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リーガルテックに入って感じた「NO」の重み

リーガルテックに入って感じた「NO」の重み

2023年1月にLegalOn Technologiesに入社した春日舞弁護士。5大法律事務所の一つに12年間在籍し、リーガルテックの法務マネージャーに転身した。求められたのは、事業に力強く伴走する「攻めの法務」の役割。事業成長に伴走する法務に求められた役割や、政策企画の取り組み、入社して感じた法務判断の重みとは。

春日 舞 弁護士プロフィール

株式会社 LegalOn Technologies 執行役員・General Counsel。2009年東京大学法科大学院修了、2017年New York University School of Law (LL.M.) 修了。2010年弁護士登録(第二東京弁護士会)。TMI総合法律事務所を経て、2023年1月、 LegalOn Technologies入社、同年3月より法務・政策企画を担当。2024年4月より現職。

将来を見据え新たな挑戦

2011年に入社したTMI総合法律事務所では、M&Aをはじめ様々な案件に関与しました。米国留学後、2019年に東京オフィスに復帰してからは、主にスタートアップが関わる案件に取り組みました。スタートアップを依頼者とした、資金調達やインセンティブプランについての支援や、スタートアップに投資したい投資家に対するデューディリジェンスや契約交渉についての支援などです。

依頼いただいた案件に取り組む過程でさまざまなスタートアップの事業内容を拝見し、「スタートアップって新しいものをどんどん生み出して面白そうだな、でも自分は起業もしないし縁のない世界だな」と思っていました。

んな時に、知り合いの法務系のキャリアコンサルタントの方から、「スタートアップの法務のマネジャーのポジションがあるのですが興味はありますか?」と声を掛けられ、初めて、自分で起業をせずとも、法務のスキルをもって、スタートアップの業務を中から支えるという働き方を真剣に考えるようになりました。

方で、当時は、留学や2度の産休を経て、「あと何年で、こういう分野でカウンセルになって…」という今後の所属事務所内でのキャリアの絵が描けるようになり、少しほっとしていたところでもありました。

がある程度予測できて安定的なところで働くか、新しいところで新しいことに挑戦するのか。

スタートアップについて情報を収集する中で、リスクを取らないと得られないものがあるということを知りました。

振り返ってみると、私はリスクを取ることについて後ろ向きで、大手の法律事務所で働く選択をしたのも、「その後のキャリアの幅を狭めないし、今後何をするとしても、ここで修行することは活きる」という発想でした。「それならここでリスクを取ってみよう」と考え、法務マネジャーとして2023年1月にLegalOn Technologiesに入社しました。

「NO」は事業を止める

実際に取り組んで感じたことは、「事業サイドがやりたいことを止める重み」です。例えば新しい技術やプロジェクトについて、一見すると法令に違反しているかもしれない、というときに、簡単に「NO」と言わない。適法であるという整理ができないかを検討し、どうしてもYESと言えないなら代替案を示すなどして、事業を簡単にストップさせてはいけないと知りました。


りを重視し、「違法の可能性があるからやらない方が良い」ということはいくらでも言えますが、「本当にそうなのか?」を、とことん考え抜くことが必要でした。

う考えるようになったのは、角田望CEOに言われたことがきっかけです。

業部の人たちとやり取りしているなかで、「これは法令に違反する可能性がある」と指摘したところ、横から角田に「本当にそうか。このように考えれば違反とはいえないのでは?」と指摘され、はっとしました。その後も、自分で業務を遂行し、また、様々な会社の法務担当の方々からお話を伺ったり、リーガルリスクに関する書籍を読んだりする中で、法務担当者としてどうすべきかが次第に見えてきました。

業部がチャレンジしたいということに対して法務がNOと判断することは、その後の事業の可能性を途絶えさせることです。チャレンジを進められれば、ビジネスチャンスも広がり、業績アップにつながるかもしれない。それを止めたら、そこで終わり。

