利用規約の概要と必要性
利用規約とはサービスを提供する事業者がユーザーに対して、サービスの利用条件やルールを明確に示すものです。提供するサービス内容や料金、禁止事項、免責事項など多岐にわたる内容が記載されます。利用規約がない場合、事業者は各ユーザーに対して利用条件を説明・交渉する必要が生じ、運営コストが増大しかねません。これを避けるため、多くのサービス事業者は利用規約によって多数の利用者に共通のルールを設けています。
利用規約を作成する主な目的は、サービスを提供する事業者とユーザー間の権利義務関係を明確にし、トラブルを未然に防ぐことです。万が一ユーザーとの間でトラブルが発生した場合、利用規約を根拠に対応を進め、裁判などでの法的な根拠としても用います。
利用規約と「契約」および「約款」
続いて利用規約と「契約」や「約款」の関係性について解説していきます。しばしば似た意味で捉えられる言葉であるため、それぞれの違いや法律面での考え方を確認しておきましょう。
利用規約と契約の違い
利用規約はサービスの提供事業者が、不特定多数のユーザーに対して適用するルールです。そのため、事業者側が一方的に作成・適用するものであって、個別のユーザーとの間で内容の交渉や一部変更は想定されていません。
これに対して、契約はサービスや商品の提供者とそれを受け取る側の間で、個々に締結するという違いがあります。契約内容は個別で交渉や修正するケースも多く、当事者同士で合意された内容が契約として成立します。
この他に、利用規約はインターネット上などで公開され第三者でも閲覧が可能であるのに対して、契約は当事者同士の間でのみ内容の閲覧が可能である点も違いがあるといえるでしょう。
利用規約と約款の関係性
利用規約は、民法に定められる「定型約款」に該当する場合があります。。
約款という言葉自体は、以前から銀行や保険、インターネット上のサービスなどで契約の際に利用されてきました。しかし、民法で明確な定義が無く、裁判では都度解釈を示す形で用いられていました。これに対して2020年4月に民法が改正され、現在では特に「定型約款」について次のように定義されています。
対象とする約款(定型約款)の定義
①ある特定の者が不特定多数の者を相手方とする取引で、
②内容の全部又は一部が画一的であることが当事者双方にとって合理的なものを 「定型取引」と定義した上、 この定型取引において、
③契約の内容とすることを目的として、その特定の者により準備された条項の総体
これにより上記の定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であり、その契約内容の全部または一部が、画一的であることが双方にとって合理的な取引)に該当する利用規約は、定型約款として取り扱われることとなりました。すなわち「事業者が不特定多数のユーザー向けに提供するサービスの利用規約」であれば、原則「定型約款」に該当すると考えることができます。
「定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき」「定型約款を準備した者(定型約款準備者)が、あらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していること」のどちらかを満たしている場合、その定型約款にあたる利用規約に法的な拘束力をもたせることができます(民法548条の2 第1項)。ただし、社会通念に照らして信義則に反してユーザーの利益を一方的に害する条項は、合意しなかったものとみなされる点には注意が必要です。(民法548条の2 第2項)
利用規約を作成する際は、ここに紹介した民法上の定型約款に関する条項(民法548条の2~4)が、内容への同意を求める表示方法の参考となるでしょう。
利用規約の主なパターンと注意点
サービスの種類によって利用規約で注意すべきポイントが異なります。自社のサービス形態に合わせた対策を確認しましょう。
投稿・コミュニティ系サービスの利用規約
SNSやブログ、動画投稿サイトなどでは、ユーザーが投稿するコンテンツの取り扱いが最も重要です。投稿された写真や文章の著作権がユーザーと運営会社のどちらに帰属するかを明確にし、運営側がコンテンツを利用できる範囲を定めておく必要があります。
