リーガルチェックとは
契約書のリーガルチェックとは、契約書の内容に法的観点で見た問題点やリスクがないか洗い出し、修正やアドバイスを行うプロセスです。契約締結後に法的トラブルが発生するリスクを未然に防ぐため、法律の専門家である弁護士や企業の法務担当者が行います。
リーガルチェックでは、具体的に以下のような内容についてチェックします。
- 契約書の条項が民法や会社法などの関連法規に照らして適切であるか
- あいまいな表現や解釈の余地がある部分はないか
- 損害賠償の範囲や契約解除の条件などが自社にとって不利になっていないか
弁護士などの専門家は、法的知識や過去の判例に基づき、契約書全体を多角的に分析します。これにより将来的に契約上で起こりうるリスクを早期に発見し、契約内容の修正や契約先との再交渉を提案します。企業にとっては単に契約書をチェックするだけでなく、契約の目的や取引の実態を踏まえた上で、最新の法改正などに沿った実効性のあるアドバイスを受けることが可能です。
リーガルチェックを実施するメリット
ここでは、リーガルチェックを実施することで得られる具体的なメリットについて、3つの観点から詳しく解説していきます。
契約書の不備を取り除くことができる
リーガルチェックでは、契約書に潜む不備を事前に発見し、取り除くことができます。契約書は、取引の内容や当事者間の権利義務関係を明確にする重要な書類です。しかし専門的知識がない場合、意図せずあいまいな表現を用いてしまったり、解釈の違いから争いが生じうる条項を盛り込んでしまったりする可能性があります。特に「契約期間・解除条件」「損害賠償の範囲」などが不明確な場合、後々になって大きなトラブルに発展しかねません。弁護士などの専門家によるリーガルチェックを経ることで、より安全で実効性のある契約書を作成することができます。
トラブルや損害の発生を防げる
リーガルチェックは、将来的に発生しうるトラブルや損害を未然に防ぐ上で極めて有効な手段です。契約締結後に法的な紛争が生じた場合、その解決に多大な時間と労力、費用を費やすことになる可能性があります。特に契約内容に不備があったり、一方的に不利な条項が含まれていたりすると、自社が大きな損害を被る場合もあるため注意が必要です。
リーガルチェックでは、その内容が企業にとって不利になったり、トラブルに繋がったりすることがないかも確認します。リーガルチェックによって潜在的なリスクを事前に発見し、契約内容を修正・再交渉することで公平な条項へと変更することが可能になります。
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関連法規を守った契約書を作成できる
リーガルチェックは、関連法規を遵守した契約書を作成する上で極めて有効な確認方法です。企業が締結する契約は、基本的な法律だけでなく、業種や取引内容に応じて様々な関連法規の適用を受けることがあります。専門的な知識がない状態で契約書を作成した場合、これらの関連法規に違反していることに気づかず、後々法的な責任を問われるリスクがあります。そのため、法律を遵守した契約書を作成するには、関連法規や過去の判例を熟知している弁護士や法務担当者によるリーガルチェックが不可欠です。
また、リーガルチェックを行うことで、法令遵守の意識が高い企業であることを対外的に示すことができます。法的な安定性を確保し、安心して取引を進めるためには、リーガルチェックを通じて関連法規を遵守した契約書を作成することが重要です。
リーガルチェックの費用相場
リーガルチェックを専門家に依頼する上で、最も気になる点のひとつは費用です。ここでは、依頼の方法別にその費用相場と特徴を解説します。
スポットで依頼する場合
スポットで弁護士や法律事務所にリーガルチェックを依頼する場合、その費用相場は一般的におよそ5万円から15万円程度とされています。ただし、金額は契約書の内容やボリューム、専門性の高さによって変動するため注意が必要です。例えば、条項の数が少ないシンプルな契約書であれば、比較的安価に済む可能性があります。一方で、複雑な取引に関する契約書や特殊な法律が関わる契約書の場合には、費用も高くなる傾向があります。
また、契約書のチェックだけでなく修正案の作成や交渉への同席などを依頼する場合には、追加で費用が必要です。スポット依頼は、特定の契約書について一度だけ専門家の意見を聞きたい場合に適した依頼方法といえるでしょう。自社の状況や予算に合わせて、複数の法律事務所から見積もりを取り、比較検討することが重要です。
個別契約(顧問契約)をする場合
弁護士や法律事務所と個別契約(顧問契約)を結ぶ場合、その費用相場は月額3万円から10万円程度となることが多いです。ただし依頼側の企業規模や依頼する業務範囲、月の契約書レビュー件数など、条件により金額に幅がある点には注意が必要です。
顧問契約のメリットは、月額の顧問料を支払うことで、複数回または無制限で契約書のリーガルチェックを依頼できる点にあります。また、リーガルチェックだけでなく「日常的な法律相談」「契約書作成のサポート」「法務に関するアドバイス」など、幅広い支援を受けることが可能な契約もあります。頻繁に契約書を作成・締結する企業や、法務部門が十分に整っていない中小企業にとっては、都度スポットで依頼するよりもコストパフォーマンスが高くなる場合もあります。ただし、顧問契約を結ぶ際には自社の事業規模や契約書の取扱量、求めるサポートの範囲などを考慮し、契約内容や料金体系を慎重に検討する必要があります。顧問弁護士を持つことは、法的なリスクを低減し、事業の安定的な成長を支える上で有効な選択肢の一つといえるでしょう。
リーガルチェック依頼~実施の流れ
実際にリーガルチェックを法律事務所や弁護士へ依頼する場合の流れについて見ていきましょう。一般的にリーガルチェックを行う場合、以下のような流れで実施します。
契約書案を作成/取引先からの契約書案を受領
