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会計監査とは?チェック項目や実施の流れをわかりやすく解説

会計監査とは?チェック項目や実施の流れをわかりやすく解説

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上場企業や大会社では、会計監査の実施が義務付けられています。会計監査は会社の財務諸表が適正に作成されているか、独立した第三者が検証する重要な手続きです。近年は中小企業でも、信用力向上や内部管理体制の整備を目的に、任意で会計監査を受ける例が増えています。

今回は会計監査の基本から具体的なチェック項目まで、わかりやすく解説します。会計監査について悩んだら、ぜひ参考にしてください。

会計監査は企業の信頼性を確保する

企業の財務諸表が適正に作成されているか、第三者が客観的に検証するのが会計監査の基本的な役割です。企業の会計処理が法令や基準に従って適切に行われているかを確認し、企業の財務状態の信頼性を確保します。

まずは会計監査の概要や設置義務のある企業について、見ていきましょう。

会計監査の目的

会計監査の主な目的は、企業の財務諸表の信頼性を確保することです。企業が作成した財務諸表が、正しく、公正に作成されているかを検証します。

会計監査が行われた企業では、株主や投資家、取引先などの利害関係者が、企業の財務状態を正しく理解して意思決定を行うことができます。また不正や誤謬を防止したり、早期に発見したりできる点もメリットです。

会計監査では会計処理が適切に設計・運用されているかを確認し、企業の事業継続性を財務面から検討します。

会計監査実施の法的義務がある企業は?

会計監査の設置義務は、主に金融商品取引法と会社法の2つの法律で規定されています。会計監査の設置義務がある企業は、以下のとおりです。

  • 上場企業
  • 有価証券報告書提出会社
  • 大企業
  • 定められた学校法人、独立行政法人、社会福祉法人など

金融商品取引法では、上場企業および有価証券報告書提出会社に対して監査が求められます。投資家保護の観点から、市場の透明性と公平性を確保するためです。

また会社法では、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社(大会社)に会計監査が必要です。

さらに私⽴学校振興助成法により一部の学校法人や、独立行政法人通則法による独立行政法人、社会福祉法により社会福祉法人なども監査対象となります。

近年では法的義務がない場合でも、任意で会計監査を受ける企業が増加しています。特にベンチャー企業や成長企業では、将来の株式上場や資金調達を見据えて、早期から監査を受けることを検討する場合も多いようです。

会計監査を実施する「第三者」とは

会計監査を実施できる第三者は、主に以下のとおりです。

  • 公認会計士
  • 監査法人

公認会計士は財務諸表の監査証明を行うことができる、国家資格保持者です。監査法人は複数の公認会計士が共同して設立した法人で、大規模な監査を組織的に実施する体制を整えています。

監査人には職業的専門家としての高度な知識と、厳格な倫理観が求められます。監査人と被監査会社との間に利害関係があってはなりません。

独立性と客観性を保った監査人による監査を受けることで、企業の信頼性が担保されるのです。

会計監査の種類

会計監査には、大きく3つの種類があります。

  • 外部監査
  • 内部監査
  • 監査役監査

それぞれ詳しく見ていきましょう。

外部監査

外部監査は公認会計士や監査法人による監査です。「法定監査」とも呼ばれ、企業から独立した立場の専門家が実施することで、高い客観性と信頼性を確保します。

上場企業や大会社では、この外部監査が法律で義務付けられているのです。監査人は財務諸表の作成に関わる内部統制の評価から、実際の会計処理の検証まで、幅広い視点で監査を行います。

監査の過程で発見された問題点は、経営者や監査役に報告されます。企業の会計処理や内部統制の改善にもつながり、経営の質的向上に寄与する業務です。

近年では不正会計の防止や早期発見の観点からも、外部監査の重要性が高まっています。

内部監査

内部監査は企業内に設置された内部監査部門が実施する監査です。法的義務はありませんが、多くの企業では内部統制を監査する目的で設置されています。会計監査に加えて、業務全般の効率性や有効性、法令遵守状況なども監査の対象です。