また、誹謗中傷や不適切な投稿が行われた場合に、運営側が投稿を削除したりアカウントを停止したりできる権限を規約に盛り込むことが大切です。特に炎上リスクを避けるため、ユーザーの権利を過度に制限しない配慮が必要でしょう。
注意点/ポイント
- 投稿コンテンツの著作権帰属を明確化
- 不適切投稿の削除・修正権限を規定
- ユーザーの権利に配慮した条項設定
- アカウント停止の基準と手続きを明記
コンテンツ販売・配信系サービスの利用規約
音楽や画像、デザイン素材などを販売・配信するサービスでは、提供するコンテンツの利用範囲を明確に定めることが重要です。個人利用のみ可能なのか、商用利用も認めるのか、利用期限があるのかなどを詳しく記載します。
また、ユーザーがコンテンツを無断で第三者に配布したり、規約に違反して利用したりした場合の罰則も定めておく必要があります。著作権侵害が発生した場合に、サービス提供者がどこまで責任を負うかの範囲も明記しておくことで、トラブルを防げるでしょう。
注意点/ポイント
- コンテンツの利用範囲と制限を詳細に規定
- 商用利用の可否と条件を明確化
- 無断配布や規約違反時の罰則を設定
- 著作権侵害時の責任範囲を限定
マッチング・プラットフォーム系サービスの利用規約
フリマアプリやマッチングサイトなど、ユーザー同士の取引を仲介するサービスでは、ユーザー間で発生したトラブルに対する運営側の責任範囲を明確にすることが最重要です。
例えば商品の未発送や品質不良、金銭トラブルなどが起きても、原則として当事者間で解決してもらい、運営側は責任を負わない旨を明記します。また、仲介手数料がいつ発生するか、どのように計算されるかを詳しく説明し、料金に関する誤解を防ぎます。
決済代行機能がある場合は、決済トラブル時の対応方法や返金条件についても規定しましょう。
注意点/ポイント
- ユーザー間トラブルの免責事項を明記
- 仲介手数料の発生条件と計算方法を詳細化
- 決済代行時の責任と義務を明確化
- 通報機能と対処方法を規定
クラウド・ITツール系サービスの利用規約
レンタルサーバやクラウドサービス、業務ツールなどでは、システム障害やデータ消失のリスクに対する責任制限が重要なポイントになります。
サーバの故障や不具合により利用者のデータが失われた場合でも、運営側の損害賠償責任に上限を設けたり、特定の条件下では免責されることを明記します。
定期メンテナンスや緊急メンテナンスでサービスが一時停止する場合の事前通知方法や期間についても定めておきます。また、利用者側にもデータのバックアップを取る責任があることを明記し、セキュリティ対策についても利用者と運営側の責任分担を明確にしましょう。
注意点/ポイント
- データ消失やシステム障害時の責任制限を設定
- サービス停止時の事前通知義務を規定
- セキュリティ対策の責任分担を明確化
- サービス終了時のデータ移行期間を設定
利用規約に定める主な項目と作成手順
利用規約の概要や定型約款としての性質を踏まえて、ここからは記載する内容を解説し、あわせて作成手順として解説していきます。それぞれの内容や順序、組み合わせは提供するサービスやアプリケーションの性質によっても変動する場合があるので注意しましょう。
1.利用規約全体に対する同意
ユーザーがサービスを利用するにあたり、利用規約のすべての条項に同意する必要があることを明確に記載します。これはユーザーがサービスを利用開始した時点で、規約の内容を理解し、承諾したものとみなす根拠となる項目です。不同意の場合の措置(例:サービス利用の拒否)についても明記することで、無用なトラブルを避けることができます。単に「同意したものとみなします」と記載するだけでなく、ユーザーが主体的に内容を確認し、判断することを促す文言を加えることが望ましいです。
2.用語の定義
利用規約内で頻繁に使用される重要な用語については、その意味を明確に定義します。「本サービス」「ユーザー」「コンテンツ」「アカウント」といった言葉やサービスで用いる単語が用語に該当します。定義を明確にすることで、規約の解釈における誤解や曖昧さを排除し、ユーザーとサービス提供事業者間の認識のずれを防ぐのが目的です。具体的なサービス内容に合わせて、専門用語や固有の名称なども定義する必要があります。曖昧な表現は避け、具体的かつ簡潔な定義を心がけると良いでしょう。
