変更履歴を残しておく
Wordファイルでチェック・修正する際は、変更履歴を残します。変更履歴を残しておくと、変更された部分の色が変わって表示され、どこが修正されたのか確認しやすくなります。
どのような修正を行ったか記録しておくことは、今後の取引での参考にもなるため、自社のノウハウ蓄積のためにも重要です。
変更履歴を残すためには、Wordでは修正の前にあらかじめ「変更履歴の記録」をオンにする必要があります。操作方法は以下の通りです。
- 「校閲」タブをクリック
- 「変更履歴の記録」をクリックしてオンにする
その他、Wordを使って契約書のチェックをする際の操作方法については、以下のページもご参照ください。
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契約書レビューをするときに知っておきたいWordの使い方・機能10個を解説!
コメント機能を活用する
Wordのコメント機能を使って、修正してほしい部分を提示する方法もあります。
修正の提案文言を示す以外にも、修正の理由や、どのように修正してほしいのか自由に記載でき、交渉しやすいことがコメント機能のメリットです。
コメントを残すことで、修正の経緯を記録しておくことにもなり、後から別の担当者が見る際にも事情を把握しやすくなります。
Wordでは次の操作でコメント挿入できます。
- コメントを挿入したい位置にカーソルを置く
- 校閲タブをクリック
- 「コメントの挿入」をクリック
- コメント欄に入力
契約書レビューの支援ツールを導入する
契約書レビューを支援するシステムを導入すれば、リスクの見落とし・必要条項の抜け漏れ防止をサポートしてくれるようになるので、契約審査業務を効率化できます。
AI契約審査プラットフォーム「LegalOn Cloud」には、WordやPDFファイルの契約書をアップロードするだけでAIが瞬時にチェック項目を表示する機能があるため、契約書審査を効率化できます。詳しくは次の項目をご参照ください。
「LegalOn Cloud」でAI契約書レビューは次のステージへ
LegalOn Cloudは、AIテクノロジーを駆使し、法務業務を広範囲かつ総合的に支援する次世代のリーガルテックプラットフォームです。あらゆる法務業務をAIがカバーできるほか、サービスを選んで導入できるため、初めてリーガルテックの導入を検討する方にもおすすめです。
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