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雇用契約を電子契約でするには? 電子化のメリットや注意点を解説

雇用契約を電子契約でするには? 電子化のメリットや注意点を解説
この記事を読んでわかること
    • 雇用契約の基本的な知識
    • 雇用契約書を電子化するメリット・デメリット
    • 電子契約導入に必要なもの
    • 電子契約導入時の注意点

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雇用契約は電子契約で行っても、法的に問題はありません。それどころかコストや時間が削減でき、手続きの簡略化がかなう電子契約は、現代的なニーズに適した契約方法とも言えます。

とはいえ「電子契約での雇用契約を検討中だが、なにから調べればいいのかわからない」という方も多くいるかもしれません。

当記事ではそもそも雇用契約とは何かから、雇用契約を電子化するメリットやデメリット、注意点までまとめました。

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雇用契約とは

雇用契約は労働者と雇用主の間で締結される契約です。

民法では「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる」(民法623条)と定められています。

雇用契約書は雇用契約を書面化したものですが、法律上、作成は義務ではありません。ただし口頭での契約は紛争の原因となりやすいので、書面上で取り決めが交わされるのが一般的です。契約書があれば雇用条件や業務内容の証拠となり、紛争発生時には重要な資料となります。

まずは雇用契約と労働契約、雇用契約書と労働条件通知書の違いを見ていきましょう。

雇用契約と労働契約の違い

民法に規定された雇用契約とは異なり、労働契約は労働契約法や労働基準法において規定される概念です。これらの法律は、労働者保護や労使間の紛争予防等を目的とし、労使対等の原則(労働契約法3条1項)、労働条件の明示義務(労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条)、就業規則による労働契約の内容の変更に関する制限(労働契約法第9条、第10条)を定めており、労働契約において直接的に影響を及ぼします。

雇用契約と労働契約は、実務上では明確に区別されないこともあります。例えば、労働契約法や労働基準法の規律が及ぶ契約であっても、単に「雇用契約書」として締結・交付されることも一般的です。いずれの場合も、労働基準法をはじめとする労働関係法令の規制を守ることが重要です。

雇用契約書と労働条件通知書の違い

雇用契約書は当事者間の合意内容を記した書面で、紛争防止のために労働条件や権利義務関係を明確にするものです。

一方労働条件通知書は労働基準法第15条に基づき、使用者が労働者に対して労働条件を明示するための法定文書です。使用者は労働者に対し、労働条件の通知に際して賃金や労働時間、休日などの労働条件を明示したうえで、書面や電子メール等で交付することが義務付けられています。

なお、雇用契約書と労働条件通知書は、「労働条件通知書兼雇用契約書」としてまとめて交付されることもあります。

また2024年4月1日施行の労働基準法施行規則等の改正により、労働契約の締結時および有期労働契約の更新時には、従前の明示事項に加え、新たに以下の事項の明示が義務付けられました。

全ての労働者に対して明示すべき事項:

  • 就業場所・業務の変更の範囲(労働契約の締結時と有期労働契約の更新時)

有期契約労働者に対して明示すべき事項:

  • 更新上限の有無と内容(有期労働契約の締結時と更新時)
  • 無期転換申込機会(無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時)
  • 無期転換後の労働条件(無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時) ※他の正社員等とのバランスを考慮した事項について説明の努力義務あり

(参考:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html

雇用契約書の電子化とは?

雇用契約書の電子化は、デジタル技術を活用して契約締結のプロセスをペーパーレス化する取り組みです。従来の紙の契約書と同じ法的効力を持たせるためには、いくつかの要件を満たさなくてはなりません。

雇用契約書の電子化について、基本的な知識をまとめました。

雇用契約書を電子化するには

雇用契約書を電子化する場合、一般的に、雇用契約書や労働条件通知書などの文書を電子データで作成し、使用者および労働者が電子署名やその他の電子的手段で合意の意思表示を行うことにより締結します。

ここで留意すべき点として、労働条件通知を電子的な方法(例:電子メール、電子契約システムによる交付)で行う場合、以下の要件を満たす必要があることが挙げられます(労働基準法施行規則5条4項)。

  • 労働者がその方法を希望していること
  • 受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信によること
  • 労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成すること

印刷・押印・郵送・保管といった物理的な作業が不要になり、時間と場所の制約を受けることなく契約締結が可能です。JIPDEC(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)が2024年3月に公表した調査結果によれば、国内企業における電子契約の利用率は2025年1月時点で78.3%に上るとされています。

