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LegalOn Cloud開発責任者が語るAIエージェントが変える法務の働き方

LegalOn Cloud開発責任者が語るAIエージェントが変える法務の働き方
この記事を読んでわかること
    • AIエージェントが法務に与える影響
    • どのような機能がAIエージェントに求められるか
    • 法務担当者に求められるこれからの働き方

【2024年 調査レポート】企業における生成AIの活用実態

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谷口 昌仁(たにぐち・まさひと)
Interviewee

谷口 昌仁(たにぐち・まさひと)

株式会社LegalOn Technologies 執行役員・CPO(Cheief Product Officer)

京都大学工学修士課程、ハーバード大学行政経営学修士課程、南カリフォルニア大学経営学修士課程(MBA)修了。経済産業省、小泉総理秘書官補として行政・立法業務に従事。楽天株式会社にて事業長・執行役員を歴任した後、複数のベンチャーで社長としてWebやスマホのアプリ立ち上げからグロースまでを経験。2022年10月にLegalOn Technologies入社。2024年4月より現職。

「1年目からベテラン法務のような働き方ができるようになる未来がくるかもしれない」。AIエージェントが搭載されている「LegalOn Cloud」の開発責任者を務める、LegalOn Technologiesの谷口昌仁CPOは、AIエージェントにより法務の働き方が劇的に変わると説明します。AIエージェントの発展によって、法務の働き方はどのように変革するのでしょうか? またそのとき、必要なスキルとは? 詳しく話を聞いてみました。

AIエージェントは「もう一人の法務担当者」

-AIエージェントが昨今注目を集めています。AIエージェントとはどのようなシステムなのかを教えてください。

これまで何か物事を調べる際は、もっぱらGoogleのような検索サービスでキーワードを「入力」するやり方でした。それが近年では、OpenAIの「ChatGPT」やLLMのような生成AIを使って、いろいろなことを調べられるほか、コンテンツ生成もできるようになりました。こうした生成AI技術を活用した機能は、「AIアシスタント」のような機能名でさまざまなツールに搭載されています。

ところが、生成AIには「ユーザーからのアクションがないと動かない」という課題があります。ユーザーがプロンプト(指示文)を入力しないと結果が出てきません。つまり、入力する内容を検討するための「聞く力」が求められます。

一方でAIエージェントは、AI自身がプロセスを検討しツールを使って自律的にタスクを実行します。ユーザーが細かくタスクを入力して指示する必要がなく、自分でタスクを管理して実行する点に違いがあります。

AIエージェントの登場により、自動化があまり進んでいなかった事務系の職種で効率化が大きく進むと期待されています。

-AI法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」にも、AIエージェントが搭載されています。もともと、どのようなコンセプトで計画がスタートしたのでしょうか。

私たちは2022年の年末に、ユーザーの「聞く力」に頼らないAI法務プラットフォームを開発しようと、LegalOn Cloudの構想を始めました。

通常、法務担当者が何らかの案件に対応する際、その論点を洗い出すためには、過去の類似案件の調査や各所への確認が必要です。しかしそのためには、案件に関連する知識を持っていることが必要です。類似案件に心当たりがなければ、探すための糸口がありませんし、各所への確認にしても、予備知識がなければどこに確認をすれば良いのか見当もつかないためです。

法務担当者の業務が多岐にわたるなか、案件について情報を集めようとしても、今までの経験の範囲内でしか集められない。そんな課題の解決が、LegalOn Cloudを開発するきっかけでした。

-改めて、LegalOn CloudのAIエージェントがタスクを実行する際の仕組みについて教えてください。

LegalOn Cloudでは、例えば、契約書のレビュー依頼を担当者がメールで受け取ったとき、メールと契約書の内容をそれぞれLegalOn CloudのAIエージェント「LegalOn AI Agents」が読み取って、それに関連する情報を紐付けます。

そして、レビューに必要な情報を、蓄積された情報「リーガルドキュメントグラフ」の中からレコメンドしてくれます。さらに、修正案も提示してくれるため、担当者はそれを見ながら修正方針を検討できます。レビュー担当者は、自分で契約書の山からデータを漁る必要がなく、すぐにレビューが始められます。

※リーガルドキュメントグラフ:LegalOn Cloudに蓄積された、契約書や法務相談への回答といったリーガルドキュメントを中心としたあらゆる関連情報[事例] プレイブック(自社契約基準)を用いた契約書の修正文案の提案

AIエージェントの提案をもとにした担当者による修正なども新たなナレッジとして、関連する情報と紐づけて保存され、次の案件対応時に役立ちます。このように、日々の業務を行ううちに自然と関連する情報が蓄積されます。

将来の構想として、新たに契約書を作成したい場合には、LegalOn AI Agentsが依頼者に質問しながら、必要な契約情報を収集、その情報をもとに既存の契約書のひな形を選択し、自社基準や質問への回答に合わせてアレンジを加え、依頼者にドラフトを提供する、といったことも構想しています。

