取締役会とは何か
はじめに、取締役会とは何か概要を解説するとともに、取締役会の構成や役割、設置会社と非設置会社の違いまで紹介します。
取締役会とは
取締役会は、株式会社の業務執行に関わる意思決定が行われる機関です。経営方針の決定や代表取締役の選任など、会社における重要事項を決定する役割を担います。
最低でも3か月に1回、年に4回以上は開催する必要がありますが、頻度さえ守っていれば開催のタイミングは問いません。
取締役会の構成と役割
取締役会の構成と役割は以下の通りです。
取締役会の構成
取締役会は、基本的に社長(代表取締役)を含む3名以上の取締役で構成され、監査役が1名以上参加して取締役会の開催をチェックします。
取締役会の役割
会社法第362条2項によれば、取締役会の役割は次の通りとされています。
- 取締役会設置会社の業務執行の決定
- 取締役の職務の執行の監督
- 代表取締役の選定及び解職
上記の通り、会社法によって定められている取締役会の職務は、取締役の職務執行の監督、ならびに代表取締役の選定・解任などです。
取締役会設置会社と非設置会社の違い
取締役会設置会社と非設置会社には次のような違いがあります。
組織構成の違い
取締役会設置会社では、最低4名の役員(取締役3名以上と監査役1名以上)が必要です。一方で非設置会社では、取締役1名のみでも運営できます。
意思決定方法
取締役会設置会社では、取締役会で業務執行が決定されます。また、執行権限を有するのは代表取締役や取締役会により選定された取締役です。
一方で非設置会社では、取締役の過半数による多数決で決定され、執行権限は各取締役が持ちます。
株主総会の権限
取締役会非設置会社では、株主総会においてあらゆる事項を決定できます。一方で取締役会設置会社では、株主総会の権限が限定されており、決議できるのは法定事項や定款に定められた事項のみです。
会社法における取締役会の定め
ここからは、会社法における取締役会の定めについて解説します。
会社法の改正と取締役会の設置
2006年に施行された会社法改正によって、取締役会の設置は義務ではなく、会社の自由意志に委ねられています。そのため、株式会社であっても取締役1名のみで存続が可能となりました。
しかし、取締役会の設置が義務付けられている場合もあるため注意が必要です。次に該当する場合、取締役会の設置が義務とされています。
- 公開会社
- 監査役会設置会社
- 監査等委員会設置会社
- 指名委員会等設置会社
上記に該当しない株式会社であれば、取締役1名で会社を設立可能です。しかし、取締役会を設置する場合は、上記の会社と同様に3名以上の取締役と1名以上の監査役を専任しなければなりません。
一方、株式の譲渡に制限のある非公開会社で取締役会を設置する場合、監査役ではなく会計参与を設置することも可能です。
取締役会の決議プロセスと要件
会社法上、次の条件のとおり、取締役の過半数が出席し、一同に会することによって決議が行われることを原則としています。
なお、定款により、次の条件を加重することは可能ですが、緩和することはできません。また、定款の定めにより、書面決議も認められています。
- 議決権のある取締役の過半数が出席する
- 出席した取締役の過半数が賛成する
また、決議プロセスは、原則として、以下の通りです。
- 議決に加わることが可能な取締役の過半数が出席した上で、決議事項について議案を審議する
- 決議を行い、上記1の取締役の過半数が賛成する
- 取締役会議事録を作成して保存する
取締役会の進行方法については、こちらの「取締役会の流れ」からご確認ください。
取締役会規則とは
取締役会規則とは、取締役会の運営や決議事項に関する内容をまとめた、会社の内部規則です。会社法で作成が義務付けられているわけではないものの、作成しておくことでルールを明文化でき、取締役の開催時に会社法や定款を確認する必要がなくなります。
取締役会の決議事項とその影響
ここからは、取締役会の決議事項とその影響について解説します。
取締役会決議事項の範囲
会社法第362条2項によれば、取締役会の役割は「取締役会設置会社の業務執行の決定」・「取締役の職務の執行の監督」・「代表取締役の選定及び解職」の3つです。その中でも、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定については、取締役に委任できず、必ず取締役会で決定しなければなりません。
- 重要な財産の処分及び譲受け
- 多額の借財
- 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
- 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
- 第676条第1号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
- 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
- 第426条第1項の規定による定款の定めに基づく第423条第1項の責任の免除
