電子契約とは?
電子契約とは、従来の紙媒体による契約書を電子データで代替する革新的な方法です。法律上、書面での契約書と同等の効力を持ち、署名もインターネット上で完結できます。
従来の契約プロセスとの違い
<従来の方法>
- 契約書を紙で作成・製本
- 押印して郵送
- 書庫などで物理的に保管
<電子契約の場合>
- 電子データで作成
- 電子署名を付与
- インターネットで送信・締結
- サーバーなどで保管
<電子契約の特徴>
- PCさえあれば、出張先でも電子署名が可能なため場所を選ばない利便性がある。
- 物理的な保管スペースが不要。
- 郵送時間の削減により、契約プロセスが加速でき迅速な処理が可能。
<電子契約の普及状況>コロナ禍を契機に、日本国内での電子契約の利用数が急増しています。その高い利便性と効率性が、ビジネスのデジタル化を加速させる要因となっています。
電子契約サービスの市場規模と成長率
調査結果から見ても、電子契約サービスのシェアは年々増加しています。矢野経済研究所の調査によると、電子契約の市場規模は2017年以降右肩上がりで、2024年には264億にまでのぼると予測されているのが特徴です。
ここで言う電子契約市場とは、契約作成・締結・管理に関する製品やサービスを対象とした市場のことを言います。
同調査によると、2019年で38億円から68億円に市場規模が拡大していることがわかり、対前年比で見ると68%ものプラスです。コロナ禍発生以前からすでに驚異的な伸び率を示していることがわかります。
さらに、2020年11月の調査公表時点では、同年中に電子契約市場は100億円の市場規模になることが予測されていました。コロナ禍によるリモートワークが増えてからは、さらに急増傾向にあるようです。
加えて、JIPDEC・ITRによりリリースされた「IT-REPORT 2021 Spring」によると、電子契約の普及率は67.2%になっていることがわかります。
それまでが30~40%程度と言われていたことからすると、急速な変化があったということがわかるはずです。
参照|矢野経済研究所「電子契約サービス市場に関する調査を実施(2020年)」2020年11月24日発刊参照|JIPDEC「IT-REPORT」2021年5月発刊
電子契約に関する5つの法律
以下では、電子契約に関連する5つの代表的な法律について詳しく解説します。これらの法律を理解することで、電子契約の法的裏付けがより明確になるでしょう。
電子署名法:電子契約の法的有効性
まず、電子契約が一般に有効であることを根拠づける重要な法律が、電子署名法です。電子署名法第3条には、次のような規定があります。
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
引用元|e-Gov「電子署名及び認証業務に関する法律」
つまり、契約書などの私文書において、本人により本人だけができる方法で電子署名を施した「電磁的記録」は、原則有効に締結・作成された契約書である、ということを意味します。
<関連記事>電子サインとは?電子署名との違いや利用シーン・使い方を解説
民事訴訟法では、第228条第4項で「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」と定められています。
これは、紙の契約書などの私文書に本人または代理人が署名又は押印した場合、原則として有効と考えるという意味です。
引用元|e-Gov「民事訴訟法」
この民事訴訟法の電子版が、先述した電子署名法3条の規定ということになります。
ちなみに「推定」とは、反対の証拠を相手方当事者があげて証明しない限り、という意味です。この反証がない限り原則として私文書は有効であり、契約書も有効に締結されたものと扱う、と読むのが民事訴訟法や電子署名法の上にあげた規定です。
電子帳簿保存法 国税関連書類の電子保存
電子帳簿保存法は、2015年の改正法から、契約書を課税関係の裏付けをするための国税関連書類として利用することができるとしています。
さらに、国税関係の書類を積極的に電子化し、事務を効率的に進められるよう、電子取引(電子メールやサイトを通しての取引)には一定のルールに則って書類を保存することを義務付ける趣旨で2022年4月から改正法が施行されています。
改正法によると、以下のルールに則って電子データを取引関係書類が作成・受領された納税地で7年間保存することが必要です。
