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金銭消費貸借契約書に記載すべき事項・締結時の注意点|ひな形も紹介

金銭消費貸借契約書に記載すべき事項・締結時の注意点|ひな形も紹介
この記事を読んでわかること
    • 金銭消費貸借契約書とは何か
    • 金銭消費貸借契約書に定めるべき事項
    • 金銭消費貸借契約書のひな形紹介

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金銭消費貸借契約書は、金銭の貸し借りをする際などに締結される契約書です。

例えば、企業が事業資金を借り入れる際には、借主としての立場で金銭消費貸借契約書を締結します。反対に、役員などに対して資金を貸し付ける際には、貸主としての立場で金銭消費貸借契約書を締結します。
必要に応じてAIツールを活用し、自社の立場に応じて適切に金銭消費貸借契約書のレビューを行いましょう。

今回は金銭消費貸借契約書について、記載すべき事項や締結時の注意点などを解説します。

※この記事は、2023年3月14日時点の法令等に基づいて作成されています。

なお、金銭消費貸借契約書を作成する場合は、適切なひな形を元にするとスムーズです。LegalOn Cloudは、AIテクノロジーを駆使し、法務業務を広範囲かつ総合的に支援する次世代のリーガルテックプラットフォームです。契約書レビューをAIがサポートするだけでなく、弁護士監修の契約書ひな形を1600点以上収録。幅広い契約類型にも対応できます。

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金銭消費貸借契約書とは

金銭消費貸借契約書は、貸主が借主に対して金銭を貸し付け、借主がこれを借り入れることを定めた契約書です(民法587条)。

借主は貸主に対し、借りた物と同じ額の金銭を返還する義務を負います。民法上は無利息が原則とされていますが(民法589条1項)、実務上は契約に基づき利息を付すケースが大半です。

企業が金銭消費貸借契約書を締結するのは、主に金融機関から金銭を借り入れる場合です。また、役員に対する貸付を行う場合などには、企業が貸主の立場で金銭消費貸借契約を締結することもあります。

金銭消費貸借契約書に定めるべき主な事項

金銭消費貸借契約書に定めるべき主な事項は、以下のとおりです。

  • 貸付(借入)の内容
  • 返済の方法
  • 利息
  • 遅延損害金
  • 期限の利益喪失条項
  • 連帯保証に関する事項
  • その他の一般条項

貸付(借入)の内容

金銭消費貸借契約におけるもっとも基本的な条項として、貸付(借入)の内容を定めます。具体的には、以下の事項を明記します。

  • 貸主
  • 借主
  • 実行日
  • 金額
  • 貸主が貸し付ける旨
  • 借主が借り入れる旨

(例)
第○条(貸付の実行)
甲は、本契約に従って、2023年2月28日(以下「貸付実行日」という)に、乙に対して金5000万円を貸し付け、乙はこれを借り入れる(以下「本件貸付」という)。

返済の方法

借主が負う返済義務の内容として、返済期日支払方法を定めます。

返済金の支払方法には、一括返済(bullet)とアモチ返済(amortization)の2種類があります。

  1. 一括返済(bullet)
    各返済期日には利息のみを支払い、元本は最終の返済期日に一括で返済します。
    (例)
    5000万円を借り入れる→最終の返済期日に5000万円を一括返済

  2. アモチ返済(amortization)
    各返済期日において利息の支払いと元本の返済を行い、最終の返済期日に残元本を全額返済します。各返済期日において返済する元本額の計算方法の定めが必要です。
    (例)
    5000万円を借り入れる→24か月にわたり、毎月100万円の元本を返済→最終の返済期日(24か月目)に残元本の2700万円を返済

(例)
<一括返済の場合>
第○条(元本弁済)
乙は、甲に対し、2025年2月末日において、当該時点における本件元本残高の全額を弁済する。

<アモチ返済の場合>
第○条(元本弁済)
乙は、甲に対し、2023年3月末日を初回とし、以降毎月末日において金100万円を本件貸付の元本(以下「本件元本」という)の一部として弁済し、2025年2月末日において、当該時点における本件元本残高の全額を弁済する。

