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偽装請負とは? 判断基準や違反した場合の罰則、回避方法を解説

偽装請負とは? 判断基準や違反した場合の罰則、回避方法を解説
この記事を読んでわかること
    • 偽装請負とはどのような行為で、偽装請負とされる判断基準は何か
    • 偽装請負は何が問題でどのようなリスクがあるのか
    • 偽装請負と判断された場合どのような罰則を受けるか
    • 偽装請負を回避するために注意すべき点は何か

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偽装請負とは、契約上は請負契約等でありながらも、その実態は労働者派遣に該当する状態を指します。

労働者派遣法や職業安定法、労働基準法に違反する行為とされており、発覚した場合には罰則を受けるだけでなく、会社としての信用も失墜してしまいかねません。

本記事では、偽装請負とは何か、何をもって偽装請負と判断されるのかを解説すると共に、法令違反により下される罰則や、偽装請負を回避するための方法まで解説します。

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偽装請負の定義と違法性 

はじめに、偽装請負とは何か、その違法性の詳細と共に解説します。

偽装請負とは 

偽装請負とは、契約上は請負契約等を結んでいるにも関わらず、その実態は労働者派遣に該当する状態を指します。

本来請負とは、「労働の結果としての仕事の完成を目的とするもの(民法第632条)」であり、発注者から受注者の労働者に対し直接指揮命令が下されることはありません。業務に関連する指揮命令を直接下すには、派遣契約を結ぶ必要があります。

請負契約等でありながらも、受注者の労働者に対する指揮や命令が生じている場合、それは偽装請負と呼ばれる違法行為です。偽装請負は、労働者派遣法や職業安定法、労働基準法に違反すると考えられます。

偽装請負の法的問題点 - 労働者派遣法・職業安定法・労働基準法の観点から 

偽装請負は何が問題なのか、労働者派遣法・職業安定法・労働基準法のそれぞれの観点から解説します。

偽装請負の法的問題点 - 労働者派遣法の観点から

労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保および派遣労働者の保護等に関する法律)では、特定の条件を満たし、厚生労働大臣より許可を得た事業者のみが労働者派遣事業を行えると定められています(労働者派遣法第5条)。しかし、偽装請負の場合、実態は派遣契約でありながら派遣労働事業を行う許可を得ていない場合も考えられます。その場合、無許可で派遣労働事業を行っていることとなり、違反行為に該当するのです。

偽装請負の法的問題点 - 職業安定法の観点から

職業安定法では、厚生労働大臣より許可を受けた労働組合など以外は、労働者供給事業を行ってはならないと定められています(職業安定法第44条)。偽装請負の場合、厚生労働大臣による許可なく労働者供給が行われているとみなされかねず、職業安定法違反として発注者・受注者共に罰則を受ける可能性があります。

偽装請負の法的問題点 - 労働基準法の観点から

労働基準法では、「何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない(労働基準法第6条)」としています。これは、中間搾取を禁止するための定めです。

この定めがあるため、受注者の労働者の業務実態が労働者派遣・労働者供給と同等であり、労働者の派遣元が労働者の派遣・供給によって利益を得ている場合、他人の就業への介入で利益を得ているとみなされ、労働基準法違反になります。また、発注者と受注者の労働者との間には実質的には雇用関係が生じ労働基準法が適用されますので、割増賃金の支払い等、発注者には「使用者」としての義務や責任が発生します。

偽装請負の判断基準 

何をもって偽装請負であると判断されるのか、指揮命令の実態・契約形態と実態の一致といった二つの観点から解説します。

指揮命令の実態 

偽装請負の判断基準として重要なのは、指揮命令の実態です。請負契約を締結している場合、発注者が受注者の労働者に対して直接指揮命令を行うことは原則として禁止されています。

そのため、業務に関する具体的な指示が下されている場合や、労働時間・勤務場所などが管理されている場合、指揮命令の実態が労働者派遣と同等とされ、偽装請負に該当すると判断される場合があります。

厚生労働省によると、偽装請負に該当する指揮命令の実態は、代表型・形式だけ責任者型・使用者不明型・一人請負型の4パターンに分けられます。

代表型

形式上は請負契約でありながら、発注者から受注者の労働者に対し細かな指示が出され、勤務時間の管理まで行われているパターンです。

形式だけ責任者型

現場の責任者が形式的なもので、その責任者が発注者の指示を個々の受注者の労働者へ伝えているだけで、実態としては発注者による指揮命令が行われているパターンです。

使用者不明型

使用者不明型は、誰に雇われているのか・誰が使用者なのかがわからないパターンです。業者Aから業者Bに発注された仕事が、そのまま業者Cへと発注され、業者Cの労働者が業者AやBの指揮命令のもと働くような例が該当します。

一人請負型

発注者・受注者間の契約を請負契約を偽装した上で、受注者とその労働者の雇用契約も個人事業主との請負契約等で偽装し、その実態として発注者の指揮命令のもとで労働者が働いているパターンです。

上記のように、請負契約等を締結しながらも発注者による指揮命令が下されていると判断される場合、偽装請負に該当します。

契約形態と実態の一致 

指揮命令の実態もその一部ではありますが、契約形態と実態が一致しているかという点も、偽装請負かどうかを判断する基準の一つです。

厚生労働省による「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」では、請負契約か否かの判断基準として、次の4点があげられています。これらの条件を全て満たさない限り、実質「労働者派遣」とみなされます。

  • 業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであること
  • 労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであること
  • 企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであること
  • 請負契約により請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること

