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反社会的勢力(反社)とは?定義や要注意ケース6選、契約書記載例、排除対策を解説!

反社会的勢力(反社)とは?定義や要注意ケース6選、契約書記載例、排除対策を解説!

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近年SNSを経由した闇バイトをはじめとして、反社会的勢力の手口は巧妙化しています。企業を取り巻くさまざまなリスクの中でも、反社会的勢力への対応は重要な課題のひとつです。

本記事では、反社会的勢力の定義や関連する法規則、要注意ケース6選、「反社会的勢力排除条項」の記載例、企業がとるべき対応などをまとめました。企業や従業員を犯罪から守るためにも、日ごろから反社会的勢力に対する備えを検討しておきましょう。

 反社会的勢力(反社)とは

反社会的勢力というと、暴力団やテロ組織を想像するかもしれません。しかし半グレや闇バイトといった反社会的勢力は、日常生活のすぐ近くに存在しています。

まずは反社会的勢力の定義や種類、関連法規制の変遷を見ていきましょう。

暴力団だけじゃない?反社会的勢力の定義と種類

反社会的勢力とは、暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人です。反社会的勢力はさまざまな形態で存在しています。法務省により公表された「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」では、以下のような属性要件が反社会的勢力として分類されています。

  • 暴力団
  • 暴力団準構成員
  • 暴力団関係企業
  • 総会屋
  • 社会運動標ぼうゴロ
  • 特殊知能暴力集団等

また行為要件としては、「暴力的な要求行為」や「法的な責任を超えた不当な要求」も挙げられています。

暴力団は構成員が集団的に、または常習的に暴力的不法行為などを行うことを助長する恐れがある団体です。暴力団関係企業とは暴力団員が実質的に経営に関与している企業や、暴力団に資金を提供している企業を指します。

総会屋は株主総会の威力を利用して、企業から利益を得ようとする者たちです。企業の不祥事等の情報を武器に、機関誌の購読や広告の掲載などを要求します。

社会運動標ぼうゴロや政治活動標ぼうゴロは、正当な社会活動や政治活動を装いながら、実際には不当な利益を追求する集団です。社会的な問題や政治的な主張を盾に取って、企業に対して金銭や便宜の提供を要求することがあります。

特殊知能暴力集団は従来の暴力団とは異なり、知能的な手法を用いて企業や個人から利益を獲得しようとする集団です。たとえば企業の弱みを巧妙につかんで金銭を要求したり、偽装の取引を持ちかけたりするなど、より巧妙な手口を用いることが特徴です。

このほか、暴力的な要求行為や法的な責任を超えた不当な要求を行う者が反社会的勢力とされています。最近では「半グレ」や「闇バイト」、「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」も該当します。またこうした団体と結びつき、利益を得る「共生者」も注意が必要な存在です。

参考:法務省「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」

法規制の変遷と反社会的勢力の変化

暴力団対策法が1992年に施行されて以降、反社会的勢力に対する法規制は段階的に強化されてきました。2012年の暴力団対策法改正では、特定抗争指定暴力団等の指定と特定危険指定暴力団等の指定の制度が導入され、事業者襲撃などの事件の抑止に寄与しています。

また2007年には「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(政府指針)が決定されました。これは企業が、反社会的勢力による被害を防止するための基本的な理念や具体的な対応について取りまとめたものです。

法規制の強化に伴い、反社会的勢力の活動形態も変化してきています。かつての露骨な暴力や脅迫による要求行為から、取引関係を装った接触や第三者を介した間接的なアプローチなど、より巧妙な手口が取られるようになりました。

特に近年は企業活動を装った資金獲得活動やSNSを利用した「闇バイト」など、時代に即した新たな手法も確認されています。

現代の企業には、より慎重かつ体系的な反社会的勢力対策が求められています。対症療法的な対応ではなく、予防的な取り組みを含めた包括的な管理体制の構築が必要なのです。 

参考:警視庁「組織犯罪対策の歩みと展望」

反社会的勢力の排除に取り組むべき理由

企業が反社会的勢力との関係を断つことは、法令遵守の観点からも、企業防衛の観点からも極めて重要です。厳格化する法規制への対応はもちろん、企業経営におけるリスク管理の面からも、反社会的勢力の排除は大きな意味を持ちます。

行政からの要請

反社会的勢力の存在は、社会全体に大きな不利益をもたらすものです。「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」をはじめ、企業にも反社会的勢力排除の姿勢が強く求められています。

