リーガルリサーチの基本
リーガルリサーチは、企業法務において欠かせない業務の一つです。リーガルリサーチとは具体的にどのような業務なのか、定義や重要性、プロセスなどを解説します。
リーガルリサーチの定義と目的
リーガルリサーチは、法的トラブルの回避を目的に、法令・判例・先行事例といった関連情報を調査する業務です。必要な情報を収集・分析することによって、法的課題への解決策を見出します。
法務実務におけるリーガルリサーチの重要性
法務実務において、リーガルリサーチは非常に重要な業務です。新規契約の発生時や、新規事業を展開する時、新たな人事制度の導入時など、さまざまな場面における法的リスク分析に必要とされています。
リーガルリサーチを適切に行うことで、法的リスクを最小限に抑えられ、事業展開における法令遵守を実現できます。
リーガルリサーチのプロセス
リーガルリサーチは、基本的に次の流れで行われます。
事前調査・課題分析
相談者からの相談内容を正確に理解し、何をリサーチする必要があるのかを明らかにします。
具体的に何をやりたいのか、どういった背景があるかなどの前提情報をもれなく収集し、事実関係の整理・課題分析を行います。
リーガルフレームによる落とし込み
事実関係の整理や課題分析が完了したら、リーガルリサーチのベースとなるリーガルフレームへと落とし込みます。
リーガルフレームとは、法的問題が生じた際に、どのような法的物差しによって判断できるのかを明確にしたものです。
どのような法令、ガイドラインによって判断できそうかあたりをつけておくことで、その後実際にリサーチを進める際にスムーズに進みます。
具体的なリーガルリサーチによる調査
リーガルフレームへと落とし込めたら、具体的なリーガルリサーチを実施します。
上記のようなサービスを活用し、相談内容に関連した法令や文献などを具体的に調査します。なお最近では、オンラインで使える有料リーガルリサーチサービスを使用することも少なくありません。
相談内容への当てはめ・回答
関連する法令や文献などの調査が終わったら、調査結果を相談内容へと当てはめます。
この際、「このようなことをしたいが、法的に問題はないか?」という相談に対し、単に可否を答えるのみでは十分ではありません。
なぜ可能/不可能なのか、どの法令が適用されどのように解釈したか、具体的な対策としてどう動くべきかまで提示し、リーガルリサーチの回答とします。
企業法務におけるリーガルリサーチの重要性
企業法務におけるリーガルリサーチは、次の3つの観点において重要と考えられます。
法令遵守とリスク管理
企業経営において、法令遵守とリスク管理の徹底は大前提です。そのためには、リーガルリサーチを適切に実施することが欠かせません。
最新の法令・判例について調査し、法務リスクについて事前に把握することによって、法令遵守とリスク管理を徹底できます。
とりわけ新規事業やサービスを展開する際には、法令やガイドライン、判例などの念入りな調査が必要です。調査を徹底することで、将来的な法務リスクを最小限に抑えられます。
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契約書作成とレビュー
契約書を作成・レビューする際にもリーガルリサーチは欠かせません。条件交渉やドラフト作成、レビューから最終的な合意に至るまで、法的根拠に基づいて判断する必要があるためです。
とくに契約書のレビュー時には、自社にとって不利にならないか・紛争は予防できるか・適法性と実効性は確保できているかといった点を確認するために、法令や判例の参照が求められます。
情報収集とナレッジ共有
企業の法務部門において、知識・情報の共有がますます重要性を増しています。ビジネス環境の変化に伴い法務管理の複雑さが増大する中、効果的な情報の収集と、組織全体での知見の共有は欠かせません。そのため、リーガルリサーチの重要性も高まっています。
AIが支援するリーガルリサーチツール
最近では、Westlaw Japan、Legalscape、BUSINESS LAWYERS LIBRARYなど、AIを活用したリーガルリサーチツールが増えてきました。ここからは、AIを活用したリーガルリサーチツールについて、機能やメリットなどを解説します。
AIリーガルリサーチツールの具体的な機能
AIを活用したリーガルリサーチツールでは、検索機能や分析機能、文書管理機能などを利用できます。具体的な機能は以下の通りです。
横断検索
法令や書籍、ガイドライン、パブリックコメントなどを横断的に検索し、必要な情報を取り出せます。
自然言語検索
検索したい内容を入力すれば、AIの自然言語処理技術によって検索意図が理解され、関連情報が表示されます。
