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英文契約書をレビューする際の注意点|基本的な構成・和文契約書との違いも解説

英文契約書をレビューする際の注意点|基本的な構成・和文契約書との違いも解説

英文契約書の基本的な構成は、和文契約書と大きく変わるわけではありません。しかし、網羅的な定めをすることがより重要になる点や、準拠法・合意管轄条項の重要性が高い点など、英文契約書特有の留意点があります。英文契約書を締結する際には、和文契約書以上に慎重なレビューが必要です。

今回は英文契約書について、基本的な構成・和文契約書との違い・レビューする際の注意点などを解説します。

(※この記事は、2022年12月22日時点の法令等に基づいて作成されています)

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英文契約書の基本的な構成

英文契約書は、前文の書き方に特徴があるほか、署名欄は押印ではなくサインとなるケースが多いなど、和文契約書とは異なる点がいくつかあります。まずは英文契約書の基本的な構成を確認しておきましょう。

表題(タイトル)

英文契約書の冒頭には「表題(タイトル)」を記載します。

契約書の表題の付け方には、厳密なルールはありません。ただし基本的には、契約管理の便宜の観点から、契約書の内容が一目で把握できる表題を付けることが望ましいでしょう。

なお英文契約書では、「契約書」や「合意書」は”Agreement”、「覚書」は”Memorandum”などと表記されます

英文契約書の表題(タイトル)例

・Loan Agreement(金銭消費貸借契約書)
・Sale and purchase Agreement(売買契約書)
・Non-disclosure Agreement(秘密保持契約書)
・Service Agreement(業務委託契約書)
・Memorandum regarding Service Agreement(業務委託契約に関する覚書)
など

前文

表題の次には、契約に関する基本的な事項をまとめた「前文」を記載します。

契約書の前文に記載すべき事項

・当事者の氏名(名称)
・当事者が予定している取引の内容(簡潔に)
・契約締結日
・本文の内容にて契約を締結する旨
など

さらに英文契約書の場合、”WHEREAS” ”NOW, THEREFORE”として、契約に至った経緯を記載するケースが多いです。これは英米法において、契約の成立には「約因(対価)」(consideration)が必要とされていることに由来します。つまり、約因が何かを明らかにするために、契約に至った経緯を詳しく記載するのです。

WHEREAS:
(1)(契約に至った経緯を記載)
……
NOW, THEREFORE, in consideration of mutual agreement specified in this Agreement, the parties agree to the following:

なお、上記の内容について”WHEREAS” ”NOW, THEREFORE”を使わず、”RECITALS”などと小見出しを付した上で記載するケースもあります。

本文

前文に続いて、契約書の本文を記載します。

契約書の本文には、当事者が合意した内容を漏れのないように、明確な文言で記載しなければなりません。

取引の内容や回避すべきリスク、法令上規定が求められる条項などを踏まえて、本文として記載すべき内容を精査しましょう。また、条文の意義を明確化するためには、「5W1H」を意識して条文を作成することが有用です。

契約書の5W1H

・主体(「誰が」「誰に」、Who)
・時期(「いつ」、When)
・場所(「どこで」、Where)
・条件(「~した場合には」、Why)
・行為(「何を」、What)
・方法(「どのような方法で」、How)

なお、英文契約書における条文番号の読み方についても触れておきます。

和文契約書では「条」「項」「号」の順で条文を記載するのが一般的ですが、英文契約書でも基本的には同様です。
英文契約書では、
「条」は”Article”または”Section”と表記するのが一般的です。「項」以下は数字で記載しますが、本文中で他の条文を引用する場合、「項」は”Paragraph”、「号」は”Item”と表記します

(例)
……providing in Section 4, Paragraph 2, Item 3……
(4条2項3号に定められるとおり)

後文・署名欄

本文に定めるべき事項をすべて記載したら、その後に「後文」を記載します。

契約書の後文に記載すべき事項(書面の場合)

・契約書作成の目的(本契約の成立を証するため)
・契約書の通数(当事者の数と同通数を作成するのが原則)
・作成者(当事者全員)
・契約締結の方法(記名押印、署名捺印、サインなど)
・保管者(各自1通ずつを保管するなど)

契約書の後文に記載すべき事項(電子契約の場合)

・契約書作成の目的(本契約の成立を証するため)
・電磁的記録で契約書を作成する旨
・作成者(当事者全員)
・契約締結の方法(電子署名など)
・保管者(各自電磁的記録を保管するなど)

署名欄には、当事者の情報(名称・住所・代表者)を記載した上で、当事者全員が以下のいずれかの方式によって調印を行います。

契約書の主な調印方式

・記名押印方式
→あらかじめ当事者の名称(氏名)を印字し、その箇所に印鑑を押します。

・署名捺印方式
→当事者が氏名を自署し、その箇所に印鑑を押します。

・サイン方式
→当事者(法人の場合はその代表者)が署名欄にサインをします。

英文契約書の場合、海外の当事者についてはサイン方式によって調印するのが一般的です。これに対して、日本国内の当事者については、サイン方式とする場合もありますが、和文契約書と同様に記名押印方式(または署名捺印方式)とすることもあります。

