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ルールメイキング再考~いまルールにどう向き合うべきか~

ルールメイキング再考~いまルールにどう向き合うべきか~

法務業界において注目が高まる「ルールメイキング」。これからの企業、そして法務にとってどのような意味をもつのでしょうか。

法律事務所ZeLo・外国法共同事業の松田氏がモデレーターを務めた本Sessionでは、Zホールディングスの妹尾氏とシティライツ法律事務所の水野氏のおふたりに

これからのルールメイキングで法務が果たす役割などをテーマにお話しいただきました。


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「ルールメイキング」が注目されている理由

松田氏 まずは本Sessionにおける「ルールメイキング」という言葉の前提を確認したいと思います。

そのうえで、ルールメイキングがいま注目されている理由を、おふたりがどのように考えているのかを教えてください。

妹尾氏 “新しいルールを求められる場面が増えてきている”ということに尽きるのではないでしょうか。広い意味でいうと社会の、特に技術や人の生活に関わる事象の変化が起きていることが背景にあると考えています。

水野氏 「そもそもルールメイキングという言葉はバズワード化しているか?」という疑問はあるものの、その言葉に魅力を感じている人は増えていると思っています。

これまでの日本社会には、ルールが大きく変化しなくても社会や経済がうまく回るという側面がありました。しかし、それが通用しなくなってきました。その事実に気づき始めた人たちが多くなっているのではないでしょうか。

2000年ごろからインターネットが急速に広がり、情報・IT産業が勃興しました。そして20年ほど経った現在、ネットやIT、デジタル技術が社会のインフラ部分まで届き始めています。

ただ、インフラというのはルールが積み重なっている分野なので、「いまある規制とどう付き合っていくのか」「残すべき部分・変える部分はどこなのか」を、しっかり見定める必要があります。

しかし、事前にすべて、国や行政機関に相談して、全部許諾を取るのかといわれればそれは違います。そういった状況のなかで、ルールメイキングという新たなスタイルが注目されているのではないかと考えています。

ルールメイキングは法務、経営全員の課題

松田氏 「ルールメイキングは誰の課題か?」という疑問については、どうお考えでしょうか。

妹尾氏 法務も経営も接する課題だと思うので、全員の課題といえるでしょう。ヤフーでは社会の変化に適応するための機能として、かなり早い段階からロビイングやルールメイキングを担う「政策企画」という部署を、法務とは別に設置しました。

水野氏 司令塔的な役割は、政策企画と法務のどちらになるのですか?

妹尾氏 決めていないです。多くのプロジェクトに両部署が入っており、どちらかの指示で動くというよりは連携しながら進めるという形で業務を行っています。

松田氏 水野さんは普段の業務で、法務部のないスタートアップ企業とも付き合いがあると思いますが、どのようにルールメイキングを行っていますか?水野氏 スタートアップのやりたいビジネスモデルが、法的にグレーゾーンにある場合、大企業が手を出しづらい競争優位性のある領域といえます。もちろん明らかにアウトというケースはダメですが、グレーの場合は未来を見据えて、「いまからこういうルールをつくっていったほうがいい」「この部分は変えたほうがいい」というコミュニケーションを早い段階から取っています。私の場合は顧問業務としてのリーガルアドバイスの延長上で、そういったルールメイキングに関するアドバイスも行っています。

社会的影響が大きい企業の法務に求められるもの

松田氏 政府と企業の関わりという観点から見たときに、ガバナンスのあり方やルールづくりに変化は生じているのでしょうか。

妹尾氏 法律家の業務として「“違法か適法か”ということを判断するだけではない能力を、求められる場面が増えてきている」と感じています。

適法のなかでもさまざまなパターンが生まれていて、「適法の領域のなかで自由に振る舞ってほしいのか」それとも「適法のなかでも襟を正した行為が求められているのか」という倫理的な面も含めた経営判断が難しくなってきているように感じます。

まさにルールがない領域です。特にヤフーは社会的影響が大きくなっているので、自主的な規制や業界内でのルールを自分たち自身でつくっていくことも重要です。そして、仮に政府から新たなルールメイキングを求められれば、きちんと協力・主張・対応していくことが必要だと思います。

他方で、自分たちが泳いでいる場所が「適法の海」のなかだとしても、「その泳ぎ方は決められているの?」という疑問を抱くことはよくあって、法律家からするとすごく悩ましい部分でもあります。

水野氏 政府と企業の関係性のなかで着目すべきことのひとつとして、現代社会における企業の社会的影響力というのが非常に強くなっているということがあげられます。

ヤフーを含む大手IT企業が利用規約ひとつを修正するだけで、国の法律が変わるくらいのインパクトが生じうる時代になっていますよね。また、社会の変化が加速し、政府がすべてのルールを事細かにつくっていくことがかなり難しい時代にもなっています人的なリソースも限界にきており国が「ビジネスの現場で、どのような新しいルールが必要なのか?」というアイデアを民間に求めていくのは自然な流れだと思っています。

松田氏 法律やガイドラインという公的なもの以外では、どのようなものがルールメイキングに含まれるのでしょうか。

水野氏 「ルールメイキング=特別なこと」と考える方も多いですが、新しい領域のサービスにおける利用規約やガイドラインをつくることもルールメイキングです。また、もっと大きな視点で考えると、“SDGs”も人類が目標にたどり着くためにつくられた道標という意味では、ルールメイキングだと思います。

ルールメイキングにはロビイングのイメージが強いかもしれませんが、普段の法務と地続きであり、オプションでしかないという感覚を私はもっています。

ルールメイキングの時代に、法務が果たすべき役割

松田氏 「ルールメイキングの時代において、法務はどういう役割を果たしていくべきか?」という疑問については、どうお考えでしょうか。

妹尾氏 「法務が会社にとって必要な機能・存在になれているか?」という問いを続けることが大事だと考えています。

法務にはルール的な視点だけではなく、明文化されていない“倫理的な視点”に立った意見を、経営サイドに伝える役割も求められてきています。経営にその意見を反映させる存在になるためには、経営陣と信頼関係を築くことが鍵になると思います。

ただ、日本企業には「ルールメイキングが不可避になるくらい、(新規)事業が動き始めて大変です」という声が上がるような状況や挑戦を、目指してほしいですね。

水野氏 変化は不可避であり、新しいことへの挑戦なしには生き残れないと思っています。ルールメイキングは、挑戦のなかで当然ついてくるものです。

そうしたなかで、ルールメイキングを担うのは法務パーソンに限られないわけですが、私は法務パーソンこそがルールメイキングを担う人材として適任だと思っています。それは法務が培ってきた知識や経験、法に内在する普遍的な価値への訴求といった性質が他のポジションの人材と比較して優位性があるからです。だからこそ、その力を活かしてぜひルールメイキングの場に積極的にコミットしてほしいです。

▼「LegalForce Conference 2021」の様子は、YouTube上でも配信しています。ぜひご覧ください。


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NobishiroHômu編集部

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