利息

貸付(借入)の対価として、借主が貸主に支払う利息の計算方法を定めます。

金銭消費貸借契約では、特約がなければ、貸主は借主に対して利息を請求できません(民法589条1項)。したがって利息を設定する場合には、金銭消費貸借契約書で利息の計算方法を明記する必要があります。

なお、利息制限法1条によって以下の上限利率が定められています。上限金利を超過する部分の利息の定めは無効となるのでご注意ください。

(例)
第○条(利息)
乙は、甲に対し、2023年3月末日を初回とし、以降毎月末日(以下「利払日」という)において、以下の計算式で算出される額の利息(以下「本件利息」という)を支払う。
利払日に支払うべき利息額
=当該利払日の属する月の初日における本件元本残高×5.0%×当該月の実日数÷365

※年利5.0%、月の初日時点における元本残高を基準として、その月の実日数で日割した額の利息を毎月支払う場合

遅延損害金

借主による返済が期日に遅れた場合に、借主が貸主に対して支払うべき遅延損害金の計算方法を定めます。

なお遅延損害金についても、利息制限法4条によって上限利率が定められています。ただし、営業的金銭消費貸借(=債権者が業として行う金銭を目的とする消費貸借。銀行や貸金業者が貸し付ける場合など)については、遅延損害金の上限利率が一律年20%となります(同法7条)

(例)
第○条(遅延損害金)
乙が本契約に基づき甲に対して支払うべき金銭債務の弁済を一部でも怠った場合には、当該未払額に応じて、その支払うべき日(同日を含む)から当該未払額の完済に至る日(同日を含まない)までの期間につき、年14.6%の割合で、直ちに遅延損害金を支払う。なお、遅延損害金は1年を365日として日割り計算により算出し、1円未満の端数は切り捨てる。

期限の利益喪失条項

借主が返済を怠った場合などにおいて、貸主が早期に債権回収へ着手できるように、期限の利益喪失条項を定めるのが一般的です。借主が期限の利益を喪失した場合、貸主に対して残債を一括返済しなければなりません。

なお、期限の利益喪失事由としては、当然喪失事由と請求喪失事由の2種類を定めることが多いです。

  1. 当然喪失事由
    発生した時点で、当然に借主が期限の利益を喪失する事由です。
  2. 請求喪失事由
    発生した後、貸主が借主に対して通知した時点で、初めて期限の利益喪失の効果が発生する事由です。

(例)
第○条(期限の利益喪失事由)
1. 次の各号のいずれかに該当する事実が発生した場合、甲からの通知または催告なくして、乙は、本件貸付の一切について直ちに期限の利益を失い、直ちにその全額を甲に弁済しなければならない。
(1)乙が債務超過もしくは支払不能に陥り、または支払いを停止したと評価される事由が生じた場合
(2)乙について破産手続き、民事再生手続き、特別清算その他乙に適用のある倒産手続きの申立てまたは職権による開始決定があった場合
(3)乙の責に帰すべき事由により、乙が所在不明となった場合
……

2. 前項各号に該当する場合を除き、次の各号のいずれかに該当する事実が発生した場合、甲の通知によって、乙は本件貸付の一切について直ちに期限の利益を失い、直ちにその全額を甲に弁済しなければならない。
(1)乙が支払うべき本件元本、本件利息その他本契約に基づく債務の支払いを怠り、かかる支払懈怠が5営業日以内に治癒されなかった場合
(2)乙が本契約の条項に違反し、当該違反について催告を受けてから10営業日以内に当該違反が治癒されない場合
……

連帯保証に関する事項

借主による返済に保証を付す場合は、連帯保証とするのが一般的です。連帯保証人は、借主が返済を怠った時点で、未払いとなった債務全額を貸主に支払わなければなりません。

連帯保証に関する事項では、被担保債権の内容を明記する必要があります。また、個人根保証契約※に該当する場合は極度額の定めを要するほか(民法465条の2)、さらに元本確定が生じることにご注意ください(民法465条の3)。

