発注書を電子化するには
発注書の電子化には、関連法令の理解が重要です。要件を満たし、適切に管理することで、電子化された発注書は、法的に有効な書類となります。
まずは発注書の電子化の、法的な扱いを見ていきましょう。
電子化した発注書に法的効力を持たせるポイント
電子化した発注書も、紙の発注書と同様に法的効力を持たせることができます。そのためには、電子文書の作成者や内容の非改ざん性を証明することが特に重要となります。
例えば電子署名法3条では、「(電子文書に)本人による電子署名が行われているときは、真正に成立したものと推定する。」と定められており、適法な電子署名が文書の作成者を証明する証拠となることを示しています。
さらに、発注書の電子化においては、税法上の要請として電子帳簿保存法の定める要件を満たした保存を行う必要があります。同法は保存したデータの真実性(改ざん防止など)および可視性(検索性の確保など)を確保するための措置を求めており、具体的には、「電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け」「見読可能装置の備付け等」「検索機能の確保」の3つに加え、以下のいずれかを行うことが定められています。
- タイムスタンプが付された後の授受
- 授受後遅滞なくタイムスタンプを付す
- データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用
- 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け(引用:国税庁 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07denshi/02.htm)
つまり、発注書を電子化するにあたっては、まず電子署名等により文書の作成者を明確にし、非改ざん性を確保する必要があります。加えて、税務調査等に備えるため、電子帳簿保存法の定める保存要件を遵守する必要があります。これら二つの法令に従った対応をすることが、電子化を適切に進める上で不可欠です。
発注書の電子化では「電子帳簿保存法」に留意する
発注書の電子化に関する電子帳簿保存法の規定を、さらに詳しく解説します。
電子帳簿保存法は国税関係帳簿書類を、電子データで保存する際のルールを定めたものです。発注書についても、国税関係書類に該当する場合には同法に定められた保存要件を満たす必要があります。
電子帳簿保存法では、取引の形態に応じて、以下のいずれかの方法で保存することが求められます。
- 電子取引データの保存(義務)
- スキャナ保存・電子帳簿等保存(任意)
電子取引データの保存とは、最初から電子データとして授受されたものを電子データのまま保存する方法です。メールで受け取った発注書のPDFや、オンラインシステムからダウンロードした発注データなど、電子取引にあたる文書については、印刷したものではなく、そのまま保存することが義務付けられています。
また紙の発注書を受け取った場合でも、スキャナで読み取って電子化することが認められています(スキャナ保存)。また、パソコン等で作成した発注書を電子データのまま保存することも認められています(電子帳簿等保存)。しかしこれらの場合にも、電子帳簿保存法で定められた要件を満たす必要があります。要件を満たさないスキャンデータは、電子帳簿保存法の要件を満たしたものとは認められません。
各要件は、後ほど詳しく解説します。
「データを印刷した紙」での保存はできない
電子帳簿保存法では、電子データとして受け取った発注書を印刷して紙で保存することは認められていません。2021年の法改正で、電子取引データは電子データのままでの保存が義務付けられました。ウェブ上で発行された発注書を、印刷して紙の資料として保管することはできません。
もちろん業務上の確認で印刷したもの使用するのはかまいませんが、法的に有効な書類として活用するためには、受領したデータそのものを保管する必要があります。
発注書を電子化する3つの方法
発注書を電子化するには、電子データでのやり取りやスキャンによる保管のほか、システムを利用する方法もあります。企業の状況や取引先との関係性に応じて最適な方法を選択することが大切です。
ここでは各方法の特徴や、要件を解説します。
電子データとして作成・保存
発注書を電子化する最も基本的な方法は、初めから電子データとして作成し、そのまま保存する方法です。PDFなどの形式で保存した発注書を、メールやビジネスチャット上でやりとりします。発注書のペーパーレス化が図れ、受け取った側が再度データ入力する手間も省けるのがメリットです。
また最初から電子データとして管理するので、保管も容易で、あとから検索して確認するときにも便利です。
ただし情報の漏えいを防ぐため、セキュリティ対策の整備が必要です。電子データは自社の業務システムやクラウドストレージなどに保存し、担当者以外のアクセスを制限できる仕組みを整えてください。さらに電子帳簿保存法の要件を満たすため、検索機能の確保や改ざん防止措置も必要です。
紙の発注書をスキャンして保存
既存の紙の発注書や取引先から紙で届いた発注書は、スキャナで読み取って電子化することができます。使用するスキャナは、以下の要件を満たしたもののみです。
- 解像度200dpi(A4サイズで約 387 万画素相当)以上による読み取りができること
- 色調256階調以上(24ビットカラー)であること
(参考:国税庁 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/03_2.pdf)
なおスマホやデジカメで撮った写真を、データで保管することも可能です。そのほか、スキャナ保存の主な要件は以下のとおりです。
- 入力期間の制限
- 一定水準以上の解像度及びカラー画像による読み取り
- タイムスタンプの付与
- 読取情報の保存
- ヴァージョン管理
- 入力者等情報の確認
- 帳簿との相互関連性の確保
- 見読可能装置
- 電子計算機処理システム
- 検索機能の確保
(参考:国税庁 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0018004-061_02.pdf)
