発注書の電子化とは
発注書の電子化とは、従来紙でやり取りしていた発注書を、PDFやExcel、専用システムなどを使って電子データで作成・送付・保存・管理することを指します。これにより、印刷や郵送といった物理的な作業が不要となり、業務の効率化やコスト削減が可能になります。
なぜ今、発注書を電子化する企業が増えているのか
近年、多くの企業が発注書の電子化に踏み切っています。本章では、発注書電子化の流れが加速している主な理由を2つの観点から解説します。
電子取引データの保存が法律で義務化されたため
電子帳簿保存法の改正により、発注書をはじめとする電子取引データはすべての事業者にとって「電子のまま保存すること」が義務となりました。2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法では、メール添付のPDFやWebダウンロード形式の取引書類は、紙出力ではなく電子形式のまま保存しなければなりません。
(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)第七条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。
出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 第7条|法令検索e-Gov
また、2024年1月1日からはこの保存義務がすべての事業者に完全適用されました。義務や優遇の対象となる電子データは、以下のとおりです。
- メール添付で受け取るPDF請求書・発注書
- ECサイトからダウンロードした領収書・納品書
- 電子契約サービス上で交わされる取引書類
- クラウド上で共有・送信される電子ファイル
発注書を含む電子取引データの電子保存は、選択肢ではなく義務です。電子帳簿保存法への対応は、コンプライアンス対策にとどまらず、生産性向上や経営の高度化への第一歩となります。
テレワークやDX推進の後押しにもつながる
発注書の電子化は、業務効率化やテレワークの推進に役立つ手段として、多くの企業で導入が進んでいます。紙の発注書は、印刷・送付・保管に手間がかかっていましたが、電子化により作成から送付から検索までをオンラインで一元管理でき、業務効率が大きく向上します。
企業が電子化によって得られる主な効果は、以下のとおりです。
- 発注書の印刷や郵送が不要になり、コスト削減につながる
- システム上での発行・承認・保存により、作業ミスや紛失リスクを軽減
- テレワーク環境でも書類管理や承認が可能になり、業務を止めない体制を構築できる
- 電子帳簿保存法への対応がしやすくなり、法令遵守を強化できる
発注書の電子化は、テレワークやペーパーレス化を進めるだけでなく、業務効率化と法令対応を両立できる重要な取り組みといえるでしょう。
発注書を電子化する3つの方法
発注書の電子化を進める方法には、企業の業務体制や取引先との関係性に応じて、いくつかの選択肢があります。本章では、実務でよく使われている3つの方法を紹介し、それぞれの特徴やメリット・注意点を解説します。
- 電子データとして作成・保存
- 紙の発注書をスキャンして保存
- 電子契約サービスの活用
1.電子データとして作成・保存
発注書の電子化を進めるうえで最も基本となるのが、電子データとして作成し、そのまま保存・管理する方法です。紙でのやりとりに比べて、ペーパーレス化によるコスト削減や、入力・保管・検索などの業務の効率化が図れます。
電子データで保存すべき発注書のパターンは、以下のとおりです。
- 自社で電子データを作成し、紙で送付した場合(紙・電子どちらでも保存可能)
- 自社で電子データを作成し、電子で送付した場合(電子保存が必須 ※紙に出力しての保存は認められません。)
- 取引先から電子データで受領した場合(電子保存が必須 ※紙に出力しての保存は認められません。)
- 取引先から紙で受領した場合(紙・電子どちらでも保存可能)
電子で作成・保存する方法は、ペーパーレスと業務効率化を両立させながら、電子帳簿保存法にも対応できる実践的な選択肢です。保存時には、検索性や改ざん防止措置など、法的要件を満たす体制の整備も忘れずにおこないましょう。
2.紙の発注書をスキャンして保存
紙で受け取った発注書も、電子帳簿保存法の要件を満たせばスキャンによる電子保存が可能です。紙を無駄にせず、現実的なペーパーレス化を進められる手段として、多くの企業で導入が進んでいます。
注文書は電子帳簿保存法における「一般書類」に分類されるため、他の帳票に比べてスキャナ保存の要件は比較的緩やかです。