契約書を自社で作成する場合は、まず原案を作成します。この時、自社に法務部があれば、法務担当者が作成を担当します。過去の取引で作成したものやひな形などを用いて作成するのが一般的です。もし、一から作成を依頼したい場合は、その旨を法律事務所・弁護士に相談します。ただし、ベースとなる契約書がある状態で依頼するのに比べて、費用が高くなる傾向にあるため注意が必要です。
取引先から契約書の原案が送られてきている場合は、その内容を確認してから、法律事務所・弁護士へ共有する準備に入ります。
法律事務所・弁護士へ契約書案を渡してヒアリング
手元に準備ができた契約書案を、法律事務所・弁護士へ渡します。契約書案と合わせて、取引内容や取引先との合意事項、契約書に盛り込みたい条件などを伝えます。ヒアリングの形式で要望を伝えられる場合には、取引において重視する点や取引先との関係性なども伝えられると、より効果的にリーガルチェックを行ってもらうことが可能です。
また、契約の関係で完成までのスケジュールが決まっているなら、期日も伝えておくとさらにスムーズに進められます。
法律事務所・弁護士から契約書案の問題点や修正点の指摘
法律事務所・弁護士がリーガルチェックを行い、法的観点からの問題点や希望の条件との相違点などを確認します。リーガルチェックの結果、洗い出された問題点・修正点があれば、それらが企業の担当者に報告されます。もし取引先からの契約書案に修正点が挙げられている場合は、修正内容の重要度に応じて法律事務所・弁護士側に相談するのも良いでしょう。
指摘に基づく修正対応/取引先への修正依頼
自社で契約書案を準備した場合、法律事務所・弁護士から指摘やアドバイスに基づいて内容を修正します。
取引先から契約書案が送られてきている場合は、指摘やアドバイスをもとに社内で協議し、契約書の修正案としてまとめ、相手方と交渉します。修正案が受け入れられるとは限らないため、複数回の交渉を経て、最終的な契約内容について合意を目指します。
交渉がまとまったら、両当事者が署名・捺印(または電子署名など合意した方法)を行い、契約締結となります。
修正の方向性や取引先への修正依頼で判断に迷う内容があれば、都度リーガルチェックを行った弁護士に相談します。
リーガルチェックを依頼する前に検討するべきポイント
リーガルチェックを実施するにあたって、専門知識を持っている法律事務所・弁護士に依頼するのが一般的です。とはいえ、依頼をするには自社の費用や望む条件などに合致する必要があり、検討しなくてはならない要素がいくつかあります。ここではリーガルチェックを依頼する前に検討すべきポイントを3つ紹介していきます。
弁護士に依頼するかどうか
先述した通り、法律事務所や弁護士に依頼する場合は、それに応じて費用がかかります。そのため、自社の状況や規模次第では弁護士への依頼ではなく、別の方法でリーガルチェックを行うことも検討することになります。
例えば、社内に法務部があり契約審査の経験が豊富な担当者がいるのであれば、特殊な契約を除けば社内でリーガルチェックに対応することが可能です。この他にも、現在はAIがリーガルチェックを支援するツールも登場しているため、ツールを利用することで弁護士へ依頼せずに契約書のレビューを行うという選択肢も考えられます。
リーガルチェックをどの方法で行うのか、それぞれ比較して慎重に検討する必要があります。
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費用は妥当か
法律事務所や弁護士を通じてリーガルチェックを実施することになった場合、次に検討するべきは費用面です。先述の通り、費用相場の中でも契約書の内容や、専門性の高さによって金額が大きく変化します。依頼する契約書の内容を踏まえて、候補となる法律事務所・弁護士が提示するリーガルチェックの費用が妥当か確認する必要が生じるでしょう。
法律事務所・弁護士によって、スポット依頼での対応範囲や修正案提示の有無なども異なります。希望するサポート内容や条件を伝えて、見積もりを確認した上で、費用が妥当かどうかの検討が必要です。
実績は評価できるか
依頼する場合に費用以外で注意しておきたいポイントが、法律事務所・弁護士の実績です。法律事務所や弁護士には、それぞれ得意としている分野や実績のある分野が存在します。多くの企業との取引実績がある法律事務所や弁護士であれば、安心して依頼することができます。逆に実績が少なかったり専門としていない弁護士に依頼したりすると、スムーズにリーガルチェックを進められない可能性があるため、注意が必要です。
依頼する前に、対象の法律事務所・弁護士にリーガルチェックの実績があるのか、確認してから進めるようにする方が良いでしょう。
まとめ:リーガルチェックは費用を踏まえ自社に合った方法で
契約書のリーガルチェックは、企業がビジネスで取り交わす契約の法的安全性や公平性を保証する重要なプロセスです。法律事務所や弁護士に依頼する場合の費用は、スポット依頼と個別契約の場合で異なります。また、取引の複雑さや契約書に規定する内容の専門性でも変化するため、法律事務所や弁護士へ相談する必要があります。この他にも、自社の法務部での対応やAIリーガルチェックツールの利用など、選択肢の中で自社に合った方法を検討する必要があるでしょう。
この記事では、リーガルチェックの概要と実施のメリット、費用の相場、依頼から実施の流れ、依頼する前に検討すべきポイントについて解説してきました。
解説した内容が、企業の法務担当者の方がリーガルチェックを進める上で、参考となれば幸いです。
弁護士へのリーガルチェックの依頼は、チェック品質や信頼性の高さが魅力ですが、全ての法務案件を依頼すると高額になりすぎる場合があります。「定型の契約審査は社内で、難しい判断を要するものは弁護士へ」など、うまく使い分けることがポイントです。その際、社内の契約審査においてうまくAIを活用すると、一定以上の品質確保と大幅な業務効率化が可能です。
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