Nobishiro LegalOn Cloud
  • NobishiroHômuトップ
  • 投資契約書(出資契約書)とは?基本や記載事項、注意点を解説!

投資契約書(出資契約書)とは?基本や記載事項、注意点を解説!

投資契約書(出資契約書)とは?基本や記載事項、注意点を解説!
この記事を読んでわかること
    • 投資契約書とはなにか
    • 株主間契約書との違い
    • 投資契約書に記載する基本事項と注意点
    • 投資契約書で失敗しないための注意点

「知っておきたい! スタートアップの資金調達における基礎知識」

無料でダウンロードする

企業の資金調達で必要となる、投資契約書(出資契約書)。特にスタートアップやベンチャー企業にとって、この契約書は将来の成長や経営に大きく影響します。

内容を十分理解せずに契約してしまうと、将来的に大きな問題を招くかもしれません。今回は投資契約書の基本から具体的な記載事項、注意すべきポイントを見ていきましょう。

スタートアップにこそおすすめしたい。AIが潜在的な契約リスクを明らかにする【AI法務プラットフォーム LegalOn Cloud】

<関連記事>

契約書のひな形(テンプレート)は無料? どこで手に入る?

契約書作成の必要事項6項目と注意点を徹底解説|代表的な契約書14種類を紹介

事業譲渡契約書とは。目的と効果、記載するべき事項、ひな形も紹介

投資契約書(出資契約書)とは

投資契約書とは、企業が株式発行などにより資金調達を行う際に、投資家から出資を受ける条件などを定めるために締結する契約書です。一般的に、発行会社、投資家に創業者などの経営株主を加えた3者が契約当事者となるケースが多いです。 

投資契約では、投資の実行条件を定める

投資契約は投資家が株式を取得する際、投資実行条件を中心に定めた契約です。引受契約(取得契約)と呼ばれることもあります。

主な内容は、以下のとおりです。

  • 投資に係る発行条件(1株あたりの発行価格、発行株数などの基本的な条件)
  • 資金使途
  • 表明保証等の投資の前提条件
  • 投資実行の条件
  • 契約違反が生じた際の取り決め など

(参考:経済産業省 https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/data/ryuizikou_r.pdf

また会社経営に関する事項および情報開示に関する取り決めのほか、投資後の株主間の権利義務に関する内容など株主間契約で定める事項も投資契約の中で定められることが多くあります。

投資契約書と株主間契約書の違い 

投資契約書は投資家が株式を取得する際の、投資実行条件が記載された書類です。投資そのものに関する取り決めを、主な内容としています。

一方株主間契約は、投資実行後の主要な投資家・発行会社・経営株主との権利義務等を取り決めた契約です。主に以下の内容が記載されます。

  • 役員の選任権や事前承認権など会社経営に関する事項
  • 財務諸表の提供など情報開示に関する事項
  • ドラッグ・アロング(強制売却権)やタグ・アロング(売却参加権)、株式の譲渡制限など投資家のExitや株式の流動制に関するに関する事項
  • 先買権や優先売却請求権

株主間契約は、株主同士の合意によって個別具体な権利義務関係を構築するもので、意見対立の回避や企業経営の安定化を目的とするものです。少数株主の意向を会社運営に反映させる仕組みともいえます。

また投資契約書は当事者である発行会社と投資家の間(経営株主が契約当事者に含まれる場合は経営株主との間でも)で効力を持つのに対し、株主間契約は契約を交わした株主間で有効となります。

投資契約書の基本的な記載事項

投資契約書には、状況に応じて、さまざまな項目が記載されます。ここでは投資契約書の基本的な記載事項の詳細を見ていきましょう。

投資に係る発行条件 

投資契約に関して、基本的な内容が盛り込まれる部分です。具体的には以下の項目が含まれます。

  • 取得する株式等の種類投資家が取得する株式が普通株式なのか種類株式なのかを明記します。
  • 種類株式の内容種類株式を発行する場合、どのような種類の株式が付与されるのかを規定します。
  • 数投資家に対して発行する株式数を明記します。
  • 価格1株あたりの発行価格と総額を定めます。
  • 払込期日等投資家が実際に出資金を払い込む期日です。

一般的に発行する株式の内容は、発行要項にまとめて別紙添付されます。

種類株式とは ?