満たすべき【スキャナ保存要件】
紙の発注書をスキャンして保存する際は、以下のスキャナ保存要件を満たす必要があります。
- 解像度とスキャン形式
- 解像度200dpi以上でスキャン
- グレースケールや白黒階調でも可(カラー対応も可能)
- 保存日時の記録
- 保存日時が確認できる状態で保存
- タイムスタンプまたは入力日時が分かる手段を確保
- 検索機能の確保
- 日付、金額、取引先などで検索できる機能を備える
- 見読可能性
- モニターやプリンタで明瞭に表示・印刷できる状態にしておく
- 編集・削除の履歴管理
- 訂正・削除の履歴を確認できる仕組み、または編集できないシステムを使用
- 帳簿との関連性の確保
- スキャンデータと関連帳簿との紐づけを行い、相互に関連性を確認できるようにする
- 社内の手続書類の整備
- スキャン方法や保存責任者などを社内文書で明確化する
スキャナ保存を安全に運用するためには、各要件を正確に把握し、業務に反映する体制づくりが欠かせません。
スマートフォンやカメラで撮影する場合
スキャナがない場合でも、スマートフォンやデジカメを使ってスキャン保存は可能です。しかし、単に画像を撮って保存するだけでは不十分で、次のような対応が求められます。
- スキャン後、保存日時が明確に記録されている
- 取引年月日・金額・取引先などで検索できる状態にする
- 訂正や削除ができない、または履歴が残るシステムを使用する
- 国税庁が示す要件を満たした保存システムにデータを保管する
スキャナ保存を取り入れる際は、システムの整備と業務フローの見直しが重要です。受領後は、記録事項の入力や検索性の確保、画像サイズ・階調などの法的要件への対応が求められます。
参考:国税庁|はじめませんか、書類のスキャナ保存
OCRソフトを活用してデータ化する場合
OCR(Optical Character Recognition)とは、スキャン画像や写真から文字情報を読み取り、テキストデータとして自動変換する技術です。手書きや印字された注文書をデータ化できるため、データ入力や検索作業の効率化に役立ちます。
OCRのメリット
- スキャン画像や写真から文字を読み取り、自動でテキストデータに変換できる
- 手入力の作業を減らせるため、業務効率が向上する
- データ化によって検索性が向上し、情報管理がしやすくなる
OCR利用時の注意点
- 手書き文字が乱雑だったり、用紙の状態によっては誤認識が発生することがある
- 読み違いが発注ミスや処理ミスにつながるリスクがある
- OCRソフトの導入や運用には一定のコストがかかる
OCRの精度を安定させるには、帳票フォーマットの統一や、読み取り後のチェック体制を整えるのが重要です。業務の正確性と効率を両立させるためにも、導入前の十分な検討と準備が求められます。
<関連記事>電子帳簿保存法が定める納品書の保存方法は?保存期間など詳しく解説
3.電子契約サービスの活用
発注書の電子化をより効率的かつ安全に進めたい場合は、電子契約サービスの活用がおすすめです。電子契約システムを使えば、発注書の作成から承認、送付、受領確認、保存までをすべてオンラインで一括管理できます。
電子契約サービスを利用することで得られる主なメリットは、以下のとおりです。
- 発注書の作成・締結・保存までをクラウドで完結できる
- 電子署名・タイムスタンプにより改ざん防止と法的信頼性を確保
- 承認フローの電子化で業務スピードが向上
- 契約履歴や記録を自動管理できるため、トレーサビリティが強化される
- テレワーク下でも即時アクセス・確認が可能
電子契約サービスは、単なるペーパーレス化にとどまらず、業務効率・コンプライアンス・リスク管理のすべてに貢献する手段です。導入を検討する際は、サポート体制が整ったサービスを選ぶことも重要です。必要に応じて事前に相談窓口を活用しましょう
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発注書を電子化する6つのメリット
発注書を電子化することで、単なるペーパーレス化にとどまらず、さまざまなメリットが得られます。本章では、発注書を電子化することで企業にもたらされる主な6つのメリットをご紹介します。
- コストを削減できる
- 業務を効率化できる
- テレワークに対応しやすくなる
- 情報漏えいや紛失リスクを防ぐ
- 検索や履歴の管理がしやすくなる
- 紙の使用量を減らし、環境保全に貢献できる
1.コストを削減できる
発注書を電子化すると、印刷・郵送・保管にかかるコストを大幅に削減可能です。紙の発注書では、内容に誤りがあれば修正や再発行が必要となり、そのたびに印刷費・封入作業・郵送費が発生します。