(出典:「企業IT利活用動向調査2025(JIPDEC/ITR)」 2.1 電子契約の利用状況の推移:2015年〜2025年」: https://www.jipdec.or.jp/library/report/o66i7e00000015pm-att/20250314_s01.pdf

同調査では、電子契約は新型コロナウイルス感染拡大を契機に広がりを見せ、すでに多くの企業で電子契約が定着していることが指摘されました。

電子契約の法的有効性は、電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)が根拠となっています。同法3条では、「本人による電子署名(一定の要件を満たすもの)」が行われている電子文書等は、真正に成立したものと推定すると規定されています。

さらに電子帳簿保存法の改正によって、2024年1月1日からは電子取引に関する電子データの保存が完全義務化されました。雇用契約書等もこの対象となりうるため、電子化にはこうした関連法を確認することも重要です。

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電子契約を法的に成立させるために必要なもの

電子契約において、その電子文書が真正に成立したことの推定効を得るためには、電子署名法(正式名称:電子署名及び認証業務に関する法律)3条の規定が重要となります。同条は、電磁的記録(電子文書等)について、「記録された情報について本人による電子署名が行われているときは、真正に成立したものと推定する。」と規定しています。

電子署名が本人のためであることを証明するためには、電子証明書が有効です。電子証明書は契約当事者の本人確認や、身元証明を行うためのデジタル証明書です。電子証明書を使用することで、署名者の本人性を確保します。

電子署名が本人の意思に基づき行われたこと(署名者の本人性)を担保する方法として、電子証明書があります。電子証明書とは、信頼できる第三者機関が発行するデジタル形式の証明書のことで、電子署名と署名者を結びつける情報を持っています。

また、電子契約書が改ざんされていないことを示すために、タイムスタンプを付与します。タイムスタンプは電子文書がいつ存在したかを証明するための技術です。第三者機関(総務大臣の認定を受けた時刻認証業務を行う事業者)が発行するタイムスタンプを電子契約書に付与することで、契約締結日時が改ざんされていないことを証明できます。これは、電子帳簿保存法における電子取引データの保存要件(真実性の確保)を満たす手段の一つとしても重要です。

さらに電子契約を実施するためには、専用のシステムやサービスが必要です。システムを導入すれば、電子照明やタイムスタンプも付与されます。

電子契約サービスにはさまざまな種類がありますが、クラウド型の電子契約なら、専門的なIT知識がなくても比較的容易に導入可能です。

雇用契約を電子化するメリット

雇用契約を電子化することで、企業側と労働者側の双方にメリットが生まれます。ペーパーレス化による環境負荷の軽減だけでなく、業務効率化やコスト削減、リモートワーク対応など、多角的な効果が期待できるからです。

雇用契約を電子化するメリットを、企業・従業員の両方から見ていきましょう。

企業側のメリット

雇用で電子契約を導入する際の、主な企業のメリットは以下の3つです。

  1. リモートワークや業務の効率化が可能になる
  2. 契約管理が容易になる
  3. コンプライアンスが強化される

電子契約を導入すると、場所や時間を選ばず契約が締結できます。採用担当者が出社していなくてもリモートワークで契約処理を進められるので、働き方改革にも対応可能です。

特に多くの事業所や従業員を抱える企業では、作業負担が大きく軽減されます。

また、紙の契約書は保管スペースを必要とし、検索や確認にも時間がかかっていました。電子契約ではすべてのデータが一元管理され、必要な契約書を瞬時に検索・参照できるようになります。

電子化によるコスト削減効果もメリットのひとつです。

労働者側のメリット

主な労働者側のメリットは、以下の3つです。

  1. 雇用契約のために来社しなくてよい
  2. コストや時間の節約になる
  3. 手続きが簡単になる

電子契約を導入すると、入社予定者は契約締結のためだけに企業へ足を運ぶ必要がなくなります。遠方に住んでいたり、現職を続けながら転職活動をしていたりするケースでは、特に大きなメリットです。

また電子契約では、返送のための切手代や交通費もかかりません。手続きや投函の手間も省け、時間の節約にもなります。

さらに電子契約システムは、PCやスマートフォンから簡単に操作でき、年代やスキルを問わず、扱いやすいのが特徴です。記入する箇所が画面上に明示され、入力ミスを防止する機能も備わっているので、契約手続きがスムーズに完了します。

雇用契約を電子化するデメリット

雇用契約の電子化には多くのメリットがある一方で、導入や運用にあたっていくつかの課題も存在します。主なデメリットは、以下の2つです。

  1. システム導入や運用にコストがかかる
  2. 社内体制の整備と理解促進が必要

電子契約を導入するためには、専用のサービスやシステムの利用が必要となります。導入時の初期費用や、月額利用料などのコストが必要です。システムの選定時には、長期的な利用における費用も試算します。

