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【2025年版】改正労働者派遣法ガイド|基礎知識と最新情報まとめ

【2025年版】改正労働者派遣法ガイド|基礎知識と最新情報まとめ
この記事を読んでわかること
    • 労働者派遣法の概要や目的、基本理念
    • 労働者派遣法の改正年度と主な改正内容
    • 派遣元・派遣先企業が実務において注意すべきポイント

「10分で読める!2025年施行予定の法改正まとめ」

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労働者派遣法は、派遣事業におけるルールを定めたものです。派遣労働者の権利保護、労働者派遣事業の適切な運営を実現するために1986年に施行され、時代の変化に合わせて改正が繰り返されてきました。派遣元・派遣先企業は、最新の法改正情報について常に把握し、適切な対応を取ることが求められます。

そこで本記事では、労働者派遣法に関する基礎知識を解説するとともに、これまでの労働者派遣法改正の歴史、最新の改正におけるポイントを解説します。

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労働者派遣法の基礎知識

はじめに、労働者派遣法とはどのような法律か、制定された目的や適用対象などを解説します。   

労働者派遣法とは

労働者派遣法とは、派遣労働者の権利保護、労働者派遣事業の適切な運営を実現するべく、1985年に制定され1986年に施行された法律です。正式名称を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」といいます。

法の目的と基本理念

労働者派遣法1条では、法制定の目的について次のように記されています。

労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の保護等を図り、もつて派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする。(労働者派遣法1条

まとめると、目的は以下の3点となります。

  • 派遣労働者が安心して働けるように、派遣労働者の権利保護を強化する
  • 労働者派遣事業における、派遣労働者の不当な対応を防止し、適正な運営を確保する
  • 派遣労働者の待遇改善、雇用の安定を実現する

上記の目的のもと、派遣労働者の働き方を守るために労働者派遣法は機能しています。

適用範囲と対象者

労働者派遣法は、派遣労働者・派遣元企業・派遣先企業の3者に適用されます。しかし、労働者の派遣が禁止されている業務については適用されません。

派遣禁止業務として定められている業務は、以下の通りです。

  • 港湾運送業務
  • 建設業務
  • 警備業務
  • 病院等における医療関係業務

また、次の業務に関しては各業務の関連法令に基づき派遣禁止とされています。

  • 弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士の業務
  • 公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士の業務(それぞれ一部の業務を除く)
  • 建築士事務所の管理建築士の業務
  • 人事労務管理関係のうち、派遣先における労使協議の際に、使用者側の直接当事者として行う業務
  • 同盟罷業(ストライキ)・作業所閉鎖(ロックアウト)中、あるいは争議行為が発生している事業所への新たな労働者派遣
  • 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的の労働者派遣

(参照:厚生労働省|労働者派遣事業を行うことができない業務は・・・

労働者派遣法が制定されるまでの背景

1985年に労働者派遣法が制定されるまで、労働者派遣は法律違反とされていました。労働者と企業との間に第三者が介入することで、強制労働や中間搾取などの問題が発生したためです。

