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【専門家解説】目指すのは「法務ナレッジの勝手な資産化」 案件管理から進化したマターマネジメントとは

【専門家解説】目指すのは「法務ナレッジの勝手な資産化」 案件管理から進化したマターマネジメントとは
この記事を読んでわかること
    • 法務におけるマターマネジメントの重要性
    • マターマネジメントに必要な体制づくりとは何か
    • LegalOn Cloudマターマネジメントモジュールとは何か

「法務のパフォーマンスを強化する案件管理 マターマネジメント体制 実践ガイド」

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勝俣 真也(かつまた・しんや)
Interviewee

勝俣 真也(かつまた・しんや)

LegalOn Technologies 開発部 PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)

大学院卒業後、ベンチャー企業で営業職として勤務。その後、複数の企業において一貫してデータアナリティクスとマーケティングプランニングに従事。2021年にPMMとしてLegalOn Technologiesに参画。これまで100社以上の法務担当者にヒアリングし、課題解決策を練ってきた。

「LegalOn Cloudマターマネジメントモジュールが目指すのは、『法務ナレッジの勝手な資産化』」ーーー。勝俣 真也・プロダクトマーケティングマネジャー(PMM)はそう語ります。

マターマネジメントモジュールの開発背景や、法務にもたらす変化について聞きました。

マターマネジメントで、誰もが高品質でスピーディーなチェックが可能に

ーーーマターマネジメントとは何かを簡単に教えてください。

マターマネジメントを訳すと「案件管理」ですが、従来の案件管理とは視点が異なります。

案件管理と聞くと、案件の進捗管理の仕組み化をイメージされる方も多いと思います。ただ、マターマネジメントには、「管理」だけではなく「活用」を含んだニュアンスがあります。

案件の進捗管理に加えて、対応状況をナレッジとして残し、後で探せる状態にすること。蓄積したナレッジを活用できる状態にする「資産化」がマターマネジメントの本質です。

<関連記事>マターマネジメントとは? 法務での重要性や進め方のポイントを解説 案件管理との違いは?

ーーーLegalOn Cloudのマターマネジメントモジュールで法務はどう変わるでしょうか。

法務メンバーが情報を検索するためには、「この案件はこの案件と関連している」といった、「検索するための前提知識」を知っている必要があります。

マターマネジメントモジュールでは、そういった前提知識なしでも案件を資産として活用できる状態を実現します。取引先・契約類型などをベースとしたデータベースから、AIが自動で類似案件や契約書などを探し出してレコメンド。検索する手間を削減します。類似案件・ファイルレコメンド

マターマネジメントモジュールの画面イメージ。たとえば契約書チェックの際、AIが似た案件や関連する契約・情報をサジェストしてくれる

法務では、過去に対応した案件と似たチェック依頼があることはめずらしくありません。その場合、一から対応方法を検討するのはもったいないですし、過去と違う結論を出してしまっては法務として一貫性を欠いてしまいます。

マターマネジメントにより、類似の案件に対して高品質でスピーディーなチェックを誰でも行うことができます。リーガルオンクラウドの製品資料ダウンロード用のバナー

類似の案件の「無駄な検討」をなくしたい

ーーーマターマネジメントモジュールの開発背景について教えてください。

マターマネジメントモジュールは、AIレビューサービス「LegalForce」の案件管理機能を構想のヒントにしています。

案件管理機能は、事業部からの依頼がメールやチャット、口頭、社内システムに散在することで、案件の確認コストがかかっている法務が多いことに着目し、「進捗管理」領域の課題解決を目的に開発がスタートしました。

お客さまから案件管理機能のフィードバックをいただく中で、「過去同様の事例があったにも関わらず、それらを見つけられないために無駄な検討を行った」「案件を一つの場所に集約したあとでも、経緯の確認や、関連資料のありかを探すのが難しい」といった声が多く聞かれました。

