通帳を保管する意義と重要性
企業において、通帳を適切に保管しておくことは非常に重要です。改めて、その理由を解説します。以下の通りです。
給与支払いの証明資料
通帳は従業員への給与支払いの根拠となる重要な書類です。労務トラブルが発生した際に、給与の適正支払いを示す証明として通帳の提示を求められる場合があります。
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税務調査での証明資料
通帳は従業員への支払い額の記録であり、税務調査の際に給与関連経費の裏付け資料として使用されることがあります。適切に保管されていない場合、経費の全額が認められない可能性があります。
このように、企業においては通帳を単なる預金記録以上の重要な書類として捉え、労務管理上の様々な場面で活用することが求められます。人事・労務担当者は通帳の重要性を理解し、適切な期間、確実に保管する必要があります。
社会保険手続きの根拠資料
通帳は従業員の給与額を示す資料として、社会保険の手続きでも重要な役割を果たします。保険料の算定根拠となるため、適切に保管されている必要があります。
このように、企業においては通帳を単なる預金記録以上の重要な書類として捉え、労務管理上の様々な場面で活用することが求められます。人事・労務担当者は通帳の重要性を理解し、適切な期間、確実に保管する必要があります。
法的な保管期間の規定
通帳には税法上の保管期間があります。以下詳しく解説します。
税務上の保管期間
法人税法
法人の場合、通帳は帳簿書類の一部として扱われます。原則として7年間の保存が義務付けられています。欠損金の繰越控除を適用する場合は10年間です。
民法
民法第166条は、主観的起算点から5年、客観的起算点から10年を債権の消滅時効と定めています。したがって、法的紛争が発生した場合に備えて、通帳は債権債務の発生から10年間保存しておくことが安全です。
つまり、税法や民法上の観点から10年程度の長期保管が望ましいといえます。重要な収支の証拠として、通帳は適切に管理・保管する必要があるということです。
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一般的な通帳の保管期間の目安
賃金台帳などと合わせて保管
通帳は賃金台帳や賃金に関する書類と合わせて保管することが推奨されています。賃金台帳や賃金に関する書類は従業員への給与支払いの証拠として重要な書類であり、労働基準法第109条により5年間(経過措置として当分の間は3年)の保管が義務付けられています。
通帳も同様に、給与の振込記録として重要な役割を果たします。上記書類と通帳を一緒に保管することで、給与支払いの証拠を一元管理でき、万が一のトラブル時にも迅速に対応できます。
大きな出・入金の記録
大きな出・入金の記録がある通帳は、将来的に証拠として必要になる場合があるため、長期間保管することが望ましいです。例えば、不動産購入や車の購入、保険金の受け取りなどの大きな取引は、将来的に証拠として必要になる場合があります。
民法第166条は、主観的起算点から5年、客観的起算点から10年を債権の消滅時効と定めています。そのため、これらの重要な取引記録が含まれる通帳は、少なくとも10年間は保管しておくことが推奨されます。
このように、賃金台帳等と合わせて保管する場合や大きな取引記録が含まれる場合は、長期間の保管が重要です。適切な保管期間を定めることで、将来的なトラブルを防ぎ、必要な時に迅速に対応できるようにしましょう。
通帳を長期間安全に保管するコツ
通帳は重要な書類であり、長期間にわたって適切に保管する必要があります。しかし、紛失や盗難、劣化などのリスクがあります。そこで、通帳を安全に保管し続けるためのコツをご紹介します。
紛失・盗難対策
- 通帳は金庫やキャビネットなど、確実に施錠できる場所に保管
- 通帳の所在を必ず把握し、持ち運びは最小限に抑える
- 通帳の控えを別途作成し、別の場所で保管する
劣化対策
- 通帳は高温多湿を避け、直射日光の当たらない場所に保管
- 虫菌害を防ぐため、定期的に通帳の状態を確認する
- デジタルデータでのバックアップを行い、劣化リスクを最小限に抑える
その他のポイント
保管場所は施錠できる上、防犯カメラや防犯センサーを設置するなどの対策も有効です。
通帳の所在や保管状況を社内で共有し、担当者の退職時にも確実に引き継げる体制を整えましょう。長期保管が必要な通帳は、データ保管サービスの利用も検討できます。
このように、通帳の紛失・盗難・劣化対策に万全を期すことで、長期間の安全な保管が可能になります。企業として、適切な保管体制を整備することが重要です。
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通帳の適切な処分時期と確認事項
通帳は一定期間保管する必要がありますが、いつまでも保管し続けるわけにはいきません。適切な処分時期を見計らって、安全に処分することが重要です。
処分時期の目安は以下の通りです。
- 給与通帳の場合は退職後5年程度
- 重要な取引記録のある通帳は取引から10年程度
処分する前に、以下の点を必ず確認しましょう。
- 通帳に記載された取引内容に疑義がないか
- 通帳に関連する債権債務が完全に解消されているか
- 通帳に関連する税務申告が完了しているか
これらの点を確認し、保管が不要と判断できた場合に処分を行います。
通帳の安全な処分方法
シュレッダー処理
通帳を自社でシュレッダー処理する場合は、以下の点に注意しましょう。
- 個人情報が記載された部分は細かく裁断する
- 金融機関名や口座番号の記載部分も同様に裁断する
- 裁断した破片は確実に廃棄処理する
専門業者への委託
自社での処分が難しい場合は、専門の処分業者に委託することをおすすめします。
- 機密文書の処分に対応している業者を選ぶ
- 処分の過程が分かるよう、証明書の発行を依頼する
- 業者の選定では、価格以外にも安全性やセキュリティ対策を重視する
通帳には個人情報や金融情報が含まれているため、安全な処分が何より重要です。自社の体制に合わせて、確実な処分方法を選択しましょう。
通帳の保管と処分のルールと注意点
通帳は単なる預金の記録以上の重要な書類です。企業においては、通帳を適切に保管し、安全に処分することが求められます。
通帳には以下のような重要な役割があります。
- 給与支払いの証拠資料
- 税務調査での根拠資料
- 債権債務関係の証拠
このように、通帳は労務管理上の様々な場面で活用されるため、長期にわたる確実な保管が不可欠です。
一方で、通帳を永久に保管し続けるわけにはいきません。保管期間を過ぎた通帳は、個人情報や金融情報の漏えいリスクを避けるため、安全に処分する必要があります。
通帳の適切な保管と処分を怠ると、以下のようなリスクが発生する可能性があります。
- 労務トラブルの発生
- 税務上の経費否認
- 債権債務関係での紛争
- 個人情報漏えいなどのセキュリティリスク
企業として、こうしたリスクを最小限に抑えるためには、通帳の重要性を理解し、法的根拠に基づいた適切な期間の保管と、安全な処分を行うことが不可欠なのです。
通帳の管理体制を整備することで、将来的なトラブルを防ぎ、企業の信頼性と健全性を高めることができます。通帳の適切な取り扱いは、企業にとって重要な課題としてしっかりと保管体制を築きましょう。
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