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ワクワクした職場で一緒に成長する法務を目指して

ワクワクした職場で一緒に成長する法務を目指して

アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」を運営する株式会社マクアケで企業法務部長を務める千葉大吾氏は、一人目の法務担当者として入社。実行者のプロジェクトの審査や企業法務を担い、「5年で売上4倍」という事業拡大の一翼を担った。ただ、かつては法務として思い悩み、体調を崩した時期もあった。乗り越えた今、大切にしている法務としての心構えや醍醐味を聞いた。

千葉 大吾 氏プロフィール

静岡大学人文学部法学科卒。2006年より人材・教育・介護等の事業展開をする会社(現スタンダード市場)に入社。契約法務、臨床法務、知財対応に加え、M&A、グローバル案件(東南アジア、フランス等)に関する法務業務を遂行。2017年12月より株式会社マクアケに入社し、法務の立ち上げを実施。2019年のIPO、2021年ABBによる資金調達対応。その他、各種投資、新規ビジネス対応、知財対応、株主総会、取締役会等法務業務全般の業務に従事。

休職を経て見つけたこと

大学では人文学部の法学科で学び、司法試験に挑戦しましたが不合格となり、法曹への道はあきらめました。

それでも、せっかく勉強した法学を活かせる仕事に就きたいという思いで企業法務を目指し、人材・教育・介護の分野にグループ会社を持つ企業に法務として入社。主に契約法務に取り組みました。

ところが、入社後数年経った30歳のころ急に高熱が出て入院し、2週間ほど会社を休むことがありました。思いのほか、仕事でのストレスが溜まっていたためだと思います。

特に、法務としての立場と実際の現場の意見の隔たりを調整することに関して、ストレスもあったんだと思います。

ただ、「体調を崩したおかげ」という言い方が適切か分かりませんが、発見もありました。

それは「相手の考え方を変えることはとても難しい」ということ。それよりも、自分の考え方を変える方が早いことに気づきました。相手がどういうポイントを気にしているのかを把握して、配慮しながら仕事を進めていくようになり、職場復帰後はとても仕事がやりやすくなりました。

休んでいる間、こうして自分自身を見つめる時間ができて良かったと思います。

振り返ってみれば、それまでの私のコミュニケーションは「私が主張したいこと」が最優先で、相手目線ではなかったと自覚しています。

それを、相手に配慮したコミュニケーションを取るようにしたことで、仕事でのストレスは明らかに減りました。例えばプロジェクトで上司からNGが出ることがあっても、「上司のせいだ」と決めつけるのではなく「自分で何ができただろう」と考えることで、ストレスや感情のコントロールができるようになりました。

法務として10年。「市場」へ

それから5年ほど経ち、最初の会社に入って10年以上が経ったころに、マクアケに転職しました。

10年も法務をしていると幸いなことにある程度信頼を得ることができ、上司にも認めていただき、任される仕事も増えてきました。すると、なにか課題がでた場合に、議論になるというより私自身の意見が回答になるといったシーンが多くなってきました。自己成長という観点から、「これで良いのか」と思うことが増えてきました。

同時に、法務担当者として、企業法務という市場でどれくらい価値があるのかが気になり始めました。社会人として一社目で働き続けてきましたが、「この会社だから評価されているが、実は大したことないのでは」とも感じ、一度外の世界を見に行きたいと思うようになりました。

当時、40歳手前。転職市場を考えると「転職するなら今のうち」というタイミングでもありました。

一番ワクワクしたマクアケへ

さまざまな企業を見たうえで、マクアケを選んだ決め手は「一番ワクワクした会社」だったからです。

そう感じた理由は大きく二つあります。一つはビジネスモデルが秀逸だったこと。

Makuakeは、アイデアはあるけど資本がない「プロジェクト実行者」の挑戦を、「サポーター」と呼ばれる消費者に応援していただくビジネスモデルです。日本では寄付の文化が海外ほどは醸成されていない中で、中小企業を発展させる方法として有効ですし、ニーズがあると感じました。

もう一つは、面接時のマクアケ役員によるプレゼンテーションで、自分たちのビジネスについて誇りを持って語っている姿を見て、「こういう役員の方がいるなら、自分も家族に誇れる仕事ができるんじゃないか」と思ったことです。