種類株式とは、普通株式とは権利の内容が異なる株式です。

配当などが普通株式より優先される「優先株式」や株主が会社に買い取りを請求できる「取得請求権付種類株式」のほか、会社の強制的買い取りが可能になる「取得条項付株式」などがあります。

資金使途 

投資家が投資を行う目的は、会社の事業発展にあります。資金使途の記載は、投資家の資金を事業の運営とは無関係に使用されることを防ぎ、有益に使用することを明確にするものです。

多くの場合、取締役会で決議された事項や投資家の承認が得られた事項についても、資金使途の範囲として認める旨が定められます。

表明保証等の投資の前提条件 

表明保証は一定の事項が真実かつ正確であることを表明し、その内容を保証するものです。発行会社と経営株主のそれぞれが提示します。

主な項目は、以下のとおりです。

【発行会社】

  • 投資契約の締結や新株発行をするための権利能力・行為能力を有すること
  • 株式等の発行状況
  • 本発行について、適切な機関決定を経ていること
  • 法令等の違反および訴訟が存在しないこと
  • 許認可、知的財産権の取得がされていること
  • 貸借対照表及び損益計算書が適正であること
  • 反社会的勢力等との関係がないこと
  • 関連当事者取引の開示および取引条件に問題がないこと
  • 必要資料の提出が適正に行われたこと

【経営株主】

  • 投資契約を締結し、履行するために必要な権利能力・行為能力を有すること
  • 他の法人や団体における兼職、兼任がないこと
  • 法令等の違反が存在しないこと
  • 反社会的勢力等との関係がないこと
  • 必要資料の提出が適正に行われたこと 

(参考:経済産業省 https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/data/ryuizikou_r.pdf

その他、状況に応じて項目が設定されます。

払込条件 

投資実行の条件を記載します。投資実行日までにこれらの条件が満たされない場合、投資は取りやめとなります。具体的には、当事者が表明・保証した内容が事実と異なる場合(表明保証違反)、投資が完了するための前提条件(クロージング条件)が充足されない場合などには、投資家は投資実行義務を免れるか、または契約を解除できる旨が定められるのが一般的です。

重要な知的財産権の移管や重要人物の取締役就任、適正な株主構成を実現するための株式の移動などが払込条件として提示されることがあります。

契約違反が生じた際の取り決め 

契約違反が判明した場合、第一に優先されるのは、違反状態の治癒です。契約違反が発見された際には、投資家は発行会社および経営株主に治癒を求めることができます。発行会社と経営株主は、誠意をもって違反状態の治癒にあたる必要があります。

投資契約書にはこうした対応の義務や、具体的な対処方法が盛り込まれます。

対処方法の内容としては、株式買取請求等の処置が挙げられます。重大な違反が起きた場合、該当の投資家がそのまま株主であり続けることは困難ですから、発行会社に対し自身が保有する株式を買い取るよう請求し、投下資本を回収すると共に発行会社から脱却できるようにするためのものです。

さらに、多くの場合、会社に対して損害賠償請求をしようと試みても、投資家は契約違反により被った損害の損害額を算定して立証できません。そこで買取請求権として、投資家が取得した株式の資産価値に相当する金銭を請求する権利をもって投下資本回収の機会を確保するのです。

買取額には一般的に、複数の算定方法の中から最も高い価額が採用されますが、これは交渉事項となります。

会社経営に関する事項および情報開示に関する取り決め

投資契約では、会社運営に関する事項の提示に関する条項も定められます。経営者が重要な決定を行う際の事前承認・通知事項や、取締役指名権についても記載されるのが一般的です。

また決議権を持たずに経営会議や取締役会に出席する「オブザーベーション・ライト 」についても規定されることもあります。

さらに出資者の希望があれば、財務状況の報告義務も盛り込まれる場合があります。株主総会での報告以外に、月次での貸借対照表や損益計算書による報告などを要求する条項です。

投資後に関する内容

優先引受権(先買権) とは発行会社が株式等を発行する場合、投資家は持株比率に応じて優先的に引受けることができる仕組みのことです。ただし、規定された率のストックオプションの発行は除きます。

また契約終了の条件 には「発行会社が上場申請を行った場合」が記載されます。これは金融商品取引所の上場審査の過程において、上場後に一部の投資家が発行会社に対して特別な権利を保有し続けていないことが求められるからです。なお上場が中止・延期になった場合には、再び契約は有効となります。