(1)真実性の確保:一定の規格のタイムスタンプや、訂正削除できないシステムの利用または事務処理規程が社内にあることが必要です。規定の内容は、電子データのファイルの編集・修正・削除など、保存時からの改ざん禁止を明示すること、チェックできることを盛り込みます。
<関連記事>タイムスタンプとは?電子契約での必要性や仕組み・方法を解説
(2)見読性の確保:納税地で画面やプリンターにて契約内容が確認できることを意味します。
(3)電子計算機処理システムの概要書等の備え付け:契約の管理システムには、マニュアル・手順書等があることが必要です。
(4)検索機能の確保:主要な項目を範囲指定および組み合わせで検索可能なこと。契約書の場合、タイトルや取引相手などのキーで検索ができることを意味しています。
なお、納税地での保存は、クラウドサービスを用いて遠隔地のデータセンターを利用してもよいのかどうかが気になる人もいるはずです。納税地で保管サーバに接続でき、可視性が確保できれば問題はない、と考えられています。
参考:国税庁「電子帳簿保存法一問一答 【電子取引関係】」
e-文書法:法定保存文書の電子化
電子帳簿保存法が、国税関係の書類に限って電子書類の保存ルールを定めた法令であるのに対して、e-文書法は保管義務のある書類に関して、従来は書面での保存が義務付けられていたものについて広く電子保存を認める法令です。
電子保存ができれば、原本を保管する必要がなくなります。
保管に際して守るべきルールは、以下の通りです。
(1)見読性:見読性とは可視性のことで、データが見やすいかどうかを判別するものです。パソコンなどのディスプレイで確認できる必要があります。
(2)完全性:保管された書類は、改ざんされてはなりません。データが改ざんや消去されるリスクを取り除く必要があります。
(3)機密性:電子データを保存するときは、不正アクセス対策のため閲覧権限を限定し、許可された人しかアクセスしないよう、制限をかけるなど対策を要します。
(4)検索性:電子データをすぐに見つけられるように、検索できるようにすることが求められます。
適用される要件は上記のすべてが求められるわけではなく、「見読性」以外は書類ごとに満たすべき要件が異なります。これらの要件を見ると、電子帳簿保存法とe-文書法はよく似ていますが、適用範囲が異なります。
電子帳簿保存法は財務省・国税庁が管轄する法律で、国税関係の書類を対象に適用されます。
一方、e-文書法は複数の監督省庁が管轄する法律とそこに規定されている文書に対して適用され、適用範囲が非常に広いのが特徴です。
IT書面一括法:B2C文書の電子化
IT書面一括法(書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律)とは、企業から主に消費者・権利者個人との契約などの手続きに関し、交付する書面を電子メールで交付することを認めるための法律です。
主に、消費者や個人である権利者の保護のために書面が交付され、企業には書面の交付義務がありました。これについて、事務処理を紙で行うのは企業・個人ともに煩雑で負担が大きいことから、電子交付が認められています。
保険契約関連書面・消費生活協同組合の契約書面・投資信託や株の取引明細など、生活の中でもよく見る書面を電子交付で受けることが可能です。
その他、約50の法令に基づく書類について、電子交付が認められたIT書面一括法は電子契約を促進する効果があります。
ただし、不動産の売買など一部の重要書類は紙での交付が義務付けられており、すべての書面について書面交付が許されているわけではありません。
印紙税法:印紙税の対象を定めた法
印紙税法は、課税対象となる文書を別表第一に定め、文書に課税するための法律です(印紙税法第2条、第3条)。文書はその性質・金額ごとに税額が定められています。
ちなみに、印紙税法上、電子文書は課税文書に該当しません。電子文書に課税しない、とまでは印紙税法に書かれていませんが、その根拠は印紙税法基本通達によるとされています。(国税庁「通達目次/印紙税法基本通達 – 作成者等」1977年4月7日通達)
ここでは、文書は紙により作成され、交付・認証・証明などは紙により行われることが予定されています。一方で、電子文書の作成や交付・証明等は、通達上の作成・交付・証明などに当たらないとされ、国税庁の見解もまた電子文書が非課税文書であるとしています。
