英文契約書のリーガルチェックが重要な理由
英文契約書は、日本語の契約書と比べて表現や法的解釈において大きな違いが生まれる場合があります。特に海外企業との取引では、言語だけでなく法体系の違いから、意図しない義務や責任を負うリスクが存在しています。
日本語契約とは異なる「表現・解釈リスク」
英文契約書では、文言が簡潔であっても広い意味を持つことがあります。たとえば「best efforts(最大限の努力)」という表現は、裁判で「実際にどこまでが努力義務に該当するか」が問われる可能性があります。「material breach(重大な違反)」といった曖昧な基準も、解釈によっては契約解除の要件となり、こうした表現の曖昧さが後のトラブルを招きかねません。
また、国によって契約解釈の基本原則が異なる点にも注意が必要です。日本では契約書の文言よりも「当事者の意思」が重視される傾向にありますが、英米法などでは「書かれた内容」が最重要とされます。こういった表現や解釈による違いを理解せずに契約を締結すると、不利な立場に立たされる可能性が高くなります。
誤訳・見落としによるビジネス上の損失
英文契約書を自社で翻訳・確認する場合、専門用語や慣用表現の誤訳によって、契約内容を誤解するリスクがあります。例えば「indemnify(補償する)」と「compensate(賠償する)」は似た表現ですが、法的意味は異なります。こうした差異を見落とすと、予期せぬ賠償責任を負う恐れがあるため、リーガルチェックが不可欠です。
また、管轄裁判所や準拠法の指定を見落とすこともリスクに繋がります。こちらが日本の裁判所を想定していても、英文契約に「本契約に関する紛争はシンガポール法に従い、同国の裁判所を専属的合意管轄とする」といった条項がある場合、訴訟対応が極めて困難になるでしょう。このようなリスクを防ぐためにも、英文契約に合わせた正確なリーガルチェックは欠かせません。
英文契約書のリーガルチェックを自社で行う場合のチェックポイント
ここでは、英文契約書を社内で確認する場合のリーガルチェックで確認すべき主要な項目を整理していきます。
契約の基本情報(当事者・日付・契約期間)
まず、契約の基礎情報を確認していきます。契約当事者の正式名称・住所・署名権限者の肩書きに誤りがないかをチェックすることが基本です。法人格(Inc.やLtd.など)の違いによって責任主体が異なる場合もあるため、登記情報などを照合しておくとリスクを回避できます。
また、契約の有効期間や自動更新条項も見落としやすい項目です。特に更新に関する規定が「自動更新」となっている場合、解約通知の期限を過ぎると意図せず契約が延長されるリスクがあります。
契約の目的・定義条項
契約の目的が自社の取引内容と一致しているか、定義条項の記載が曖昧でないかを確認します。例えば「Services(サービス)」や「Deliverables(成果物)」といった用語が具体的に何を指すのか不明確だと、後の納品範囲や報酬トラブルに繋がりかねません。
義務・責任の範囲
取引条件や支払い方法、瑕疵対応、損害賠償の範囲などを確認します。特に注意すべきは「limitation of liability(責任制限条項)」です。この条項によって損害賠償の上限が設定されている場合、重大な損害が発生しても補償が受けられないことがあります。
また、「force majeure(不可抗力条項)」に新型感染症や自然災害が含まれるかどうかも、近年では重要な確認項目となっています。
準拠法・裁判管轄の確認
契約の準拠法と裁判管轄は、トラブル発生時のリスクを左右する重要項目です。一般的に、準拠法は契約書末尾に「Governing Law(準拠法)」や「Jurisdiction(管轄権)」として明記されます。自社にとって不利な法域(州法など)が選ばれていないかを含めて、チェックの対象にします。「exclusive jurisdiction(専属管轄権)」が指定されている場合、日本の裁判所に訴え出ることができないため注意が必要です。
秘密保持・競業避止などの制約条項
「confidentiality(機密保持)」に関する条項は、契約終了後も義務が継続することが多くあります。期間の明確化や、情報の範囲が自社に不利になっていないかの確認が必要です。
さらに、競業避止や再委託禁止に関する条項は、将来的な事業展開を制約するおそれがあるため、期間や範囲を具体的に定義することが重要となります。
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弁護士に英文契約のリーガルチェックを依頼する場合
自社でのチェックに限界を感じた場合、専門家への依頼が有効です。ここでは、弁護士にリーガルチェックを依頼する際のメリットや費用、選び方を整理していきます。
弁護士に依頼するメリット
弁護士に依頼する最大のメリットは、法的リスクを見落とさない点にあります。専門家である弁護士は契約書の条文だけでなく、裁判例や国際取引の慣習を踏まえたうえでリスクを指摘します。