発注書を電子データとして作成・保存すると、以下のコスト削減が可能になります。
- 修正時もデータの差し替えのみで再印刷不要
- 郵送を廃止し、メールやクラウドで即時送信
- 書類保管用の資材やスペースが不要に
- 保管年数の長い業界でもストレージ上で一元管理できる
発注書の電子保存は、業務の効率化だけでなく、無駄な支出を抑える実践的なコスト対策にもつながるでしょう。
2.業務を効率化できる
発注書の電子化は、手作業の工程を減らし、発注業務全体の効率を大幅に向上させます。確認・承認・保存などの流れがシームレスにつながるためです。
たとえば、PDF形式で発注書を発行してメールで送付すれば、印刷や郵送にかかる作業が不要になります。また、電子データとして保存することで、ファイリングの手間を省けるうえ、必要な書類をすぐに検索・確認可能です。
発注内容が業務システムと自動で連携されるため、仕入れや会計処理におけるデータ入力の手間やミスも減らせます。担当者の作業時間を大幅に短縮できるだけでなく、チェック体制の強化にもつながるでしょう。
発注書を電子データとして保存・管理すると、作業負担が軽減され、業務全体のスピードと正確性が向上します。
3.リモートワークに対応しやすくなる
発注書を電子化すると、場所に縛られずに発注業務を進められるため、リモートワークの推進にもつながります。紙の発注書では、印刷・押印・郵送などの処理のために出社が必要でしたが、電子化により、自宅や外出先からでも発注業務を完結可能です。
リモートワーク対応が可能になる例は、以下のとおりです。
- 発行から承認・送付までオンラインで完結し、押印のための出社が不要になる
- クラウド上のデータにより、どこからでも即時に確認・処理ができる
- 発注状況をリアルタイムで把握でき、部門間の連携が円滑になる
- 紙の管理が不要になり、探す手間や保管スペースを削減できる
- 出張中や外部とのやり取りもタイムラグなく対応できる
発注書の電子化は「リモートワークでも滞りなく業務を進めたい」という企業には、大きな業務改善と柔軟な働き方を実現するでしょう。
4.情報漏えいや紛失リスクを防ぐ
発注書を電子化すると、情報漏えいや紛失などのリスクの軽減ができます。紙の発注書は、保管場所によっては誰でも閲覧できたり、紛失したりするリスクがあるためです。担当者による管理の偏りや、保管ルールの不徹底によって、重要な情報が漏れる可能性もあります。
電子化された発注書は、パスワード管理やアクセス制限をかけられるため、第三者の閲覧や改ざんを防げます。また、クラウドサービスを活用すれば、ログ管理やバックアップも自動化されるため、万が一のトラブルにも対応しやすくなるでしょう。
発注書の電子化は、業務効率化だけでなく、企業の情報セキュリティ体制を強化する上でも大きな意味を持つといえます。
5.検索や履歴の管理がしやすくなる
発注書を電子化すると、検索や履歴の管理が格段にしやすくなります。紙の発注書は保管場所の確認やファイルを探す手間がかかり、履歴の照会にも時間がかかります。
一方、電子データであれば、必要な情報を取引先名や日付、キーワードなどで瞬時に検索可能です。具体的なメリットは、以下が挙げられます。
- 取引先別・期間別の発注履歴をすぐに確認できる
- 発注金額の集計や条件検索ができ、分析や報告書作成に役立つ
- 書類を探す手間や保存ミスを防げる
- 監査や内部統制の資料提出が簡易化できる
発注書の電子化は、「見える化」と「効率化」の両立を実現し、業務の信頼性とスピードを同時に高めてくれるでしょう。
6.紙の使用量を減らし、環境保全に貢献できる
発注書や注文書を電子化すると、紙の使用量を減らし、環境保全にもつながります。印刷や郵送、ファイリングなどの紙の書類管理が不要になるためです。
環境省の「第五次環境基本計画」でも、ペーパーレス化や働き方改革の推進は、企業の社会的責任として重視されており、環境と経済の両立が求められる時代です。
発注書の電子化によって得られる環境面での効果は、以下のとおりです。
- 発注書をデータで発行・保存
- 印刷用紙・インクの削減
- 郵送コストの削減
- 書類をクラウド上で送付・確認
- 出社不要となり、通勤・輸送によるCO2排出削減
- 紙の保管が不要になる
- 書類保管スペースが不要になり、省エネ効果も
電子化した発注書に法的効力を持たせるためのポイント
発注書を電子化する際には、単にデータとして保存するだけでは不十分です。本章では、電子化した発注書に法的効力を持たせるために押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。