こうして、一人目の法務担当者として2017年12月に入社しました。

多様なプロジェクトの審査を担当

入社してしばらくは、プロジェクトの審査とIPOの準備が役割でした。

Makuakeでは、販売されるのがまだ日本国内に一般流通していない新商品や新サービスであることに加え、購入申請から商品が届くのが早くても数カ月先という特性があり、消費者が被るリスクを最大限に減らす必要があります。そこで、プロジェクトの実行者の取引先の調査や、デューデリジェンス、表記について現実と齟齬がないかなどの審査をマクアケ側で行います。

たとえば「飲食店を出したい」というプロジェクトであれば、きちんと飲食店許可証が取れているか、物件契約はしているか、などを1件ずつ調べていきます。「実行者の法務のダブルチェック」というイメージが近いかもしれません。

多いときでは月に150件以上対応したこともあります。これまでに見たことがないビジネスモデルもあり、私としては学び直しの必要もありました。

こうした状況では、既存業務を効率化する必要があります。リーガルテックを活用しながら、さまざまな施策を進めました。電子契約に始まり、AIレビューサービスなどを導入していきました。

徐々にプロジェクトの審査件数も多くなり、企業規模も拡大するなか、審査を担う「プロジェクト法務」と「企業法務」のチームを分け、プロジェクト法務は事業部門系のセクションに、現在も私が所属する企業法務はコーポレート本部に、という形になりました。プロジェクトの審査はまさにMakuakeのビジネスの根幹にかかわるため、スピード感をもった対応が求められるためです。

ルールを作り、会社を一緒に成長させていく醍醐味

マクアケでの法務のやりがいの一つは、ルールを作り変えることができ、そこに法務が関与できることです。ルールを作るということは会社を作ることにつながるため、やっていて楽しいです。弊社はビジネスを始めてまだ10年程度で、ルールが成熟していないところもまだあります。

ルールはあくまで一つの手段で、目的は「企業の成長をどのように描くか」であることが重要です。「利益をどう得るか」と「ガバナンス」とのバランスをどのようにとるかは、企業のフェーズによって変わります。そこを見極めながら、「ここはリスクテイク」「ここはリスクヘッジ」といった判断も一年ごとに変わってくる。

「去年と同じ提案をしていてはダメ」という点で、「会社が生きている」という実感を得られるのはとても面白いです。

法務なくして企業は動きません。そういった意味で、会社を作り、一緒に成長を味わえることが法務の醍醐味だと思います。企画段階から参画していたサービスがローンチするのを見るのは、自分のことのようにうれしいです。

一方で、法律からのアプローチと、ビジネスからのアプローチによる隔たりを埋めることには難しさを感じています。ビジネスは、さまざまな手法はあるものの正解があることが少なく、オペレーションリスク視点でのリスク検討が多いのが特徴です。

リーガルリスクとオペレーションリスクは、ビジネスの現場からするとオペレーションリスクの方が実質負担が大きく、リスクという感覚になりやすい。ここを埋めることに、難しさとやりがいを感じています。

法務としては、ビジネスを止めないため、可能な限り早いタイミングでスキーム作りに法務が関与することが重要です。たとえば未回収がありそうなら前受けにする、納品物がある場合は知財の取り扱いを明確にする、といったことで、トラブルの発生を防ぎ、利益を生まない業務をなくすことができます。

「すでに検討できている」法務を目指す

法務担当者として目指していることの一つは、「経営の先回り」をすることです。

法務は経営者の近い位置にいるため、なにを考えているかや動きを間近に見ることができます。ただ、せっかく経営者の近いところにいても、受け身でいたらあまり意味がありません。事業成長に資する法務として、意思決定のスピードを上げることは大切なポイントであり、私自身もこれから磨いていきたいことでもあります。

経営者が「こういうことをしたい」と言ったタイミングで、すでに法務として検討ができていて、「やる」という意思決定をしたタイミングで、「これをするとこういうことが起きます」とすぐに言えることが一番です。

また重要なのは、なにより自社に興味を持つことです。業績・数字面もそうですが、いま自社がどういう状況かを把握すること。前述のように「企業は生きている」ので、具合をみながら、次は何がほしくなるだろう、ということを考えていくことだと思っています。

濱田祥太郎

この記事を書いた人

濱田祥太郎

NobishiroHômu編集者

中央大学法学部卒、全国紙の新聞記者に4年半従事。奈良県、佐賀県で事件や事故、行政やスポーツと幅広く取材。東京本社では宇宙探査や宇宙ビジネスを担当。その後出版社やITベンチャー、Webメディアの編集者を経て2022年LegalOn Technologies入社し、NobishiroHômuの編集を担当。

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