その他の条項 

そのほかにも、場合に応じて以下のような条項が含まれます。

  • 検査権・調査権:出資後に出資者が必要と判断した場合は、会社の経営状況について帳簿書類の閲覧や担当者への質問をすることができる権利です。
  • 秘密保持義務出資を受けるために会社が開示した情報について、出資者が守秘義務を負うことを定める条項です。
  • 株式公開などに向けた努力義務・協力義務出資者が株式を売却して利益を得ることを目的として出資するケースで盛り込まれます。
  • 合意管轄投資契約について当事者間でトラブルがおき、訴訟での解決が必要になった場合に、どの裁判所で審理するのかを定めます
  • ロックアップ条項投資家が早期に株式を売り抜けて離脱する事態を防ぐため、出資後一定の期間における株式譲渡を禁止する条項です

投資契約書作成の注意点 

投資契約書の作成では、将来的な展開を想定しながら内容を吟味する必要があります。順調にIPOできなかったときやM&Aで株主への配分が変わったときなどにトラブルになる可能性があるからです。

投資契約書の作成で注意してほしいポイントをまとめました。

資金使途を明確にする

投資家は通常、企業から提示された事業計画書に基づいて投資判断を行い、その計画達成のために資金が活用されることを期待しています。しかし実際の運用において、投資資金が当初の目的とは異なる用途に使われることもあります。

そのため投資契約書では、資金使途を具体的に明記し、事前承認が必要な範囲や事後報告で済む範囲など、使途変更に関する手続きを定めておくことが重要です。

経営者の柔軟な判断余地を残しつつも、投資家の意図から大きく逸脱しないよう、バランスの取れた規定を設けてください。

法令適合性を確認する

投資契約も他の契約と同様に、民法の「契約自由の原則」に基づき、当事者間で自由に内容を決定できます。しかし契約内容が特別法の強行規定に違反する場合や、公序良俗に反する場合は、契約の全部または一部が無効となる可能性があります。

例えば会社法や金融商品取引法の規定に反する株式発行条件を定めた場合や、過度に一方的で不公正な条件を課す条項は、法的に無効とされるのです。

特に種類株式の内容や株主権の制限、情報開示義務などについては、関連法規との整合性を十分に検討した上で契約条項を設定することが重要です。必要に応じて、法的な専門知識を持つ弁護士のチェックを受けてください。

紛争リスクを制限する

どんなに慎重に契約を結んでも、将来的に解釈の相違や契約履行をめぐる紛争が発生する可能性は否定できません。万が一紛争が発生した場合の対応についても、あらかじめ契約書で明確に定めておくことが重要です。

また訴訟になった場合、当事者は期日ごとに裁判所へ出頭する必要があります。地理的利便性を考慮して、本店所在地の県庁所在地や東京・大阪などの大都市の裁判所を指定することが一般的です。

長期的な視点から慎重に条項を検討し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら投資契約内容を作成することが、安定した成長につながります。

まとめ

投資契約書は、スタートアップやベンチャー企業が資金調達をする際に必要な契約書です。株式の種類や数、払込金額といった基本的な条件から、会社運営に関する取り決め、表明保証、各種権利義務関係まで、幅広い条項が含まれます。

投資契約書の内容は将来の企業成長や経営の自由度に大きく影響するため、法的な専門家のアドバイスを受けながら慎重に検討してください。契約内容と影響を十分理解した上で交渉し、バランスの取れた契約を締結することが、将来のトラブルを防ぐカギとなります。

十分な準備と専門家のサポートを得て、戦略的に投資契約書を作成してください。

こうした契約実務を的確かつ効率的に進めるためにも、法務DXの活用は欠かせません。一方で、ただ闇雲にリーガルテックを導入するだけではコストに見合う成果は得られません。LegalOn Cloudは、AIテクノロジーを駆使し、法務業務を広範囲かつ総合的に支援する次世代のリーガルテックプラットフォームです。あらゆる法務業務をAIがカバーできるほか、サービスを選んで導入できるため、初めてリーガルテックの導入を検討する方にもおすすめです。

<関連記事>

契約書のひな形(テンプレート)は無料? どこで手に入る?

契約書作成の必要事項6項目と注意点を徹底解説|代表的な契約書14種類を紹介

事業譲渡契約書とは。目的と効果、記載するべき事項、ひな形も紹介

NobishiroHômu編集部
執筆

NobishiroHômu編集部

 

AI法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」を提供する株式会社LegalOn Technologiesの「NobishiroHômu-法務の可能性を広げるメディア-」を編集しています。

法務業務を進化させるAI法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」

3分でわかる製品資料