別紙

契約の細かい条件については、契約書の読みやすさなどを考慮して、本文ではなく別紙にまとめることもあります。

英文契約書の場合、「別紙」は”Appendix” “Exhibit” “Annex”などと表記されます。

英文契約書の特徴|和文契約書との違い

英文契約書をレビューする際の考え方は、和文契約書と大きく異なるわけではありません。しかし英文契約書には以下に挙げるように、和文契約書とは異なる特徴もあります。

  • 英文契約書では網羅的な記載が重要
  • 英文契約書の方が分量が多くなりがち
  • 準拠法・合意管轄条項の重要度が高い

英文契約書では網羅的な記載が重要

英米法には、「口頭証拠排除原則」(Parol Evidence Rule)が存在します。口頭証拠排除の原則とは、契約書が存在する場合において、その契約書の内容と矛盾する当事者間の合意(口頭か書面かを問わない。)を、契約締結と同時またはそれ以前に存在していたとして証拠として持ち出しても、裁判所は考慮しないという原則です。

口頭証拠排除原則が適用され得る英文契約書では、契約から想定される事態の処理方法はできるだけ網羅的に協議し、契約書に詳しく書き込むことが求められます。和文契約書においても網羅的な記載をすることは重要ですが、英文契約書の場合、その要請はよりいっそう強いと言えるでしょう。

英文契約書の方が分量が多くなりがち

英文契約書と和文契約書を比較すると、分量は英文契約書の方が多くなりがちです。

前述のとおり、英文契約書では合意事項を網羅的に記載することが重要になります。些末に思える事柄であっても、念には念を入れて細かくルールを記載するため、必然的に分量が多くなってしまうのです。数十から数百ページに及ぶ英文契約書は、比較的よく見られます。

分量の多い英文契約書をレビューする際には、条項ごとに重要度を判断し、特に重要な条項を重点的にチェックすることが多いです。

準拠法・合意管轄条項の重要度が高い

異なる国・地域の主体同士が英文契約書を締結する場合は、準拠法(Governing Law)と合意管轄(Jurisdiction)の定めの重要度が高くなります

  • 準拠法(Governing Law)
    →どの国・地域の法に従って契約書の内容を解釈し、どの国・地域の法を契約書に適用するかを定める条項です。取引が主に行われる国・地域の法を選択するか、または当事者のうち交渉力の強い主体の国・地域の法を選択するのが一般的です。
  • 合意管轄(Jurisdiction)
    →契約に関して紛争が発生した場合に、どの裁判所で解決を争うかについてあらかじめ定める条項です。当事者のいずれかが属する国・地域の裁判所を指定するケースと、仲裁地や仲裁機関を定めるケースがよく見られます。

英文契約書を締結する際には、取引の実情と自社にとっての利害得失や利便性を考慮して、適切に準拠法と合意管轄を定めることが大切です。

明確な表現を心がける

多様な解釈が可能な表現を用いた場合、誤解を与える可能性があるため、意味が明確に伝わるような表現を心がけることが大切です。

あいまいな表現としては、「~しなければならない」を説明する場合がよく例として取り上げられます。この表現の選択肢となる単語は、Shall・Must・Willなどです。

しかし、Mustは一般的義務を表す単語でもあり、Willは意味や程度に解釈の幅があります。そのため英文契約書では、Shallがよく用いられます。

あいまいな表現は解釈が複数あるため、裁判に発展した際などに、不利にはたらく可能性があります。トラブルを避けるためにも、英文契約書には明確な表現を用いましょう。

用語は理解したうえで使用する

英文契約書では、日常では使用しない専門的な法律用語がよく使用されます。理解できていないまま作成を進めると、誤解を招いたり、意図とは反する内容になったりする恐れがあるので注意が必要です。英文契約書では、以下のような用語がよく使用されます。 

as is現状のままAs the case may be場合によってBona fide善意(知らない)Conditions Precedent停止条件/前提条件execution執行/実行et al.そのほかde facto事実上force majeure不可抗力Indemnification/Indemnify補償In lieu of~に代わってlex fori準拠法made and entered into締結したmutatis mutandis準用するOn behalf of~の代理として/~のために

用語は類似するものも存在しており、一文字違っただけでも、意味が異なる場合があります。誤表記もおきやすいため、用語は意味を理解したうえで正確に使用しましょう。

英文契約書とレター・オブ・インテントの違い

レター・オブ・インテント(LOI)とは、法的な拘束力のある合意をした際に、締結する文書のことです。一般的には合意書として位置づけられており、協定書や覚書にも似ています。

