マターマネジメントとは
マターマネジメント(matter=案件)とは、依頼案件の受付から、依頼部門とのやり取りまでを集約・管理し、活用可能な状態にすることを指します。
マターマネジメントの目的
マターマネジメントの目的は、法務担当者が自社やグループ企業で発生している法務案件の内容を把握し、もれなくリスクに対処したり、進捗を管理したりできるようになること。さらに、対応をナレッジとして資産化し、のちに参考にできる状態にすることです。
これにより、法務として案件にもれなく対応でき、かつ一貫した対応をとることができるようになります。
「案件管理」との違い
案件管理とは、依頼部門からの法務案件の進捗を記録・管理することを指します。
案件管理には「事業部からの案件依頼をもらさず管理する」といった、法務案件の受付の適正化を目指すというニュアンスがあります。マターマネジメントはそれに加えて、ナレッジの活用まで念頭に入れています。
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「CLM」との違い
CLM=Contract Lifecycle Management(契約ライフサイクルマネジメント)とは、契約の締結前から締結後の管理・更新業務に至るまでのフローを管理し、最適化することをいいます。
CLMは、契約に関するフローの最適化を目指すというニュアンスが強く、あらゆる法務案件を関連情報を含めて活用可能な状態にするマターマネジメントとは視点の異なる考え方です。
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マターマネジメントに取り組むメリット
以下、法務がマターマネジメントに取り組む際のメリットを説明します。
案件の見落としを防ぐ
案件に関する進捗状況を管理することで、担当者に案件を割り振っていなかったり、対応の遅れによりビジネス機会を損失したりする事態を防ぐこができます。
リスクの確認漏れを防ぐ
案件に関するやり取りや関連情報を集約することで情報の散逸を防ぐことができ、本来確認するべき書類に目を通さずに契約を締結してしまうといった確認漏れを防ぐことができます。
法務回答の一貫性を担保できる
法務として、案件対応の一貫性を保つことは重要です。
案件について、情報を関連付けて保管し、検索性も確保することで、知見がない担当者が「何を探せばよいか分からない」といった状況に陥るのを防ぐことができ、情報を探す時間も省けます。ベテラン社員のナレッジを若手社員も生かすことができるため、法務として依頼部門への対応レベルを底上げすることができます。
マターマネジメントに取り組むべき背景
マターマネジメントに取り組むべき背景には、法務を取り巻く環境の変化が影響しています。
案件の複雑化・高度化
グローバル化や、社会のコンプライアンス意識の高まり、AIなど技術開発の発展により、法務案件は複雑さを増しています。
契約書のレビューなどの検討の際には、過去の契約書や関連法令・各種ガイドライン・利用規約・製品仕様書など複数の資料を参照した上で総合的な判断が必要です。それらの情報を、探しやすいように管理することも重要です。
業務量の増加
LegalOn Technologiesの調べでは、1社あたりの年間契約書締結件数は増加し続けており、それにともなう関連情報の確認事項も増えています。業務量が増加する中で、対応漏れや遅延リスクが増大しています。
在宅勤務の浸透による対面コミュニケーションの減少
コロナ禍を契機に浸透した在宅勤務で、対面コミュニケーションが減少したことにより、先輩社員からのノウハウを聞く機会が減りました。自他部門とのコミュニケーションの減少は、ナレッジの伝承機会の損失だけでなく、リサーチの再実施など不要な業務の発生につながりやすくなります。
LegalOn Technologies「緊急事態宣言発令下の法務における働き方の変化に関する調査報告書」より
マターマネジメントで必要な体制作り
事業部からの契約書レビュー依頼など、法務の案件に関する連絡は、メールやチャット、口頭、会議、電話といったさまざまなチャネルで行われます。それらのやり取りを、もらさず管理することが重要です。
一元管理
・案件に関するやり取りを、関連情報も合わせて集約する
案件の整理
・案件の担当割り振りや対応状況を管理する
検索性の確保
・整理した案件に関する情報を誰でも、すぐに探し出せるような状態にする
