顧問弁護士とは
顧問弁護士とは、企業の法的パートナーとして、法律に関する相談・処理に幅広く対応する存在です。
法律に関して日常的に相談できるだけでなく、トラブル発生時には迅速に対応してもらえるため、企業のリスクマネジメント強化に欠かせません。
顧問弁護士の役割
弁護士と顧問契約を結ぶことには、大きく分けて次の3つの役割があります。
- 企業の法的リスクの予防
- トラブル発生時の迅速な対応
- 経営判断のサポート
企業の法的リスクの予防
企業の法的リスクを分析した上で、社内規程の整備やコンプライアンス体制の見直し、契約書のリーガルチェックなどを行い、企業の抱える法的リスクを最小限に抑えます。
トラブル発生時の迅速な対応
従業員との労働問題や悪質なクレーム、個人情報の漏えいなど、社内外でトラブルが発生した際に、対応方針を即座に定め、問題収束へと迅速に導きます。
経営判断のサポート
新規事業の立ち上げや事業拡大、株式公開など、重要な経営判断を下す際に法的観点からサポートします。
上記3つの役割を通じ、企業が不安なく事業を展開できるようにバックアップするのが顧問弁護士です。
顧問弁護士に依頼できる業務
顧問弁護士には、主に次のような業務を依頼できます。
- 契約関連業務:契約書のドラフト、レビュー、法的観点からのアドバイスなど
- コーポレート関連業務:社内規定の作成やガバナンス体制の整備など
- トラブル対応業務:クレーム対応や債権回収、従業員とのトラブル対応などへの法的支援など
- その他業務:M&Aや知的財産管理、コンプライアンスに関する社内教育など
上記の通り、さまざまな業務を通じて企業における法的リスクを回避または最小化するのが顧問弁護士の役割です。
なお、「特定の業界に強い」「債権回収に強い」「M&Aに強い」など、弁護士によって得意とする分野は異なります。顧問契約の際には、自社のニーズに合った弁護士を適切に選定しましょう。
契約形態の種類
顧問弁護士とは顧問契約を締結します。顧問契約を締結し、月・年単位で顧問料を支払うことで継続的に法的サービスを受けることが可能になります。一方、顧問として契約をせず、委任契約を締結した上でスポット的に弁護士の法的サービスを受ける選択肢もあります。
委任契約とは、法律行為の実施について、委任者から相手方に委託し相手方がこれを受託する契約です。
顧問弁護士の相場
顧問弁護士に支払う顧問料の相場は、中小企業の場合5万円ほどとされています。しかし、報酬体系や企業規模によって料金は異なるため、次の2点を確認しておきましょう。
- 報酬体系・企業規模ごとの料金相場
- 月額顧問料に含まれるサービス
報酬体系・企業規模ごとの料金相場
弁護士への顧問料は、報酬体系や企業規模によって変動します。
報酬体系による顧問料の違いと費用相場
顧問弁護士へ支払う顧問料は、固定報酬制とタイムチャージ制に分けられます。それぞれの違いを簡単にまとめると次の通りです。
- 固定報酬制:月額5万円のように、固定報酬を毎月支払うタイプ
- タイムチャージ制:実際の業務対応時間に基づき、顧問料が発生するタイプ
また、固定報酬制とタイムチャージ制の費用相場は大きく異なります。中小企業の場合、費用の違いは次の通りです。
- 固定報酬制:5万円ほど
- タイムチャージ制:1〜3万円ほど/1時間
上記の「タイムチャージ制」は、顧問契約を締結している場合に顧問契約外の業務を依頼する場合の追加費用目安です。顧問契約を締結していない場合、これよりも割高になる傾向があります。
また、タイムチャージ制で顧問契約を結ぶ場合、時間単価+基本顧問料のセット料金となっているプランもみられます。その場合、顧問料を支払っている分、タイムチャージの料金が安くなることがあります。
企業規模による顧問料の違いと費用相場
顧問弁護士に支払う顧問料は、契約する企業の規模によっても変動します。
- 大企業:10〜30万円
- 中小企業:5〜10万円
- 個人事業主:1〜5万円
上記はあくまでも目安であり、従業員数や依頼内容によって費用は異なるため注意しましょう。
月額顧問料に含まれるサービス
月額顧問料に含まれるサービスについて、顧問料別にその目安を紹介します。
- 5,000〜1万円
- 業務は非常に限定的
- 実質的な相談は別料金になることも
- 3〜5万円
- 契約書のリーガルチェック
- 社内コンプライアンス体制の構築
- 相談は〜1回/週
- 10万円〜
- 複数の事業について相談可能
- 専門性の高い分野も対応
- 相談は2回〜/週
格安な顧問弁護士サービスの場合、月額5,000円から1万円ほどで契約できることもありますが、依頼できる内容は限定的なことが多いため注意しましょう。