3.サービスの内容・保証範囲
提供するサービスの内容、範囲、利用方法などを具体的に説明します。またサービスの品質、可用性、完全性などに関する保証の範囲を明確に定めることも重要です。どこまでサービス提供事業者が責任を負うのか、逆に免責されるのかを明確にすることで、ユーザーの過度な期待や誤解を防ぎます。サービスの変更、中断、終了の可能性についても言及しておくことで、将来的なトラブルを予防できます。サービスの提供範囲や利用条件を詳細に記述することは、利用規約の目的から考えれば不可欠といえるでしょう。トラブルなどの際、規約内で言及している事実が重視される可能性があるため、記述内容も十分検討が必要です。
4.サービスの利用料金と支払い方法
有料サービスの場合、料金体系や支払い方法、支払い時期、キャンセルポリシーなどを詳細に定めます。無料期間やキャンペーンなどが適用される場合は、その条件や期間に関する記載も必要です。支払い方法については、利用可能な方法を具体的に示します。料金の変更がありうる場合は、その告知方法や時期についても定めておくことが重要です。未払いの際の措置についても明記することで、料金に関するトラブルを未然に防ぎます。また消費税等の税金の取り扱いについても、明確な記述があるとより望ましいといえます。
5.権利の帰属
サービス内で提供されるコンテンツ(文章、画像、プログラム、デザインなど)に関する著作権、商標権、特許権などの知的財産権が、サービス提供事業者または提供元の第三者に帰属することを明確にします。ここではユーザーによるコンテンツの利用範囲も、具体的に定める必要があります。ユーザーがサービスに投稿または送信したコンテンツに関する権利の取り扱いについても規定しておくことが重要です。権利関係を明確にすることで、知的財産権に関する紛争を予防します。コンテンツの利用に関するルールを明確にすることは、権利侵害を防ぐ上で重要です。ただしユーザーが投稿・送信したコンテンツに関する権利の取り扱いについては、後述する炎上トラブルにつながるケースもあるため、慎重に内容を検討する必要があります。
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6.利用者の遵守事項・禁止事項・罰則
ユーザーがサービスを利用するにあたって遵守すべき事項や、禁止されている行為を具体的に列挙します。サービスの内容をもとに、以下の例に示すような行為を具体的なルールとして明記する必要があります。
遵守事項・禁止事項の例
- 他の利用者に対する迷惑行為
- サービスの提供に支障をきたす妨害行為
- 有害なプログラムの送信
- 法令違反や公序良俗に反する行為
これらの禁止事項に違反した場合の措置として、アカウントの停止、利用制限、損害賠償請求などの罰則も合わせて定めましょう。禁止事項に実効性を持たせるためです。また禁止事項を具体的に記述することで、違反した場合の対処について、ユーザーの理解を求めやすくなります。
7.サービスの停止・終了
サービス提供者が、サービスの全部または一部を停止・終了する条件や手続きについて定めます。定期メンテナンスやシステム障害などによる一時的な停止、運営上の都合によるサービス全体の終了などが考えられます。サービスの停止・終了を行う場合、原則として事前にユーザーに告知する期間や方法を定めることが望ましいです。ただし緊急を要する場合や、ユーザーの不正行為による場合は、予告なしに停止・終了できることも明記する場合があります。サービス終了に伴うデータの取り扱い(例えば、データのバックアップ期間や削除時期)についても定めておくことが重要です。
8.利用規約の変更・改定