また各自治体では、暴力団排除条例によって反社会的勢力への利益供与が禁止されています。違反すると勧告を受けたり、罰則の対象となったりするのです。

反社会的勢力の排除は、国や企業が一体となって取り組むべき、社会的な課題になっています。

参考:法務省「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」

反社会的勢力と関わったときのリスク

企業が反社会的勢力と関係を持った場合、まずは直接的な経済的損失として、金銭の要求や商品の購入強要などの被害が想定されます。しかしそれ以上に深刻なのは、企業の信用やブランド価値の毀損です。取引先からの取引停止や金融機関との関係悪化、株価への影響など、事業継続に関わる問題へと発展する可能性があります。さらに関係が複雑化すると、犯罪行為に巻き込まれ、企業が罪に問われる可能性も出てきます。

従業員の安全も脅かされる可能性があり、職場環境の悪化や人材流出にもつながりかねません。企業の存続そのものが危ぶまれる事態となるのです。

反社会的勢力が企業に近づく手法

反社会的勢力は、様々な手口で企業に近づき、利益を得ようとします。法務省の「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針に関する解説」では不当要求の二つの類型として、「接近型」と「攻撃型」が示されました。

①接近型

「一方的なお願い」あるいは「勧誘」という形で近づいてくるものです。反社会的勢力は、以下のような名目で接近を試みます。

  • 機関誌の購読要求
  • 物品の購入要求
  • 寄付金や賛助金の要求
  • 下請け契約の要求 など

一見して通常の営業や依頼のような形を取るので、企業側は警戒を緩めてしまうかもしれません。特に注意が必要です。

②攻撃型

企業のミスや役員のスキャンダルを攻撃材料として、以下のような行動に出るものです。

  • 公開質問状を出す
  • 街宣車による街宣活動をして金銭を要求する
  • 商品の欠陥や従業員の対応にクレームをつけ、金銭を要求する など

企業の弱みを突いて金銭を要求する手法です。企業の信用を傷つける可能性が高く、組織的な対応が特に重要となります。

反社会的勢力は状況に応じて接近型と攻撃型を使い分け、企業から不当な利益を得ようとします。企業では手口を十分に理解し、適切な対応策の準備が必要です。

近年ではインターネットを利用した手口も増加しています。SNSで従業員に接触を図ったり、ウェブサイト上で企業の評判を貶めたりすることで、金銭を要求するのです。

いずれの場合も不当要求は拒絶し、つけ入る余地を見せないことが大切になります。

 参考:法務省「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針に関する解説」

反社会的勢力を見分ける方法

企業が反社会的勢力との関係を遮断するためには、取引開始前の確認が極めて重要です。ここでは反社チェックの方法や見分け方のポイントを解説します。

反社チェックの実施

反社チェックとは、取引先や株主、役員などが反社会的勢力に該当しないかを確認する作業です。「コンプライアンス・チェック」とも呼ばれ、主に新規取引開始時や定期的な取引先調査の際に実施します。

反社チェックではインターネットなどで公開されている情報を確認したり、調査会社などに依頼したりしましょう。財務状況や取引実態を確認してください。官報や信用調査機関のレポートを活用し、業績や支払い能力や取引履歴などをチェックします。不自然な資金の動きや、事業規模に見合わない取引があったときは要注意です。

反社チェック用のツールもあるので、必要に応じて利用しましょう。

以下の記事では反社チェックについて詳しく解説しています。理解を深めたい方はぜひ併せて確認してみてください。

<関連記事>反社チェックはいつ・誰に必要?無料でできるGoogle検索の方法まで解説

反社会的勢力の公表リスト

特定の企業や団体が反社会的勢力かどうか調べるときは、警察などで公表している指定暴力団の一覧をチェックするのも有効です。たとえば以下のページでは大阪府警が公表している指定暴力団の情報を確認できます。

指定暴力団の一覧では、団体名だけでなく、代表者や事務所の住所も記載されています。確認したい相手の住所や事務所が近くにあったり、役員などに代表者の氏名があるときは、反社会的勢力とかかわりがあるかもしれません。

また警察・暴力追放運動推進センターへ相談するのも良いでしょう。都道府県暴追センター連絡先一覧表は以下のページから確認できます。

いずれの場合も決定的な根拠に欠ける場合は、総合的に調査をすすめ、慎重に判断することが大切です。

反社会的勢力との関与を防ぐための要注意ケース6選

反社会的勢力を見分けるには、日常的な取引の中での注意深い観察も重要です。指定暴力団の情報は、警察庁などの公的機関により公表されていますが、反社会的勢力が関与する「フロント企業(表向きは一般企業を装い、裏で反社と関係を持つ企業)」については、明確な公開リストが存在しないのが現実です。