[事例] 依頼者とコミュニケーションをとり、契約書ドラフト版を提案

これまでのリーガルテックでは、法務担当者がシステムにさまざまな情報を入力する必要がありましたが、LegalOn AI Agentsによって、法務担当者はまるで、もう一人の法務担当者にタスクをお願いするかのようなユーザー体験になります。

常に最新のナレッジで法務に取り組む

-AIエージェントによって、法務の業務は今後どのように変わっていくでしょうか。

法務の業務プロセスは、従来から大きく変化します。

最新のナレッジをAIエージェントがいつでも活用できるようになるため、「調べる」という行為自体が必要なくなるでしょう。

「案件管理」「契約書レビュー」「契約書管理」といった一連の業務は、その業務のあり方自体が変わる可能性があります。「今までの仕事を効率化しよう」などと既存業務の枠にとらわれてしまうと、AIエージェントを使いこなせないかもしれません。AIエージェントを使うことを前提に、業務を見直す必要があります。

そもそも、一つのリーガルテックの枠にとらわれる必要もなく、さまざまなコミュニケーションアプリや業務アプリ、自社開発のアプリと連携してタスクを行うことも考えられますし、別のAIエージェントがLegalOn Cloudを動かすという未来もあるかもしれません。

ナレッジを学習させる環境整備がカギ

-今後、AIエージェントを搭載したリーガルテックが増加すると思われます。どのような点が性能を分けるカギになるでしょうか。

AIエージェントがナレッジを学習する環境をいかに整備できるか、でしょうか。いくら頭が良くても、学習材料が悪ければ意味がありません。

また、調べて分かるような万人が参照できる一般的なナレッジよりも、自社のナレッジを学習することが重要です。

法務関連の情報には、契約書の内容や関連のやり取り、社内規程、株主総会の議事録などさまざまなものがありますが、最も多くの情報がやり取りされているのは日々の法務相談です。

事業部からの相談への法務の一次回答、さらに質問が来たら二次、三次・・・となって最終的に完結しますが、結論が出たとしても、書類や口頭でやり取りされた過程を結論として体系的にまとめることは、ほとんどの現場でできていないでしょう。

しかし、こうした埋もれたナレッジこそAIエージェントが学習するべきことです。これをAIエージェントにナレッジとして学習させることで、その企業の独自の判断をAIエージェントが再現することができます。

-谷口さんが語る機能は、LegalOn Cloudにいつ頃実装できますか。

これまで多くの企業の法務を支援してきた当社には、ユーザーの行動データから「法務ナレッジをどのように取得するか」についてのノウハウがあるうえ、AI担当役員(Chief AI Officer)をはじめAI技術を駆使したプロダクト開発を推進する専門部隊があります。

今後2年以内に、こうした機能の実装を目指したいと考えています。インタビューに答える谷口CPO

守りを任せ、「攻めの法務」に集中へ

-AIエージェントによって、法務機能の役割はどのように変わるでしょうか

いわゆる「守りの法務」が効率化され、「攻めの法務」へ集中することができます。

法務組織では人材不足が深刻です。そんな中で、現場から法務相談や契約書レビュー依頼が山ほどくる。あらゆる「守りの法務」に追われています。企業をリスクから守るのに手一杯で、創造的な仕事まで手が回らない、という担当者の方の声を多く聞きます。

しかしAIエージェントがあれば、過去のナレッジを生かすことのできる法務相談への対応や契約書レビューといった「守りの法務」の大半は手を離れ、法務担当者は、攻めの法務に時間を割くことができるようになります。

たとえば、事業部の会議に常に出席し、経営層や事業部と一体になって新規ビジネスを創出したり、会社の将来を左右するような経営戦略の立案に法的立場から関わる、といった法務担当者にしかできないクリエイティブな仕事に集中することができるようになるでしょう。

-一方で、法務初心者の場合、攻めの役割を求められても、すぐには対応が難しいのではないでしょうか。そういう方にとってAIエージェントは仕事を奪うものになるのでしょうか。

「一年目の法務担当者でも、配属された初日から、過去のナレッジを活用することでかつてのベテラン法務のような仕事ができる」と考えた方が良いでしょう。新人法務の方でも、過去のナレッジを使って多様な案件に対応できるようになります。

むしろ、指示通りに行う必要があり、必ずしも生産性が高いとは言えないこれまでの仕事から解放され、本来あるべきだった場所で持てる力を思う存分に発揮することができるようになるのではないでしょうか。

-AIエージェントにより、法務担当者の活躍の幅がより広がることが分かりました。ありがとうございました。


濱田 祥太郎(はまだ・しょうたろう)
執筆

濱田 祥太郎(はまだ・しょうたろう)

LegalOn Technologies 編集部

中央大学法学部卒、全国紙の新聞記者に4年半従事。奈良県、佐賀県で事件や事故、行政やスポーツと幅広く取材。東京本社では宇宙探査や宇宙ビジネスを担当。その後出版社やITベンチャー、Webメディアの編集者を経て2022年LegalOn Technologies入社し、NobishiroHômuの編集を担当。

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