利用規約の内容を将来的に変更または改定する場合の手続きについて定めます。先に述べた民法改正によって、利用規約が定型約款に該当していれば、一定の要件もとで利用者の同意なく契約内容が変更できます。とはいえユーザーからの理解を得ることや、実務の観点から、利用規約の変更や改定については規定することが一般的です。変更の告知方法(例えば「サービス内での告知」「電子メールでの通知」など)や変更の効力発生時期などを明確にすることで、ユーザーとの間で認識の齟齬が生じるのを防ぎます。利用規約を変更する条件については、後半で詳しく解説します。
9.契約更新
サブスクリプションモデルなど、期間を定めてサービスを提供する場合は、契約の更新に関する事項を定めます。自動更新の有無や更新の手続き、更新期間、更新時の料金などの明確な記載が必要です。ユーザーが契約更新を希望しない場合の解約手続きについても定める必要があります。解約の申し出期間や方法の他、解約に伴う違約金などが発生する場合は、その条件も明確にします。自動更新を設定する場合は、ユーザーに事前に通知する時期や方法についても定めることが望ましいです。
10.秘密保持
サービス利用に関連して知り得た相手方の秘密情報について、第三者に開示または漏洩しない義務を定めます。ここでいう「相手方」は基本的にユーザーを指していますが、サービスやアプリケーションの形態によってはサービス提供事業者を指す場合もあります。対象となる情報の範囲や例外的に開示が認められる場合、秘密保持義務の存続期間などが明確に記載されていることが望ましいです。ユーザーがサービス内で入力または送信した情報のうち、秘密情報として取り扱うべきものについても定義する必要があります。適切な秘密保持に関する規定は、ユーザーが安心してサービスを利用できる環境を整備するために重要です。
11.反社会的勢力の排除
サービス提供事業者およびユーザーが、反社会的勢力に該当しないこと、および将来にわたっても該当しないことを表明し保証する条項を設けます。これらの者に該当した場合、またはこれらの者と関係を有した場合の契約解除やサービス停止の措置を定めます。自社の健全性を表明しつつ社会的信頼を保つためにも、この条項は重要となります。
12.損害賠償
ユーザーが利用規約に違反し、サービス提供者または第三者に損害を与えた場合、その損害を賠償する責任を定める内容です。損害賠償の範囲や請求方法についても明記することがあります。一方でサービス提供者の責めに帰すべき事由により、ユーザーに損害が発生した場合の賠償責任についても定めることがあります。ただし、免責事項との関連性を考慮し、サービス提供事業者の賠償責任範囲を限定的にするケースもあるため注意が必要です。損害賠償に関する規定は、万が一ユーザーとの紛争が生じた際の解決の指針となります。
13.準拠法と裁判管轄
サービス利用に関する紛争が生じた場合に適用される法律(準拠法)と、裁判を行う裁判所(裁判管轄)を定めます。準拠法は通常、サービス提供者の所在地の法律が指定されることが多いです。裁判管轄も同様に、サービス提供事業者の所在地を管轄する裁判所とすることが一般的ですが、インターネットサービスの場合はユーザーの利便性を考慮して、合意管轄とすることもあります。準拠法と裁判管轄を明確にすることで、国際的なサービス提供の場合など、紛争解決の手続きが円滑に進むことが期待されます。
利用規約の雛形・テンプレート
利用規約をゼロから作成するのは時間がかかりますが、雛形やテンプレートを活用することで効率的に作成できます。以下ではWebサービス向けの利用規約テンプレートの一例です。ただし、雛形をそのまま使うのではなく、自社のサービスに合わせて内容を調整することが重要です。
- 【サービス名】利用規約
- 【会社名】(以下「当社」といいます)が提供する【サービス名】(以下「本サービス」といいます)の利用規約(以下「本規約」といいます)を以下のとおり定めます。
- 第1条(規約の適用)
- 本規約は、本サービスの利用に関して、当社と本サービスを利用するすべての方(以下「ユーザー」といいます)との間に適用されます。
- ユーザーは、本サービスを利用することにより、本規約に同意したものとみなされます。
- 本規約に同意いただけない場合は、本サービスをご利用いただくことができません。
- 第2条(定義)
本規約において使用する用語の定義は以下のとおりです。 - 本サービス 当社が運営する【サービス名】及びこれに関連するサービス
