内部監査とは
内部監査とは、企業内の独立した監査組織が、財務会計や業務などが適切に行われているかどうかを調査・評価をする活動のことです。経営層や従業員が安心して仕事に取り組めるように客観的に評価し、企業全体の持続的な成長をサポートします。
資格について知る前に、まずは以下の点を理解しておきましょう。
- 内部監査と内部統制の違い
- 内部監査の整備が必要な企業
内部監査と内部統制の違い
内部監査と内部統制は、似ているようで意味や目的が大きく異なります。
内部統制は、企業が円滑に業務を進めたり、不正が行われたりしないような仕組みや社内規定を作ることを指します。一方の内部監査は、内部統制で作られた仕組みや社内規定が正しく実施できているかを確認する行為です。
内部統制は日常的なルール、内部監査はルールが有効かどうかを検証する仕組みと考えるとイメージしやすいでしょう。
どちらも企業が活動するにあたって欠かせないものとなっています。
内部監査の整備が必要な企業
内部監査の整備が必要なのは、以下に該当する企業です。
- 会社法に規定されている大企業
- 取締役会がある企業
- 上場する予定の企業
2006年に定められた会社法によって、大企業では内部監査の実施が義務付けられています。取締役会のある企業は監査役が必要ですし、上場する際には内部監査が必須です。
そのため、上記3つに当てはまる企業は、内部監査を必ず整備しておきましょう。
一方で、中小企業は内部監査を義務付けられていません。しかし不正行為や問題の見逃し、隠蔽といったリスクがあるため、万が一のトラブルにも迅速に対応できるように内部監査を実施した方が良いでしょう。
内部監査に役立つオススメの資格10選
ここからは、内部監査に役立つ資格を10個紹介します。資格選びの参考にしてください。
公認内部監査人(CIA)
公認内部監査人(CIA)は、内部監査の専門知識とスキルを証明する国際資格です。1974年にアメリカで誕生して以来、世界約190ヵ国で実施されています。日本では1999年から実施されており、1万人以上が取得している資格です。
内部監査において指導的な役割を担っているIIA(The Institute of Internal Auditors;内部監査人協会)が認定する唯一の国際的な資格になるので、取得するメリットも非常に大きくなっています。
そのため、内部監査業務の基礎から実務までを徹底的に学べるのに加え、グローバル企業や大手企業へのキャリアアップにも有利です。
また取得して終わりではなく、資格維持のためには継続的専門能力開発制度と呼ばれるスキルアップ制度を利用しなければいけません。
監査のプロフェッショナルとして信頼を得るには、最適の資格といえるでしょう。
内部監査士(QIA)
内部監査士(QIA)は、日本内部監査協会が主催している資格です。内部監査士認定講習会を修了した人のみに与えられる称号となっています。
その歴史は非常に古く、昭和32年(1957年)から60年以上にわたって開催されています。そのため日本国内において認知度が高く、国内企業でのキャリアアップを目指すならオススメの資格です。
内部監査士の講習では基礎知識を効率良く学べ、実務に直結する内容まで網羅的に習得できます。オンデマンド講習の出席状況と論文で評価されるため、隙間時間を使って受講できるのも嬉しいポイントです。
受験条件が比較的緩く、初めての監査資格として挑戦しやすいでしょう。
公認情報システム監査人(CISA)
公認情報システム監査人(CISA)は、情報システムコントロール協会(ISACA)が認定する国家資格です。情報システム分野に特化した監査の国際資格として、最も古い歴史を持っています。
近年はIT技術の発達によって、ITリスクやシステムに関するリスクが増大しています。そのため、今後ますます重要になる資格といえるでしょう。
将来のキャリア先として、IT企業や情報管理に関わる部門で活躍したい方にオススメの資格です。
公認リスク管理監査人(CRMA)
公認リスク管理監査人(CRMA)は、リスク管理に特化した国際資格です。取得すると、リスク管理や内部監査、リスク評価などに対する専門知識があると証明できます。
資格の保持には企業が直面するさまざまなリスクに対して、効果的な対策をとるスキルを身につけられます。
ITは便利な反面、情報漏洩やシステムダウンなど様々なリスクに注意しなければいけません。そのような中でリスクマネジメントは重要です。
公認リスク管理監査人を取得すれば、リスク評価やリスク対策に関する専門家として、業種・業界を問わず幅広く活躍できるようになるでしょう。
公認不正検査士(CFE)
公認不正検査士(CFE)は、不正リスクに関する知識とスキルを証明する国家資格です。不正行為の防止や発見、対応の方法を学べるので、企業内での不正リスクを軽減する存在になれます。