契約形態が請負契約等であるにも関わらず、上記の基準を満たしていない場合、その契約実態は労働者派遣事業であると判断されます。契約形態と実態とが一致していないため、偽装請負に該当すると考えられるでしょう。

偽装請負によって生じるリスク 

偽装請負には、労働者が劣悪な条件で働かされることにより、中間搾取が発生する、雇用が安定しないなどの問題点があります。

ここからは、偽装請負の具体的な問題点やリスクについて解説します。

労働者が保護されず中間搾取が生じる 

偽装請負は、労働者派遣法や職業安定法、労働基準法の規制を逃れる抜け穴となる恐れがあります。そのため、労働者が適切に保護されず、不利益を被る可能性が高まります。

なかでもリスクが高いのが、中間搾取の発生です。労働基準法第6条では、他人の就業に介入し利益を得る中間搾取が禁止されています。しかし、偽装請負の状態ではこの規制が適用されません。そのため、労働者が不当に搾取される危険性が高まります。

偽装請負の状況下において、中間業者による中抜きが発生してしまえば、本来労働者に支払われるべき金額が支払われません。結果的に、労働者の生活を困窮に陥れると考えられるでしょう。

一方的な契約解除のリスクがある 

偽装請負の場合、発注者から受注者に対して一方的に契約解除するケースも考えられます。

雇用契約が結ばれている場合、使用者からの雇用契約の一方的な解除(=解雇)には法律上の制限が課されており、これにより労働者の保護が図られています。しかし、偽装請負で形式的に請負契約等が結ばれている場合、受注者が仕事を完成する前であれば、発注者は損害を賠償した上でいつでも契約を解除できるとされています(民法第641条)。そのため、偽装請負で仕事をさせた上で、一方的に辞めさせられるようなケースも考えられるでしょう。

偽装請負の具体的な罰則 

偽装請負と判断された場合、労働者派遣法や職業安定法、労働基準法に則って罰則が科せられます。

労働者派遣法における罰則

労働者派遣法の第59条では、第5条第1項の許可を受けないで労働者派遣事業を行った者、つまりは厚生労働大臣による許可を得ずに労働者派遣を行った事業者について、懲役1年以下もしくは100万円以下の罰金とすると定められています。

その他にも、行政指導(派遣法第48条第1項)や改善命令(同法第49条)、勧告(同法第49条の2第1項)、企業名の公表(同法第49条の2)などの対象になると考えられます。

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職業安定法における罰則

職業安定法の第64条では、第44条の規定に違反した者、つまりは労働者供給事業を厚生労働大臣の許可なく行った事業者について、懲役1年以下もしくは100万円以下の罰金とすると定められています。

労働者の供給元・供給先のどちらも罰則の対象となるため、偽装請負の発注者・受注者共に罰則を受ける可能性があります。

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労働基準法における罰則

労働基準法の第118条では、第6条、第56条、第63条又は第64条の2の規定に違反した者、つまりは中間搾取を行った者に対して、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金とすると定められています。

偽装請負を依頼した発注者だけでなく、受注者に関しても中間搾取を幇助したとして罰せられる可能性がある点に注意が必要です。

偽装請負を避けるための対策 

最後に、偽装請負を回避するための対策について解説します。

正しい契約形態の選択 

偽装請負を避けるためには、従業員と取引先との関係を明確にすることが重要です。契約の内容や業務実態を正確に把握し、法的な基準に基づいて契約形態を選定しなければなりません。業務の性質、従業員の役割、指揮管理の有無などを考慮し、雇用契約や請負契約、業務委託契約など、適切な契約形態を選択してください。

また、契約書には契約形態について明確に記載し、契約当事者間の誤解を回避する必要があります。契約を結ぶ前に、その内容について十分に説明することも重要でしょう。

業務委託契約の適正な運用 

企業と受注者とで業務委託契約を結ぶ場合、それぞれが独立した関係性であり、受注者は自らの責任で業務を遂行しなければなりません。そのため、直接指揮管理がなくとも業務を行えるのかを確認した上で契約する必要があります。

業務内容や報酬、責任範囲などについて、契約書に明確に記載することも欠かせません。また、発注内容について詳細に記した仕様書を添付し、指示を出さずとも業務を遂行できる体制とすることも重要でしょう。

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遵守事項に関する正確な理解 

偽装請負を避けるには、労働者派遣法や職業安定法、労働基準法などの関連法令を遵守しなければなりません。各法令の関連する内容について十分に理解し、契約形態や業務実態が違反していないか確認する必要があります。

また、契約書の作成においても注意が必要です。法令に則った必要事項を記載するだけでなく、契約内容について十分に説明し、契約における誤解を回避してください。

また、雇用契約に関する教育・研修などを随時行い、法令遵守への意識を高めることも重要です。常に法令遵守について意識することにより、内部統制の強化や監査への対策にもつながります。

まとめ 

偽装請負とは、契約上は請負契約でありながらも、業務実態は労働者派遣に該当する状態であり、労働者派遣法や職業安定法、労働基準法に違反した行為です。

契約形態と実態とが一致していないと判断され、偽装請負とみなされた場合、1年以下の懲役あるいは100万円以下の罰金となる可能性もあります。行政指導や改善命令、勧告、最終的には企業名の公表まで行われた場合、会社としての信用が失われてしまうでしょう。

偽装請負となることを避けるためには、従業員と取引先との関係を明確にし、業務内容に合った契約形態を選択してください。

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NobishiroHômu編集部
執筆

NobishiroHômu編集部

 

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