※個人根保証契約:一定の範囲に属する不特定の債務を個人が保証する契約。例えば「本契約に基づき借主が負担する一切の債務」を個人が保証する場合、債務が具体的に特定されておらず、個人根保証契約に該当します。

(例)
第○条(連帯保証)
1. 連帯保証人は、本契約に基づく乙の甲に対する一切の債務を、乙と連帯して保証する。
2. 前項に基づく連帯保証債務の極度額は5000万円とする。
3. 第1項に基づく連帯保証債務の元本確定期日は、本契約締結日から5年を経過する日とする。

その他の一般条項

上記のほか、秘密保持・反社会的勢力の排除などの一般条項を定めます。

  1. 秘密保持
    当事者間でやり取りされる秘密情報につき、原則として第三者への開示等を禁止します(公的機関への開示など、一部例外があります)。
  2. 反社会的勢力の排除
    反社会的勢力に該当しないことや、暴力行為をしないことなどの表明保証・誓約を定めた上で、相手方が違反した場合には直ちに契約を解除し、損害賠償を請求できる旨などを定めます。

金銭消費貸借契約書のひな形を紹介

金銭消費貸借契約書のひな形を紹介します。実際の内容は取引に応じて決める必要がありますので、本記事で紹介した条文の記載例を参考にしてください。

  • 金銭消費貸借契約書
    ○○(以下「甲」という。)と△△(以下「乙」という。)は、以下のとおり金銭消費貸借契約書を締結する。
     
    第1条(貸付の実行)
    甲は、本契約に従って、2023年2月28日(以下「貸付実行日」という)に、乙に対して金5000万円を貸し付け、乙はこれを借り入れる(以下「本件貸付」という)。
     
    ……
     
    以上
     
    本契約締結を証するため、正本2通を作成し、甲乙それぞれ記名押印のうえ各1通を所持する。
     
    ○年○月○日
     
    甲       [住所]
              [氏名or名称]
              [(法人の場合)代表者]   印
     
    乙       [住所]
              [氏名or名称]
              [(法人の場合)代表者]   印

金銭消費貸借契約書を締結する際の注意点

金銭消費貸借契約書を締結する際には、特に以下の各点にご注意ください。

  • 書面で締結する場合は収入印紙の貼付が必要
  • 貸付(借入)条件を明確化する
  • 自社に不利益な条項を見落とさない

書面で締結する場合は収入印紙の貼付が必要

金銭消費貸借契約書を書面で締結する場合は、貸付(借入)の額に応じた収入印紙の貼付が必要となります。
なお、金銭消費貸借契約書を電子締結する場合、収入印紙の貼付は不要です。

貸付(借入)条件を明確化する

返済内容や滞納時の取り扱いについて疑義が生じないように、特に以下の事項については明確に定める必要があります。

  • 返済の方法
  • 利息の計算方法
  • 遅延損害金の計算方法
  • 期限の利益喪失事由
    など

計算式が絡む部分などは難解ですが、条文が適切な内容になっているか、契約書の中で矛盾が生じていないかなどを慎重にチェックしましょう。

自社に不利益な条項を見落とさない

金銭消費貸借契約書のドラフトは、貸主側が作成するのが一般的です。この場合、借主の立場で金銭消費貸借契約書を締結する場合は、自社に不利益な条項が含まれていないかをよく確認しなければなりません。

金融機関や貸金業者が貸主となる場合、ドラフトの修正は不可とされるケースが多いです。この場合でも、どの条項が重要なのか、自社のリスクとなり得るのはどの条項かなどを必ずチェックしましょう。

もしドラフトの修正が許される場合には、相手方の義務を極端に軽減する条項や、自社の義務が標準よりも加重される条項などについては修正を求めるべきです。

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