ちろん、本当に止めなければならない場面もありますが、「実はやり方を工夫すれば問題なく進められる」という場合にもNOと言ってしまうことで、たとえば競合他社の法務担当が同じ相談に「条件付きでYES」と言ったら、競合他社がチャンスをモノにして、自分たちはできなかった、ということになります。

ロジェクトが世の中にとって新しいものであればあるほど、それを止めてしまったときの弊社にとってのマイナスのインパクトは大きくなります。

「弁護士法72条」問題で法務省と協議

入社してほどなく、法務のほか、政策企画グループにも加わることになりました。

策企画グループは、2022年6月に公表された、グレーゾーン解消制度に基づく回答と、その後の報道をきっかけとして設けられました。

法務省は、照会のあったAI契約審査サービスに対して、「弁護士法第72条本文に違反すると評価される可能性があると考えられる」と回答しましたが、これが、あたかも既存のAIを用いた契約審査支援サービス全般が違法の可能性があるかのように報道されました。

日本でAI契約審査が違法の可能性があるという認識が広まることにより、法務の業務効率化のためのツールであるリーガルテックサービスの利用が控えられてしまうと、日本においてのみリーガルテックの発展が妨げられるだけでなく、ユーザー企業において法務の業務の効率化も進みにくくなり、ひいては国際競争力の強化という点からも問題があります。

そこで、弊社はAI契約審査と弁護士法72条の関係について、正しい理解を広める必要性を強く感じ、政策企画の活動を行うようになりました。

の過程で、弊社は、2022年9月に他のリーガルテックベンダーとともに一般社団法人AI・契約レビューテクノロジー協会(ACORTA)を設立しました。私は政策企画グループに入った後、ACORTAの事務局長に就任し、他の会員企業と連携しつつ、法務省の担当者とコミュニケーションを重ねました。

弁護士法72条……弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

果として2023年8月、法務省は計6ページにわたるガイドラインを公表し、その中で、どのようなリーガルテックサービスが適法であるかを具体例を用いて説明。LegalOn Technologiesの各種サービスは、もともと適法に設計されていましたが、そのことがより明確になりました。

このことにより、弊社のサービスが適法であるという社会の機運を醸成できたことで、サービス展開の大前提である、「サービスが適法である」という認識を顧客にもっていただくことができ、これよって営業の後押しをすることができたと思います。

法務担当者だからこそ導ける答えがある

法律事務所で外部カウンセルとして働いていたころは、クライアントに対し、アドバイスはできても、その先にクライアントがどう判断して進めていったのかは見えなかったり、見えてもどうしてそのように意思決定をしたのかが分からなかったりしたことがました。

「あの後どうなったんだろう」「どうしてそういう意思決定をされたのだろう」とその時は感じていても、どんどん次の依頼に対応しないといけない。

は事業会社の法務担当者として、「意思決定に関わる楽しさ」を味わうことができています。もちろんリスクを伴う意思決定に携わることには責任の重みや緊張感もありますが、それがうまくいったときの高揚感など、やりがいも大きいです。また、やろうと思えばどんどん業務領域を広げていけるのも面白いと思っています。

弊社が実施した調査で、「企業規模が大きい企業ほど法務を信頼している」というデータがありました。スタートアップの法務が他部門から信頼を得るには、やはりNOの重みを認識し、事業サイドがやりたいことについて、リスクをきちんと整理・分析し、事業がやりたいことを高いリスクを負うことなくそれを実現する方法を提案していくことが大事だと思います。

自身、保守的になりがちなので、そこを自覚した上で、NOと言いたくなってしまう時は、自分に本当に「NO」なのか?を自問し、分析検討することを心がけています。

濱田祥太郎

この記事を書いた人

濱田祥太郎

NobishiroHômu編集者

中央大学法学部卒、全国紙の新聞記者に4年半従事。奈良県、佐賀県で事件や事故、行政やスポーツと幅広く取材。東京本社では宇宙探査や宇宙ビジネスを担当。その後出版社やITベンチャー、Webメディアの編集者を経て2022年LegalOn Technologies入社し、NobishiroHômuの編集を担当。

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