しかし、高度経済成長に伴う労働力の需要増加、働き方の多様化などにあわせて、人材派遣の必要性が高まり、労働者派遣法の制定・施行へと至りました。

当初は派遣可能な業務が限られていましたが、繰り返される改正によって規制緩和が進み、今では幅広い業務において労働者派遣が可能です。

労働者派遣法の改正年度と主な改正内容

労働者派遣法は、雇用形態の多様化や社会情勢の変化に伴って、改正が度々繰り返されています。これまでの主な法改正の流れと変更点は以下の通りです。

  • 1996年:適用対象業務が16業務から26業務に。無許可事業主からの派遣受入等に対する派遣先への勧告・公表について制度化。
  • 1999年:適用対象業務が自由化されたほか、派遣労働者の直接雇用の努力義務が発生。新たに対象となった26業務以外の業務は派遣受入期間を最長1年の期間制限に。
  • 2000年:派遣先企業に直接雇用されることを前提とした「紹介予定派遣」が解禁。物の製造業務へ労働者派遣が解禁されたほか、派遣労働者への契約の申込義務が発生。26業務以外も最長3年の期間制限に。
  • 2012年:派遣労働者の保護・待遇改善を強化し、日雇い派遣は原則禁止に。
  • 2015年:労働者派遣事業を許可制へ一本化したほか、雇用安定措置、キャリアアップ措置を義務化し、均衡待遇を強化。派遣期間規制を3年に見直し。
  • 2020年:待遇差を解消するための規定が整備されたほか、派遣労働者の待遇について説明義務を強化。
  • 2021年:マージン率等のインターネットによる開示や、雇用安定措置に関する希望聴取を義務化。

上記の通り、派遣労働者の保護や不当評価の是正をするべく、時代の流れに合わせて改正されています。

(参照:厚生労働省|労働者派遣制度の概要及び改正経緯について

労働者派遣法改正の背景と目的

労働者派遣法が改正されてきた背景には、労働市場の変化があります。ここからは、労働者派遣法が改正されてきた背景についてより詳細に解説します。

労働市場の変化と改正の必要性

労働者派遣法は、労働市場におけるさまざまな変化に応じて改正されています。なかでも大きな方向転換へとつながったのは、2008年のリーマンショックです。経済不況の影響により、派遣切り・雇止めなどが社会問題となりました。その後の2012年からは、派遣労働者の権利保護強化に向けて、派遣法改正の議論は大きく舵を切ります。

この時派遣法は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」という名称から、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」という名称に変更されました。労働者を保護する法律であることに、よりいっそう重きが置かれたのです

その後、2020年の改正では、正社員と非正規社員の待遇格差を是正すべく「同一労働同一賃金」の実現を目指すなど、働きやすい労働環境を整えるために改正が重ねられています。

改正が目指す企業と労働者の関係改善

労働者派遣法の改正は、企業と派遣労働者の関係をより公平かつ安定したものとするために実施されています。そのため、改正内容には待遇の均等化・説明義務の強化・福利厚生の提供・雇用安定措置・無期雇用への転換促進といった内容が含まれてきました。

今後の改正においても、待遇の改善や雇用の安定化などが強化されていくと予想されます。

労働者派遣法の最新の改正ポイント

2021年4月に施行された労働者派遣法の最新の改正では、次の二点について変更が加えられました。

  • 雇用安定措置に関する派遣労働者の希望の聴取
  • マージン率等のインターネットでの提供

詳しく解説します。

新たに導入された規定と条文の変更点

2021年4月の改正では、以下の条文が追加されました。

派遣元事業主は、法第30条1項(同条第2項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定による措置を講ずるに当たつては、特定有期雇用派遣労働者等(同条第1項に規定する特定有期雇用派遣労働者等をいう。以下同じ。)から、当該特定有期雇用派遣労働者等が希望する当該措置の内容を聴取しなければならない。(労働者派遣法施行規則第25条の2第3項

つまり、有期雇用派遣労働者が継続就業を希望する場合、あらかじめ希望する措置内容を聴取することが義務付けられたのです。

派遣元事業者は労働者に対し、派遣先への直接雇用を希望するのか、派遣元での無期雇用を望むのかなど、どういった雇用安定措置を求めるのかを確認しなければなりません。

また、希望内容について聴取した際には、その内容の派遣元管理台帳への記載も義務付けられています。

また、数ある派遣元事業者から適切な企業を選べるように、マージン率の開示についても義務付けられました。追加された条文は以下の通りです。

法第23条第5項の規定による情報の提供は、インターネットの利用その他の適切な方法により行わなければならない。(労働者派遣法施行規則第18条の2第1項

この改正では、事業所ごとの派遣労働者数や派遣先数、労使協定の締結の有無など、マージン率以外の情報についてもインターネットにおける開示が義務付けられています。

改正内容が実務に与える影響

2021年4月の改正により、希望する雇用安定措置内容の聴取と記録、マージン率などのインターネットにおける情報開示が義務付けられました。

派遣元企業は、継続して1年以上の派遣就業見込がある等一定の要件に該当する労働者へ以下のどれを希望するか聴取し、実施する必要があるため注意してください。

  • 派遣先への直接雇用の依頼
  • 新たな派遣先の提供
  • 派遣元での(派遣労働者以外としての)無期雇用
  • その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置(雇用維持中の教育訓練等)