また、種類株式の内容(会社法108条3項)や株式の譲渡承認(会社法139条1項)、市場取引等による自己株式の取得(会社法165条3項)など、会社法において個別に取締役会決議事項が定められている事項もあります。
決議に瑕疵がある場合の対応
株主総会決議は訴えによってその瑕疵を争うことができますが、取締役会の決議に瑕疵があった場合には、特別の訴えに関する制度がありません。そのため、瑕疵がある決議は、いつでも・誰からでも・どのような方法であっても決議の無効を主張できます。
取締役会の決議に瑕疵があるとされる例は、次の通りです。
- 決議内容が法令・定款に反していた
- 招集通知期間が不足していた
- 取締役への招集通知に漏れがあった
- 監査役への通知が漏れていた
- 議決権のある取締役の過半数が出席していなかった
- 審議が十分に行われていなかった
- 特別利害関係を有する取締役の参加によって決議が成立した
しかし、上記に該当するような瑕疵が見られた場合にも、瑕疵の内容によっては決議が有効と判断されます。
例えば、2017年の「ロッテホールディングス取締役会決議無効確認等請求事件」の判決においては、招集手続に瑕疵があることが認められた一方で、その瑕疵による決議結果への影響は見られないことから、決議は有効であると判断されました。
上記のように特別な事情がある場合を除き、招集方法や決議内容などに瑕疵があると、原則として決議は無効となります。
取締役会の流れ
ここからは、取締役会の流れを3つのステップに分けて解説します。
取締役会を招集する
取締役会を開催する際は、各取締役によって招集が行われます。定款や取締役会において、その役目を担う取締役が定められている場合には、その内容に従わなければなりません。
招集する際は、「取締役会を招集する者は、取締役会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各取締役(監査役設置会社にあっては、各取締役及び各監査役)に対してその通知を発しなければならない。(会社法第368条)」
との定めにしたがい、原則として、一週間前までには招集通知を出す必要があります。
また、取締役全員からの同意を得ることで、招集通知がなくとも開催可能です。
開催場所についてはオフライン・オンラインを問わないため、オンラインミーティングツールによる取締役会も開催できます。
議事進行・決議を行う
取締役会では、まず、議決に加わることができる出席取締役が過半数以上(定款により加重可能)であることを確認し、確認が取れたら議題についての質疑応答や審議が行われます。
取締役会の議長については法令で定めがないため、もしも定めたい場合には定款や取締役会規程にてその旨を記してください。議事進行自体にも特別なルールが設けられていないため、基本的な会議の進行と変わりはないでしょう。
取締役会の決議においては、議決に加わることができる出席取締役の過半数(定款により加重可能)からの賛同が必要です。
特別利害関係人である取締役は、その決議に参加できないため注意してください。
また、書面決議が可能であることを定款で定めている場合、取締役会を開かずとも書面決議が可能です。
議事録の作成・保存
取締役会では議事録を作成し、出席した取締役や監査役は署名、あるいは記名押印が求められます。作成された議事録は、取締役会の日から10年にわたって会社の本店で保存しなければなりません。
また、議事録に記載すべき内容は会社法施行規則の第101条にて定められています。その内容は多岐にわたりますが、いくつか例をあげると以下の通りです。
- 取締役会が開催された日時及び場所
- 取締役会の議事の経過の要領及びその結果
- 決議を要する事項について特別の利害関係を有する取締役があるときは、当該取締役の氏名
- 取締役会に出席した執行役、会計参与、会計監査人又は株主の氏名又は名称
- 取締役会の議長が存するときは、議長の氏名
上記のような規則に沿った内容を記載し、適切に保管する必要があります。
取締役会事務局とは
取締役会を開催する際、各取締役が一から運営を担うのは困難です。そのため、取締役会事務局を設置し、取締役会が円滑に行われるよう支援する必要があります。
具体的には、次のような業務を取締役会事務局が担います。
- 取締役会の年間スケジュールの作成
- 招集通知の作成
- 当日のタイムテーブル作成や管理
- 取締役会資料の発信
- 議事録の作成や保管
どの部門が事務局となるかは定められていませんが、会社法に関する知識が必要とされるため、事務局には会社法をはじめとする法律知識が求められます。
まとめ
取締役会を設置する場合は、少なくとも3か月に1度の頻度で開催し、業務執行状況を報告する必要があります。招集・開催・議事録の作成までをスムーズに行うには、取締役会事務局によるサポートが欠かせません。会社法を適切に把握・遵守し、瑕疵のない取締役会を実現してください。
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