電子署名と保存ルールで信頼性を証明する
電子署名によって文書の真正性を、保存措置によってデータの信頼性を確保することで、電子化した発注書も法的に有効な文書として扱えます。電子署名法3条では「本人による電子署名がある場合、その文書は真正に成立したと推定する」とされています。
つまり、発注書に適法な電子署名があれば、文書の作成者を証明できるとみなされるのです。また、電子化した発注書を保存するには、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。
この法律では、保存されるデータに対して以下の2点が求められます。
- 真実性(改ざんされていないこと)
- 可視性(あとから内容をすぐに検索・確認できること)
上記を確保するため、次のいずれかの対応が必要です。
- タイムスタンプの付与
- 授受後すぐに付与、または受領時に付与された状態で保存
- 訂正削除記録付きシステム
- 編集履歴が残るシステムや、改ざんできない環境の活用
- 内部規程の整備
- 訂正削除を防止するための社内ルールを明文化
電子署名と保存措置の両方を適切におこなうと、法的に信頼される電子発注書の運用が可能になります。
発注書の電子保存は「保存方法の選択」が重要
発注書を電子化する場合、「電子帳簿保存法」に沿った保存方法を取らなければ、税務上の証拠として認められない可能性があります。
電子帳簿保存法は、国税関係書類を電子データで保存するためのルールを定めた法律です。発注書も税務処理に関係する文書であるため、電子化した場合はこの法律の要件に従って保存する必要があります。
保存方法は取引形態に応じて大きく以下の3つに分かれます。
- 電子取引データの保存(義務)
- メールやWeb上で授受されたPDF・CSVなどの発注書データを、そのまま電子で保存
- スキャナ保存(任意)
- 紙の発注書をスキャンして保存
- 一定の要件を満たせば可
- 内部規程の整備(任意)
- パソコン等で作成した発注書を電子のまま保存
任意保存であっても、電子帳簿保存法の定める保存要件(改ざん防止や検索性など)を満たさなければ、正式な保存とはみなされません。
適切な保存方法を選び、電子帳簿保存法の要件を満たすことで、発注書の電子化を法的に有効なかたちで進められます。
「データを印刷した紙」での保存は認められない
発注書などの電子取引データを紙で保存することは、原則として法律で認められていません。2021年の電子帳簿保存法改正により、電子データで受領した帳票は、電子データのままで保存することが義務となりました。
電子取引に該当する発注書や見積書は、「紙での保存は例外的措置」であり、原則として電子データのまま保存しなければなりません。
発注書を電子化する際の注意点
発注書を電子化すれば多くのメリットが得られますが、導入・運用の過程で注意すべき点も少なくありません。本章では、発注書を電子化する際にあらかじめ押さえておきたい注意点を4つの観点から解説します。
電子帳簿保存法など最新の法制度に対応する
発注書の電子化を進めるには、電子帳簿保存法など関連制度の最新ルールを正しく理解し、適切に対応することが不可欠です。申請時期や運用方法によって適用される保存ルールが異なることから、条件を満たしていない場合、税務調査で不利益を受ける可能性があります。
制度改正における主な注意点は、以下のとおりです。
- 2024年1月〜:スキャナ保存の要件緩和(入力者情報・解像度・階調・大きさの保存義務を撤廃)
- 過去に申請(2022年4月1日以前):上記の緩和対象外となり、旧要件に従う必要あり
公布と施行にタイムラグがあるため、適用開始時期を都度確認する必要があります。発注書や関連書類の電子化を安全かつ合法的に進めるためには、「現在どの法規制が適用されているか」を都度確認する体制が重要です。
法改正に即した保存方法の見直しや業務フローの整備を怠らないようにしましょう。
業務フローや社内ルールを統一しておく
発注書の電子化をスムーズに進めるには、書類の管理方法や保存ルールなど、社内の業務フローをあらかじめ統一しておくのが重要です。ルールが不明確なまま進めると、ファイル名や保存場所がバラバラになり、検索しづらさやミスの原因になります。
実務でルール化しておくべき項目は、以下のとおりです。
- 書類のサイズ:A4に統一(スキャン設定を簡易化)
- ファイル名の付け方:「注文書_会社名_日付」のように命名ルールを設定
- フォルダ構成:年度・取引先ごとに分類し、アクセス性を向上
- 保存形式:PDF形式に統一(後から検索・保存しやすくするため)