また、マージン率等も漏れなく開示する必要があります。「マージン率等」とは、具体的には以下の情報です。

  • 事業所毎の派遣労働者の数
  • 事業所毎の派遣先の数
  • 教育訓練
  • マージン率(労働者派遣に関する料金の額の平均額から派遣労働者の賃金の額の平均額を控除した額を当該労働者派遣に関する料金の額の平均額で除して得た割合)
  • 労使協定を締結しているか否かの別等
  • 派遣労働者のキャリア形成支援制度に関する事項

なお、インターネット以外で開示している情報も含め、インターネット上ですべて公開することが義務付けられています。事業年度が変わり次第、前年度の情報を速やかに更新することが必要です。

事業者が注意すべき労働者派遣法のポイント

ここからは、事業者が押さえておくべき労働者派遣法のポイントを解説します。

企業全体でのコンプライアンス強化

労働者派遣法を遵守するために、派遣先企業・派遣元企業はともにコンプライアンスを強化する必要があります。

とくに派遣先企業は、労働者派遣法について適切に理解するのに加え、労働基準法についても注意しなければなりません。派遣労働者に対しては、労働時間や賃金、休暇といった基本的な条件を正規従業員同等に提供することが求められます。

正規・非正規にかかわらず同等の待遇を提供することで、法令に則った対応となるだけでなく、派遣社員のエンゲージメントやモチベーション向上、企業のイメージアップにもつながります。

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内部統制とリスク管理の実践例

労働者派遣法を遵守するためには、徹底した内部統制やリスク管理が欠かせません。例えば、次のような対策が求められます。

  • 法令遵守のための社内規程を作成する
  • コンプライアンス違反の内部通報窓口を設置し、不正行為を報告できる体制を整える

法令遵守のための社内規定作成では、労働者派遣法に基づいた契約書の作成方法・管理方法について記すことをおすすめします。法令に沿った形で派遣業務を実施するためにも、契約書作成・管理は重要なポイントとなるでしょう。

また、万が一コンプライアンス違反が見られる場合に早期に発見できるよう、内部通報窓口の設置が必要です。不正行為を臆することなく報告できる体制を整えることで、内部統制とリスク対策の強化につながります。

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主な法律違反リスクとその対応策

労働者派遣法における違反行為や、それに対する罰則はさまざまです。また、罰則だけでなく行政処分が下される場合もあります。

ここからは、労働者派遣法違反となった場合の罰則や行政処分の内容、違反を防ぐための対策について解説します。

違反時の行政処分や罰則の概要

労働者派遣法で違反とされる行為には、次のような例があげられます。

  • 労働者派遣が禁止されている業務への派遣
  • 無許可での労働者派遣
  • 偽りや不正行為により労働者派遣事業者の許可・期限更新を受けた場合
  • 労働者派遣事業主の名義貸しによって行われた派遣
  • 派遣可能期間の制限を超えた派遣
  • 当該派遣労働者に就業条件などの明示を行わなかった場合

なかでも禁止業務への派遣や無許可派遣、虚偽・不正行為による申請、名義貸しは罰則が重く、1年以下の懲役、または100万円以下の罰金となります。その他の違反行為は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金、あるいは30万円以下の罰金となります。