電子契約は、仮に紙で作成されていれば、課税文書の性質を持つ文書に該当する可能性がある内容を備えているのが特徴です。 しかし、電子契約である限りは課税文書にあたらないとされているのです。
電子契約を利用すると非課税文書になることから、印紙税のコストを削減することできます。そのため、印紙税法はもともと課税を目的とするものの、結果として電子契約を促進する効果が生じる法律であると考えられるのです。
電子契約システム導入で得られる7つのメリット
電子契約には、次のようなメリットがあります。
印紙税の削減
印紙税法では、紙の課税文書には収入印紙が必要とされています。一方で、電子契約には収入印紙が不要なため、企業にとって大きなコスト削減効果があります。
特に、金額が大きい契約書では、印紙税だけで数万~数十万円が発生する場合もあり、その削減効果は非常に高いと言えます。
さらに、印紙税額の確認や印紙台帳の整備・管理といった手間のかかる事務作業も、電子契約を採用すれば不要になります。これにより、コストだけでなく業務負担の軽減も実現可能です。
業務効率化とコスト削減
紙の契約書を電子契約に切り替えることで、契約書の印刷や収入印紙の購入、封筒の準備や宛名書き、郵送といった煩雑な作業が不要になります。
さらに、インク代や印紙代などの直接的なコストに加え、事務処理にかかる人件費も別の業務に振り分けることが可能です。また、プリンターやコピー機の使用頻度を減らすことで、設備コストの削減や業務の効率化も期待できます。電子契約の導入は、経費削減と業務効率の向上に大きく貢献します。
迅速な契約締結
書面で契約を締結する場合、契約書の持参や郵送、取引先からの返送といった手続きに時間がかかります。このため、やり取りのタイムラグが発生し、契約の完了までに日数が必要となることも少なくありません。
一方、電子契約ではインターネット上で署名から送付までを完結できるため、タイムラグを大幅に削減できます。迅速な対応が求められる場面では、合意から契約締結までを即日で完了することも可能です。そのため、紙の契約書よりもスピーディに手続きを進めることができます。
効率的な文書管理
書面の契約書は一定期間保管が必要で、保管スペースを確保する必要があります。これにより、オフィス内での管理が煩雑化し、外部倉庫を利用する場合は賃料などの追加コストが発生します。
一方、電子契約ではこうした負担がなく、契約書を社内サーバやクラウド上に保管できます。さらに、契約書管理システムやクラウドサービスを活用すれば、契約書をタイトルや番号、取引先ごとに簡単に検索可能です。また、キーワードで横断検索ができる機能を持つサービスもあり、管理の効率性と利便性が大幅に向上します。
リモートワーク対応
電子契約は、作成や電子署名を場所を問わず行えるため、リモートワーク中でも契約手続きをスムーズに進められます。押印やファイリングのために出社する必要もなく、業務の効率化が図れます。
2020年のコロナ禍をきっかけに電子契約を導入する企業が増加し、関連サービスの市場規模は100億円を超えました。また、契約業務のための出社が不要になることで、リスク管理やBCP(事業継続計画)にも貢献します。さらに、リモートワークだけでなく、出張先からのテレワークにも対応でき、柔軟な働き方をサポートします。
契約更新漏れの防止
書面で契約書を締結する場合、更新時期ごとにファイリングを分けたり、エクセルで有効期間を管理したりする必要があります。これにより、契約更新時期を自分で確認しなければならず、更新漏れのリスクが伴います。
一方、必要な機能を備えた電子契約書管理システムを利用すれば、契約更新時期を自動で通知してくれるため、更新時期を見逃す心配がありません。この仕組みにより、管理の効率化と更新漏れ防止が可能になります。
セキュリティリスクの低減
電子契約は、物理的な保管とは異なり、高水準のセキュリティ体制のもとサーバ上に保管されるため、改ざんや紛失のリスクが大幅に低減されます。紙の契約書では、管理状況によって持ち出しや不正利用のリスクが伴いますが、電子契約ではその心配を抑えることができます。
特に、クラウド型の契約管理サービスを利用すれば、ベンダーが最新のセキュリティ対策を提供するため、常に高い安全性が保たれます。また、災害などによる被害を受けない点からBCP(事業継続計画)にも貢献します。これにより、契約書の改ざんや紛失を防ぎ、電子帳簿保存法などの法令遵守を強化できる点も大きなメリットです。