資格を所持すると、不正リスクに対応するための体制構築に貢献できる人材として重宝されるでしょう。
近年は不正やコンプライアンスに関して、より厳しい目が向けられる時代です。不正行為に対する予防策を確立し、企業の健全な運営を支えられる公認不正検査士は、今後の活躍に期待できます。
情報システム監査専門内部監査士
情報システム監査専門内部監査士は、情報システムの監査に特化した資格です。取得しているとセキュリティやコンプライアンスなど様々な面から監査をし、企業の情報システムの健全性を評価できる人材として活躍できます。
企業活動においてIT技術が必須となった昨今、システムの安定稼働やデータ保護は重要な課題です。取得するメリットは非常に大きく、企業にとって不可欠な人材として活躍できるでしょう。
講習会に参加するだけで取得できるのもあって、比較的取得しやすい資格です。
ただし、取得するには条件が設けられています。内部監査業務の実務経験か、大学などで会計学や商学などを学んだ方のみ受験資格があるので、該当しているか確認しておきましょう。
金融内部監査士
金融内部監査士は、金融機関に特化した内部監査の資格です。取得することで、金融機関の内部監査に関する深い知識や技能を持っている証明になります。
金融業界は法規制やリスク管理が非常に重要です。取得する過程で、法令遵守や内部統制を徹底した監査ができるようになるのは、非常に大きなメリットとなるでしょう。
また取得も比較的しやすく、講習会に参加後、修了条件を満たしていれば取得できます。ただし、終了後1年以内に登録申請をしなければ取得できません。
金融商品の適切な取扱にも影響するため、金融業界でのキャリアアップを目指すなら、オススメの資格です。
IPO・内部統制実務士資格
IPO・内部統制実務士資格は、IPO(新規公開株)や内部統制の整備に関する専門知識を証明する資格です。取得することで、経済産業省の基準を満たした人材であると証明できます。
上場企業に求められる内部統制の構築や運用・評価、コンプライアンス経営などの知識を習得できます。マネジメントに関する知識を深めたい方にオススメです。
また資格は2年のみ有効となっており、期間内にっこう週を受けて更新し続けなければいけません。
上場企業は法律で内部統制の整備が義務付けられているため、取得するメリットは非常に大きい資格です。
上級IPO・内部統制実務士
上級IPO・内部統制実務士は、企業の内部統制に関する高度な知識と実践スキルを証明する資格です。取得することで、内部統制システムの構築や評価などの幅広い業務に対応できます。IPOを目指す企業や、内部統制の強化を考えている企業において重宝されるでしょう。
ただし、取得難易度は高く、一定の実務経験がなければ受験すらできません。さらにIPO・内部統制実務士の資格を取得した上で、以下の職務にあたっている必要があります。
- 上級IPO実務士
- 上級内部統制実務士
難易度も高く、一定の経験を積んだ上で挑戦する資格となっています。
ISO内部監査員資格
ISO内部監査員資格は、ISO規格に準拠しているかどうかの監査を行うスキルを証明する資格です。ISOは取得だけでなく維持しなければいけないため、取得後もシステムが効果的に実施されているかどうかも確認しなければいけません。
取得すると、ISO9001やISO27001など、品質や情報セキュリティに関する基準を遵守する企業で評価されます。 企業としても社内の人材で監査をする方がメリットが大きいため、取得しておくとキャリアにも有効です。
ISO規格を重視している企業の内部監査をするなら、ぜひ取得しておきたい資格となっています。
内部監査に資格は必要なのか
資格を取得する際に「内部監査に資格って必要なの?」と思う方もいるでしょう。実際、資格を取得していなくとも活躍している方は多くいます。
以下にわけて詳しく見ていきましょう。
- 資格の取得は不要
- 取得するメリットは大きい
資格の取得は不要
そもそも論として、内部監査に資格は必要ありません。実務経験やスキルを習得してさえいれば、誰でも監査業務ができます。実際、資格を取得しないで内部監査をしている方は多くいます。
一方で資格を取得する過程で、内部監査について体系的に学べる点も事実です。これから内部監査員として活躍したいと考えている方にとっては、資格を取得する過程で知識とスキルを自然と身に付けられる点は、大きなメリットにもなります。
内部監査をするにあたって、資格は必要ありません。しかし取得する意味もまた大きいと認識しておきましょう。
取得するメリットは大きい
内部監査に資格は必要ありませんが、取得するメリットが大きいのも事実です。特に監査の基本から専門的な知識までを徹底的に学べるのは大きく、実務での理解力を効率的に高められます。