また、行政処分には以下のパターンがあげられます。

  • 改善命令
  • 事業停止命令
  • 許可の取り消し
  • 事業廃止命令

一般労働派遣事業の許可条件に反している場合や、職業安定法への違反が見られた場合、もっとも重い処分である許可の取り消しとなる場合があるため注意が必要です。

社員研修と教育プログラム

労働者派遣法における違反を防止するには、労働者派遣業務について適切に理解する必要があります。そのため、労働者派遣とは何か・派遣先や派遣元が講ずべき措置とは何か・具体的にはどのような実務対応が必要かなど、労働者派遣に関する社員研修を実施することが効果的です。

eラーニングや外部のセミナーなどを活用し、労働者派遣法についての理解を深めておくことが推奨されます。

派遣元と派遣先が実務上考慮すべきポイント

最後に、派遣元企業・派遣先企業が実務上で考慮すべきポイントを解説します。派遣労働者が安心して働くことのできる環境とするために、以下の点に注意してください。

派遣元企業の実務上の注意点

派遣元企業が注意すべき点は、以下の2つです。

  • 派遣労働者の適切に管理・サポートできる体制を整える
  • 労働条件の明確化と定期的な見直しを欠かさない

派遣労働者を適切に管理・サポートできる体制を整える

派遣元企業は、派遣労働者に対して適切な管理とサポート体制を整えることが重要です。派遣労働者のスキルや経験を分析して適切な職務を割り当て、業務に必要とされる研修やトレーニングなども提供してください。

また、派遣労働者が派遣先で安心して働けるように、定期的なコミュニケーションを心がけることも重要です。トラブルが発生した際にも、迅速に対応できる体制とすることが求められます。

労働条件の明確化と定期的な見直しを欠かさない

派遣労働者を適切に管理・サポートするには、労働条件の明確化と定期的な見直しが欠かせません。派遣労働者の労働時間・賃金・休暇といった基本的な労働条件を把握し、派遣先企業と共有してください。

また、労働条件が遵守されているかを定期的に確認し、改善すべき点はないか見直しを行うことも重要です。

公正かつ安心して働ける環境か定期的にチェックすることは、派遣労働者の満足度を向上させ、長期的なパートナーシップを構築へとつながるでしょう。

派遣先企業の実務上の注意点

派遣先企業では、次の2点に注意が必要です。

  • 契約内容を明確化し責任範囲を整理する
  • 派遣労働者の労働環境整備と安全管理を徹底する

契約内容を明確化し責任範囲を整理する

派遣先企業が実務上注意すべき重要な点の一つは、契約内容の明確化と責任範囲の整理です。

派遣契約の目的や派遣料金、派遣期間・就業日などの基本的な情報に加えて、派遣労働者から苦情が寄せられた場合の対応方法、契約解除要件についてなど、労働者派遣契約書に記載する内容について明確に定める必要があります。

内容に誤りはないか確認するだけでなく、不利益を被る条項がないか確認することも忘れないでください。

また、労働時間の管理や職場環境の整備、管理台帳の作成や派遣元への報告など、派遣先企業が担う実務と責任範囲も整理しておくことが重要です。

派遣元・派遣先それぞれの責任範囲を把握し、協力することを心がけてください。

派遣労働者の労働環境整備と安全管理を徹底する

派遣労働者の労働環境整備と安全管理を徹底することは、派遣先企業に与えられた重要な役割です。

就業環境や福利厚生は適切か、教育訓練は十分に行われているかなどを定期的に把握し、派遣労働者を含む従業員が働きやすい環境を整備してください。

また、就業場所の定期巡回、安全教育の提供などを通じ、安全管理を隈なく行うことも欠かせません。安全衛生教育を行った際には、実施内容と結果を派遣元に報告してください。

安全教育を派遣元に依頼する場合は、教育カリキュラムの作成支援や講師の紹介や派遣といった形での協力を受けることも有効です。

まとめ

本記事では、労働者派遣法の概要や改正の流れのほか、派遣元・派遣先企業が実務で注意すべきポイントまで解説しました。

1986年に施行された労働者派遣法は、社会や労働環境の変化に合わせて何度も改正が繰り返されています。派遣元・派遣先企業は、最新の改正内容について常に把握し、法令遵守を徹底できるように心がけてください。

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NobishiroHômu編集部
執筆

NobishiroHômu編集部

 

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