また新しいシステムの導入には、社内の業務フローの変更や、関係者の理解促進が必要になります。担当者の業務確認のほか、企業全体での新しいワークフローを確認しなければなりません。操作マニュアルの整備や、定期的な研修の実施などが重要でしょう。

雇用契約を電子化する際の注意点

雇用契約を電子化する際は、主に以下の項目に注意が必要です。

  • 電子帳簿保存法への対応
  • 証拠力の確保と改ざん防止対策
  • 労働条件通知書の電子交付について

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

電子帳簿保存法への対応

改正電子帳簿保存法では、2024年1月から、電子取引の記録については電子データでの保存が義務付けられています。

保存にあたっては、「真実性の確保」と「可視性の確保」の要件を満たすことが必要です。

真実性の確保とは、データが改ざんされていないことを証明できる状態を指します。真実性の確保のためには、以下のいずれかの措置を講じる必要があります(電子帳簿保存法施行規則4条1項各号)。

  1. タイムスタンプが付された後の電子取引データの授受
  2. 電子取引データの授受後、速やかに(またはその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す
  3. 記録事項について訂正・削除を行った場合には、その事実及び内容を確認することができる、またはそもそも訂正・削除ができない電子計算機処理システムを使用して保存を行う
  4. 正当な理由がない訂正および削除の防止に関する事務処理規程を定め、当該規程に沿って運用する

また、可視性の確保の要件として、電子取引データについて「取引年月日その他の日付」「取引金額」「取引先」を検索キーとして設定し、日付または金額の項目における範囲指定や複数のキーを組み合わせての検索ができる機能を確保することが求められます(電子帳簿保存法施行規則2条6項5号、同規則5条5項1号ハ)。なお、データの訂正・削除履歴の確認機能は、主に前述の真実性の確保に関連する要件です。

雇用契約書の電子化を導入する際には、こうしたシステムや設備が整っていることを確認することが大切です。

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証拠力の確保と改ざん防止対策

証拠力の確保と改ざん防止対策も重要です。電子署名法に基づいた電子署名やタイムスタンプを付与することで、契約書の真正性を担保し、後日の紛争リスクを軽減できます。

アクセス権限の適切な設定も、改ざん防止に役立ちます。契約データへのアクセスを担当者のみに制限し、操作権限も役割に応じて設定することで、内部不正のリスクを低減できます。

また定期的なセキュリティ監査やアクセスログの確認を行うことで、万が一の不正アクセスや改ざんの兆候を早期に発見する体制が整います。電子契約システムは、こうしたセキュリティ対策が充実したサービスを選ぶのがおすすめです。

労働条件通知書の電子交付について

労働条件通知書の電子交付は、労働者本人が希望することが法的な要件です。加えて、交付された労働条件通知書を、労働者がいつでも容易に確認でき、かつ必要に応じて書面として出力できるような環境を整備することも求められます。労働者が自宅のパソコンやスマートフォンからアクセスできるサービスを活用するか、社内PCから常時アクセスできる環境整備を進める必要があります。

入社時点ではまだ会社のシステムに慣れていない従業員も多いため、必要に応じて、アクセス方法の説明や、操作サポートを行います。ただし電子メールやクラウドストレージを利用する場合は、個人情報などの機微情報の漏洩リスクにも配慮しなくてはいけません。適切なセキュリティ対策を講じましょう。

まとめ

雇用契約の電子化は企業にも、労働者にも大きなメリットがあります。一方で導入コストや社内体制の整備には留意しなくてはなりません。

また導入に際しては、電子帳簿保存法への対応や証拠力の確保、労働条件通知書の電子交付における留意点などに注意してください。

時代の変化とともに、雇用契約の電子化はますます一般的になっていくことが推測されます。企業の需要にあったサービスを選定し、効率的な契約プロセスを構築することで、人事業務の効率化と生産性向上を実現できるのです。


契約業務DXの第一歩として選ばれることの多い電子契約ですが、契約審査、契約管理など連続する別の業務と切り離して導入することは業務改善の観点においては得策とは言い切れません。LegalOn Cloudは、AIテクノロジーを駆使し、法務業務を広範囲かつ総合的に支援する次世代のリーガルテックプラットフォームです。電子契約を含むあらゆる法務業務をAIがカバーでき、さらに必要な業務支援サービスを選択して導入できるため、契約の電子化の選択肢としても非常に有力です。

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NobishiroHômu編集部
執筆

NobishiroHômu編集部

 

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