- ユーザー 本サービスを利用するすべての個人及び法人
- アカウント 本サービスを利用するために作成される利用者情報
- コンテンツ 本サービス上で提供される文字、音声、画像、動画、ソフトウェア等の情報
- 第3条(サービス内容)
- 本サービスは、【サービスの具体的内容を記載】を提供するサービスです。
- 当社は、ユーザーに事前に通知することなく、本サービスの内容を変更、追加、削除することができます。
- 当社は、本サービスの利用環境について【動作環境・対応ブラウザ等】を推奨します。
- 第4条(アカウント登録)
- 本サービスの利用には、当社所定の方法によるアカウント登録が必要です。
- ユーザーは、登録時に正確かつ最新の情報を提供する必要があります。
- ユーザーは、自己の責任においてアカウント情報を管理し、第三者に利用させてはなりません。
- アカウント情報の管理不十分により生じた損害について、当社は一切責任を負いません。
- 第5条(利用料金)
- 【無料サービスの場合】
- 本サービスは無料で提供されます。ただし、通信費等はユーザーの負担となります。
- 【有料サービスの場合】
- 本サービスの利用料金は【料金体系】のとおりです。
- 利用料金の支払い方法は【支払い方法】とします。
- 一度お支払いいただいた利用料金は、原則として返金いたしません。
- 利用料金の未払いがある場合、当社は本サービスの利用を停止することができます。
- 第6条(禁止事項)
ユーザーは、本サービスの利用にあたり、以下の行為を行ってはなりません。 - 法令、本規約、公序良俗に違反する行為
- 犯罪行為に関連する行為
- 他のユーザーや第三者の権利を侵害する行為
- 他のユーザーや第三者に迷惑をかける行為
- 本サービスの運営を妨害する行為
- 当社や他のユーザーの信用を毀損する行為
- 営利目的での本サービスの利用(当社が認めた場合を除く)
- 本サービスを通じて得られる情報を商業的に利用する行為
- その他、当社が不適切と判断する行為
- 第7条(知的財産権)
- 本サービスに関する知的財産権は、当社または正当な権利者に帰属します。
- ユーザーは、本サービスの利用により、これらの知的財産権について何らの権利も取得しません。
- ユーザーが本サービスに投稿するコンテンツの著作権は、ユーザーに帰属します。
- ユーザーは、投稿したコンテンツについて、当社が本サービスの運営のために利用することを許諾します。
- 第8条(プライバシーの保護)
当社は、ユーザーの個人情報を、当社が別途定めるプライバシーポリシーに従って適切に取り扱います。 - 第9条(サービスの変更・停止・終了)
- 当社は、以下の場合、ユーザーに事前に通知することなく、本サービスの全部または一部を停止または中断することができます。
- システムの保守・点検を行う場合
- 地震、停電等により本サービスの運営ができない場合
- その他、当社が停止または中断を必要と判断した場合
- 当社は、事業戦略の変更等により本サービスを終了する場合があります。この場合、当社は【事前通知期間】前までにユーザーに通知します。
- 第10条(契約の解除)
- ユーザーは、所定の手続きにより、いつでも本サービスの利用を停止することができます。
- 当社は、ユーザーが以下に該当する場合、事前に通知または催告することなく、本サービスの利用を停止し、または利用契約を解除することができます。
- 本規約に違反した場合
- 利用料金の支払いを怠った場合
- 反社会的勢力に該当することが判明した場合
- その他、当社が不適切と判断した場合
- 第11条(免責・損害賠償)
- 当社は、本サービスの利用により生じたユーザーの損害について、故意または重大な過失がある場合を除き、一切責任を負いません。
- 当社に故意または重大な過失があり損害賠償責任を負う場合でも、その責任は【期間】間にユーザーが支払った利用料金を上限とします。
- ユーザーが本規約に違反して当社に損害を与えた場合、ユーザーは当社に対して損害を賠償する責任を負います。
- 第12条(規約の変更)
- 当社は、以下の場合、ユーザーの同意を得ることなく本規約を変更することができます。
