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【人材業界基礎知識】職業安定法とは? 改正情報と違反した場合のリスクは?

【人材業界基礎知識】職業安定法とは? 改正情報と違反した場合のリスクは?
この記事を読んでわかること
    • 職業安定法の概要
    • 違反することで発生するペナルティ
    • 違反しないように求人募集するコツ
    • 求人募集に関係する法律

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企業のコンプライアンスやワークライフバランスをはじめとする就業環境の安定化が重視されるなか、不適切な求人募集を行った場合のデメリットや法的リスクは、年々厳しくなる傾向にあります。適切な求人募集には職業安定法が深く関係してくるため、企業の採用担当者や法務担当者は、同法について正しく理解する必要があります。

この記事では、求人における職業安定法の概要や違反時の法的リスクや措置、担当者が対応すべき事項などについて解説します。

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職業安定法とは?

職業安定法は、労働力の充足や労働者の適正な職業選択を支援するための法律です。職業紹介事業など労働市場の需要と供給に関わる企業が、労働者に対して適正かつ円滑にサービスを実施するために必要な、職業紹介や募集要項に関するルールを定めています。

職業安定法は原則として全ての職業に適用されるため、募集する仕事内容や採用形態に関わらず遵守する必要があります。

職業安定法を構成する要素

職業安定法は大きく分けて職業紹介、労働者の募集、労働者供給の3つについてのルールが定められており、人材関連事業に関わる人だけでなく、自社の採用に関わる人も、全てを把握することが重要です。

職業紹介

職業紹介とは、求職者と求人者との間を取り持ち、雇用契約の成立を支援するサービスを指します。求職者と企業を適切にマッチングするために、ハローワークや民間の職業紹介サービスに対して、職業安定法では職業紹介に関する以下のようなルールが定められています。

  • 職業紹介事業を行う場合は厚生労働大臣の許可が必要
  • 求職者から報酬を受け取ってはならない
  • 原則としてすべての求人申し込みを受理しなければならない
  • 個人情報の取り扱いは慎重に対応しなければならない

なお、「公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者は、求人の申込みは全て受理しなければならない。(職業安定法5条の6)」となっていますが、以下の項目に該当する求人の申し込みは例外的に拒否できます。

  • 法令に違反しているケース
  • 通常とかけ離れた労働条件を設定しているケース
  • 法令に基づく処分を受けている者からの申し込み
  • 求人内容に必要事項が明記されていないケース
  • 暴力団員といった反社会的勢力などからの申し込み
  • 正当な理由なく情報提供に応じない者からの申し込み

労働者の募集

職業安定法における労働者の募集とは、企業や事業主が雇用のために、自らもしくは他社のサービスを活用して労働者を募集する行為を指します。企業が労働者を募集する際には、必ず以下の項目に該当する記述を求人情報に明記しなければなりません。

  • 業務内容
  • 契約期間
  • 試用期間
  • 就業場所(勤務地)
  • 就業時間
  • 休憩時間
  • 休日
  • 時間外労働の有無と時間
  • 賃金
  • 健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険の加入の有無
  • 受動喫煙防止措置
  • 募集者の氏名または名称
  • (派遣労働者として雇用する場合)雇用形態の明示

なお、原則的に上記の内容は書面にて求職者に共有しなければなりませんが、求職者からの同意を得た場合のみ、電子メールによる共有が認められています。

労働者供給

労働者供給は、供給契約に基づき、ある事業主が自己が雇用する労働者を、他の事業主の指揮命令のもとで働かせることです。労働者供給事業は、雇用関係が曖昧になり、労働者の立場が不安定になる恐れがあることから、職業安定法で原則禁止されています。

なお、似た概念である「労働派遣」は、労働者派遣法に規定されており、許可や届け出が認められれば事業とすることが可能です。労働者供給とは、雇用関係が明確である点が大きく異なります。

職業安定法に違反すると発生するペナルティ

適法でない求人や労働者供給を行った場合、職業安定法の定めにより、事業者や企業にペナルティが課せられる場合があります。ペナルティには行政処分や刑事罰があり、最悪の場合、事業の廃止に至る可能性もあります。ここでは、職業安定法に違反すると発生する可能性があるペナルティを3つ解説します。

業務改善命令

業務改善命令は、企業や事業者が法律や規則に違反した場合に、都道府県労働局により指導、改善命令などが行われることです。業務改善命令の主な流れは以下のとおりです。

  1. 行政機関の調査(立ち入り検査や報告の求め)
  2. 指導・勧告
  3. 指導や勧告に従わない場合は、業務改善命令を発令する
  4. 改善計画の提出・実施
  5. 再調査

業務改善命令に従わない場合、企業名が公表される、より重いペナルティである事業停止命令や許可の取り消しなどが行われるといったこともあります。

事業停止命令

事業停止命令は、企業や事業者が法令違反した場合に、行政機関が一定期間その事業の運営を停止させる命令です。事業の停止は企業に大きな経営的ダメージを与えるだけでなく、社会的信用度の低下にもつながるため、事業が低迷する一因となる可能性があります。