電子契約システム導入時の2つの注意点
メリットの多い電子契約ですが、以下のような2つの注意点があります。
電子契約が認められないケース
電子契約はすべての契約には対応しておらず、書面での契約を法的に義務付けているものもあるのが現状です。書面での契約が義務付けられている契約には、以下のようなものがあります。
- 定期借地・定期建物賃貸借契約(借地借家法第22条、第38条第1項)
- 宅地建物売買等媒介契約(宅地建物取引業法第34条第21項)
- 不動産売買における重要事項説明書(宅地建物取引業法第35条)
- 投資信託契約の約款(投資信託及び投資法人に関する法律第5条)
- 訪問販売等特定商取引における交付書面(特定商取引法第4条)
書面での契約が多い企業の場合は、電子契約サービスを導入するメリットが得られないケースもあります。
取引先に理解してもらう必要性取引先によっては、IT技術に苦手意識を持っていたり、会社として規則上認められなかったりといった理由から、電子契約をスムーズに受け入れてくれないことがあります。
せっかく電子契約サービスを導入しても、電子契約を拒否する取引先が多い場合は、紙と電子が入り乱れることでかえって業務負担が増えることにもつながりかねません。
自社の取引先がどのくらい電子契約に前向きになってくれるかを把握したうえで、メリットとデメリットを比較してから導入の可否を検討してみてください。
成功する電子契約サービスの選び方のコツ
多様な書類に対応可能なサービス
自社で扱う書類の多くに対応していないと、余計に手間がかかることにつながりかねません。電子契約サービスを選ぶ際には、自社が取り扱うすべての書類が対応しているかどうか必ず確認しましょう。
また、海外との契約が発生する企業の場合は、英文契約に対応しているかどうかも重要なチェックポイントです。
反対に、不要な機能が搭載されすぎていると、コストがかさむことにつながります。複雑な機能や対応内容が多いと、会社規模に見合わずサーバの負担にもなりかねません。極力必要なものだけに近いものを選ぶことが重要です。
社員にとって使いやすいサービスを選ぶ
電子契約を導入すると、業務の新フローを構築することが必要です。新フロー導入時はどうしてもキャッチアップに時間がかかるので、慣れるまでは余計に手間がかかることも考えられます。
どのサービスを選んでもある程度最初ににキャッチアップの時間は必要ですが、なかでも社員が使いやすいと感じるものを選ぶことが重要です。
誰でも直感的に使えるシンプルな操作性や、見たままに作業が進められるような使い勝手のよさを重視して選びましょう。導入前に、セミナーやトライアルを通じて機能と使い勝手の確認を十分に行っておくことがおすすめです。
また、ベンダーのサポートが手厚いと、操作でわからないことが起きたときにも教えてもらうことができます。
よくある質問:電子契約Q&A
最後に、電子契約に関してよくある質問をピックアップしてまとめてみました。
Q. 英語の契約書を電子契約で交わすことはできる?
可能です。英文契約書は電子契約書で締結されることも多く、むしろ海外の方が電子契約の普及が進んでいます。例えばアメリカでは、2000年代から電子契約関連ソリューションが盛んに利用されているのが特徴です。
すでに国際取引では多くの英文契約書が使われており、英語による電子契約は幅広く普及しています。
Q. 電子契約のやり方は?
まずパソコンで契約書を作成し、メールのやり取り等で取引先と内容に合意します。合意できたら、システムを通じて電子署名した契約書を取引先に送付しましょう。
取引先が契約内容を確認し、問題がなければ電子署名をします。締結したらそのまま電子データとしてシステムに自動で保管されます。
電子契約はシステム上の手順に慣れれば簡単かつ迅速に契約を締結することができ、保管までスムーズに進めることができます。
LegalOn Cloudが電子契約「サイン」をリリース
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<関連記事> AI法務プラットフォームがいま、電子契約に手を広げる理由
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