類似文書検索
閲覧している文書と内容が類似する文書が表示されます。
AIによる要約
検索結果から重要箇所のみピックアップされ、要約して表示されます。
判例閲覧・検索機能
判例データベースを閲覧できるほか、参照したい判例を検索できます。
文書管理機能
重要箇所へのメモ機能や、リンク遷移による法令や引用文献の原典参照、閲覧中の文献の逆引きなどが可能です。
AIリーガルリサーチツールを導入するメリット
AIリーガルリサーチツールを導入することで、業務効率の向上やリサーチ精度の向上、コストダウンなどのメリットがあります。具体的なメリットは以下の通りです。
高速な情報収集と分析が可能になる
大規模な判例データベースを活用し、AIによって関連性の高い過去の事例を即時に探し出すことができます。さらに、それらの判例から重要なポイントを自動的に抽出・要約することで、報告書の作成作業を迅速化できます。
法的論点の抽出と整理が簡単にできる
人工知能は、自然言語処理の技術を活用して法律関連の文書を理解し、関連性の高い判例を提示できます。これにより、複雑な法務上の課題もより素早く分析でき、解決方法をスムーズに提案可能です。
網羅的に調査できリサーチの精度が上がる
AIは昼夜を問わず常時稼働し、膨大な量の法令や判例情報を処理できます。これにより、人的な確認では見逃してしまう可能性のある詳細な部分も、AIであればもれなく分析することが可能です。
また、常に最新の法改正情報を取得できるので、法令内容について常に正確に把握できる点もメリットです。
コスト削減効果が期待できる
AIリーガルリサーチツールを利用することで、法務部門の業務効率化と費用削減を実現できます。
社外の弁護士に依頼せずともリーガルリサーチが可能となり、契約審査にかかる全体的なコストを抑制できるでしょう。
さらに、法務の専門性が高くない従業員も調査を実施でき、リーガルリサーチ業務が属人化するのを防止できます。
リーガルリサーチツール導入のポイント
リーガルリサーチツールを導入する際に気をつけたい、4つのポイントを紹介します。
明確な課題とゴールを設定しておく
リーガルリサーチツールを適切に導入するには、まず現状の課題を明確にし、目標を具体的に設定することが重要です。
「リサーチ結果にムラがある」「リーガルリサーチ業務が属人化しつつある」など、課題を整理するところから始めてください。
目標は、短期と中長期の両方の視点で設定し、それぞれに明確な評価指標を定めることをおすすめします。
例えば、短期目標を「法令・判例情報の検索時間の削減」に設定し、長期目標として「法務部門全体における業務効率の向上」を設定することで、このニーズに沿ったツールを選べます。
既存システムとの整合性確認
リーガルリサーチツールの導入検討時には、現行の業務プロセスやシステム環境との整合性を十分に精査してください。
組織内の決裁フローに合っているか、他システムとのデータ連携手法はあるかを確認し、導入後スムーズに定着しそうなツールを選択します。
データベースの品質と範囲
リーガルリサーチツールを選ぶ際は、そのツールが提供するコンテンツの品質や網羅性を評価する必要があります。具体的には以下の点を精査し、品質に問題ないと思えるツールを導入してください。
- 法令・判例・過去の事例などの法的情報に広く網羅的にアクセスできるか
- データベースは適切な頻度で最新情報に更新されているか
- 情報源としての信頼性が確保されているか
加えて、豊富な情報を素早く検索できるかどうかも重要なポイントです。複数のデータベースを一度で横断的に検索できるか、検索時には要点がまとめて提示されるかなど、使いやすさの点ももれなく確認してください。
これにより、実務に適したツールを選定することができます。
費用対効果に期待できるか
リーガルリサーチツールは、どれも初期費用や月額費用が発生します。月額3,000円以下で利用できるツールもあれば、数万円以上かかるツールもあります。
重要なのは、料金の安さだけで選ぶのではなく、費用対効果に期待できそうかといった観点で選ぶことです。
安さで選んだことにより、「データベースの数が少ない」「アカウントを共有できない」などと後悔することのないように、使える機能と料金とのバランスが取れているツールをおすすめします。
LegalOn Cloudは、AIテクノロジーを駆使し、法務業務を広範囲かつ総合的に支援する次世代のリーガルテックプラットフォームです。あらゆる法務業務をAIがカバーできるほか、サービスを選んで導入できるため、初めてリーガルテックの導入を検討する方にもおすすめです。
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