受領後は記録事項を入力するほか、読み取り時の大きさ等の情報を保存したり、ディスプレイやプリンターを用意したりする必要があります。
電子契約システムを利用
より容易に、簡単に発注書の電子化を行いたいときは、電子契約システムを活用する方法もあります。電子契約システムとは、電子上で作成した契約書や発注書などの文書を、送付・承認・締結まで一括して行えるクラウドサービスです。
電子契約では、発注書の作成から承認、送付、受領確認まで全てのプロセスがオンライン上で完結します。電子契約システムを使えば、締結作業がスムーズに行えるのです。
電子署名やタイムスタンプなどの機能も標準で備わっていることが多く、法的要件を満たした安全な電子化が実現できます。また承認ワークフローも電子化されるため、承認プロセスの迅速化や可視化にも役立ちます。
発注プロセス全体を電子化したい場合や、発注業務の大幅な効率化を図りたい場合に効果的な方法です。
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発注書を電子化するメリット
発注書を電子化すると、企業にはさまざまなメリットがあります。ペーパーレスになるだけでなく、業務プロセス全体の効率化や経営管理の向上につながるからです。
ここでは発注書の電子化による、主なメリットは、以下の3つです。
- コスト削減と業務効率化が実現できる
- データ検索が容易になる
- テレワークでも円滑な発注業務が可能になる
詳しく見ていきましょう。
コスト削減と業務効率化が実現できる
発注書を電子化すると、コストが削減されます。紙や印刷にかかる直接的なコストはもちろん、保管や管理にかかる間接的なコストも削減できるのです。
さらに業務効率化の面でも、大きなメリットがあります。紙の発注書では発行から送付・承認・保管までの各プロセスで人手による作業が必要でした。電子化することでこれらの作業が自動化され、発注業務にかかる時間を短縮できます。
会計処理もすべてデータ上で作業ができるので、担当者の負担が減るのもメリットのひとつです。
データ検索が容易になる
電子化された発注書は、紙の書類よりも検索性に優れています。「特定の取引先への発注履歴を確認したい」「特定期間の発注総額を集計したい」といった場合でも、キーワードや日付で瞬時に検索可能です。こうした利便性は、日常の業務効率化だけでなく、監査対応や取引先からの問い合わせ対応でも発揮されます。
またペーパーレス化によって物理的な資料がなくなるので、保管スペースも削減されることもメリットです。発注書は法人税法上、原則として7年、事業に関する重要な資料に該当すると考えられる場合は10年間の法定保存期間が定められています。電子化することで、長期保存によるオフィススペースの逼迫という問題も回避することが可能です。
テレワークでも円滑な発注業務が可能になる
近年はオフィスに出社しなくとも、業務を遂行できる環境整備が重視されています。発注書が電子化されていれば、場所を選ばず発注業務が可能です。オフィスにある紙の発注書を確認するために出社する必要がなく、自宅やサテライトオフィスから必要な発注処理を完結させられます。
また承認プロセスもオンライン上で完結するため、承認者が会社にいないときでも、承認作業が滞りません。発注業務の滞留を防ぎ、業務のスピードを維持することができるのです。
さらに発注書が電子化されていれば、発注状況がリアルタイムで可視化されます。社内の情報共有が促進され、部門間の連携強化にもつながります。
発注書を電子化する際の注意点
発注書の電子化をスムーズに移行するためには、いくつかの注意点があります。適切な準備と対策がないと、かえって業務の混乱を招いたり、法的なリスクを生じさせたりするかもしれません。
発注書電子化を成功させるための注意点は、以下の3つです。
- セキュリティ対策を整える
- 社内周知と教育を行う
- 取引先との連携方法を事前に確認しておく
詳しく見ていきましょう。
セキュリティ対策を整える
発注書には取引先情報や金額など、企業にとって重要な情報が含まれています。電子化する際には、適切なセキュリティ対策が不可欠です。
まずはデータへのアクセス制限を行います。発注業務に関わる担当者だけがデータにアクセスできるよう、IDとパスワードによる認証やアクセス権限の設定を行うのがおすすめです。
またデータの暗号化も重要です。特にクラウドサービスを利用する場合は、通信経路の暗号化やデータ保存時の暗号化が行われているかを確認してください。さらに定期的なバックアップをすることで、システム障害や不正アクセスによるデータ消失リスクに備えられます。
セキュリティポリシーの策定も、併せて検討してください。
社内周知と教育を行う
発注書の電子化では、実際に利用する従業員の理解と協力も重要になります。最初に電子化の目的やメリットを明確に説明し、なぜこの変更が必要なのか、従業員の理解を深めてください。
具体的な操作方法や新しい業務フローについての教育も必要です。マニュアルの作成や研修とあわせ、トラブル時の窓口も用意すると安心です。
特に移行期間中は、迅速に対応できる体制を整えましょう。一部の部署や取引先から試験的に始めるなど、段階的なアプローチも効果的です。
取引先との連携方法を事前に確認しておく
発注書の電子化は、取引先との関係にも大きく影響します。特に電子契約システムの導入の際は、事前の調整が欠かせません。取引先の電子化対応状況を確認し、必要に応じて、体制変更のための協議を行います。
また電子化後のデータ形式や送受信方法についても合意を取ってください。
移行期間中は紙と電子の両方に対応するハイブリッドな運用が必要になるケースも想定されます。柔軟に対応し、混乱のないよう変更を進めてください。
まとめ
発注書の電子化は業務効率化やコスト削減、検索性の向上、テレワーク対応など多くのメリットをもたらします。実施にあたっては「電子帳簿保存法」の要件を理解し、適切な方法で保存することが重要です。電子データをそのまま保存する、紙の発注書をスキャンする、電子契約システムを導入するなど、取引の形態に応じて適切な保存方法を選択することが求められます。また、セキュリティ対策の整備、社内教育の実施、取引先との連携方法の確認も重要です。
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