許可の取り消し

改善命令に従わないなど、求人サービスを実施する事業者が職業安定法に著しく違反した場合、事業の許可を取り消されることがあります。

2024年の改正内容

職業安定法は時代のニーズや働き方の変化に合わせ、改正が行われています。2024年には、募集する労働者の労働条件として新たに以下を明示しなければならないとする定めが追加されました。

  • 従事すべき業務の変更の範囲:雇入れ直後の業務内容のみならず、今後変更する可能性がある業務内容を含めた内容を記載する必要があります。
  • 就業場所の変更の範囲:雇入れ直後の就業場所のみならず、今後転勤する可能性がある就業場所を含めた内容を記載する必要があります。
  • 有期労働契約を更新する際の基準:有期雇用契約の更新有無や更新条件を記載する必要があります。

【職業安定法遵守のために】労働者募集で注意したいこと3選

職業安定法に違反しないためには、労働者募集要項を記載するうえで注意しなければならないポイントがいくつもあります。ここでは、求人する際に注意すべきポイントを3つ解説します。以下のポイントを守ることで、職業安定法に違反するリスクを抑えられるだけでなく、多くの求職者が興味を持ちやすい内容を作成可能です。

記載しなければならない項目が記載されているか?

労働者募集を作成する際には、職業安定法の労働者募集に関する定めに基づき、業務内容や契約期間をはじめとした項目を必ず記載しなければなりません。1つでも項目の記載が漏れていると、職業安定法の違反対象になりかねないため注意が必要です。

なお、2024年の改正によって「従事すべき業務の変更の範囲」、「就業場所の変更の範囲」、「有期労働契約を更新する場合の基準」の3項目が求人募集の必須記載事項に追加されています。今後も改正によって必須の記載内容が変わる可能性があるので、労働者募集を開始する前に、改正内容があるかどうか確認することをおすすめします。

事実と異なる内容の記載

うそや誇張した内容を記載すると、職業安定法の違反対象となります。特に時間外労働の有無や残業時間などは、業務の実態に即したものを記載しないと、採用後にトラブルや早期離職に発展する場合もあるため、それらを防止する意味でも注意が必要です。

最低賃金以下の給与

最低賃金以下の給与で労働者の募集を開始すると、最低賃金法の違反対象となってしまいます。エリアごとに最低賃金が異なるだけでなく、物価や経済状況に合わせて、最低賃金が改正されることもあるため、常に最新の改正情報を確認することが必要です。

職業安定法以外の労働者募集に関係する法律

適切な労働環境を実現するために、職業に関する法律は職業安定法以外にも多くあります。ここでは、職業安定法とともに確認しておきたい、労働者募集に関わる法律について大まかな概要を解説します。

男女雇用機会均等法

男女雇用機会均等法は、性別による差別を禁止し、男女が平等に雇用機会を得られるよう定めた法律です。「募集・採用時の性別による差別の禁止」や「配置・昇進・教育訓練の均等な機会」など、採用から働き方までさまざまな場面に応じたルールが定められています。企業が男女雇用機会均等法に違反した場合、厚生労働省からの是正勧告を受けることがあるので注意が必要です。

募集要項の記載においても、「男性のみ」などの性別を限定する表現や、男女で採用人数に差を設ける記載は、男女雇用機会均等法に抵触する可能性があります。ただし、警備員やガードマンなど防犯上に影響が出る分野や、俳優やモデルなど芸術に関する分野では、必ずしも性別を限定する表現は違法ではありません。

労働施策総合推進法

労働施策総合推進法は、職業の安定化と労働者の適切な処遇を促進することを目的とした法律で、「労働力の需給の適正化」や「雇用機会の確保」を目指しています。企業に対する義務や高齢者・障害者の雇用促進など、労働のさまざまな観点からルールを定めている特徴があります。企業が雇用対策法に違反した場合、厚生労働省からの指導や助成金の停止などの措置を受けることがあるので注意が必要です。

労働基準法

労働基準法は労働者の最低限の労働条件を定めた法律です。労働時間の制限や解雇のルールなど、労働条件の基礎を形成しています。労働基準法に違反した場合、懲役や罰金などの重い罰則を科される場合もあるため、企業や経営者は注意が必要です。

募集要項の記載においても、「20歳以下のみ」などの年齢を限定する表現は、雇用対策法により原則として禁止されています。ただし、労働基準法により年齢制限が設けられている業種など、例外が認められている職種は年齢を限定する表現を記載できます。なお、記載する際には必ず理由も明記するように定められています。

求人募集で職業安定法に違反しないために企業が注意すべきポイント

この記事では、職業安定法の概要や違反した場合に発生するペナルティなどを解説しました。職業安定法はすべての職業に適用されるため、ハローワークや求人サービスはもちろん、一般の事業者が自社で雇用する労働者を募集する場合でも、ルールを守らなくてはいけません。

違反すると、業務改善命令や業務停止命令など、ペナルティを科せられる場合があるので、募集内容を作成する際にはルールをよく確認することが重要です。もし、職業安定法の理解について不安を感じる人は、外部の専門家に記載内容を確認してもらってはいかがでしょうか。

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NobishiroHômu編集部
執筆

NobishiroHômu編集部

 

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