レター・オブ・インテントと英文契約書の違いは、明確な線引きがあるわけではありません。レター・オブ・インテントの内容や準拠法によっては、法的な拘束力を有するため、契約書の一種ともいえます。締結する目的によっても異なるため、どの程度まで効力を有するかについては、その都度判断する必要があります。

英文契約書をレビューする際の注意点

英文契約書をレビューする際、特に注意すべきポイントは以下の3点です。

  • 自社に不利な条項を見逃さない
  • 過去の契約書との差異を確認・検証する
  • 関連契約との整合性を確保する

自社に不利な条項を見逃さない

契約書レビューの際にもっとも重要なことは、自社にとって不当に不利な条項を発見し、修正を求めることです。契約トラブルが発生した際に不利益を被らないようにするため、法令・裁判例・実務慣行などに照らして不合理に不利益な条項については、見逃さずに発見して修正を求める必要があります。

特に、相手方が契約書のドラフトを作成した場合は要注意です。自社に不利益をもたらす条項がたくさん含まれている可能性があります。
英文契約書の場合、分量が多くてレビューが大変なこともよくありますが、隅々までドラフトの内容をチェックしなければなりません。

過去の契約書との差異を確認・検証する

過去に同種の契約を締結している場合は、今回の契約との差異を確認して、その妥当性を検証する必要があります。

特に相手方が契約書のドラフトを作成した場合には、過去の契約から注釈なく内容が変更されているケースも多いです。目視での比較だけでなく、機械的な比較も行った上で、自社にとって問題のある変更がなされていないかどうか慎重に確認しましょう。

関連契約との整合性を確保する

今回締結する契約と関連する契約を過去に締結している場合は、相互に内容を照らし合わせて、矛盾点がないことを確認する必要があります。

よく見られるのは、過去に本体となる契約(原契約)を締結している状況で、新たに覚書などを追加で締結するケースです。この場合、覚書などの内容をチェックする際には、必ず原契約の内容を併せて再確認しなければなりません。

英文契約書の作成でおさえておきたいポイント

英文契約書の作成時には、タイトルや表現方法、使用する単語についておさえておきたいポイントがあります。契約書のクオリティを向上させるためにも、ぜひ理解しておきましょう。

具体的なタイトルにすると管理が楽になる

英文契約書には、”Agreement”や”Memorandum”がよく使用されますが、これだけではどのような契約なのかわかりません。タイトルが同じだと、管理もしづらくなるでしょう。取引に応じて、具体的なタイトルにしておけば、管理がしやすくなります。以下は、よく使用される具体的な契約書のタイトル例です。

表記意味Service Agreementサービス契約書/業務委託契約書Contractor Agreement/Outsourcing Agreement業務委託契約書License Agreementライセンス契約書/使用許諾契約書Loan Agreement貸付契約書Share Purchase Agreement株式譲渡契約書Sales Agreement売買契約書Distributorship Agreement販売代理店契約書Employment Agreement雇用契約書Confidentiality Agreement秘密保持契約書Joint Venture Agreement合弁契約書

なお、英文契約書のタイトルでは、”contract”が使用されることがあります。”contract”も英語で契約を意味しますが、さまざまな解釈があることから、ビジネスでは”Agreement”の方がよく使用される用語です。

例外表現や留保表現はよく使用するので覚えておくと便利

契約書全般にいえますが、英文契約書でも「ただし、○○のような場合を除く」のような、例外規定を盛り込むことがよくあります。「ただし~」の場合、“Provided,however,that”を用いるのが一般的です。

また、契約書では「○○の場合には、○○は留保する」というような、留保表現もよく使用します。留保を表現するときは“without prejudice”がよく用いられるので、覚えておくと便利です。作成やチェック業務を効率よく進めるには、定番的な言い回しは覚えておきましょう。

単数形と複数形で意味が変わる単語に注意

英文契約書で使用する単語は、単数形と複数形で意味が変わるものがあります。

たとえば、英文契約書において“damages”は、「損害賠償」を意味する用語です。損害賠償を求める内容を記載する際には、“claim damages”のように表記します。

一方で“damages”の単数形である“damage”は、契約書で単に「損害」を意味する際に使用される用語です。この2つは意味合いが異なるため、誤って使用すると意味が通らない文章になったり、意図とは異なる文脈になったりする可能性があります。

そのほか、単数形と複数形で意味が異なる単語には、以下のようなものがあります。

単数形複数形direction/指揮direction/指図good/利益・福利goods/物品custom/慣習customs/関税security/安全性securities/有価証券need/必要性needs/必要品

例を見ても単語によっては単数形と複数形で、意味が大きく異なることが分かるでしょう。内容次第では多大な損害を被る恐れがあるため、使用する単語は誤字脱字がないよう、正確に記載することが大切です。

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<この記事を書いた人>

Nobisiro編集部
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