内部監査では日常的な会計処理のチェックはもちろん、業務プロセスの適切性や効率性も評価します。部門間の連携がスムーズに行われているか、業務の重複や非効率な作業がないかといった点も、監査の対象です。

また内部監査部門では、外部監査人との連携も重要な役割です。外部監査で指摘された事項の改善状況をフォローアップしたり、内部統制の評価結果を共有したりすることで、効果的な監査体制を構築しています。

監査役監査

監査役監査は株主総会で選任された監査役が実施する監査です。取締役の職務執行の監査が主な目的ですが、会計監査の法的義務がない会社では、会計監査を併せて担う場合もあります。

監査役は取締役会への出席や重要書類の閲覧、取締役との意見交換などを通じて、企業の状況を把握します。会計面では計算書類や事業報告の適正性を確認し、必要に応じて公認会計士や内部監査部門と連携して監査を行います。

また監査役は株主の付託を受けた機関として、会計処理の適正性だけでなく、経営判断の妥当性や内部統制システムの整備状況なども監査します。

会計監査の実施方法

会計監査は年間を通じて、計画的に実施される重要な業務です。企業の事業年度に合わせて、適切なタイミングで必要な監査を実施しましょう。

会計監査の主な実施時期や流れ、必要な書類をまとめました。

会計監査の実施時期と内容

会計監査の実施は、主に以下のタイミングで行われます。

  • 期中の監査:期中監査は事業年度の途中で実施される監査です。主に企業の内部統制の有効性評価や、日常的な取引の検証を行います。また棚卸資産の管理状況や固定資産の実在性確認なども、期中監査の重要な項目です。この時期の監査で問題点が発見された場合、年度末までに改善する時間的余裕があるため、早期の是正が可能になります。
  • 決算時の監査(期末監査):決算監査は事業年度末の財務諸表が適正に作成されているかを確認する重要な監査です。決算整理仕訳の妥当性や資産・負債の評価の適切性、税効果会計の処理など、決算特有の会計処理を重点的に検証します。特に重要な勘定科目については、必要に応じて書類と照合したり、取引先への残高確認を実施したりします。一般的に「会計監査」と言われて想像するのは、期末の監査です。
  • その他の監査:定期的な監査に加え、必要に応じて監査を行います。また合併や事業譲渡などの重要な企業活動が行われる際には、特別な監査が必要となることもあります。スムーズに監査が行われるように、必要な書類は常時整理しておきましょう。

監査が行われる時期や目的によって、必要な書類や内容が異なります。監査の事前準備として関係部署へ詳しい説明を行い、手続きが正しく行われるよう、情報を共有しましょう。

会計監査の流れ

会計監査の主な流れは、以下のとおりです。

  1. 事前準備・予備調査
  2. 監査計画の選定
  3. 監査の実施
  4. 監査結果の評価・報告

事前準備では監査チームの編成や、方向性の確認を行います。過去の監査結果や業界動向なども踏まえ、重点的に確認すべき項目を特定しましょう。また予備調査では、企業における監査への協力体制や内部統制の構成を確認します。

次は監査計画の策定です。予備調査をもとに、必要な手続きや手順を整理します。監査計画をもとに、実際の監査を行いましょう。

監査では帳簿や証憑書類の閲覧をはじめ、担当者へのヒアリング、実地棚卸への立ち会いなどを通じて監査証拠を収集します。問題点や疑問点についてはその都度企業側と協議し、必要に応じて追加の確認作業を行ってください。

監査の最終段階では、収集した監査証拠に基づいて監査結果を評価します。重要な発見事項については、経営者や監査役等へ報告も必要です。場合によっては会計処理の修正や、開示内容の見直しを求めることもあります。

最後に財務諸表全体の適正性を判断し、「監査報告書」を作成しましょう。

監査では関係部署との連携や、企業全体に監査の目的が共有されていることが重要です。全過程を通じて企業側との適切なコミュニケーションを維持することが、効果的な監査の実施につながります。