複数人で対応する場合は、あらかじめ保存形式や管理ルールを標準化すると、効率化とトラブル防止につながります。発注書の電子化を社内に定着させるには、書類の扱い方や保存方法に関するルールを明確にし、全従業員に共有・徹底することが欠かせません。
セキュリティ対策を徹底する
発注書の電子化には、万全なセキュリティ対策が不可欠です。発注書には取引先情報や金額などの重要データが含まれており、不正アクセスや漏洩が起きれば信用失墜や損害リスクにつながります。
実施すべき主なセキュリティ対策は、以下のとおりです。
- アクセス制限の設定:
業務に関わる担当者のみに閲覧権限を付与し、ID・パスワードによる認証を実施する - データの暗号化:
通信経路の暗号化(SSLなど)や保存データの暗号化に対応したシステムを選定する - バックアップの実施:
サーバ障害やサイバー攻撃による消失リスクに備えて定期的にバックアップをおこなう - セキュリティポリシーの策定:
書類の取り扱いや操作ログの管理など社内ルールを明文化し、研修を通じて徹底する - セキュリティツールの導入:
ファイアウォールやウイルス対策ソフト、アクセス監視ツールを導入する
発注書の電子化を安全に進めるには、クラウドサービスやシステムの選定時からセキュリティ機能を重視し、社内ルールと運用体制を整えることが求められます。
取引先との連携方法を整えておく
発注書の電子化をスムーズに導入・運用するには、取引先との連携体制を事前に整えることが重要です。電子化の進行度や保存方法、発行形式などは企業ごとに異なるためです。
自社だけで電子化が進んでいても、取引先が紙書類中心の運用を続けている場合、対応にズレが生じ、書類の送受信や管理に支障をきたすおそれがあります。
取引先と連携を取る際に押さえておきたいポイントは、以下のとおりです。
- 取引先が電子契約システムや電子保存に対応しているかを事前に確認する
- 発注書・注文書の形式や送付方法をすり合わせる
- 移行期間中は、紙と電子のハイブリッド運用を想定し、混乱を防ぐ準備をしておく
- 取引先の事情に配慮し、自社も必要に応じて紙書類で発行するなど柔軟に対応する
発注書の電子化は業務効率化やコスト削減に効果的ですが、取引先とのすり合わせを怠ると業務が非効率になる可能性もあります。取引先の運用状況に寄り添いながら、丁寧に進めましょう。
発注書の保存期間を確認する
発注書の電子化を進める際には、事業形態に応じた保存期間を正しく理解し、遵守するのが重要です。これを怠ると、税務調査で不利益を被る恐れがあります。インボイス制度の開始やデジタル化の進展に伴い、法人・個人事業主を問わず、保存義務の重要性はますます高まっています。
保存期間は事業形態によって異なるため、以下の表で確認しておきましょう。
【法人の場合】
- 原則的な保存期間:
- 確定申告書の提出期限の翌日から7年間
- 例外・注意点:
- 青色申告で欠損金(赤字)を繰り越す場合は、10年間の保存が必要
【個人事業主の場合】
- 原則的な保存期間:
- 確定申告の期限の翌日から5年間
- 例外・注意点:
- 消費税の納税義務者(課税売上1,000万円超)の場合、7年間の保存が必要
- OCRで読み取ったデータやFAXの電子データも保存義務の対象
参考:国税庁|電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】
たとえば、WordやExcelで作成した注文書をFAX送信したあとも、PDFなどで保存し、電子帳簿保存法の要件(改ざん防止・検索機能など)を満たす形で保管する必要があります。
保存年数は5〜10年と幅があるため、自社の区分や課税状況に応じた保存対応が必須です。
発注書の電子化を進めて、業務をもっとスマートにしよう
発注書の電子化は業務効率化やコスト削減、検索性の向上、テレワーク対応など多くのメリットをもたらします。実施にあたっては「電子帳簿保存法」の要件を理解し、適切な方法で保存することが重要です。電子データをそのまま保存する、紙の発注書をスキャンする、電子契約システムを導入するなど、取引の形態に応じて適切な保存方法を選択することが求められます。また、セキュリティ対策の整備、社内教育の実施、取引先との連携方法の確認も重要です。
発注書の電子化は、契約書の電子化・管理と並行して行うことがおすすめです。LegalOnは、AIテクノロジーを駆使し、法務業務を広範囲かつ総合的に支援する法務AIです。電子化した発注書と契約書を紐付けて一元管理できるだけでなく、契約書管理だけ、など必要なサービスを選んで導入できるため、初めてリーガルテックの導入を検討する方にもおすすめです。