マターマネジメントを実施する際の注意点
マターマネジメントに取り組むにあたり、どのようなことに注意する必要があるのか解説します。
ハードルは一元管理体制の構築
マターマネジメントの最大のハードルは、案件に関連する情報の一元管理です。
事業部門からの依頼は、メール、チャット、口頭、会議、電話とさまざまな経路から持ち込まれることがほとんどです。これを一つに集約しなければなりません。
「法務への依頼経路をメールのみにする」など連絡チャネルを限定することが課題解決として考えられますが、依頼部門にとっては使い勝手が悪くなり、結果的に法務に相談が来なくなる、という結果を招くおそれがあります。
そのため、マターマネジメントを実現するためには、できるだけ依頼部門の体験を損なうことなく情報をシステムなどへ集約する方法を検討する必要があります。
法務担当者の負担
マターマネジメントのために情報を一元管理し、各情報の検索性を高めることをすべて人手で行おうとすると、担当者にとっては大きな負担になり得ます。オペレーションを変更するには、依頼部門との調整も欠かせません。
上記で言及した業務量が増加するなか、体制整備のための業務が加わり、かえって既存業務を圧迫するという本末転倒な結果になりかねません。それによってマターマネジメントの取り組みが中途半端に終わる可能性もあります。
マターマネジメントを実現するためには、法務担当者にとって業務負担が重すぎない方法を目指すことが重要です。
マターマネジメントが「自然に」できることが理想
先述したように、マターマネジメントに取り組む際には、依頼部門の体験を損なうことなく、法務担当者の負担を抑えながら実現することが重要です。
そのためには、法務担当者がマターマネジメントを意識しないでも、日々の業務に取り組む中で体制が整っていく、という状態が理想です。
リーガルテックなどのシステムを活用することで、日々の案件に関する情報が自然と集約され、蓄積されていく状態が理想といえます。
さらに、昨今進化を遂げているAIを搭載したリーガルテックには、取り込まれた法務案件とする類似する過去の法務案件を高精度でレコメンドし、担当者が情報を探す手間を省いてくれるものもあります。
また、案件を取り込んだ時点で、AIによって想定される法的論点やキーワードを抽出し、連携している外部の関連する法令情報やガイドライン等をレコメンドする機能を提供しているサービスもあります。
コントラクトマネジメント×マターマネジメントで理想のナレッジマネジメントを実現
締結済みの契約書を集約し、更新期限や履行の管理などを行う「コントラクトマネジメント」を、マターマネジメントとともに取り組むことで、法務にとって理想のナレッジマネジメント体制を構築することができます。
マターマネジメント、コントラクトマネジメント体制の整備によって、自社が取り扱ってきた契約審査案件、や締結済みの契約書のデータ、その他重要なプロジェクトに法務部門としてどのように対応してきたのかが整理され、簡単に参照可能な状態になります。
これにより、法務として統一した見解を持ちやすくなります。
社員の即戦力化を実現
ナレッジマネジメント体制の整備は、社員の「即戦力化」に重要な役割を果たします。
中途採用者やジョブローテーションによる他部門からの異動者を即戦力化するためには、法務独自の「仕事の仕方」をキャッチアップしてもらう必要があります。
ナレッジマネジメントができていれば、転職者や他部門からの異動者にナレッジをキャッチアップさせ、即戦力化させるとともに、法務部門としての対応の質と見解の一貫性を維持することができます。
法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」が理想のマターマネジメント体制作りに貢献する
これまで説明したように、理想のマターマネジメント体制作りには、システムの利用が有効です。
LegalOn Cloudは、AIテクノロジーを駆使し、法務業務を広範囲かつ総合的に支援する次世代のリーガルテックプラットフォームです。
マターマネジメントを始め、コントラクトマネジメントの機能も備えており、法務のナレッジマネジメントを実現。さらに、レビュー、サイン(電子契約)といった機能を自由にカスタマイズでき、自社だけのAI法務プラットフォームにカスタマイズすることができます。
ぜひチェックしてみてください。