勝俣さんP3

これが、進捗管理に加えてナレッジの活用を目指すマターマネジメントモジュールを開発する後押しとなりました。類似案件の探し出しや、関連した案件の紐づけは、私たちが強みとしてきたAI技術が生かせると考えました。

法務案件は複雑化。コミュニケーションも課題に

ーーー法務部門がマターマネジメントに取り組むべき理由について教えてください。

法務を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化しました。大きな要因の一つが、法務案件の複雑化です。

技術革新の影響が大きいと考えられます。AIの活用といった技術革新については、その技術を利用したサービスなどが現行の法律では対応できないことも多々あります。
その場合は、
要件定義書や行政が出すガイドラインといったものから法的リスクを判断する必要があり、参照しなければならない書類はふくれあがります。これらの検討経緯を残すこともこれまで以上に重要になります。

また、コロナ禍以降の在宅勤務の浸透で、「先輩に聞く」といった直接コミュニケーションが希薄になったことも要因の一つです。これにより過去の経緯を探すのが難しくなり、過去の類似ケースがあるにも関わらず、同じような検討をしてしまうケースも増加しています。

ーーーどのような法務部門に、マターマネジメントが必要でしょうか。

どの規模法務部門でも取り組む必要がありますが、特に取り組むべきなのは一人法務・少数の法務から拡大させたいと考えている、もしくは拡大が始まっている法務部門です。

組織が小規模なうちは暗黙知の共有で業務が滞りなく進みますし、普段の会話で案件の進捗状況も自然と共有できます。ただ、組織が拡大するとそうはいかず、リスクの見落としを防ぐ仕組みや、案件を共有する仕組みが必要になります。

しかし、組織が大きくなって業務フローが固まった段階で大きなオペレーション変更をすることは難しく、早いうちからその体制を作っておくことがポイントです。業務フローが固まりきっていない状態の方が柔軟にフローを変えることができます。

ーーー大規模な法務部門ではマターマネジメントをどのように導入するべきでしょうか。

大規模法務では、業務の平準化が重要です。ジョブローテーションによって他部門から法務に入る人も多く、業務レベルがバラバラになりがちで、教育コストがかかります。

さらに、せっかくメンバーの法務レベルがあがっても、異動によってまた一から教育する必要があるので、マターマネジメントによって誰もが案件に対処できる状態にすることが重要です。

なお、大規模法務ではすでに業務フローが定まっている場合も多いと思いますので、なるべくフローを変更せずにマターマネジメント体制を整えることが、導入を成功させるポイントといえます。

そうして法務判断のスピードと質のレベルを上げていけば、企業内での法務組織のプレゼンスも上がっていくはずです。

マターマネジメント体制の導入によって進捗管理ができるようになれば、メンバーの法務レベルをデータ化することで、適正公正な評価にもつなげることも可能ではないでしょうか。

マターマネジメント体制構築には、変更コストを抑えるのがカギ

ーーーリーガルテックを活用しないマターマネジメントの一般的な実践方法について教えてください。

まず、案件の進捗を管理し、案件終了時には検討に使用したファイルや案件についてのコミュニケーション内容を整理してフォルダ等に格納。次に、それらの内容を台帳に記載し、後で参照可能な状態にすることが求められます。

多くの法務部門が実践しているやり方としては、
①法務相談を受け付けるためのメーリングリストを作成
②そのメーリングリスト内で案件に関する情報をやり取り
③フォルダを作成して、案件が完了したら情報を格納
④エクセルなどで作成した台帳に案件名を入れて保存
という方法です。

ただ、私の印象では8割くらいの企業でこうしたやり方は形骸化し、案件に関する情報がバラバラになってしまっています。

ーーーなぜそのような状況になってしまうのでしょうか。

法務では次から次へと案件に対応する必要があるため、完了した案件に時間を割くというのは、よほどのインセンティブがなければ実施が後回しになってしまうからです。

マターマネジメントを通じてのナレッジの整理は、「やらなくてはならないが、やらなくても短期的な損失にならない」ということが、実践への足かせになっているのではないでしょうか。