相談は週に1回ほど、契約書の作成・チェックや基本的なコンプライアンス体制の整備などを任せたい場合は、5万円ほどで対応してもらえます。
業種の専門性が高く、より相談頻度を増やしたい場合には、10万円以上かかることがめずらしくありません。
顧問料の費用対効果を高めるポイント
顧問弁護士へ支払う顧問料は、決してリーズナブルではありません。そのため、できる限り費用対効果を高めるためには、次の2つのポイントを押さえておきましょう。
- 利用頻度に応じた料金プランの選択
- 顧問料の積立制度の活用
<関連記事> 契約書のリーガルチェックとは? 手順やチェックポイント、費用などを解説
利用頻度に応じた料金プランの選択
費用対効果を高めたい場合は、相談頻度に応じて適切な料金プランを選び、顧問料の無駄を減らしましょう。
例えば、月に5回まで相談できる定額プランを契約していても、毎月1回から2回しか利用しない場合、顧問料を支払うばかりで費用対効果が低くなってしまいます。
弁護士と顧問契約を結びたい一方で、利用頻度が少ない企業の場合、無理に固定報酬制を選ぶ必要はありません。利用時間に応じて報酬が発生するタイムチャージ制の方が、費用の無駄が出ず固定費を減らせます。
しかし、タイムチャージ制の1時間あたりの報酬は、固定報酬制よりも割高な傾向にあります。相談回数が増えてきた場合は、固定報酬制に切り替えることを検討するとよいでしょう。
顧問料の積立制度の活用
「将来の法的リスクに備えたいものの、毎月相談することがなく顧問料が無駄になっている」という状況を避けるためには、顧問料の積立制度を採用している弁護士事務所などを選択することをおすすめします。
顧問料の積立制度とは、相談やリーガルチェックなども含め何も利用がなかった場合、該当月の顧問料が積み立てられていく制度です。積立られた顧問料は、トラブルがあった際の弁護士費用に充てられます。
利用の有無に関わらず顧問料が無駄にならないため、現段階でトラブルがなくとも、将来のために備えたい場合におすすめです。
弁護士と顧問契約を結ぶメリット
弁護士と顧問契約を交わすことでどのようなメリットがあるのか、次の3つのポイントに沿って解説します。
- 企業法務を法律のプロに依頼できる
- 中小企業でも法的リスクに備えられる
- トラブル発生時にも迅速に対応できる
企業法務を法律のプロに依頼できる
企業法務は、企業が健全に成長・存続していくために必要な業務です。弁護士と顧問契約を交わし、企業法務を依頼することによって、法律のプロからアドバイスをもらえるのは大きなメリットといえます。
契約書のリーガルチェックから雇用トラブルへの対応、M&Aや事業再生など幅広い法的支援を得られるので、法務体制を見直したい、あるいはより強化したい企業にとって心強いパートナーです。
中小企業でも法的リスクに備えられる
中小企業の場合、法務部門に十分なリソースを割けず、法的リスクへの対策がなされていないこともあります。しかし、弁護士と契約し法律顧問を任せることで、不十分なリスク対策を補填可能です。
例えば、中小企業にありがちな資金繰りの悪化や労働問題、取引先とのトラブルといった法的リスクの可能性を分析し、事前に対策するためのアドバイスを得られます。
また、「法的リスクへ備えたいが、顧問料が気になる」とお悩みの方も多いかもしれませんが、顧問弁護士への報酬は必要経費として全額損金処理となるため、節税対策としても有効です。
トラブル発生時にも迅速に対応できる
弁護士と顧問契約を結ぶことで、法的トラブルが発生してしまった場合も適切な初動対応を取れます。企業の内情、トラブルまでの顛末を把握している顧問弁護士だからこそ、迅速な対応が可能です。
顧問弁護士であれば、わざわざ予約せずとも電話やメールを通じて気軽に相談できるため、少しでもリスクを感じた際に早々と対策できる点も助かります。
まとめ
顧問弁護士は、企業の法的リスクを事前に分析し、適切な対策を取れるようサポートする存在です。法的リスクへの備えを徹底できていない場合は、法務部門を顧問弁護士に任せて、トラブルの防止や早急な解決を支援してもらいましょう。
顧問弁護士に相談する以外に、リーガルテックが提供するAIサービスを活用することも、法務体制の強化には有効です。LegalOn Cloudは、AIテクノロジーを駆使し、法務業務を広範囲かつ総合的に支援する次世代のリーガルテックプラットフォームです。あらゆる法務業務をAIがカバーできるほか、サービスを選んで導入できるため、初めてリーガルテックの導入を検討する方にもおすすめです。
<関連記事>
企業法務弁護士とは?企業内弁護士と顧問弁護士の違いと主な業務内容
契約書のリーガルチェックとは? 手順やチェックポイント、費用などを解説