- 変更がユーザーの利益に適合する場合
- 変更が本サービスの利用目的に反せず、変更の必要性や変更内容の相当性等に照らして合理的な場合
- 前項による規約変更を行う場合、当社は変更内容を本サービス上で通知し、効力発生日を定めます。
- 第13条(反社会的勢力の排除)
- ユーザーは、現在及び将来において、暴力団等の反社会的勢力に該当しないことを表明し保証します。
- ユーザーが前項に違反した場合、当社は直ちに本契約を解除することができます。
- 第14条(準拠法・管轄裁判所)
- 本規約の準拠法は日本法とします。
- 本サービスに関する紛争については、【所在地】を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とします。
- 第15条(その他)
- 本規約の一部が無効となった場合でも、その他の部分は有効に存続します。
- 本規約に定めのない事項については、当社とユーザーが誠実に協議して解決するものとします。
- 【制定日】年【月】【日】制定
- 【会社名】
テンプレート使用時の注意事項は以下の通りです。
カスタマイズが必要な箇所
- 【サービス名】:提供するサービスの名称
- 【会社名】:運営会社の正式名称
- 【サービスの具体的内容】:サービスの詳細な説明
- 【料金体系】【支払い方法】:有料サービスの場合
- 【事前通知期間】:サービス終了時の通知期間
- 【期間】【所在地】:損害賠償の上限期間、管轄裁判所
検討が必要な項目
- サービスの特性に応じた禁止事項の追加
- 知的財産権の詳細な取り扱い
- データの取り扱いに関する条項
- 国際利用がある場合の追加条項
繰り返しになりますが、このテンプレートは一般的なWebサービス向けの基本的な内容となっています。実際の利用にあたっては、サービスの特性に合わせた調整と、専門家による確認をおすすめします。
利用規約作成時の注意点・リスク対策
利用規約に定める内容を踏まえて実際の項目作成に移る前に、作成時の注意点を確認します。提供事業者の視点から考えれば妥当でも、国内の法律や利用するユーザーの視点で見ると問題があるケースも存在します。
関連法に準拠する
利用規約作成時には、サービス内容に関連する法律をしっかりと確認する必要があります。法律に違反した条項があると、その部分が無効になるだけでなく、行政指導や損害賠償請求のリスクも生じます。特にWebサービスやアプリでは複数の法律が関わるため、事前に専門家への相談を検討することが重要です。
関連法と具体的なリスク
- 個人情報保護法:ユーザー情報の不適切な取り扱いによる行政指導や損害賠償請求
- 消費者契約法:消費者に不利な条項により、利用規約の一部が無効とされる
- 特定商取引法:メール広告送信時の同意不備による法的処罰や業務停止命令
- 著作権法:他人の著作物無断使用による権利者からの損害賠償請求
- 資金決済法:ポイント制度運営時の届出義務違反による金融庁からの処分
民法改正への対応が必要
法律は時代の変化に合わせて改正されるため、利用規約も最新の法律に対応した内容に保つことが重要です。2020年の民法改正では利用規約に関する新しいルールが導入されましたが、今後も新たな改正が行われる可能性があります。改正された法律に対応していない利用規約を使い続けると、知らないうちに法律違反になるリスクがあります。
定期的に法改正の情報をチェックし、必要に応じて利用規約の見直しを行うことが大切です。法務の専門家と継続的に相談できる体制を整えたり、法律の最新情報を入手できる仕組みを作ることで、常に適法な利用規約を維持できます。
特にWebサービスやアプリは技術の進歩が早く、それに合わせて関連法律も変化しやすいため、積極的な情報収集と対応が求められます。以下のお役立ち資料では、2025年施行予定の法改正をまとめています。ぜひご確認ください。
炎上トラブルを避ける