また、契約交渉の戦略立案や修正文案の提案まで依頼できる弁護士事務所もあるため、場合によっては交渉力の強化も可能です。特に海外企業との取引では、相手企業が所属する国家の法実務に通じた弁護士のサポートが不可欠となるでしょう。
弁護士に依頼する場合の費用相場
一般的に、英文契約書に関する弁護士費用は、以下のような相場となっています。
A4サイズ1ページ当たり(2025年時点)英文契約書の作成 10,000円~20,000円
- 英文契約書のチェック・修正 10,000円~20,000円
- 英文契約書の翻訳 15,000円~20,000円
また、この他にも英文契約書を一から作成する場合は、契約種別ごとの金額が設定されている場合が多いです。先方との協議などを含めて依頼する場合は、時間当たりで報酬を支払うタイムチャージ形式の費用が掛かります。上記の相場は簡易な契約内容の場合のものです。複雑な契約、個別性が強い契約などの場合は大きく金額が変わる可能性が高いため、弁護士に確認することが必要です。詳しくは弁護士事務所がホームページ上で公開している料金表などで、確認してみましょう。
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弁護士選びのポイント
英文契約のチェックを依頼する際は、以下のような観点を重視して弁護士を選ぶことで、英文契約書特有のリスクに対応することができます。
- 国際取引・英文契約の実務経験が豊富であること
- 国内外を問わず業界特有の商慣習に詳しいこと
- スポット対応だけでなく、継続的なサポート体制(顧問契約)を構築してもらえること
中でも頻繁に海外の企業と取引がある場合、顧問契約を結ぶことで安全性の高い契約環境を作りやすくなります。
AIツールを活用した英文契約レビューの効率化
英文契約のチェックには高度な専門知識が求められますが、すべてを社内の人手で行うのは現実的ではありません。しかし、弁護士へ依頼すると内容の複雑さや専門性の高さによっては、高額な費用が掛かる場合もあります。そこで近年では、AI技術を活用した契約レビュー支援ツールが法務現場に浸透しつつあります。
自社チェックと弁護士レビューの間を埋める
AIツールは、契約書をアップロードするだけで自動的に条文を解析し、リスクの高い箇所を抽出することが可能です。これにより、法務担当者が事前に問題箇所を把握し、弁護士に依頼する範囲を絞ることができます。結果として、チェックの精度を保ちながら、時間とコストを大幅に削減できるのです。
AIによる英文チェック
英文対応のAIチェックツールの場合、過去の英文契約書のデータや法的リスクに関するデータベースを学習しており、人間が見落としやすい不備を自動的に指摘します。英文特有の単語の法的解釈の違いや誤訳を防ぐのに、適した機能です。
特に解釈や翻訳といった過去の事例が活かしやすい英文契約書のリーガルチェックでは、AIツールの活用が効果的に働きます。
LegalOnの契約レビュー機能で実現する正確なチェック
法務AIプラットフォーム「LegalOn」では、英文契約にも対応した契約リスクチェック機能を搭載しています。契約書をアップロードするだけで、自社に不利な条文や不足している項目を自動検出可能です。また、契約類型(NDA、業務委託、販売契約など)や自社の立場を指定することで、より正確で文脈に沿ったリスク分析が可能になります。
英文契約書を扱う法務担当者にとって「LegalOn」は自社でのリーガルチェックで防ぎきれないリスクを回避する支援ツールです。専門家の知見をAIが補完することで、リスクを見落とさず、迅速かつ効率的な契約判断を実現できます。
まとめ:英文契約のリーガルチェックでリスクを回避する
英文契約書のリーガルチェックは、自社の取引リスクを最小限に抑えるための重要なプロセスです。わずかな文言の違いや曖昧な表現が、契約上の義務や損害賠償範囲を大きく左右することも少なくありません。そのため、まずは自社で基本的なチェック項目を理解し、契約の全体像を把握することが第一歩となります。そのうえで、複雑な条項や判断が難しい部分については、国際取引に精通した弁護士に相談することで、法的なリスクをより確実に回避できます。
また近年では、AIツールによる契約チェックの精度とスピードが大きく向上しています。英文契約のリーガルチェックは、もはや専門家だけの仕事ではありません。今後は「人とAIの協働」によって、誰もが安心して契約を扱える環境を整えることが求められていくでしょう。
法務AI「LegalOn」は、英文契約にも対応した契約リスクチェック機能を搭載しています。契約書をアップロードするだけで、自社に不利な条文や不足している項目を自動検出可能です。また、契約類型(NDA、業務委託、販売契約など)や自社の立場を指定することで、より正確で文脈に沿ったリスク分析が可能になります。
以下より製品資料を無料でダウンロードできるので、気になる方はぜひご覧ください。
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