また、マターマネジメント体制の構築は多くの場合、業務フローの大幅な変更が余儀なくされるため、初期的に法務メンバーの負担は大きくなります。

さらに審査依頼のフローにも影響が生じるため、依頼部門の了解も取らなければならず、大幅なフローの変更は反発をまねく可能性もあります。

それを避けるためには、マターマネジメントの必要性について、ステークホルダーと丁寧にコミュニケーションを行い、その必要性について全員が納得している状況を作ることが重要です。さらにフローの変更コストを最小限にすることも重要です。

ーーーそうした変更コストを小さく抑えるためには、どうすればよいでしょうか。

マターマネジメントのための体制を構築しようとして、プラスアルファの業務の発生はなるべく避けた方が良いといえます。普段の業務を行うなかで、「勝手にナレッジが資産化」していくような業務デザインが重要です。

LegalOn Cloudのマターマネジメントモジュールは、既存の業務フローの中で勝手に案件がナレッジ化していくことを目指して設計しています。

たとえば11月のリリースでは、LegalOn CloudとSlackを連携させることができるようになりました。

LegalOn Cloud上でSlack上の任意のチャンネルにスレッドを作成すると、それ以降、法務メンバーはLegalOn CloudからSlackにメッセージを送信することができます。
内容はLegalOn Cloudに情報が蓄積されるため、法務メンバーも依頼者も、もともとslackで案件受付をしてきた場合はマターマネジメントに取り組むことができます。
Slack連携イメージ画像

画面イメージ。LegalOn CloudとSlackを連携すると、LegalOn Cloud上からSlackチャンネルを作成でき、以後法務メンバーはLegalOn CloudからSlackにメッセージを送信することができる

グローバル化で高まる契約書の重要性

ーーーマターマネジメント領域では、国内リーガルテックでサービスを展開している企業がまだ少ないように思えます。

国内では、LegalForceの案件管理で主眼としていた進捗管理に主眼を置くサービスが多く展開されていますが、マターマネジメントまで領域まで主眼に置いたサービスは現状多くありません。

情報の関連付けと検索はAIの得意分野ですが、類似案件の探し出しや関連した案件の紐づけといった機能を実用可能にするには技術力が必要です。

当社として、かねて開発してきた「案件管理」にプラスアルファの要素が加えられたのは、リーガルテックのさきがけとしてAIの研究を続けてきた当社の強みが発揮できたからだと考えています。

ーーー海外のマターマネジメントサービスの状況はいかがでしょうか。

海外では、国内で多くのサービスがある「契約書AIレビューサービス」よりも、マターマネジメントサービスが多く登場しています。

これは「リーガルテックのメッカ」ともいえる米国で、約束事をきちんと明文化するといった、契約書の重要性が非常に高いことが要因の一つだと私は考えています。締結済み契約や、その背景情報が重視され、背景情報によっては契約を巻き直すといった事が自然と行われていたのではないかと思います。

国内企業も無関係ではいられません。グローバル化が進む昨今においては、海外企業との関わりも増えていくと予想されます。契約の内容や背景情報を確認できるようマターマネジメントに取り組むことが重要ではないでしょうか。リーガルオンクラウドの製品資料ダウンロード用のバナー

濱田 祥太郎(はまだ・しょうたろう)
執筆

濱田 祥太郎(はまだ・しょうたろう)

LegalOn Technologies 編集部

中央大学法学部卒、全国紙の新聞記者に4年半従事。奈良県、佐賀県で事件や事故、行政やスポーツと幅広く取材。東京本社では宇宙探査や宇宙ビジネスを担当。その後出版社やITベンチャー、Webメディアの編集者を経て2022年LegalOn Technologies入社し、NobishiroHômuの編集を担当。

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