「炎上」はインターネット上で対象への批判的な意見や非難が、爆発的に発生したり事業者に殺到したりする現象を指します。利用規約においては定めた内容がユーザーに不利な内容であった場合や、一方的な搾取につながる場合などに、炎上につながる可能性があります。またプライバシー侵害などが非難の対象となるケースもあるため、ユーザーの視点で不満を感じるような条項が含まれないか、十分注意が必要です。炎上は事業者のイメージダウンやサービスの縮小・見直しにつながる可能性があります。ユーザーへの配慮や言葉遣いの確認で、利用規約を見直すことが大切です。
利用規約が無効になるケース
利用規約の条項が法律に違反している場合、その部分は無効となってしまいます。特に消費者向けサービスでは、事業者の損害賠償責任を完全に免除する条項や、利用者に過度に高額な違約金を課す条項は無効とされる可能性が高くなります。また、利用者の権利を不当に制限したり、一方的に不利益を与える条項も無効の対象となります。
利用規約が無効になるリスクが高い条項の例
- 損害賠償責任を一切負わない:消費者契約法違反
- 高額すぎる違約金の設定:平均的損害額を超過
- 利用者の解約権を完全に排除:消費者の権利を不当に制限
無効な条項があると、その部分だけでなく利用規約全体の信頼性が損なわれる恐れがあります。作成時は法律の専門家による確認を受けることが重要です。
同意取得に関するトラブルと対策
利用規約への同意取得で最も多いトラブルは、ユーザーから「同意していない」と主張されるケースです。特に規約の内容をよく読まずにサービスを利用し始めたユーザーが、後からトラブルになった際に同意の事実を否定することがあります。このようなトラブルを防ぐためには、同意の証拠をしっかりと残しておくことが大切です。
具体的な対策は以下の通りです。
- 同意取得のUI・UXの工夫
- 規約全文のスクロールをしないと「同意ボタン」が押せない仕様の導入
- チェックボックス形式の導入
- ログの記録(日時・IPアドレスなど)
- 同意日時やIPアドレスなどのログを記録することで、後から同意の事実を証明できる
- 規約変更時の再同意取得の仕組み
- 規約を変更する場合には、既存ユーザーから再度同意を取得する明確なフローを設けることでトラブルを防止可能
成年年齢引き下げへの対応
2022年4月から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。この変更により、18歳と19歳の方は成年として扱われるようになり、利用規約の内容や年齢制限の設定を見直す必要が生じました。従来「20歳未満」と記載していた部分は「18歳未満」に変更するか、または「未成年者」という表現に統一することが推奨されます。
この引き下げにより、18歳と19歳のユーザーは親の同意なしにサービスを利用できるようになりました。一方で、18歳未満のユーザーについては引き続き親の同意が必要となります。利用規約では、未成年者の利用に関する条項を明確にし、親権者の責任についても適切に定めておくことが重要です。既存の利用規約についても、年齢に関する記載を確認し、必要に応じて修正することでトラブルを防ぐことができます。
利用規約を改定する条件
利用規約を含めた定型約款の変更は、民法548条の4 第1項にて以下のように定められています。
定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。
一 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。
二 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。
引用:民法548条の4 第1項
すなわち以下の場合については、利用規約を変更する場合にユーザーの合意を取る必要がないことを示しています。
- 変更内容がユーザーの利益につながるとき
- 変更内容がサービスの目的に反しておらず、なおかつ必要性や相当性、変更に関する規定の有無などに照らして合理的といえるとき
ただしその条件として、それに続く民法548条の4 第2項および第3項により、事前に変更の時期や変更内容についてユーザーに伝わる方法で周知することが求められています。(民法548条の4 第2項、第3項)
変更に関する周知を適切に行えば、利用規約の変更は法的にスムーズに実施可能です。しかし、ユーザーが変更内容を正しく理解できなかった場合や、実質的な不利益と受け取られた場合には、たとえ法的に問題がなくても炎上や信頼失墜を招く可能性があります。