このため取引相手と接する場面では、相手の実態に不審な点がないか、あるいは警戒すべき特徴が見られないかを自らの目で慎重に確認する姿勢が重要です。特に以下のようなケースには十分な注意が求められます。

① 会社の実態が不明確

  • オフィスの所在が曖昧、または実際に存在しない
  • 登記住所に同一名称の会社が多数存在
  • 電話番号が携帯のみで、固定回線がない

② 代表者・関係者の身元が不透明

  • 代表者の経歴や顔写真、実績が極端に乏しい
  • 取締役の構成が不自然(同姓同名が多い、住所が遠隔地)
  • 名刺と登記情報に齟齬がある

③ 契約条件や支払い条件が極端に有利/不自然

  • 一方的に相手に有利な契約を強要される
  • 相場より極端に高額/低額な価格提示
  • 正規の銀行口座以外(個人口座や仮想通貨)での送金を求められる

④ コミュニケーションに違和感がある

  • 急に高圧的・威圧的な態度を取る
  • 問い合わせに対して曖昧な回答や情報開示を拒む
  • 弁護士や第三者機関の介入に強く抵抗する

⑤ SNSやインターネット上に不穏な情報がある

  • 過去に暴力団・反社との関係を指摘された形跡
  • 関係者が過去に詐欺や金融トラブルで報道された記録
  • 風評サイトや掲示板に複数の否定的な口コミがある

⑥ 特定の業種・地域に偏っている

  • 特殊詐欺に使われやすい業種(投資・暗号資産・情報商材など)で幅広く活躍
  • 特定地域に拠点が集中している(反社とのつながりが多いとされる地域)

一方でこうしたチェックは、相手企業の権利や取引の円滑な進行に配慮しながら、慎重に行う必要があります。過度な調査や不用意な情報収集は、かえってトラブルの原因となる可能性があるためです。

適度な危機感と距離を保ちつつ、良好な取引ができる相手を見定めましょう。

企業としての反社会的勢力への対策のポイント

「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」では、反社会的勢力による被害を防止するため、以下の5つの基本原則が提示されました。

  • 組織としての対応
  • 外部専門機関との連携
  • 取引を含めた一切の関係遮断
  • 有事における民事と刑事の法的対応
  • 裏取引や資金提供の禁止

基本原則を踏まえたうえで、企業が反社会的勢力に対応するときのポイントを確認していきましょう。

反社会的勢力に対して企業が示すべき態度

反社会的勢力に対して、企業が示すべき態度のポイントは以下の3つです

  • 組織として、トップが方針を宣言する
  • 反社会的勢力を顧客にしない・譲歩しない
  • 契約書に反社会的勢力排除条項を記載する

反社会的勢力に対しては、まずは組織として対応することが重要です。反社会的勢力による不当要求は、人の心に不安感や恐怖感を与えます。代表者や現場の従業員だけで対応することは困難です。

代表取締役等の経営トップが基本方針を社内外に宣言し、実現のための社内体制整備や従業員の安全確保、外部専門機関との連携等の取り組みを進めましょう。万が一関係を持ってしまった場合には、判明した時点で速やかに関係を解消することが必要です。

基本となるのは「反社会的勢力を顧客にしない」という姿勢です。新規の取引先については、事前の審査を徹底します。また既存の取引先が反社会的勢力と判明した場合は、速やかに取引関係を解消しなくてはいけません。

このとき重要なのが「一切の譲歩をしない」という態度です。反社会的勢力による要求は、最初は些細なものに見えることがあります。しかし一度でも応じてしまうと、それが前例となってさらなる要求につながります。「話し合いによる解決」や「示談」という言葉で譲歩を迫られても、毅然とした態度を崩さないことが重要です。

反社会的勢力への企業の姿勢を示すため、各種契約書では、反社会的勢力排除条項を記載しておきましょう。

反社会的勢力と関わらないための日々の対策

反社会的勢力と関わらないためには、対応部署を設置し、反社会的勢力に関する情報を一元的に管理・蓄積することが重要です。

必要な主な業務は、以下のとおりです。

  • 社内体制の整備
  • 対応マニュアルの整備
  • 外部専門機関との連携

また契約書や取引約款への暴力団排除条項の導入や、取引先の審査、株主の属性判断のためのデータベース構築も重要な対策とされています。必要に応じて外部の専門機関とも連携し、体制を整えておくことも重要です。