また資格は自分のスキルを客観的に証明できるものでもあります。転職や昇進の際には、取得しているだけで有利になるでしょう。
大手企業では資格によって評価が変わるケースもあるため、取得しておくメリットは大きいといえます。
最適な内部監査資格の選び方3選
内部監査向けの資格には、様々な種類があります。その中から自分に合った資格を選ぶのは難しいものです。悩んだ際は、以下を基準に考えてみましょう。
- キャリアに沿った資格を選ぶ
- 監査のどの部分に興味があるのかを明確にする
- 資格の難易度と費用を比較する
キャリアに沿った資格を選ぶ
内部監査の資格を選ぶ際は、まず自分のキャリアプランに沿った資格を選びましょう。将来的に活かせるものを選ぶと、後々のキャリア形成に大きく影響するためです。
例えばIT分野でのキャリアを検討したい場合は情報システム監査人(CISA)ですし、金融業界に特化したいなら金融内部監査士が適しています。
自分のやりたい分野に合った資格を選び、キャリア形成に役立てていきましょう。
監査のどの部分に興味があるのかを明確にする
内部監査の中で特定の分野に関心がある場合、その分野に関連する資格を選ぶ方法がオススメです。モチベーションを維持しながら習得できるので、勉強が苦になりません。
例えば不正リスクに対する関心がある場合は、公認不正検査士(CFE)を選ぶと良いでしょう。
監査のどの分野に強みを持ちたいかを明確にしておくと、自分に合った資格を選びやすくなります。将来のキャリア設計にも役立つので、興味がある分野があるなら、それに関連した資格に挑戦しましょう。
資格の難易度と費用を比較する
資格を選ぶ際には、資格ごとの難易度や取得費用を比較するのも重要です。 特に難易度の高い資格は学習に時間がかかるので、学習時間を確保できず途中で挫折してしまう可能性があります。
費用面でも資格ごとに差があるため、自己投資として見合うかどうかを必ず検討しましょう。 難易度や費用を比較した上で、無理のない範囲で取得できる資格を選んでください。
内部監査の資格を取得するためのオススメ学習手順
資格の取得に向けての学習で悩んでいる方は、以下の手順で進めてみましょう。
- 必要な資格をピックアップする
- 学習計画を立てる
- 勉強仲間を見つける
- 過去問を繰り返し解く
Step1.必要な資格をピックアップする
まずは自分にとって必要な資格をリストアップしましょう。内部監査に関連する資格は多いため、キャリアプランに合った資格を選べるかどうかが重要です。
資格がわかれば、難易度別に取得していく順番も見えるようになります。ゴールに向かって中継地点を設置していくようなイメージです。
目指すキャリアに到達するためにも、まずは必要な資格をピックアップし、効率的に取得できるように準備しましょう。
Step2.学習計画を立てる
取得する資格を決めたら、次に学習計画を立てます。何となくで学習していては、途中でモチベーションを維持できず挫折してしまう可能性が高いためです。具体的な学習計画を立てて、無理のないペースで学習を進めましょう。
オススメは、週単位と月単位で目標と学習時間を設定し、計画的に取り組むことです。毎日少しずつでも良いので時間を確保して、確実に知識を身につけていってください。
忙しい社会人にとって、計画に沿った学習は非常に重要です。合格に向けて効率よく学習できるように、事前に計画を立てておきましょう。
Step3.勉強仲間を見つける
資格の勉強を続けるには、モチベーションが非常に重要です。どれだけ維持できるかが重要なポイントになります。そのため、同じ資格を目指す勉強仲間を見つけて、切磋琢磨できる環境を構築しましょう。
近年は、SNSやコミュニティ、サロンを利用すれば、簡単に交流できます。どれだけ忙しくても、自分と同じように頑張っている人がいるだけで元気をもらえます。
独学での学習はモチベーションの維持が非常に難しいので、勉強仲間を見つけて刺激し合える関係を構築しましょう。
Step4.過去問を繰り返し解く
資格の取得でも重要なのは、過去問を繰り返し解くことです。実践に近い形で学習する中で、本番の試験に対しての心構えができます。
過去問とはいえある程度の傾向を掴めるため、程よい緊張感で本番に臨めるメリットもあります。教本と一緒に過去問集を使って、理解度を深めていきましょう。
監査は資格を取得しておいた方がメリットが大きい
内部監査は企業経営において重要な役割を担っています。不正行為や問題の見逃し、隠蔽といったリスクを防ぐためにも、設置する重要度は非常に高いといえるでしょう。
内部監査に資格は必要ありませんが、取得すると様々なメリットがあります。学習の中で監査に関する専門知識を体系的に学べるので、転職や昇進といったキャリアの面でも役立ちます。
どの資格も一筋縄ではいきませんが、今回紹介した学習方法を参考にして、ぜひ挑戦してみてください。