そのため、文言の明確化やタイミング・通知方法の工夫に加え、変更の影響範囲やリスクの十分な検討が欠かせません。以下に示すのは、こうした配慮が不十分だったことでユーザーの不信を招いた近年の炎上事例です。
利用規約にまつわる炎上事例
サービス規約の一文が不信を招き、信用問題に発展するケースがあります。ここでは近年話題になった炎上例を通じ、注意すべき持例として整理します。
任天堂アカウント規約変更で子どもオンライン制限(2025年)
2025年5月、任天堂はニンテンドーアカウントの規約改定に伴い、13歳未満の子どもアカウントは保護者が決済情報を更新しないとオンライン機能が停止される仕様を導入し、連休中にゲームが遊べなくなった家庭の不満が一気に拡散しました。
任天堂はFAQで手順を説明し申請期限を延長しましたが、「説明不足」との批判が続いたため、通知メールの文面を平易な言葉へ差し替え、保護者向けダッシュボードを改修するまで収束しませんでした。
メルカリのクーポン売上処理改定騒動(2025年)
2025年1月、2,200万人が利用するフリマサービスメルカリは、クーポン利用時の割引額を「売上の減額」から「当社負担の費用」へ会計処理を変更する旨を利用規約に追記しましたが、文章が複雑で出品者が「売上が減る改悪だ」と受け取りSNSで炎上しました。
同社はすぐにブログで「利益は変わらない」と説明し、規約表現を分かりやすく修正するとともに通知画面を改善しましたが、一部ユーザーは他フリマアプリへ移行する動きを見せました。
ZoomのAI学習条項炎上(2023年)
2023年8月、世界2億人以上が利用するZoomは利用規約に「サービス生成データ」をAI学習に用いる可能性を示す条文を盛り込みました。しかし、会議内容を無断で収集されると解釈され大規模な批判が生じ、欧米のプライバシー団体も声明を出しました。
数日後CEOが謝罪し、「利用者の明示同意なしに学習しない」と明記した改訂版を公表し、既存ユーザーへポップアップで再同意を求めましたが、一時的に競合ツールへの乗り換えが加速しました。
LINEの海外委託アクセス問題(2021年)
2021年3月、利用者4000万人以上のプラットフォームLINEで、委託先の中国技術者から日本ユーザーの画像やトーク関連データへアクセス可能な状態だったことが報じられ、プライバシー設定や規約で国外閲覧を十分に説明していなかった点が強く問題視されました。
総務省が調査に乗り出し、LINEは第三国からの接続遮断、国内へのサーバー移転、規約の追記と同意プロセスの改善を急ぎましたが、信用低下でユーザー離脱も起こりました。
利用規約について解説してきました
利用規約はサービスやアプリケーションを提供する事業者が、利用するユーザーに対してサービスの利用条件やルールを明確に示すために設定されます。提供事業者のサービス自体を守りつつ、万が一ユーザーとのトラブルがあった場合には、法的根拠や対処の方針にも活用することが可能です。「定型約款」も契約の一部であり、利用規約もユーザーとの間で法的拘束力を持たせるためには「定型約款」として有効となるよう民法に沿って作成・運用しなければなりません。
この記事では、利用規約の概要と必要性、契約との違いと約款との関係性、利用規約に定める内容、作成時の注意点、利用規約を改訂する条件について解説してきました。
定めるべき内容が多岐にわたるものの、利用規約はサービスを安定的かつ適法に運用するためには不可欠です。この記事が利用規約の作成をする際の参考となれば幸いです。
このように、利用規約は作成にあたり非常に多くの法的観点を伴うものです。これらを人の手のみで抜け漏れなく行うことは、非常に多くの手間とリスクを伴います。LegalOn Cloudは、AIテクノロジーを駆使し、法務業務を広範囲かつ総合的に支援する次世代のリーガルテックプラットフォームです。利用規約やその他数多くの契約類型のひな形を備え、かつAIによるリスクチェック・法令遵守チェックも可能。必要なサービスを選んで導入できるため、初めてリーガルテックの導入を検討する方にもおすすめです。