日常的な取り組みによって組織全体の対応力を高め、反社会的勢力との関係を未然に防ぎましょう。

反社会的勢力と遭遇したときの対策

反社会的勢力との遭遇時には、明確な対応手順に従って組織的に対処することが重要です。大きな流れは、以下のとおりです。

  1. 各部署へ報告する
  2. 外部機関とも連携し、対応を検討する
  3. 必要に応じて、法的手段を講じる

反社会的勢力による不当要求がなされた場合には、速やかに反社会的勢力対応部署へ報告・相談します。当該部署は担当取締役等に報告を行いましょう。

外部専門機関に対応を相談し、暴力追放運動推進センター等が示している不当要求対応要領等に従います。ただし要求が正当なものである場合は、法律に照らして相当な範囲で責任を負わなくてはなりません。まずは内容を精査し、冷静に対処しましょう。

必要であれば民事上の法的対抗手段を講じるとともに、刑事事件化も視野に入れてください。被害届を提出することで不当要求に屈しない姿勢を明確にし、更なる被害を防止する効果があります。

また不当要求が事業活動上の不祥事等を理由とする場合には、担当部署が速やかに事実関係を調査します。調査の結果、指摘が虚偽であると判明した場合はその旨を理由として要求を拒絶してください。たとえ真実であった場合でも、不当要求自体は拒絶した上で、不祥事案については別途、適切な開示や再発防止策の徹底等により対応します。

契約書に「反社会的勢力排除条項」の記載例

前述したように、企業が反社会的勢力に対して毅然とした姿勢を示すためには、各種契約書に「反社会的勢力排除条項」を盛り込むことが重要です。以下にその代表的な記載例を示します。

(暴力団等反社会的勢力の排除)
第●条 乙は、甲に対し、本件契約時において、乙(乙が法人の場合は、代表者、役員又 は実質的に経営を支配する者。)が暴力団、暴力団員、暴力団関係企業、総会屋、社会運 動標ぼうゴロ、政治運動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団、その他反社会的勢力(以下「暴 力団等反社会的勢力」という。)に該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当 しないことを確約する。
2 乙は、甲が前項の該当性の判断のために調査を要すると判断した場合、その調査に協 力し、これに必要と判断する資料を提出しなければならない。

(契約の解除等)
第●条 甲は、乙が暴力団等反社会的勢力に属すると判明した場合、催告をすることなく、 本件契約を解除することができる。
2 甲が、前項の規定により、個別契約を解除した場合には、甲はこれによる乙の損害を 賠償する責を負わない。
3 第1項の規定により甲が本契約を解除した場合には、乙は甲に対し違約金として金● ●円を払う。 

引用:暴力団排除条項の記載例|大阪府警本部

IPO・上場企業の反社チェック

IPOを目指す企業にとっても、反社チェックは重要な役割を持っています。

東京取引所有価証券上場規程では、以下のように反社会的勢力との関与を禁止する項目が明記されています。

上場会社は、上場会社が反社会的勢力の関与を受けているものとして施行規則で定める関係を有しないものとする。(443条)
上場会社は、反社会的勢力による被害を防止するための社内体制の整備及び個々の企業行動に対する反社会的勢力の介入防止に努めるものとする。(450条)

引用:有価証券上場規程(東京証券取引所)

反社会的勢力の関与が判明した場合は、上場廃止となることもあります。上場を目指す企業は特に、綿密な反社チェックを行いましょう。

反社(反社会的勢力)について解説しました

反社会的勢力への対応は企業の社会的責任であると同時に、事業継続の観点からも重要な経営課題です。企業には反社会的勢力との関係遮断が強く求められています。

効果的な対策の基本は、事前の予防と有事の際の適切な対応です。取引開始時の慎重なチェックや契約書への暴力団排除条項の導入、社内体制の整備など、平時からの備えが重要となります。

また反社会的勢力との接触が疑われる場合は、組織として毅然とした態度で臨み、警察や弁護士などの外部専門機関と連携して対応することが必要です。

反社会的勢力への対応には組織的な取り組みが不可欠です。経営者から従業員まで、全社一丸となって取り組むことで、企業を反社会的勢力の脅威から守りましょう。

反社チェックの基本と実施方法

Startup JAM編集部
執筆

Startup JAM編集部

Startup JAM編集

AI法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」を提供する株式会社LegalOn Technologiesの、「Startup JAM-スタートアップ向けにビジネスの最前線をお届けするメディア-」を編集しています。

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