必要な書類

会計監査では、さまざまな書類やデータの提出が必要です。主な必要書類には、以下のようなものがあります。

  • 財務諸表
  • 各種出納帳
  • 請求書、領収書、伝票など
  • 株主総会や取締役会の議事録
  • 売掛金や買掛金の一覧表
  • 稟議書や承認文書
  • 銀行の取引明細書と預金通帳
  • 総勘定元帳や補助簿
  • 仕入先一覧表
  • 固定資産台帳
  • 棚卸表
  • 各種契約書
  • 株主名簿や議事録
  • 取締役会議事録 など

そのほか必要に応じて、書類を用意します。事前準備の段階で書類リストを作成し関係部署に伝えましょう。

会計監査のポイント

会計監査では、日常の経理業務が適切に行われているかを重点的に確認します。スムーズで正確な監査を行うには、以下の3つが重要です。

  • 取引時に適切な記録を行う
  • 証憑書類を適切に保管する
  • 経理規程に沿った会計処理を実施する

取引には必要な記録を、適切に管理することが重要です。後日まとめて記帳したり、概算で処理したりするとミスのもとになるだけでなく、監査上でも問題となります。

また取引の事実を証明する請求書や領収書などを、ルールに従って整理・保管することも大切です。紛失や破損を防ぎ、必要な時にすぐに取り出せる状態を維持しましょう。

さらに社内で定められた会計処理の基準や手順を確実に守ることで、誤りがなく、統一された形式での会計処理方法が可能になります。

規則を守り、業務ごとにきちんとしたプロセスを踏むことで、会計監査も問題なく行うことができるのです。

会計監査の9つのチェック項目

会計監査では、主に9つのチェック項目があります。

  1. 貸借対照表と損益計算書の内容確認:貸借対照表と損益計算書を確認し、金額の妥当性と表示の適切性を判断します。また総勘定元帳の残高との整合性や、形式や科目の配列も確認されます。
  2. 売掛金・買掛金の残高確認:売掛金と買掛金は、事業活動の成果を示す重要な勘定科目です。監査人は主要な取引先に対して残高確認状を送付し、帳簿残高の正確性を確認します。また取引の実在性を確認するため、注文書や納品書、請求書などの証憑書類との照合も行います。
  3. 現金・預金・借入金の残高確認:金融機関の残高証明書や現金出納帳を、残高と照合します。また実際に現金を数え、残高とあっているか確認する「現金の実査」を行います。
  4. 経理処理状態と帳簿組織・システムの確認:経理担当者が必要な知識を有しているかどうか、確認する作業です。担当者に直接ヒアリングし、正しい回答が得られるかをチェックします。またシステムと各帳簿組織の連携も確かめましょう。
  5. 伝票の確認:伝票が実際の取引に基づいて成句されているか、誤りがないかを確認します。社内規則に従って、責任者の承認がなされているかも調査の対象です。
  6. 勘定科目の確認:会計処理では任意の勘定科目が選ばれますが、取引を正しく示すものが使われているかどうかは調査の対象となります。勘定科目に内容が不明なものがあれば、指摘しましょう。また、残高が正しいかどうかも確認します。
  7. 引当金の確認:引当金とは将来発生するかもしれない損失や支出に備える見積金額です。貸倒引当金や賞与引当金、退職給付引当金などが該当します。監査では引当金の金額が妥当かどうか、確認しましょう。
  8. 固定資産の計上や除却処理の確認:固定資産の計上や減価償却などを確認します。売却等があれば、その処理についてもチェックします。必要に応じて、実地調査を行いましょう。
  9. 実地棚卸の確認:実地棚卸作業に、会計監査人が立ち会います。適切に作業が行われているかどうか、確認するためです。また決算期の棚卸資産の残高も確認します。

会計監査について解説しました

会計監査は企業の財務報告が正しく行われているか確認する、重要な取り組みです。実施時期や監査の種類によって目的が異なりますが、いずれも独立した立場の監査人が実施することで、信頼性が担保されます。

また会計監査は、企業内の課題や問題を早期に発見するためのプロセスとしても機能します。社外的にも、社内的にも、健全な企業運営には欠かせない手続きのひとつです。

監査人からの指摘や助言を適切に受け止め、内部統制の改善や会計処理の適正化に継続的に取り組むことで、より健全で持続性の高い企業経営につなげましょう。


Startup JAM編集部
執筆

Startup JAM編集部

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