契約書をペーパーレス化する方法
業務効率の向上やコスト削減の観点から、多くの企業が契約書のペーパーレス化を進めています。ここからは、契約書をペーパーレス化する方法を解説します。
電子契約システムを利用する
電子契約システムは、契約書の作成や署名、管理までを一元的にデジタルで行うことができるツールです。デジタル署名機能を搭載しており、契約書のバージョン管理やアクセス権限の設定も行えます。
導入によって、物理的な契約書の郵送や手渡しの手間を省くことができるほか、過去の契約内容の確認や履歴管理が容易になります。
PDF化する
契約書をペーパーレス化する方法の1つは、既存の契約書をPDFに変換する方法です。専用のスキャナーやアプリを利用して紙の契約書をスキャンすることで、データであるPDFとして契約書を保存できます。
PDF化のメリットは、物理的なスペースを取らずにPCやクラウド上で契約書を一元管理できる点です。検索機能を利用すれば、必要な情報を迅速に探すことが可能となり、データの共有や送受信も容易になります。
契約書をペーパーレス化するための要件
契約書をペーパーレス化するための要件は以下の3点です。
- タイムスタンプの付与
- 適切なスキャナの使用
- 検索機能の確保
タイムスタンプとは、データの契約書に「文書の作成時刻」を記録したものです。契約書には、タイムスタンプの付与が求められます。ただし、時刻証明機能を提供するクラウドシステムなどに保存し、時刻証明や、改ざんのないことを証明できれば、タイムスタンプの付与は不要です。
また、契約書のデータ化は、「適切なスキャナ」を使って行う必要があります。利用できるスキャナの規定は以下のとおりです。
スキャニング時の解像度である25.4ミリメートル当たり200ドット以上で読み取るものであること。 赤色、緑色及び青色の階調がそれぞれ256階調以上で読み取るものであること。 一般書類(電子帳簿保存法施行規則第2条第7項に規定する国税庁長官が定める書類)をスキャナ保存する場合、白色から黒色までの階調が256階調以上で読み取るものであること。 引用元|Ⅰ通則【制度の概要等】問5「スキャナ」とは、どのようなものをいうのでしょうか|国税庁
カラースキャナだけではなく、スマートフォンのカメラやデジタルカメラなどでも代用できます。
さらに、データ化した契約書には「検索できる機能」を備えることが求められます。クラウド契約管理システムやエクセル上で検索可能な状態にしておきましょう。
契約書をペーパーレス化するメリット
契約書のペーパーレス化によって、業務効率アップやコスト削減などのメリットが得られます。ここからは、契約書をペーパーレス化するメリットを4つ解説します。
手間を削減できる
ペーパーレス化を進めることで、契約書の作成や修正、共有、保存などさまざまな事柄がスムーズになります。
従来の紙ベースの管理では、多くの手間が発生していました。しかし、デジタル化された契約書は、一元的な管理によって必要な時にすぐにアクセスできるため、手間が大幅に削減されます。また、修正や再編も迅速に行えるため、ミスのリスクも少なくなるでしょう。
コストを削減できる
契約書のペーパーレス化は、コストの削減につながります。
まず、印刷や郵送のコストが削減されるでしょう。インク代や切手代、プリンターのメンテナンス費などがかからなくなるため、長期的にみると大きな節約が実現できます。
また、物理的な書類の保存には、専用のスペースや保管設備が必要です。しかし、契約書をデータで保存することで、保管にかかるコストも大きく節約できます。
省スペース化を実現できる
契約書のペーパーレス化は、オフィス内スペースの有効活用につながります。
紙の契約書は、保存や管理に多くのスペースを取りがちです。特に、長期間にわたる保管が必要な書類が増えるにつれ、専用の保管場所や書庫の確保が課題となるでしょう。
ペーパーレス化によって、物理的なスペースを大幅に節約することが可能となり、他の用途や有効活用のための場所として利用できるようになります。
コンプライアンス強化につながる
データでの契約書管理は、コンプライアンス強化にも有効です。
データでの保存は、アクセス権限の設定や履歴の追跡が容易であり、誰がどの書類にいつアクセスしたのかを明確にできます。そのため、情報の漏洩リスクや不正利用を大幅に低減する効果が期待できるでしょう。
また、必要な書類やデータに法的な保存期間がある場合、デジタル管理なら期限の監視や自動的なアーカイブ化も容易になります。
柔軟な働き方に対応できる
働き方の多様化に伴い、会社から離れた場所での勤務が増加しています。データ化された契約書は、インターネット環境があればどこからでもアクセス可能です。
そのため、外出先や自宅からの確認もスムーズになり、柔軟な働き方やテレワークを実現するうえでの大きな助けとなります。また、契約締結のために互いのオフィスを行き来する必要も少なくなるでしょう。
契約書をペーパーレス化する際の注意点
契約書をペーパーレス化する際には、多くのメリットがある一方で注意すべき点も存在します。適切な準備と理解をもって、ペーパーレス化の取り組みを進めることが必要です。
ここからは、契約書をペーパーレス化する際の注意点について解説します。
ペーパーレス化できない契約書がある
基本的には契約書のデータ化が認められていますが、契約書の一部は認められていません。たとえば、任意後見契約書や農地の賃貸借契約書などです。
上記のように、紙の原本が要求されるケースもあるため、ペーパーレス化を進める際には契約書が電子的な形式でも有効であるかを確認しましょう。
相手の同意を得なければならない
契約書をペーパーレス化する際には、当事者双方の同意が必要となります。もし、一方の当事者が電子的な契約に対して懐疑的であったり、ペーパーレス化の準備が整っていない場合、双方の合意が得られない可能性があるでしょう。
したがって、ペーパーレス化を進める前に、相手方との十分なコミュニケーションをとり、双方の合意を得ることが重要です。
セキュリティ性を高める必要がある
契約書をペーパーレス化する際には、セキュリティ性にも十分配慮しましょう。
データであれば、外部からの不正アクセスやサイバー攻撃の危険に少なからずさらされます。情報漏洩は企業にとって大きな損害となるでしょう
特に、企業間の取引や機密情報が含まれる契約書では、情報漏洩のリスクを最小限に抑える取り組みが求められます。定期的にシステムをアップデートする、従業員のセキュリティ教育を入念に行うなどの対策を施しましょう。
ペーパーレス契約書の導入には運用体制の整備も必要
ペーパーレス契約書の導入は、単に電子的なシステムを利用するだけでは完了しません。実際に効果的に運用するためには、企業内での適切な運用体制の整備が不可欠です。
導入段階では、従業員が新しいシステムに慣れるまでの期間が必要です。そのため、トレーニングや研修を定期的に実施し、操作方法や運用のポイントをしっかりと理解させましょう。また、トレーニングだけでなく、疑問や問題が発生した際のサポート体制も確立しておく必要があります。
さらに、ペーパーレス化を推進するためのチームや担当者を設け、業務の進行をスムーズにする体制づくりも重要です。問題が発生した際に迅速に対応できるよう準備を整えておきましょう。
まとめ
契約書のペーパーレス化は、現代社会において重要な取り組みの1つとなっています。しかし、導入と運用には慎重な準備と配慮が求められ、特にセキュリティ対策や法的要件の確認は欠かせません。できる限り情報を集めたうえで、不備なく準備を進めていきましょう。
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※本記事は2023年9月時点の情報を基に執筆しております。